【2022年EV購入完全ガイド】トヨタbZ4Xが《日産アリア》《モデルY》と直接対決
トヨタが正式なスペックをついに公開した本気の電気自動車であるbZ4Xについて、
果たして一体その電気自動車としての質は、どれほどを達成することができているのかを、
特に2022年に納車がスタートし始める、日産アリアやテスラモデルYというガチンコの競合車種と徹底比較します。
後発のbZ4XがアリアとモデルYに対抗できるのか!?
まずはじめに、今回のbZ4Xに関してですが、
つい直近において、その電気自動車としての詳細なスペックが公開され、
特に、実用的な搭載バッテリー容量による、実用的な満充電あたりの航続距離を始め、
充電性能についても世界標準クラスのスペックを達成していたりなど、
まさに、電動車のリーディングカンパニーとして、非常にソリッドな電気自動車に仕上げてきた、というのが、
bZ4Xに対するファーストインプレッションであり、
こちらのbZ4X単体に関する電気自動車としてのスペック、および、それ以外の先進性、
特に、バッテリーの温度管理機構や、冬場の航続距離の悪化を最小限に留める新たなヒーターの採用、
さらに、ソーラーパネルを搭載することによって電力を自ら生み出すことができる、などという解説については、
以前詳細にまとめていますので、そちらをまずは参照することをお勧めします。
しかしながら、そのbZ4Xというのは、
我々日本市場を始め、中国、北米、そして欧州ともに、
来年である2022年の中旬に、実際の発売をスタートさせるという方針であり、
したがって実際の納車というのは、おそらく2022年の後半になる公算であるということ、
さらには、昨今の半導体の供給不足の影響もあって、
もしかしたらその納車時期が、さらに遅れる可能性も否めないわけですが、
すると、今回のbZ4Xのミッドサイズ級のSUVセグメントの電気自動車という観点では、
競合車種がすでに複数発売されてしまっている、つまり後発となるわけですので、
一体その競合車種たちと、どれほど競争力のあるのかを比較しなければならない、ということなのです。

そして、我々日本市場においても、一足先に発売されることが確定的であるbZ4Xの競合車種というのが、
日産がおそらく11月中にも正式な発売をスタートし、現状2022年初頭の納車スタートを見込んでいる、
フラグシップクロスオーバーEVであるアリアと、
そして、現在世界で最も売れているミッドサイズ級の電気自動車SUVであり、
こちらもおそらく2022年の早い段階で納車がスタートする見込みである、テスラのモデルYという2車種であり、
すでに本メディアにおいては、このアリアとモデルYという2車種の電気自動車としての質を中心に、
その内外装の質感や先進性などを、極めて詳細に解説してはいたのですが、
いよいよ今回、2022年中に納車見込みの電気自動車SUVとして、トヨタbZ4Xが参戦してきた格好となりましたので、
まずは、bZ4Xは世界に通用する電気自動車に仕上がっているのかを、
この3車種の電気自動車としての質を比較しながら、徹底的に解説していきたいと思います。
bZ4Xの航続距離は500km!ではありません
まず、はじめにラインナップに関してですが、
bZ4Xについては、71.4kWhというバッテリー容量のみをラインナップし、
駆動方式を前輪駆動とAWDの2種類用意してきた格好となりましたが、
対する日産アリアについては、66kWhと91kWhという2種類のバッテリーサイズと、2種類の駆動方式、
合わせて4種類のグレードをラインナップしていたり、
テスラモデルYに関しても、スタンダードレンジとロングレンジという2種類のバッテリーサイズを用意しながら、
さらに最上級パフォーマンスグレードという、合わせて3種類のグレードをラインナップしていますので、
特に競合各社がバッテリーサイズを複数ラインナップしているという点においては、
bZ4Xは独自路線を採用してきた格好となります。

次に、気になる満充電あたりの航続距離に関してですが、
今回のbZ4Xが現状公開してきている、最長500kmという航続距離は、すでに前回説明している通り、
日本市場で一般的に採用されている、WLTPサイクルを基にした、WLTC Class 2というモードを採用している一方で、
欧州で一般的に採用されているモードというのは、日本と同じくWLTPサイクルを基にしているものの、
WLTC Class 3というモードを採用し、このClass 2とClass 3の違いというのは、
特に、Extra Highと呼ばれる、最高時速131.3kmにおける走行テストモードが追加されているかどうかであり、

