【EVで負けてる?そろそろ本気出してやるよ】トヨタが電池コストを50%低減で、EV戦争に本格参入の衝撃

トヨタ

トヨタが今後の電動化戦略の一環として、全固体電池の開発状況のアップデートを踏まえた、特に電気自動車に搭載されるバッテリーに関するプレゼンテーションを開催し、

バッテリーの大量生産という世界的な流れではなく、トヨタ独自の路線で、電気自動車用のバッテリーを確保する方針を改めて強調したことなどについて、

いったい今回のトヨタの電動化戦略をどのように評価すればいいのかを、世界の競合メーカーの電動化戦略で提示されている数値と比較しながら、徹底的に解説します。

電動化戦略の見直しを迫られているトヨタ

まず、今回のトヨタに関してですが、現在世界最大級の自動車グループであり、

特に1997年から発売がスタートした、世界初の量産ハイブリッド車であった初代プリウスの発売を皮切りに、

ハイブリッド車を中心とする電動車の販売台数では世界的なメーカーとなり、

したがって、現状そのハイブリッド車を中心とする電動車の販売台数は、2021年7月時点において累計して1810万台という、

競合を圧倒する電動車領の台数を達成することができているのです。

初代プリウス

しかしながら、本メディアにおいては幾度となく指摘している点ではありますが、

その電動車という定義については、

日産リーフやテスラのような、搭載された大容量のバッテリーに、充電して貯められた電気のみで走行する完全な電気自動車

英語表記でBattery Electric Vehicle、今回のトヨタのプレゼンにおいては主にBEV(ベブ)とも言われていますが、

さらに、そのバッテリーとともに、ガソリンエンジンも搭載して、両方を併用して走行することができるプラグインハイブリッド車、略してPHEV

そして、トヨタをはじめとする日本メーカーが得意としているハイブリッド車も、その電動車の定義に含まれています。

したがって、例えばEU域内において、2035年までに、ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車を含む、

