中国市場における最直近の6月度のEV販売動向が判明し、バッテリーEV以上にPHEVの販売台数が急増、
さらに日本メーカーのEV販売台数が全く伸びず、アリアに至っては100台しか売れていないという壊滅的な状況も含めて、
このEV超大国である中国市場の2023年上半期のEVシフト動向を俯瞰します。
中国のEV販売台数は過去最高だったが、、
まず、最新の6月度のバッテリーEVおよびPHEVの販売動向についてですが、2020年からの四半期別のEV販売台数および電動化率を示すグラフを見ると、4月から6月までの第二四半期におけるバッテリーEVとPHEVの販売台数の合計が約180万台で、2022年第四四半期とほとんど同じレベルの歴史的な最高販売台数を記録しました。
さらに、6月だけを見ると、販売台数は66万5000台で、これまでの最高を更新しました。前年同四半期と比較すると、約1.5倍の成長を達成しています。このように、販売台数は着実に増加しており、例年販売台数が伸びていく下半期については、四半期で200万台をどこまで超えるのか、また、1ヶ月でも100万台という販売台数をいつ達成するのかが注目されます。
また、新車販売全体に占めるバッテリーEVとPHEVの販売台数の合計は33.69%を記録しています。つまり、2023年第二四半期において、中国国内で売られたすべての自動車のうち、3台に1台がバッテリーEVまたはPHEVであったということです。特に6月においては、その電動化率は35%を超えています。
一方、中国市場においては、PHEVの販売台数が急速に伸びているというトレンドが見られます。2021年までは、PHEVの販売台数はそれほど多くなかったのですが、特に2022年後半以降、その割合が大きくなってきています。2023年第二四半期においては、全EV販売の約3割がPHEVによるものでした。
このPHEVの販売について、特に注目すべきメーカーがいくつか存在します。その中でも中国最大のEVメーカーであるBYDは、現在、PHEVの月間販売台数が12万台程度で、バッテリーEVの販売台数と同等の驚異的な販売台数を達成しています。最新の6月における中国全体のPHEV販売台数は約21万台で、そのうち6割近いシェアをBYDが獲得しています。ですから、中国でPHEVの販売台数が急増している要因は、BYDの販売台数の急増によるものだと言えます。
PHEV専業メーカーであるリ・オートが販売台数を急速に伸ばし、6月度に初めて月間3万台を突破しました。プレミアムセグメントに位置する3つの中大型SUVモデルをラインナップし、都市部のファミリー層に大変好評であること、そしてNIOと比較して販売台数が3倍となっていることなどから、リ・オートの成功は注目に値します。また、リ・オートは2023年中に初のバッテリーEVを発売し、2025年までにバッテリーEVとPHEVを各5車種追加すると発表しており、その動向には引き続き注目が必要です。
また、バッテリーEVの販売シェア率は約23%で、すべての新車のうち約4台に1台がバッテリーEVであるということが示されています。これは、中国市場における電気自動車の台頭を象徴する事実であり、電気自動車が中国市場において主流となりつつあることを示しています。
さらに、上半期の中国市場で最も売れた自動車トップ20のうち、11車種がバッテリーEVまたはPHEVであるという事実は特筆に値します。この事実は、中国市場における電気自動車の人気の高さを示しており、中国における電気自動車の主流化が進行していることを示唆しています。
その中でも、テスラのモデルYがトップの販売台数を達成し、BYDの9車種がランキングに名を連ねていることから、これらのメーカーが中国市場をリードしていることがわかります。
しかしながら、日本やドイツの自動車メーカーにとっては厳しい状況が続いており、特にホンダや日産は販売台数が大幅に減少しています。それに対し、トヨタは販売台数を維持し続けており、日本の自動車メーカーの中でも頭一つ抜け出していることがわかります。
さらに、これまで中国市場で圧倒的な販売台数を誇っていたドイツ・フォルクスワーゲンについても考えてみましょう。一時期は、四半期で80万台級という驚異的な販売規模であったものの、第二四半期については、54万台と明確に販売規模が縮小してしまっている状況が見受けられます。
そして、この中国市場で新たな王者に君臨しているのが、BYDの存在です。すでに三四半期連続で、王者フォルクスワーゲンの販売台数を上回っています。その伸び方を見ても、むしろフォルクスワーゲンとの差を引き離しにかかっているようにも見えます。
