BMWが新型電気自動車として、テスラモデル3とガチンコの競合車種である「i4」の発売を日本市場においてもスタートしました。
BMWは電気自動車のパイオニア?
まず、今回のBMWに関してですが、
実は電気自動車という観点においては、ある種パイオニア的な自動車メーカーであるという点が、世間ではあまり知られていない点であり、
というのも、すでに2013年という電気自動車がまだほとんど普及していない時期から、
コンパクトハッチバックであるi3の発売をスタートさせ、
すでにグローバルで20万台以上という販売台数を達成し、
もちろん我々日本市場においても発売し、すでに電気自動車を所有している方であれば、
一度は公共の充電器などで見かけたことがあるのではないかというレベルで、一定程度普及していたりします。
しかしながら、このBMWについては、そのi3という電気自動車のパイオニア的な車両の後に続く電気自動車をなかなかラインナップすることができず、
特にBMWは、充電インフラの脆弱さや、バッテリーコストの比重の重さなどから、
完全な電気自動車ではなく、
ガソリンエンジンも搭載し、電気とガソリンの両方を併用して走行することが可能な、プラグインハイブリッド車の販売に注力することによって、
BMWのお膝元であるヨーロッパ市場で敷かれている厳しい環境規制をうまく突破している、という現状があったのです。
そして、そのような背景の中で、
いよいよBMWもプラグインハイブリッド車だけではなく、完全な電気自動車に注力していくことを表明し、
特に2030年までに、グローバルで発売する車両の50%以上を、完全な電気自動車のみにするという大方針を発表することによって、
現在世界で、特にBMWの主戦場であるプレミアムセグメントにおいて急速に広がりを見せている電気自動車戦争に、
真正面から参戦してきた格好となっています。
BMWは新型電気自動車を矢継ぎ早で投入中
実際に、2020年中旬には、i3に続く完全電気自動車第二弾として、
内燃機関車のX3をベースに開発された、iX3を発表しながら、
さらにその2020年の後半にも、電気自動車として一から設計された本気の電気自動車SUVとして、iXというモデルを発表し、
これらの2車種とも、すでに昨年である2021年の後半中にも、
お膝元であるヨーロッパ市場、および中国市場において納車がスタートしている状況であり、
何れにしても、強豪メーカーであるメルセデスやアウディが急速に完全電気自動車に舵を切る中において、
BMWについても、完全電気自動車を今後の電動化の中心戦略にシフトし始めてきた、ということなのです。
そして、そのBMWが、iX3、およびiXに続く、新たな電気自動車を発表してきているということで、
それが、ミッドサイズ級のセダンであるi4という車種であり、
こちらは、先ほど紹介したiX3と全く同様に、
すでにラインナップされている4シリーズという内燃機関車のプラットフォームを流用して開発されているわけでありますので、
確かに電気自動車としての質という観点では、最適化されているとは言えないながらも、
特に現在ドイツ御三家が共通して注力している点というのが、
様々なセグメントに、とにかく電気自動車をラインナップするという、
電気自動車のバリエーションを増やすという戦略であるのです。
例えばメルセデスに関しては、コンパクトSUVとして、EQAとEQB、
さらにミッドサイズ級のSUVとしてEQC、
また、フラグシップセダンとしてEQS、およびEQEの発売もスタート、
さらに2022年中にも、フラグシップSUVであるGLSの電気自動車バージョンとして、
EQS SUV、およびEQE SUVの発表も控えていたりします。
また、アウディに関しても、
すでに大型SUVのe-tron、
フラグシップスポーツセダンのe-tron GT、
さらにクロスオーバータイプのQ4 e-tron、
そして今後は、A6の電気自動車バージョンであるA6 e-tron、
ポルシェマカンの兄弟車となる予定のQ6 e-tron、
そしてe-tronの後継モデルとなることがアナウンスされている、フラグシップSUVのQ8 e-tronなど、
このように、まずは各セグメントに必ず電気自動車をラインナップすることによって、
電気自動車を購入したいが、自分の欲しいセグメントに電気自動車がないので、
その他メーカーに乗り換えられてしまうという流れを防ごうという意図が見られると思いますし、
やはり車種のバリエーションが増えていけば、自ずと電気自動車に触れる機会を増やせる、
結果として、電気自動車への移行を加速させることも可能、
だからこそBMWについても、
内燃機関車とプラットフォームを共有することによって、開発期間を短縮して、なるべく早く市場に投入するという、
ラインナップ拡充にトッププライオリティを置いてきた、ということになると思います。
そして、そのラインナップ拡充という観点においては、
実は今回のi4というのは、非常に意義深い車種であるということで、
というのも、このi4というのはミッドサイズ級のセダンに該当するわけですが、
実は世界を見渡しても、ミッドサイズ級のセダンを発売しているメーカーが、非常に限られてしまっている現状があり、
電気自動車が乱立している中国市場は無視すると、
まずは世界で最も売れている電気自動車に君臨しているテスラモデル3と、
ボルボのプレミアムEV専門ブランドであるポールスターから発売されているポールスター2という、
基本的にはこれくらいしか車種を上げることができないわけですので、
まさにこのブルーオーシャン的なセグメントにおいて、
どれだけi4が販売台数を伸ばすことができるのかに、期待することができるのです。
そして、すでに欧米市場においては納車がスタートしているi4について、
今回新たに明らかになってきたことというのが、
そのi4を、なんと我々日本市場においても、正式に発売をスタートしてきたということで、
個人的には、セダンの需要が少ない我々日本市場にもi4を導入してきたということだけでも、
BMWに感謝することができると思いますし、
それ以上に、BMWが日本市場においても、セダンタイプのi4をラインナップしても、一定程度の販売台数を見込んでいるという、
日本市場に対する本気度も感じることができると思います。
i4のスペックは想像以上の出来!