内燃機関を搭載した全ての車両の販売を禁止するという方針を示してきていたり、

脱炭素社会の実現を政策の一丁目一番地に据えているバイデン政権が、

2030年までに、完全電気自動車とプラグインハイブリッド車、および水素燃料電池車等という、

走行中に排気ガスを排出しないポテンシャルを併せ持つ車両の販売割合を、なんと50%に高めるという大統領令に署名、

そして、世界最大の自動車大国である中国市場に関しても、

アメリカ市場における定義と同じである、完全電気自動車、プラグインハイブリッド車、そして水素燃料電池車の販売割合を、

2035年までに50%にまで高める方針を発表していたりと、

特に完全電気自動車を中心に、今後の自動車の種類を方針転換してきていますので、

電動車というカテゴリーの中でも、特にハイブリッド車を中心に販売していきたかったトヨタに関しても、

現在大きな軌道修正を迫られている状況、となっていたわけなのです。

バッテリーの説明会はすでに大手自動車メーカーが開催済み

そして、そのような背景において今回新たに明らかになってきたことというのが、

そのトヨタが、今後の電動化時代、特に完全電気自動車の普及に合わせてマストとなる、

それに搭載する大容量のバッテリーについて、いったいどのようなビジョンを持ち合わせているのか、

さらには、今後急速に増えていく完全電気自動車の販売台数に合わせて、

どの程度の規模感のバッテリーの生産キャパシティを有することになるのか、などという、

バッテリー関連のプレゼンテーションを開催してきたということで、

実は、今回のトヨタが開催してきたような、自動車メーカーが電気自動車用のバッテリー技術の発表会を開催するというのは特段珍しいことでないばかりか、

主要メーカーの中では少し遅いくらいであるとも感じていて、

実際に、電気自動車専業メーカーであるテスラについては、昨年である2020年に、Battery Dayという説明会を開催し、

特にその量産計画や、新たなバッテリー技術によって、いったいどの程度バッテリーのコストを低減することができるのかなど、

かなり詳しく、自社のバッテリーに対するビジョンを発表していました。

ちなみに、現在目下建設中であるそのテスラの新たな車両生産工場兼バッテリー生産工場である、

ドイツベルリンのギガファクトリー4に関しては、

合計して50億ユーロ、つまり日本円にして6500億円もの投資を、そのギガファクトリー4のみに行うことが明らかとなっています。

また、今回のトヨタと対をなす世界最大級の自動車グループであるフォルクスワーゲングループに関しても、

今年である2021年の3月中に、Power dayと呼ばれる、

バッテリー技術だけにとどまらず、その電気自動車において大変重要なインフラ網である充電インフラ戦略までも含めた、

電気自動車に関する包括的な戦略をまとめたプレゼンテーションを開催し、

そのPower Dayの内容に、ソフトウェア関連の戦略なども合わせた、より未来を俯瞰した発表会であったNEW AUTOにおいて、

2025年までの、今回のバッテリー技術をはじめとする電動化技術、およびソフトウェア開発を合わせて730億ユーロ

日本円に換算して、9兆5000億円もの額を投資する方針を示しています。

またそれ以外にも、欧州軽自動車メーカーが多く参画している、今年に入って新たに発足したステランティスという自動車グループについても、

EV Day 2021というイベントを開催し、

2025年までに300億ユーロ、つまり3兆9000億円程度の、電動化技術に対する投資を表明していたりしています。

2030年までに電池開発に1.5兆円!

そして、まず今回のトヨタのプレゼンにおいて示された、その電動化技術、特にバッテリーの研究開発に対する投資、

および、その新技術を採用したバッテリーを実際に生産するために必要な、生産ラインやバッテリー生産工場の新設に対する設備投資など、

全てを含めた投資額が、日本円で1.5兆円ということで、

確かに先ほどの自動車グループたちがぶち上げていた、その投資額と比較してしまうと、やや見劣りしている感があるのですが、

こちらの数値については、電気自動車の生産という点は含まれず、

あくまで電動車に搭載されるバッテリー関連への投資の合計ということで、一概に比較するべきではないという点、

しかしながらそれと同時に、例えば冒頭説明しているテスラの掲げているような、超大規模なバッテリー関連プロジェクトと比較すると、

その世界最大の自動車グループということを考えれば、

やはりやや残念な規模感ということは言わざるを得えないと思います。

こちらに関しては、おそらくトヨタは競合他社とは違い、

今後もハイブリッド車の販売割合をしっかりと伸ばしていくという、全方位戦略を採用していることによる、

まさに全方位的な投資によって、今回のバッテリー関連という電気自動車に対する投資以外にも注力しなければならないからである、

とは推測することができそうです。

2030年までに電池供給量は200GWh+

次に、その生産キャパシティに関してですが、

トヨタが今までアナウンスしてきた、

2030年度において、グローバルで180GWhというバッテリーの生産キャパシティを達成する見込みであるということには変わらなかったものの、

今後トヨタが想定している電動車両800万台の販売内訳、

特に完全電気自動車と水素燃料電池車の合計である200万台という販売台数予測が、今後上振れした場合は、

そのバッテリーの生産キャパシティをさらに増加させ、200GWh以上というキャパシティにまで引き上げることができるという、

冗長性を兼ね備えていると説明されました。

したがって、今回の発表によって、実質的にその生産キャパシティが増えたように捉えることも可能であり、この点は評価することができるのですが、

問題は先ほど比較対象としてあげた競合メーカーは、そのトヨタの生産規模を遥かに凌ぐバッテリー生産体制を構築しようとしていて、

例えば、フォルクスワーゲングループに関しては、

ヨーロッパ域内において、2030年までに、生産キャパシティが40GWhというバッテリー生産工場であるギガファクトリーを6つも立ち上げながら、

その生産キャパシティは、合計で240GWhと、この時点でもすでにトヨタの生産キャパシティを超える規模感であるだけでなく、

この生産キャパシティはあくまでヨーロッパ域内だけの話であり、

それこそ今後は中国国内、さらにはアメリカ国内においても、バッテリー生産工場を建設する可能性が極めて濃厚であるということ、

しかもその上、今回発表されているトヨタの180GWhという数値というのは、トヨタがすべて自社で内製するのではなく、

バッテリーサプライヤーから購入して調達するバッテリーも、その中に含まれている

つまり、フォルクスワーゲンのヨーロッパ市場だけで240GWhのバッテリーを内製化するという戦略とは、

実際は全く別次元である、ということなのです。

Volkswagen Gigafactory

ちなみにテスラに関しては、そのドイツベルリンのギガファクトリー4だけの生産キャパシティが、

最低でも100GWh、最終的には、驚愕の250GWhという、

ぶっちぎりで世界最大のバッテリー生産工場の樹立も計画していますので、

何れにしても、今回多少上振れにも対応できるよう変更された、

2030年までに200GWh以上という生産キャパシティというのは、

取り立てて特筆すべきポイントではない、ということなのです。

Tesla Gigafactory 4

BEV+FCEV200万台は少なすぎ?

