【EVで負けてる?そろそろ本気出してやるよ】トヨタが電池コストを50%低減で、テスラ越え射程圏へ
今回は、前回に引き続き、トヨタが1.5兆円もの大規模投資を、
電気自動車に搭載するバッテリーに対して投じるという、電気自動車業界にとっての大ニュースを解説していきたいと思います。
トヨタ「EVはハイブリッド車より3倍エコです」
また、今回トヨタがプレゼンテーションの冒頭に示してきたスライドを見てみると、
まずは、現在自動車業界の喫緊の課題でもある、カーボンニュートラルとは一体なんなのか、
そして、その中でもよく言われる、ライフサイクル全体で発生するCO2排出量を減らすとは一体なんなのかという前提条件の解説であり、
こちらのスライドにおける、ただ単に走行中に排出するCO2だけでなく、
特に電気自動車においては、その搭載されている大容量のリチウムイオンバッテリーを製造するために排出されるCO2であったり、
さらには、その使用済みのバッテリーをリサイクルする際に排出されるCO2など、
いわゆる揺り籠から墓場まで、Well to Wheelsで考えた、トータルでCO2排出量のことを考えることを、ライフサイクルアセスメントと呼んでいるのです。
そして、その観点において、日本人に流布している電気自動車懐疑論を一蹴する、
まさに画期的な発言を日本トップのトヨタが行ってくれたということで、
それが、電気自動車とハイブリッド車の一体どちらがCO2排出量が少ないのかという論争なのですが、
こちらに関しては、本メディアにおいては、世界で発表されている様々な論文をすでに紹介している通り、
世界の95%の地域において、現状においてでも電気自動車の方が、ライフサイクル全体で見たCO2排出量が、ハイブリッド車よりも少ないという結果が出ていたのですが、
やはりいくら事実を伝えたところで、電気自動車推進派のいうことは信用ならないんだー、
というトンチンカンな方々の感情論ベースの反論が後を絶えなかったのです。
しかしながら、今回のトヨタの発表において、
まずは、すでに再生可能エネルギーが普及している地域においては、
こちらは問答無用に完全な電気自動車の方が、圧倒的にCO2排出量削減に貢献することができるため、
今後トヨタとしても、完全電気自動車に注力する方針を示しています。
それでは、その再生可能エネルギーの普及が進んでいない地域に関して、トヨタ側はどう考えているのかというと、
なんと、そのような再エネ発展途上国であったとしても、
完全電気自動車の方が、ハイブリッド車と比較しても、衝撃の3倍ものCO2排出削減に貢献することができるという調査結果を公表し、
したがって、もちろん電気自動車の普及の前段階において、ハイブリッド車の導入も進め、少しでもCO2排出削減に貢献するのと同時に、
結局は、完全電気自動車の方が、ハイブリッド車と比較しても3倍ものCO2排出削減に貢献することができると、
あのハイブリッド車に強みを持っているトヨタですら、この事実をしっかりと公表することになりましたので、
そろそろ電気自動車はバッテリー製造時にCO2排出するのでエコではないんだー、
と主張されている方々は、しっかりとトヨタさんの資料をご自身の目で確かめて、
冷静に認識を改めていただくことを、強くお勧めしたいと思います。
Cell to Chassis採用で電池コスト3割低減へ
次に、その今後開発をさらに加速させていくであろう、既存の液系リチウムイオンバッテリーのコストについて、
そのバッテリーのコストを、現状よりも極めて低減する姿勢を示してきたという点も、今回のプレゼンにおいて極めて重要な点であり、
というのも、現状同セグメントの内燃機関車と比較しても、なぜ完全電気自動車が割高感が否めないのかといえば、
それは、その車両コストの中でもかなりを割合を占めるバッテリーのコストが高いからという理由であり、
したがって、このバッテリーのコストを下げるということは、電気自動車自体の価格を下げることに直結するために、
現在各社がそのバッテリーコストを引き下げるべく、あらゆる方法で研究開発を加速させているわけなのです。
そして今回のトヨタに関しては、
2020年代の後半にも、現状のバッテリーのコストを、なんと30%以上も引き下げると表明してきたということで、
まずは、バッテリーの大量生産によるスケールメリットはもちろんのこと、
さらに、そのバッテリーの原材料として希少物質であるコバルトなどを減らしたり、
新たな原材料の適用などによって、より安価で調達可能な原材料の開発を進め、
そして今回注目なのが、そのバッテリーの搭載方法についてを、いわゆるCell to Chassisと呼ばれる、
従来であれば、バッテリーセルをモジュールやバッテリーパックなどという中間単位を経て、実際に電気自動車に搭載していくものの、
