中国で爆発的な販売台数を記録している、超格安小型電気自動車であるHong Guang Mini EVについて、
航続距離を倍程度にまで伸ばした、極めて実用的な上級グレードをラインナップする見込みとなりました。
中国で爆売れ中のHong Guang Mini EVとは?
まず、今回取り上げたいHong Guang Mini EVに関してですが、
本メディアにおいては、昨年である2021年中旬に発売されてから、
毎月のようにその販売台数の最新動向を追い続けているという、極めて注目している電気自動車の1つとなっていて、
というのも、一時期日本国内のメディアでも大きく取り上げられている通り、
その値段設定が、まさに破格の値付けであり、
エントリーグレードに関しては、驚愕の50万円以下で購入することができてしまいながら、
9.2kWhというバッテリーを搭載して、
中国市場において一般的に採用されているNEDCサイクルにおいて、120kmを達成しています。
ただし、こちらのNEDCサイクルという基準は、実用使いにおいては参考になりませんので、
高速道路を時速100kmでクーラーをつけても達成可能であるというような、実用使いにおいて最も信用に値するEPAサイクルに変換してみても、
おおよそ70km程度という、
確かに70kmと聞いてしまうと、
その実用性に疑問符がついてしまう方もいるかもしれませんが、
特に本メディアにおいて提唱している、通勤や買い物という、1日数十キロの日常使いの足としてであれば、
ゼロベースで考えてみると、別に数百キロという航続距離は全く必要ではない、
よって、電気自動車においてコストのかさむ搭載バッテリー容量を、その分減らすことができ、
最終的な車両コストを抑制することにつながりますので、
それによって、車両購入の際のイニシャルコストを抑え、かつ電気自動車の強みでもあるランニングコストの安さも相まって、
特に、電気自動車のセカンドカーとしての運用に、まさにもってこいの車種であるのです。
日産軽EV vs 新型Hong Guang Mini EV
ちなみに、そのバッテリー容量については、上級グレードではさらに大きい13.8kWhというバッテリーを搭載し、
NEDCサイクルにおける航続距離が170km、
最も信用に値するEPAサイクルに変換してみても、おおよそ90km程度は走行することができ、
その値段設定に関しても、日本円に換算しておよそ67万円程度と、それでも圧倒的な価格競争力を有していますので、
特にこのエアコン機能や後退時のリアカメラ機能、そして安全性の標準装備を搭載している、
67万円の上級グレードの販売台数が非常に伸びているのです。
また、その実際の販売台数に関してもみてみると、昨年である2020年の6月に発売をスタートしてから、
たったの数ヶ月後には、月間販売台数1万台を軽く突破し、
ついに、直近の8月度の販売台数というのは、史上初めて4万台を突破し、
現在中国市場で人気の電気自動車たちであるテスラモデル3や、BYDのHanなどの販売台数を、ぶっちぎりで引き離しているくらいでありながら、
その直近の8月度に関しては、中国数千年の歴史上、史上初めて、Hong Guang Mini EVという電気自動車が、
中国国内の、ガソリン車も含めたすべての乗用車ラインキングで1位に君臨してもきましたので、
何れにしても、発売をスタートしてから1年以上が経過しているのにも関わらず、その人気は衰え知らずという、
恐ろしいほどの人気の高さを伺うことができると思います。
そして、そのような背景において、今回新たに明らかになってきたことというのが、
その中国国内で爆発的人気を博しているHong Guang Mini EVに、新たなグレードが追加設定されるということで、
それが、より搭載バッテリーを増やし、航続距離を伸ばしてきた上級グレードとなっていて、
こちらはHong Guang Mini EVを発売している、Wulingブランド側からの公式発表ではないものの、
中国の自動車の登録情報を管理する機関であるMIITからの公式資料によって明らかにされていますし、
さらに、このMIITに登録された車種というのは、
その後ほどなくして、実際に自動車メーカー側から公式の発売情報が、アナウンスされるというのが通例でもありますので、
何れにしても、この航続距離をアップした上級グレードが間も無く発売スタートする公算、ということなのです。
そして、この発売間近のHong Guang Mini EVの上級グレードが、
その電気自動車としてのスペック、および、その衝撃的な値段設定を達成することによって、
もはや中国国内で誰も手をつけられないような、圧倒的なゲームチェンジャーEVとなる可能性が出てきていますので、
特に今回は、すでに公開されているスペックを、
日本市場において、来年である2021年の6月ごろまでに発売がスタートする、
同じく軽自動車セグメントの電気自動車である、日産の軽EVと比較しながら、
どれほどの競争力があるのかを、徹底的に解説していきたいと思います。
航続距離300kmオーバー&価格据え置き!?