そして、そのバッテリーの生産キャパシティに大きく依存する電動車、特に電気自動車の生産キャパシティに関してですが、

グローバルにおいて、完全電気自動車であるBEVと水素燃料電池車であるFCEVの合計台数が、2030年時点で200万台と予測し、

さらに、その主要マーケットごとの販売割合予測についても、以前からの予測値と同じですので、

この点は特にアップデートがなかったのですが、

残念ながらこの予測値については、この1年以内にも上方修正することは確実であり、

例えばヨーロッパ市場については、2035年までに、BEVとFCEVが実質売れなくなる可能性があり、

そうなると、トヨタは2030年からたったの5年間で、あと60%分の台数をすべてBEVとFCEVに移行するという、非現実的な話になってしまいます。

さらにアメリカ市場についても、2030年までにBEVとPHEV、そしてFCEVを5割にするということは、

現状のBEVとPHEVの販売割合がだいたい同じか、もしくはBEVの方が多いということを踏まえると、

その25%程度はBEVとなるのが自然な見方でしょう。

2030年で北米市場のBEV+FCEVの割合が15%は低すぎます

また、中国市場についても、本メディアにおいては毎月アップデートしている通り、

電気自動車を推進している私ですら、その電気自動車の販売台数の伸び率が明らかに異常であると感じるほどであり、

すでに新車販売全体に占めるBEVとPHEVの販売台数の合計比率を示す電動化率が15%と、これが2021年7月度の現状でありますし、

その電動化率のグラフを見てみても、

果たして2035年までに、さらにFCEVを追加して、たったの50%という数値目標が妥当なのか、

極めてConservativeな予測であると感じるのは、私だけでしょうか?