それでは実際に、今回日本市場向けのスペックも公開されたi4に関して、
特に電気自動車としての質を一挙に見ていきたいと思いますが、
まずはじめに、今回ラインナップされているのが、
i4 eDrive40という後輪駆動グレードと、
さらに前輪側にもモーターを搭載し、AWDグレードである、i4 M50という2つのグレードをラインナップしながら、
さらにeDrive40については、ベースグレードであるEssenceと、
よりオプション設定が追加しながら、特に18インチホイールと、インチアップされたBalanceという、
全部で3種類のグレード設定となっています。
次に、気になる満充電あたりの航続距離に関してですが、
現在日本市場向けの航続距離は公開されていないながら、
欧州で一般的に採用されている欧州WLTCモードにおける航続距離は発表済みであり、
最長で590kmという航続距離を達成することができていますが、
こちらを例によって、高速道路を時速100kmでクーラーをつけても達成可能であるというような、実用使いにおいて最も信用に値するEPAサイクルを基準にした数値を見てみると、
それでも484kmという、それこそ東京京都間を、途中充電を必要とせずに走破することができてしまうような、
かなりの航続距離を確保することができているように感じます。
そして、今回の日本市場向けのグレード設定に関しては、
ベースグレードであるESSENCEグレードでは、17インチホイールが標準で装備されているものの、
EPAサイクルを基準にした航続距離の数値というのは、18インチ装着時に計測された数値、
つまり、日本市場においては、このEPA484kmという航続距離を、さらに超えてくるものと推測することができる一方で、
そのEPA基準を採用している北米市場に関しては、
実際に使用可能なバッテリー容量を、わずかばかり増やした81.5kWhとなっている、
つまり、我々日本市場向けのバッテリー容量は、0.8kWhほど少なくなっていることもありますので、
そのインチダウン分の電費性能向上の分が、若干相殺されてしまう可能性が高いですが、
基本的には、このEPA484kmという数値よりも、さらに航続距離を伸ばすことができそうではあります。
次に、その航続距離以上に気になっているであろう、充電性能に関してですが、
欧米市場向けのスペックに関しては、最大200kWという充電出力を許容することが可能となっていて、
充電残量10%から80%まで充電するのにかかる時間も、31分という非常に優れた充電性能を発揮することができる一方で、
我々日本市場においては、最大150kW級という充電出力に、若干ながら制限されてしまうものの、
現状のホームページ上では、80%まで充電するのに約30分と記載されていますので、
最大充電許容出力自体の数値は制限されながら、実際に充電に必要な時間は、ほとんど変わらない、
つまり、我々日本市場においても、欧米市場と変わらない充電性能を発揮することができるという朗報である、
ということなのです。
また、電気自動車としての質以外の性能についても軽く紹介していくと、
まずは加速性能については、パフォーマンス性能に振ったM50では、
最高出力が400kW、最大トルクも790ニュートン、
そしてゼロヒャク加速が3.9秒と、スポーツカーを凌駕する運動性能を発揮することができます。
また、車両サイズについてですが、全長が4783ミリ、全幅が1852ミリというように、
我々日本市場においても大きく問題とならないようなサイズ感に収まっているものの、
その車両重量については、軽く2トンを超えてきてしまってもいますので、
この点は、内燃機関車のプラットフォームを流用していることによる最適化ができない弊害であるとも考えられると思います。
そして最後に値段設定に関してですが、
eDrive40が、750万円からのスタートと、確かにBMWの車種の中でも、ある程度高額な部類に入っているように感じますし、
特に注目であるのが、内燃機関車バージョンである4シリーズについては600万円弱からと、
内燃機関車バージョンと比較しても、150万円という値段設定の差がついてしまっていますので、
補助金である、概ね60万円を適用したとしても、ややハードルがあるように感じるものの、
生産国であるドイツ市場の値段設定については、58300ユーロから、
つまり日本円に換算して、761万円程度からのスタートとなっているわけですから、
輸送費などの諸経費を考慮に入れると、
実は今回のi4は、日本市場においてかなり割安な値段設定を実現してきている、と言うことができるのではないでしょうか?
i4はモデル3キラーとなり得るのか?
