【EVの進化が止まらない】キモは航続距離1000kmではない? 中国NIO”固体電池”のエネルギー密度は日産の2倍、テスラの1.5倍の衝撃

NIO

中国のNIOが以前からアナウンスしていた固体電池の搭載を間も無くスタートするにあたって、その固体電池に関する詳細なスペックをアップデートし、航続距離1000kmを達成するということだけではなく、既存車両に対しても互換性を持つようにするための、その驚くべきエネルギー密度についてを解説します。

NIOのユニークな「2つの電池戦略」とは?

まず、今回取り上げるのはNIOについてです。NIOは、2014年に設立された中国のEVスタートアップで、創業から4年後の2018年に初の量産EVであるES8の発売を開始し、その後は毎年一台ずつ新型EVを投入しました。

特に、2022年の3月から納車を開始したフラグシップセダンであるET7以降は、NIOの最新のプラットフォームであるNT2.0を採用することによって、EVの性能をさらに改善し、開発スピードも加速しています。

その後、ET7、ES7、ET5、EC7、ET5 Touringと続き、すでに旧世代のプラットフォームを採用していたES6、ES8についても、NT2.0をベースにフルモデルチェンジを実施しました。この第三四半期には、クーペタイプのSUVであるEC6についても、NT2.0を採用してモデルチェンジが行われる予定です。

この段階で、NIOはなんと8車種ものラインナップを持つことになります。また、2023年後半には、月間2万台という販売台数を達成する目標を掲げています。この販売規模は、テスラが2018年から2019年にかけて達成した規模に匹敵します。

いずれにしても、NIOの販売動向には継続的に注目していくべきだと思います。

そして、NIOに注目すべきテクノロジーといえば、特にバッテリーに関する2つの主要な技術です。まず、NIOは数多くのEVメーカーの中でも、バッテリー交換に対応できる数少ないメーカーです。

さらに、バッテリー交換のユーザー体験を向上させるために、中国全土に独自のバッテリー交換ステーションを設置しています。2023年6月末現在、1543箇所のバッテリー交換ステーションが設置されています。

このバッテリー交換ステーションにより、通常は数十分を要するEVのエネルギー補給を数分で終えて、さらに長距離移動を続けることができます。

23年6月末時点におけるバッテリー交換ステーション・急速充電器・目的地充電器の設置マップ

そして、NIOで注目されているもう一つのバッテリーテクノロジーは、固体電池の開発動向です。NIOは2021年初頭に開催されたイベント、NIO Dayで、既存の75kWhと100kWhのバッテリーに加えて、乗用車としては最大級の150kWhのバッテリー容量を追加すると発表しました。

しかし、バッテリー交換に対応させるためには、バッテリーパックのサイズを統一させなければならないため、単純計算で100kWhバッテリーと比較して1.5倍のエネルギー密度が必要となります。この抜本的なエネルギー密度向上を達成するために、NIOが目をつけたのが固体電池です。

固体電池で航続1000km以上に驚くべきポイントとは?

そして、そのような背景を持つ中で、新たに明らかになったのは、NIOが予告していた固体電池が、この7月中にも最初の車両への搭載が始まるということです。

この固体電池の共同開発パートナーは、中国のバッテリーサプライヤー、WeLionです。WeLionはすでに固体電池のバッテリーセルをNIOに納入し始めており、7月中に実際の車両への搭載が始まると確信されています。

また、NIOは150kWhのバッテリーを最初はバッテリーのサブスクリプションサービスのみで提供し、後に買い切りも可能にするとしています。

この夏には、NIOの既存ユーザーも150kWhバッテリーを搭載し、さらに長い航続距離を楽しむことができるようになるでしょう。

150kWhバッテリーを搭載すれば、NIOの既存モデルの航続距離は飛躍的に向上します。具体的には、特にミッドサイズSUVのES6は中国のCLTCサイクルで930km、フラグシップセダンのET7は1000kmに到達すると予想されています。また、ミッドサイズセダンのET5も1000km以上の航続距離を達成すると見込まれています。

このように、航続距離の1000km大台はすでに驚きではなくなっており、他のメーカーも追随しています。例えば、Zeekrの001は140kWhのバッテリーを搭載し、航続距離は1032kmを実現しています。

一方、今回のNIOの固体電池のもう一つの注目点は、その重さです。このWeLion製の固体電池を搭載した150kWhバッテリーの重さは575kgであり、既存のCATL製の100kWhバッテリーの重さが555kgであることを考えると、バッテリー容量が50kWh増えていても重さはわずかに20kgしか増えていないことになります。

これは、この固体電池が重量当たり、そして体積当たりのエネルギー密度が極めて高いことを示しています。NIOはバッテリー交換に対応させるため、バッテリーパックの大きさを75kWh、100kWh、そして150kWhと全て同じにする必要があります。そのため、この150kWhバッテリーは体積あたりのエネルギー密度も非常に優れていると言えます。

50kWhの差があっても、重量差はたったの20kg

NIOの新しい固体電池はパックレベルでのエネルギー密度が261Wh/kg(もしくは243Wh/kgと計算可能。正式発表でアップデートします)となっており、これはNIOが現在ラインナップしているCATL製の100kWhバッテリーの180Wh/kgよりもかなり高い数字となっています。

他の車種と比較してみると、日産リーフ40kWhバージョンのバッテリーパックのエネルギー密度は130Wh/kgと、NIOの固体電池の半分以下であり、また、テスラモデル3およびYのロングレンジバージョンのバッテリーは168Wh/kgです。さらに、最新のQilinバッテリーを搭載したZeekr 001は200Wh/kgとなっています。

エネルギー密度では、CATLのQilin Batteryを大きく上回る

NIOが開発した固体電池を採用し、バッテリー交換にも対応する新型バッテリーは、その驚異的なエネルギー密度の高さを実現し、1000kmの航続距離を達成することができます。これはまさに、EVの限界性能をさらに引き上げる、ゲームチェンジャー的な存在となり得るでしょう。

この固体電池に関しては、今月中にNIOが正式にデリバリーを開始する予定で、そのエネルギー密度以外の詳細、正式な航続距離、バッテリーの価格設定、充電性能や安全性などの情報が待たれます。この中国製固体電池の最新動向は非常に注目度が高く、情報が入り次第アップデートを行っていく予定です。

From: CNEV Post

Author: EVネイティブ