やはりそのような超高速モードの検証結果を含めていないWLTC Class2、
つまり日本市場向けの基準というのは、欧州向けのWLTC Class 3よりも甘い結果となりますので、
今回はそれを考慮した上で、欧州向けのWLTCモードの数値を概算し、最長でも概ね429km程度、
さらに、高速道路を時速100kmでクーラーをつけても達成可能であるというような、実用使いにおいて最も信用に値するEPAサイクルにおいては、
概ね400km程度になるのではないか、と推定しています。
ちなみにですが、今回の説明で、
日本市場はWLTCで、欧州市場はWLTPであるという、電気自動車に詳しい方を含め日本のほとんどのメディアの説明が、
なぜトンチンカンであるのかがお分かりいただけたと思いますし、
したがって、なぜ本メディアが、
あえて、日本WLTCモード、そして欧州WLTCモードと記載しているのかも、お分かりいただけたのではないでしょうか?
航続距離ではアリアとモデルYがリード
そして、そのbZ4Xに対して日産アリアに関しては、
確かにエントリーグレードの航続距離は、
EPAサイクルにおいて348km程度と、bZ4Xよりも短い航続距離でありながら、
EPAサイクルにおいて最長483kmを達成するロングレンジグレードもラインナップされていますし、
さらに、モデルYについても、最長で500kmを超えるロングレンジグレードがラインナップされてもいるわけですので、
やはり航続距離という指標で見れば、bZ4Xがやや劣る結果となっています。

また、その搭載バッテリー容量と航続距離との関係性を示した電費性能という指標を見てみると、
やはりこの点は、世界最高の電費性能を誇るテスラのモデルYが一歩リードする形で、
非常に電費性能が高いということがお分かりいただけると思います。

充電性能は3車種とも互角の高性能
次に充電性能に関してですが、
bZ4Xは最大150kWという充電出力を許容することができる一方で、
アリアは最大130kWですので、
この数値だけを比較すると、やはりbZ4Xの許容出力が高いので、日産よりも技術力が上であるのだー、
という主張が散見されているわけですが、
その考えは、実に浅い見方である、
ということであり、
充電性能の本質というのは、一体どれほどの充電時間で、どれほどの電力量を充電することができ、
そしてどれほどの航続距離を回復させることができるのかが重要であるわけで、
別に充電出力が高いことが、その電気自動車の充電性能を、決定付けるわけではないからです。

実際に、その公開されている充電時間とともに、30分間の充電でどれほどの電力量を充電することができるのかを、
EPAサイクルにおける航続距離に変換してみると、おおよそこのようになるわけであり、

確かに最大充電出力の数値のみを比べてしまうと、
より高出力を許容できるモデルYであったりbZ4Xの方が優位であるように見えるものの、
同じ時間で回復することのできる航続距離というのは、
3車種を比較しても、そこまで大きな差が開いていない、
したがってこのような視点から、
充電性能という観点では、ほぼ同等レベルの性能である、
と言えるのではないでしょうか?
bZ4Xの電費性能が悪いと言える理由
また、電気自動車以外のスペックに関しても比較していきたいわけですが、
まずは、その加速性能については、
bZ4XのAWDグレードの場合、最高出力160kW、最大トルクが336ニュートン、
時速100kmまで加速するのに7.7秒というタイムを記録しているわけですが、
同じくAWDグレードのアリアに関しては、時速100kmまで加速するのに5.7秒というタイム、
さらにモデルYに関しては、5秒ジャストと、
同じAWDグレードであるのにも関わらず、明らかに加速性能で劣ってしまっているわけなのです。

こちらは前回も解説している通り、別に加速性能自体のスペックは、各社の考え方次第であるわけですので、
意図的に絞っているのだ、と言われれば、それも一つの選択肢であるわけで、
個人的には問題視する必要はないという立場ですが、
やはりどうしても指摘しなければならないことというのは、
加速性能を抑えているのであれば、やはりAWDグレードの電費性能は、
加速性能を引き上げている、競合のAWDグレードよりも高くなければならないわけで、
しかしながら、今回のbZ4XのFWDグレードとAWDグレードの電費性能の落ち込みと、
アリア、およびモデルYの電費性能の比較においては、
3車種とも、同じような割合で電費性能が悪化しています。