バッテリーセルを直接シャシーに埋め込んで、車体の一部として構成してしまうという、次世代のバッテリー搭載方法であり、
よってその分だけ、モジュールやパックという単位を構成する必要がない、
故にその分だけ、よりコストを低減することにつながったり、その分だけより部品点数が少なくて済む、
つまり、より車重が軽くなることによる、さらなる電費性能の向上も見込まれるのです。
EVの大敵、冬場の航続距離は業界トップクラスへ
実は、今回のコスト低減という話はこれで終わりではなく、特にトヨタも強調し、非常に注目すべきポイントというのは、
先ほど触れた、Cell to Chassisという新技術の導入による電費性能の改善という点であり、
ただCell to Chassisという技術を導入するだけではなく、
電気自動車において電費性能を向上させるために、空力をさらに改善していったり、
パワートレインシステムのさらなる最適化を実現することによって、
車重の軽減もさることながら、その分のエネルギー損失自体も抑制することができるのです。
しかもさらに、電気自動車においてどうしても避けることのできない、冬場における電費性能の悪化という問題についても、
まずは、すでに業界標準であるヒートポンプを採用することで、外界の熱を回収するなどの最適化によって、
なんとクラストップの、冬場における電費性能を達成するとも主張してきましたので、
今後トヨタから発売される電気自動車については、
特にこの冬場における電費性能の高さにも、同時に注目していきたいと思いますし、
冬場に電気自動車を使用するなど危なっかしくて無理なのだー!と主張する方についても、
是非とも我らがトヨタが自信を持って主張してきていることでもありますので、是非とも期待してみるのがいいと思います。
bZ4XのEPA航続距離は、およそ454km?
したがって、この様々な観点での電費改善の努力によって、
来年である2022年中旬に発売する予定の、トヨタの威信をかけて発売するbZ4Xと比較して、
2020年代後半には、なんと30%もの電費性能の向上を達成する見込みでありますが、
トヨタの特徴であるのが、その向上した電費性能の分だけより航続距離を長くしていくのかといえば、その路線ではなく、
戦費性能が3割向上したからこそ、その分搭載バッテリー容量を3割減らすことによって、
車両全体のコストを、実質的に3割減らすというアプローチを採用するそうなのです。
ちなみにですが、この電費性能の改善を示したグラフが、
来年中旬に発売予定のbZ4Xの実際の電費性能、
つまり、電気自動車としての質を少しばかり推測する手がかりになるということで、
こちらのトヨタbZ4Xから、将来的にさらに30%電費性能が向上するという点から、
そのグラフのラインの差によって、
中国市場で発売されているC-HRの電気自動車バージョンの電費性能と、bZ4Xの電費性能の差がおおよそ9.27%の改善を見込め、
したがって、そのCH-R EVの電費性能は、
高速道路を時速100kmでクーラーをつけても達成可能であるというような、実用使いにおいて最も信用に値するEPAサイクルで、5.17km/kwh、
つまり、bZ4Xの電費性能というのは、EPAサイクルでおおよそ5.68km/kWhと推測することが可能、
要するに、例えばbZ4Xと同セグメントのミッドサイズSUVの競合車種で一般的な、概ね80kWh程度のバッテリーを搭載してきた場合、
そのEPAサイクルにおける航続距離は、おおよそ454km程度と、
ある程度実用的なスペックを達成してくる可能性が高い、ということなのです。
そして、先ほどのバッテリーセルの30%ものコスト低減と合計すると、
トヨタは2020年代後半までに、来年発売予定のbZ4Xと比較して、
電気自動車1台あたりの電池コストを、驚愕の5割も低減するという結果を叩き出すことができると説明、
つまり、そのバッテリーのコストの大幅低減によって、電気自動車のコストも大幅に下がり、
トヨタ自身の、電気自動車販売による収益性も大きく改善する、
故に、トヨタが今後電気自動車の販売においても利益を出すことができるように、
収益構造を大きく変化することができる、というわけなのです。
競合も電池コスト低減50%以上を目指す
ただしこちらに関しても、すでに競合メーカーは次々と同様のコスト低減戦略を表明していて、
例えばフォルクスワーゲンに関しては、バッテリーのコストを最大で50%も削減することができるとも説明し、
こちらに関してトヨタと異なるであろうポイントは、
まずは先ほども触れたように、自社内製したバッテリーを大量に生産することによって、スケールメリットを最大化したり、
そのフォルクスワーゲングループ全体の8割の車両で、同じ形状のバッテリーセルの種類、通称Unified Cellを採用することによって、