いずれにせよ、すでに中国市場においては、EVに関わらず、BYDが王者に君臨して、今後中国市場をリードしていくことが確定的となっています。逆に、既存の日独メーカーに関しては、そのBYDに販売シェアを奪われている可能性があります。
日本製ガソリン車もEVも、中国で売れなく始めているという現実
日本メーカーについて考えてみると、今後さらに厳しい戦いが待ち受けているというのが現実です。というのも、この日本メーカーの売れ筋モデルに対して、BYDが真剣に対抗車種をラインナップし、実際に販売台数を大きく奪い始めているからです。
例えば大衆セダンセグメントに関しては、BYDがQin Plusという電気自動車を販売しています。黄色で示されたQin Plusの販売台数を見ていただければ、月間4万台ペースという驚異的な販売台数の伸びを見せています。一方で、フォルクスワーゲンラヴィダ、日産シルフィー、トヨタカローラ、ホンダシビックといった大衆セダンたちは、販売台数を大きく落としてしまっています。
中でも日産シルフィーは、日産の販売台数の大部分を占めているため、このシルフィーの販売減少こそが、日産全体の販売台数を下げている主な要因です。そしてそれは、間違いなく、BYDのQin Plusによる影響です。
また、この内燃機関車の販売がBYDのEVによって削られているだけでなく、日本メーカーのEV自体の販売台数も全く伸びていないという状況です。こちらのグラフは、ホンダのe:Nシリーズ、トヨタのbZ4X、bZ3、そして日産のアリアという、主要なバッテリーEVの販売台数を示しています。
直近の6月に関しては、bZ4Xもe:Nシリーズも1000台程度に留まってしまっています。それこそ、モデルYについては、6月に5万台以上売れているのですから、日本メーカーの電動SUVは、モデルYの50分の1しか売れていないという状況です。
そして、最も問題なのが、日産アリアの存在です。6月の販売台数は、なんと102台という状況で、もう救いようがありません。このアリアおよびbZ4Xについては、すでに日本円で120万円程度の大幅な値下げを断行していました。
つまり、100万円以上も値下げを行っているにも関わらず、bZ4XはモデルYの50分の1しか売れず、アリアは500分の1しか売れていないということです。
いずれにせよ、電気自動車を販売したとしても、日本製EVは全く売れていないということです。内燃機関車と電気自動車の両方のカテゴリーで、極めて厳しい状況に陥っています。
ただし、唯一希望が持てるのが、トヨタが発売中の新型EVである、ミッドサイズセダンのbZ3の存在です。6月については、最高で3000台以上を記録しています。確かに販売をスタートしてからまだ数ヶ月ということもあり、中国全土の販売ディーラーと初期の注文を処理しているはずですので、特に下半期、どれほどの販売台数を維持できるのかに注目が集まります。
その一方で、このbZ3に関しては、SUVと比較すると人気が低いセダンです。何よりも、その搭載バッテリーやモーターなど、EV性能に関わる重要なパーツについては、ライバルであるBYDから購入しています。これらの点から、もし今後も継続的にbZ4XよりもbZ3の方が人気があるモデルとなってしまった場合、それは何か皮肉な販売動向に映るかもしれません。
このようにして、2023年上半期における、EV超大国である中国市場におけるEV販売動向を見てきました。歴史上最高のEV販売を達成しながら、PHEVの販売割合が急増していることから、中国人がPHEVの良さに気づき始め、今後もバッテリーEVの販売割合を超えるのではないかという見方もあります。
その大部分の販売をBYDが抑えており、そのBYD自身も、PHEVはあくまでこの数年の過渡期的なテクノロジーであると明言しています。したがって、BYDのバッテリーEV販売割合がさらに加速度的に増えていけば、中国市場全体のPHEVシェア率が減ることはあっても、バッテリーEVを超えることはないでしょう。
そもそも、日本メーカーは、魅力的なPHEVを市場に投入することすらできていません。何か鬼の首を取ったかのように、中国のバッテリーEVシフトは失敗に終わったという主張は、恥ずかしいとしか言いようがありません。
そして、肝心のバッテリーEVについても、日本メーカーは軒並み販売が失速しています。bZ4Xもアリアも、120万円も値上げした結果が、テスラモデルYの50分の1以下ということです。果たして、完全終了に向かっていってしまっているのは、どちらの方なのでしょうか?
PHEVの販売台数が増えたとしても、日本メーカーの厳しい立ち位置は何も変わらないのです。この中国市場における日本メーカーの厳しい立ち位置をしっかりと把握することが、まずは大切です。
From: CPCA
Author: EVネイティブ