したがって、トヨタの2030年度におけるBEVとFCEVの販売台数の合計が200万台という数値が、上振れする可能性が極めて高い

しかもかなりの上振れとなってくるのではないかと考えられる、

要するに、最もバッテリーを使用するBEVの販売台数が上振れすればするほど、

現状アナウンスしていた180GWh、

今回含みを持たせてきた、200GWh以上という規模感ですら、今後上方修正される、

つまり、今回公開された合計1.5兆円という投資の規模感が、果たして現状の電動化の伸び率とを照らし合わせてみると、

発表当初からかなり物足りない規模感なのではないかと、個人的には感じています。

全固体電池EV、期限通りにはやっぱ無理でした

次に、皆さんが最も気になっているであろう、トヨタのゲームチェンジャーともてはやされていた全固体電池に関してですが、

いよいよその詳細なアップデートが行われたということで、大切な点が大きく2点存在し、

まず第一に、もともとトヨタが公式にアナウンスしていた、

東京オリンピック2020において、全固体電池を搭載したモビリティのプロトタイプを一般に公開するという点が、

実は密かに達成されていたという点であり、

実際に2020年の8月には、全固体電池を搭載した車両でナンバープレートを取得し、試験走行を行っていたそうですので、

確かに一般にお披露目されることはなかったものの、

オリンピックの期間までに、ある程度形になっていたという事実は、非常に賞賛に値するとは思います。

ただし、問題はもう一点の方であり、

残念ながら全固体電池搭載の、”完全電気自動車”が発売されるのは、今までのタイムラインよりかなり遅れることが決定してしまったという点であり、

もともとアナウンスしていたタイムラインでもある、2020年前半というタイムラインでは、

その開発中である全固体電池を、なんとハイブリッド車に搭載し、実際の発売をスタートするということに、軌道修正を図ってきたのです。

こちらの理由に関してトヨタ側は、やはり現状の全固体電池の開発状況においては、

特に固体電解質を採用することによって、液系電解質を採用した通常のリチウムイオンバッテリーと比較しても、

その耐久性に深刻な問題を抱えており、これまでその問題を解決する研究開発が続いてきましたが、

結局2021年の後半現時点においてもその解決策が見つかっていないばかりか、

そもそもその耐久性を確保できる素材すら発見できていない状況ともなっていますので、

何れにしても、現状全固体電池を搭載した車両を一般に発売することは無理な話であり、

もちろんより大容量になるということで、その劣化の問題もさらに顕著となりながら、

しかも、そもそもそのようなエネルギー密度すら確保することが難しいという、

以前の全固体電池を取り扱った記事においても指摘していた問題点すら、解決に至っていない状況、

しかも駄目押しで付け足してしまえば、その最初の全固体電池搭載のBEVの値段設定は、

その投資回収なども考慮すれば、おそらく超高級車となるであろうことも鑑みると、

とてもではないですが、全固体電池を搭載したBEVを発売するなど、現状まだ目処が立っていない、

そしてその事実を、ようやくトヨタ自身がアナウンスする格好となった、ということなのです。

全固体電池EVは期待外れな一方、既存バッテリーの進化は凄いかも

したがって、今回のバッテリーに関する発表会というのは、

世間でもてはやされている、その全固体電池搭載のBEVさえ完成すれば、

トヨタが電気自動車マーケットにおいて大逆転を起こせるという風潮を、自ら火消しに走り

やはり現実解として、既存の液系電解質であるリチウムイオンバッテリーにしっかりとコミットして、

200GWh以上というバッテリー供給体制を確保する方針を示してきた、というように解釈するのが自然ですので、

何れにしても、今後トヨタに関しては、

しっかりと液系リチウムイオンバッテリーにコミットするという方針を示してきたという点は、非常に好材料でありますし、

逆に、トヨタの全固体電池搭載EVはゲームチェンジャーである!という主張というのは、

残念ながら全く根拠のない主張に成り下がった、ということですね。

また、その液系リチウムイオンバッテリーについてのトヨタの技術力を示す、一つの注目ポイントというのが、

そのバッテリー劣化率となっていて、

来年発売予定であるbZ4Xのバッテリー劣化率が、

10年間使用した後でも、なんと驚異の10%までに抑えるといった内容であり、

つまりbZ4Xに関しては、たとえ10年後であったとしても、新車と比較して90%の容量を維持しているという、

先ほどの全固体電池とは比較にならない、とてつもない耐久性を備えることになると主張してきたのです。

もちろんですが、果たしてこのトヨタの主張が本当なのかについては、実際の10年後のbZ4Xのバッテリー劣化率を調べてみないことにはわからないわけですが、

おそらくここまで豪語してきているということは、

この劣化率の予測に準じたバッテリー保証を付帯してくることは間違いなく、

仮に、現状ヨーロッパ市場で発売されているレクサスUX300eという電気自動車の保証期間である、

10年100万kmの間は、バッテリー容量70%を保証するという保証内容に被せて、

bZ4Xであれば、10年100万kmの間は、バッテリー容量90%を保証するという保証内容をつけてくれば、

もうこれはぶっちぎりで、テスラを大きく超えて業界トップの保証期間となりますので、

この保証内容すらも、bZ4Xの購入を後押しする、非常に強力な付加価値となり得るのかもしれません。

Toyota bZ4X

テスラを超えるバッテリー耐久性を実現か

ちなみに、すでに電気自動車を発売し続けているテスラに関しては、そのバッテリー劣化率のデータを公開していて、

すでに2012年から発売を続けているモデルS以降の車種の、バッテリー劣化率の平均は、

おおよそ32万km走行した後で、85%程度の容量を維持していますので、

やはり電気自動車のバッテリー劣化率という観点で、業界トップの実績を持つテスラをあざ笑うかのような、

極めて質の高いバッテリー制御技術を有している可能性がありますので、

繰り返しとはなりますが、果たしてこのトヨタの主張が正しいのか、

どこまで自信があるのかを判断することができるのは、そのbZ4Xの保証内容を見れば一目瞭然ですので、

果たしてトヨタが自信を持って、10年100万km、90%の容量を保証と宣言してくるのか

それとも実際の保証内容は、その主張よりもトーンダウンしチキってくるのか

トヨタの電気自動車に対する自信が、本当に口だけではないのか、

期待とともに、楽しみで仕方がないと感じるのは、私だけでしょうか?

(To be continued…)

From: ToyotaToyota(補足資料)

Author: EVネイティブ