まずはじめに、その搭載バッテリー容量に関してですが、
26kWhと、これまでラインナップしていたバッテリー容量の倍近い容量を搭載しながら、
さらに、日産の発売する軽EVの20kWhよりもさらに容量を増やしてきた格好となります。
次に、気になる満充電あたりの航続距離に関してですが、こちらはいまだに公式のスペックではないものの、
その搭載バッテリー容量から、少なくともNEDCサイクルにおいて300km以上を達成する公算であることが推測できるわけで、
したがって、EPAサイクルにおける航続距離に換算してみても、少なくとも170km程度は走行することができるはずですので、
こちらは、今までのグレードと比較しても大幅な航続距離アップですし、
それこそ日産の軽EVと比較してみても、まず間違いなく、その航続距離という指標では上回る見込みとなるでしょう。
そして、今回の26kWhという搭載バッテリー容量、そして、航続距離300km以上という数値というのは、
その数値目標としては、実は明確な理由が存在するという点が、
この中国市場における電気自動車戦略を理解する上で、極めて重要であるということで、
というのも、中国国内においては、電気自動車購入に対する購入補助金が存在するわけですが、
その補助金を対象車種というのは、全ての電気自動車ではなく、
その満充電あたりの航続距離によってボーダーラインが存在し、
そのボーダーというのが、NEDCサイクルにおいて300kmという数値であり、
したがって、今回なぜWuling側が26kWhというバッテリー容量を搭載してきたのか、
それは、おそらくこのNEDCサイクルにおいて300kmという、補助金の適用範囲内に滑り込むためであり、
よって、搭載バッテリーの倍増による車両価格の上昇分を、
補助金によって、大部分を相殺することができるのではないか、ということなのです。
実際に、2021年現時点における中国政府からの補助金というのは、
なんと日本円にして、最大28万円にも昇るため、
仮に20万円ほどの補助金を適用することができれば、
現在13.8kWhのバッテリーを搭載している上級グレードの値段設定と、実質わずかに値段が上がるくらいの値段設定で発売することができる、
つまり、この26kWh搭載の新グレードが、今までのグレードよりも、
さらにコストパフォーマンスが高くなる可能性が出てきているわけなのです。
中国製格安EVは利益が出ていない?
また、よくこのHong Guang Mini EVについてある疑問というのが、我々消費者サイドとは別に、
その生産メーカーである、中国のSAICとWuling、そしてアメリカのGMの合弁会社であるWulingブランドが、
これほど格安な電気自動車を販売したところで、果たしてどれほどの利益を生み出すことができているのか、という点ですが、
そのWulingの利益率と販売台数から単純に割り算を行ってみると、
そのHong Guang Mini EV一台あたりの利益は89元ほど、
日本円に換算して、たったの1500円ちょっとという、
この超格安電気自動車のみの販売では、
とてもではないですが、ビジネスとしての継続性が低いように感じると思います。
しかしながら、中国国内の電気自動車販売に関しては、
消費者に対する補助金とは別に、自動車メーカー側に対してもインセンティブを与えているという点が最も重要なポイントであり、
それが、Dual Credit Policyと言われている政策となっていて、
まずは、その自動車メーカーごとに燃費基準を設定して、
その目標値を達成を義務付けることによって、
その販売台数の一定割合を、電気自動車をはじめとする、燃費性能の高い車両にすることを促すという基準が存在します。
クレジット売買でさらなる利益を創出
そして、さらにもう一方の政策として、NEV Creditと呼ばれる、
ハイブリッド車である省エネルギー車を含めない、完全電気自動車や水素燃料電池車、そしてプラグインハイブリッド車という、
新エネルギー車を発売すればするほど、その販売台数に応じてクレジットを獲得することができ、
先ほどの、政府が課している燃費基準に達することができなかった自動車メーカーというのは、
そのほかの、特に電気自動車の販売台数が多く、NEV Creditが余っている自動車メーカーからそのクレジットを買い付けることによって、
その燃費基準を達成する、という状況となっているのです。
よって、電気自動車の販売台数を稼ぐことができている自動車メーカー、
特にテスラやNIO、Xpengといった電気自動車専業メーカーであったり、
電気自動車の販売シェアが多い、BYD、そして今回のWulingについては、
その余剰分のクレジットを、そのほかのメーカーに売りつけることができ、
ただ電気自動車を販売した分の利益だけではなく、そのクレジット分の利益も挙げることができ、
特に現在より厳しい燃費基準が課されている状況もあり、そのクレジットの取引額も上昇し続け、
この制度がスタートした際の、1クレジットあたり概ね300元、日本円にして5000円であった相場が、
現状、最大3000元程度、日本円にして、なんと50000円ほどにまで上昇しているのです。