それでは、この悪くないコスパに見える今回のi4について、
果たして競合車種と比較して見ると、どの程度の電気自動車としての質を達成しながら、
その程度のコスパを達成しているのかを比較検討していきたいと思いますので、
特にミッドサイズセダンの競合車種として、
世界で最も売れている電気自動車のモデル3と比較検討してみたいと思います。
まずはじめに、搭載バッテリー容量に関してですが、
I4は全グレードネット値で80.7kWhというバッテリー容量を搭載しながら、
モデル3については、ネット値で60kWh程度という、よりバッテリー容量を減らしたグレードをラインナップすることによって、
エントリー価格を抑制する狙いがあるわけですが、
さらにモデル3については、パフォーマンスと全く同様の、ネット値で79kWh程度のバッテリーを搭載しているロングレンジグレードという、
中間グレードもラインナップしています。
そして、満充電あたりの航続距離に関してですが、
最も信用に値するEPAサイクルにおいて、i4が最大で484kmを達成するのに対して、
モデル3は、同じ18インチホイール装着車で438kmとなりますので、確かに航続距離自体の数値では、i4の方が長いものの、
その分搭載バッテリー容量は格段に少ない分、車両重量も300kg以上も軽いことで、
電費性能という観点で、i4を圧倒する形とはなります。
また、両車種のパフォーマンスグレードも比較してみると、
I4については、EPA基準で434kmという航続距離を達成しながら、
ゼロヒャク加速は3.9秒を記録している一方で、
モデル3については、EPA基準においてでも500km以上程度は達成する見込みであり、
しかも、その加速性能という観点についても、
ゼロヒャク加速が3.3秒、最高速度も時速261km、
もちろん車両重量も400kg近い軽量化を達成することができていますので、
このように比較検討してみると、スペックという観点では、
全ての項目においてモデル3が圧倒してしまっている、
ということなのです。
ちなみにですが、その車両サイズという観点においても、
I4は、全長という観点でモデル3よりも大きいサイズ感である一方で、
そのホイールベースの長さはモデル3の方がより長く確保することができている、
つまりそれだけ車内スペースを確保することができることを意味しますし、
さらに収納スペースという観点においても、
i4は470Lという収納スペースを確保することができている一方で、
モデル3というのは、トランク下のエグれたスペースを全て含めたトランク容量で561Lを確保しながら、
さらにボンネット下のフランクも88Lを確保することができていますので、
ただ電気自動車としての質やパフォーマンス性能だけではなく、
車内スペースの広さ、そして収納スペースという観点でも、
モデル3がi4を凌駕してしまっている、
ということですね。
そして極め付きは、その値段設定となっていて、
先ほども紹介した通り、i4は日本市場において750万円からのスタートである一方で、
モデル3に関しては、なんと479万円から購入することができてしまう、
さらに、最上級パフォーマンスグレードに関しても、モデル3は717万円程度からと、
つまり、車両性能に関するほぼ全ての項目で凌駕してしまっているモデル3の、
さらにパフォーマンス性能に振ったグレードであるパフォーマンスよりも、
今回のi4の方が、値段が高いということになってしまう、
少し厳しい言い方をしてしまえば、
車両のスペックという観点で、ほぼ全ての項目で圧倒されてしまっているi4であるはずなのに、
そのスペックで完敗のi4を購入するために、モデル3よりもさらに350万円以上も支払わなければならない、
つまりこのパフォーマンスグレードの値段設定の差である350万円程度という金額に、
BMWというドイツメーカーブランドのブランド価値を見いだすことができるのかが、
今回のi4を購入するかどうかの、一つの判断材料となり得る、
ということですね。
充電ネットワークでも雲泥の差です
ちなみにですが、電気自動車購入の際に最も重要な指標となる充電性能に関しては、
その充電時間という観点では確かに両車種とも大きな違いは見られないものの、
問題は、その充電性能を発揮できる充電器がどれほど普及しているのかであり、
テスラは独自に、最大250kWという充電出力を発揮することが可能なスーパーチャージャーを、
全国に配備を拡大しているものの、
BMWに関しては、いまだに50kW級の急速充電出力に留まりながら、
そのBMWディーラーについても、ほとんど設置されず、
さらにその利用可能時間も日中のみ、
お盆や年末年始という超繁忙期は、そもそも利用することができない、
つまりi4を購入したとしても、スペックの3分の1程度の充電性能しか発揮することができない、
しかも、長距離移動を行いたい繁忙シーズンには、その低スペックな充電器を利用することすらできない、
ということになります。
したがって、今回のi4を購入しようとする場合は、350万円以上も安価に購入可能、
さらに、そのほとんどのスペックにおいて完敗してしまっている競合車種を差し置いて購入するということになる、
しかも充電性能という観点においても、
その競合車種の3倍近い充電時間を必要としながら、
その充電器を利用可能な時間も制限されてしまう、
要するに、これらの差を考慮に入れても、
BMWというブランドに魅力を感じているような方は、是非とも今回のi4の購入を真剣に検討することをお勧めしますし、
逆に、それ以外の方については、テスラモデル3の購入も視野に入れてみるのがいい、
ということになりそうです。
From: BMW
Author: EVネイティブ
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