つまり、bZ4Xに関しては、AWDグレードの加速性能が競合と比較して明らかに低いのにも関わらず、
その電費性能も、その競合車種と大して変わっていない、
要するに、仮に今回のbZ4Xで、アリアやモデルYのような加速性能を達成しようものなら、さらに電費性能が悪化することは間違いない、
この点については、ただ加速性能が低いというだけではない、bZ4Xの弱点であると言えるのではないでしょうか?
車内空間の広さはbZ4X、取り回しの良さはアリアに軍配
また、車両サイズに関しては、3車種ともミッドサイズ級のSUVというセグメントに該当するわけですが、
その中でもbZ4Xは、全長という観点ではアリアよりも、むしろモデルYの方に近しいサイズ感であったり、
その全長の長さによって、アリアよりも、よりホイールベースを長く取ることができている、
つまり、車内スペースの広さを確保することができている見込みですが、
やはりその分取り回しの良さという観点では、
最小回転半径が、bZ4Xが5.7メートルであるのに対して、
アリアは5.4メートルに抑えることができていたりもしますので、
国土の狭い我々日本市場という観点においては、
この総合的なサイズ感も、購入の際の判断材料の一つになり得るとは感じます。

最低540万円スタートでなければ厳しい
そして最後に、最も気になっているであろう値段設定に関してですが、
bZ4Xは、今回値段設定を一切明らかにしてこなかったものの、
アリアに関しては、すでに我々日本市場においては、実質購入金額が500万円程度とアナウンスしている、
つまり、補助金である42万円を含めない本体価格は、おおよそ540万円程度になる見込みであり、
さらにモデルYに関しては、
現状すでに発売されているモデル3の値段設定と、中国市場におけるモデル3とモデルYの値段設定の差から概算するに、
おおよそ500万円強程度から購入することができる見込みな訳です。
Nissan Ariya Tesla Model Y
したがって、ここまで説明してきた電気自動車としての質を総合すると、
この競合車種たちと、同じような値段設定を達成しなければ、
とてもではないですが、価格競争で勝てるわけがないですので、
FWDグレードは、やはりアリアと同等レベルの540万円程度からのスタートが、最低条件であるとは感じますが、
例えば、同じセグメントのプラグインハイブリッド車として、RAV4 PHVを比較してみると、
その値段設定は470万円からのスタートということもありますので、
仮にbZ4Xが500万円台前半からのスタートであれば、
71.4kWhという大容量バッテリーを搭載している完全な電気自動車として、トヨタ車の中ではコスパの高い車種ともなってくるとは思います。

bZ4Xの「普通な」インテリア vs モデルYとアリアのミニマルさ
ここまでは、bZ4Xと、2022年に日本で買える電気自動車SUVとして、
日産アリアとテスラモデルYとを、特に電気自動車としての質にフォーカスして解説していきましたが、
ここからは、それ以外の内外装の質感や先進性についてを、簡単に比較していきたいと思いますが、
まずはじめに、エクステリアに関してですが、
こちらは先ほどのホイールベースにおいても解説している通り、
電気自動車線尿プラットフォームを採用していることによって、
4輪をより四隅に配置することで、車内スペースを最大化できていることが見て取れます。

そして、インテリアに関しては、
車両中央に大型のディスプレイを搭載しているという点は挙げられますが、
特にガソリン車と比較して、何か変わったデザインであるかと言われれば、別に特筆すべきポイントはないと感じます。

ただし、例えばモデルYに関しては、車両中央に15インチという巨大なタッチスクリーンを配置しながら、
bZ4Xのような、無数のボタンが配置されているデザインとは対極的な、極めてミニマルなデザインに仕上がっていたり、

アリアについては、モデルYほどではないものの、
ミニマリスティックでありながら、また独特のデザインセンスを取り入れ、

特に、通常空調ユニットが内蔵されているセンターコンソールを、ボンネット下に収納してしまうことによって撤廃してしまうことで、
その分足元の開放感を最大化することができていたりと、

何れにしてもインテリアに関しては、
これまでの車のような普通のデザインを求める方であればbZ4Xが最も落ち着くと思いますし、
逆に、よりモダンなインテリアに期待したい方などは、モデルYやアリアなどを積極的に比較してみるのがいいのかもしれません。
ステアバイワイヤー&OTAアップデート
ただし、今回のbZ4Xの特筆すべきインテリアデザインとして、
そのステアリングの形状が、ヨーク型のステアリング形状を選択することができるという点であり、
さらに、そのヨーク型ステアリングと共に採用されるのが、ステアバイワイヤーシステムという、
ステアリングとタイヤの間にメカニカルな結合がないことによって、
ヨーク型ステアリングとして操作性が低下する、ステアリングの回転角度が大きくなる場合でも、ハンドルを持ち替える必要がなくなり、
視認性と操作性の両立を達成してきましたので、こちらはbZ4Xの持つ先進性の1つであると思います。