規格を統一化することによる、周辺の最適化を達成することができます。
またテスラ に関しても、基本的にはフォルクスワーゲンと同様のアプローチを採用し、
こちらはフォルクスワーゲングループも提唱しているアプローチではありますが、
テスラはいち早くCell to Chassisに近しい、車体構造とバッテリーセルを一体化してしまうというアプローチを採用するなどによって、
現状のバッテリーコストから、なんと56%もコスト低減を図ることができるとも説明していますので、
何れにしても、トヨタのバッテリーコストの30%低減よりも、さらに大胆なコスト低減を達成することが可能であると主張している、ということですね。
トヨタ「充電インフラ投資にはコミットしません」
このように、今回のトヨタが発表してきた電動化戦略、特にバッテリーに関するプレゼンテーションについては、
その規模感、もちろんその中身についても、様々な点において期待することができる内容であることは、
特にこれまで、このようなバッテリー関連の大規模投資のニュースが極めて少なかった日本市場にとっては、非常に明るいニュースとはなったものの、
それと同時に、世界を冷静に見渡してみると、
その投資額だけでなく、現在想像を超える電動化の進展具合に合わせて、各所が揃って、その電動化戦略をパワーアップさせ、
特にそのコアテクともなるバッテリーの量産規模を極めて高めているわけで、
その規模感と比較すると、数値だけでは、明らかに世界よりも小さい規模感であるという点は、
期待とともに、冷静な視点として、同時に押さえておかなければならないとは思います。
また、今回の発表に関連して同時に開催された、海外投資家に対する質疑応答のセッションにおいて、
トヨタの充電インフラの構築計画についての質問を受けた際に、
トヨタ側は、現状トヨタが主導して充電インフラ整備を行うことは考えていないという、
日本のメディアでは取り上げていないながらも、個人的に極めて重要である発言がなされたと考えていて、
もちろんですが、この方針は、トヨタの電動化戦略において非常に危うい戦略であり、
別の記事において詳しく触れていきたいと思いますが、
充電インフラの構築に自動車メーカーがコミットしなければ、
今回トヨタが発表してきた、コスト低減の努力によって、いくら価格競争力の高い電気自動車を発売することができたとしても、
その電気自動車をユーザーが購入してくれるのかは全くの別問題であり、
そのことを理解している、先ほど取り上げた競合のフォルクスワーゲンやテスラというのは、
ただバッテリーコストの低減だけでなく、
充電インフラなどに至るまでの、包括的な電動化戦略を発表してきたという点が、
今回のトヨタの発表とは全く異なる、
しかしながらそれでいて、極めてクリティカルな問題であるとも考えています。
トヨタが満を持して発売するbZ4Xのスペックや、いかに
ただし日本市場に関しては、現在設置を進めているトヨタの販売店、
つまりディーラーへの充電器の設置を進めていくとも付け加えてはいますが、
こちらに関しては、すでに全国のディーラーへの充電器設置を完了させている日産も含めて、
残念ながら電気自動車を、「実用的に」運用するための有効な充電インフラ設置戦略とはなり得ないという点を、
そろそろ日本の自動車メーカーは認識すべき時を迎えているとも思いますので、
なぜ現在の日本の自動車メーカーの充電インフラが、
電気自動車推進という観点で、本質的に間違ってしまっているのかは、
改めて徹底的に解説していきたいとは思います。
何れにしても、今回のトヨタが発表した電動化戦略において、
体系的に見ると、現状日本メーカーの中で、最も電気自動車にコミットしようとしている自動車メーカーということになりましたので、
是非ともこのような体系的な電動化戦略について、ホンダなどからも出てくるように期待したいと思いますし、
日産に関しては、ついにこの秋にも、その中長期的な電動化戦略が発表させるともアナウンスしていますので、
その動向にも注目していきたいと思います。
そして、そのトヨタが来年の中旬についに発売する、本気の電気自動車であるbZ4Xが、
いったいどのような電気自動車としての質を達成してくる見込みであるのか、
特に本メディアにおいては、トヨタが注力すると表明してきた電費性能の改善であったり、
冬場における電費性能の維持という、電気自動車としての質、
および、トヨタの本気を示すbZ4Xのバッテリー保証期間などについてを、
今後わかり次第情報をアップデートしていきたいと思います。
From: Toyota(プレゼン資料)、Toyota(国内メディア向け議事録)、Toyota(海外投資家向け議事録)
Author: EVネイティブ