つまり、例えば2020年度における、WulingブランドのNEVクレジットは、おおよそ50万弱でしたので、
そのNEVクレジットを含めた、Hong Guang Mini EVを発売したことによる利益というのは、
現状の相場におけるマックス値を適用した場合3億8000万元、
日本円にして、なんと65億円以上にも昇るという試算もあるくらいであり、
何れにしてもこのように、別に電気自動車単体を発売することによる利益率が極めて低かったとしても、
現状の中国の電気自動車推進に対する強力な政策によって、
メーカーは、より安価な電気自動車を大量に販売することができる、ということなのです。
中国の強かなEV推進政策とは
したがって、Hong Guang Mini EVの最新グレードに話を戻せば、
まず消費者サイドからすると、補助金を適用することによって、
今までの超格安な値段設定とそこまで遜色のない購入金額に抑えることができ、
さらにWulingという自動車メーカー側からしても、
その一台あたりの利益率は低くても、その中国政府が導入しているNEV Creditという制度によって、最終的な利益はしっかりと確保することができ、
その電気自動車の大量生産を達成するためのさらなる設備投資であったり、
その大量のバッテリーを生産させることによって、中国国内におけるバッテリーのサプライチェーンの、より一層の強化、
そして、スケールメリットによるさらなるバッテリーコストの低減、
故に、中国製電気自動車の車両価格を、このような補助金やクレジット制度という手助けなしで、自立的に達成させることを目指し、
現実問題として、質の高い電気自動車が、より手頃な価格として次々と登場している、
そしてその中でも、極めて競争力のあるコストパフォーマンスを実現してきたのが、
今回のアップグレードバージョンのHong Guang Mini EVである、ということですね。
気になる価格は、ほぼ据え置きで70万円台か
ちなみにですが、それ以外のスペックについても取り上げておくと、
車両サイズに関しては、全長が2997ミリと、現状のグレードよりも80ミリ引き伸ばしたことによって、
ホイールベースが70ミリ伸びていますので、
若干ではあるものの、その車内スペースをより広く確保することができていると推測できますが、
このホイールベースの延長についてはほぼ間違いなく、倍増するバッテリーの搭載スペースを確保するためであると考えられます。
また、モーターの最高出力が30kWと、原稿グレードの倍以上の出力を達成できますので、
こちらもその搭載バッテリー容量の倍増分を考慮したとしても、さらにパワフルな走りを堪能することができるでしょう。
そして、最も気になるその値段設定に関しては、いまだに明らかにはされていないものの、
先ほど解説したように、
航続距離が300kmをほぼ間違いなく超えてくることによって、電気自動車購入に対する補助金を適用することができ、
実質の購入金額としては、そこまで大きな値上げとはならない見込みである、
おそらくですが、最大でも4500元程度、
日本円に換算して、およそ78万円程度から発売されるのではないかと推測できますので、
それこそ日産の軽EVと比較し、中国国内のNEVクレジットを差し引いたとしても、
やはりその圧倒的な量産規模をはじめとするスケールメリットによって、その値段設定も圧倒的な差、
極めてコストパフォーマンスが高いということが、イメージできるのではないでしょうか?
中国EVマーケットの成長は、もう止められない
このように、間も無く正式に発売がスタートするであろう、現在中国で爆発的な人気を博している、
50万円以下で購入することのできる、超格安小型電気自動車であるHong Guang Mini EVの新たなグレードについては、
その搭載バッテリー容量の倍増によって、
シティコミューターとしては、十分すぎる航続距離を達成することになりますし、
何よりも、その値段設定が、
バッテリー容量を倍増したことによって、大幅に値段設定が上がるのではなく、
電気自動車購入の際の補助金、さらには、中国国内のNEVクレジットという政策を活用することによって、
うまく相殺してくる可能性が高いですので、
何れにしても、おそらく近々に発表されるであろう、このアップグレードバージョンのHong Guang Mini EVの電気自動車としての質、
そして、その大注目である値段設定に、特に注目していきたいと思いますし、
この世界最大の自動車大国である中国市場の電動化が、さらに加速度をつけて上昇していくことは、まず間違いない、ということですね。
From: Car News China、CNEV POST(Dual Credit Policy)
Author: EVネイティブ
コメント
トヨタは人の良さそうな社長が水素にこだわって沈没への道を歩いていますし、世界市場での闘いはホンダに期待するしかなさそうです。軽自動車メーカーが日本市場で生き残るのか、中国のシティコミューターにしてやられるのか。トヨタ日産は国内市場だけでやっていけると思ってるのでしょうか?
4ヶ月たったけど、まだ出ませんね…