また、その先進性に付け加えたいのが、
OTAアップデートという、ソフトウェアの無線アップデートが可能であるということで、
bZ4Xについては、ナビ関係の機能を中心に無線でアップデートすることができるとしています。
一方で、こちらは同じく競合の日産アリアについてもナビ周りのインフォテインメント関係のアップデートであったり、
車両性能の一部アップデートとして、走行モードの味付けを変えたり、より航続距離を伸ばすモードの追加ができるとしていたり、
さらにモデルYに関しては、
アリアでも達成できない、車両性能に関する全ての無線アップデートに対応することができているわけで、
何れにしても、すでに世界の電気自動車を見渡してみると、
OTAアップデートというのは特段珍しい機能でもないですし、
むしろ車両性能の細かい部分までアップデートすることができなければならないという、
テスラが作り出した次世代の基準に対応を迫られているわけですので、
この先進性という観点を重要視する方であれば、モデルYが極めてオススメの車種である、ということになりそうです。

結局「充電インフラ平常点」でモデルYの一人勝ち
そして、最後に一点どうしても指摘しなければならない、3車種の比較における最大の評価の分かれ目というのが、
その電気自動車において必須の、充電インフラの整備動向であり、
すでに本メディアにおいては一貫して説明している通り、
電気自動車を購入する上での評価とは、電気自動車単体が50点、そして、充電インフラが50点の、
合わせて100点満点で評価するということであり、
つまり、今まで解説してきた50点満点以外の、さらに半分を占める充電インフラの得点がどれほどであるのかは、
電気自動車の決定における、極めて重要な指標となるのです。
そして、bZ4Xを発売するトヨタに関しては、
自社で急速充電インフラを整備する考えはないと、経営層がはっきりと断言しているため、
あとは、今後のトヨタディーラーに設置される急速充電器設置の計画待ちということになる、
裏を返せば、bZ4Xの充電性能の高さを担保する充電インフラに関しては、今だに何も明らかとはなっていない、
故に、50点分の配点が全く不透明なこの状況で、bZ4Xの最終評価を下すことはできない、ということになります。
対する日産に関しても、
すでに公式に150kW級の急速充電器を全国の公共性の高いエリアに設置するとしておきながら、
今だに日本全国どこを見渡しても、私の目では150kW級の急速充電器を発見することができていませんが、
こちらは、日産が11月下旬あたりのも開催してくるはずである、今後の電動化戦略をまとめた発表会において、
そのアリアの発売に合わせて、どの程度の性能の充電器を、どのように配備してくるのかが発表されるかもしれません。
何れにしても、確かに日産については、全国津々浦々のディーラーに50kW級の急速充電器を配備しながら、
90kW級の急速充電器の配備も順次拡大しているわけですので、
今だにほとんど急速充電器を整備することができていないトヨタと比較すれば、
全国を安心して走り回れると考えれば、日産の方がよっぽどマシな充電インフラを有している、ということにはなりそうです。

そして、テスラに関しては、自社独自で最大250kW級という、
モデルYの充電性能を最大限発揮することのできる超急速充電器のスーパーチャージャーを、全国に拡大中であり、
少なくとも大都市圏の移動であれば、テスラ独自のスーパーチャージャーを使用して、余裕を持って運用することができてしまいますので、
2021年10月現時点における、bZ4X、アリア、そしてモデルYの3車種を比較検討した場合、
その50点満点の充電インフラという評価軸において、
モデルYが圧倒している、
と結論づけることができるでしょう。
トヨタbZ4Xを評価するのは時期尚早です
何れにしても、
来年中旬にも発売がスタートする、トヨタの威信をかけた本気の電気自動車であるbZ4Xに関しては、
非常にソリッドな電気自動車としての質を達成している一方で、
一部のトヨタ信奉者が主張していた、
トヨタはその気になれば、競合を圧倒する電気自動車を生産することなど簡単であるのだー、という主張は、
同じく我々日本市場で発売される競合車種とを比較すると、
別に特筆したスペックを達成することはできていないということになりましたし、
何と言っても肝心の値段設定、および、一体このbZ4Xを年間にしてどれくらい生産することができるのか、であったりなどの、より詳細な販売目標、
そして最後に触れた、電気自動車において極めて重要な充電インフラ戦略には一切触れてこなかったわけですので、
現時点におけるbZ4Xの評価としては、
今回比較対象とした競合車種に劣ることはあっても、決して勝ることはない、
だからこそ、1日でも早くより賞賛な情報の発表が待たれる、ということですね。
From: Toyota
Author: EVネイティブ