【中国ゲームチェンジャー電池がスゴすぎた!】 世界最大のCATLがナトリウムイオン電池を発表

CATL

世界最大のバッテリーサプライヤーである中国のCATLが、ポストリチウムイオン電池の1つと言われている、ナトリウムイオン電池の詳細を発表し、

2年後である2023年ごろには商用化の目処が立つという爆速のタイムラインによって、今後の電池業界、そして電気自動車の性能向上にも期待することができるという朗報について、

具体的にどのようなポイントが、既存のリチウムオンバッテリーと比較して優れているのかを含めて徹底的に解説します。

CATLは世界最大のバッテリーサプライヤー

まず今回のCATLに関してですが、たったの10年前である2011年に設立された中国のバッテリーサプライヤーであり、

今年である2021年度の上半期におけるバッテリー生産量において、すでに並み居る強豪バッテリーサプライヤー、

特に韓国勢、そして我々日本勢最後の砦であったパナソニックを突き放し、現在堂々の世界トップのシェア率を獲得していますので、

たったの10年間でもって、現在競争が激化するバッテリー市場、

特に電気自動車用のバッテリー市場のトップに君臨していることだけでも、その驚異的な成長スピードを感じることができると思います。

From: Adamas Intelligence

ちなみにですが、現在のバッテリー生産事業において圧倒的な支配を続けているのが、このCATLを筆頭とする中国勢、そしてお隣韓国勢となっていて、

特に今回の中国勢に関しては、今回のCATL以外にも、グローバルで第4位のシェア率を達成しながら、

自動車メーカーとして、自社生産のバッテリーを搭載した電気自動車を、すでに何車種も市場に投入しているBYDも存在し、

このBYDについては、Blade Batteryと名付けられた、安価なバッテリーセルの種類であるLFPバッテリーと、

それをより効率的に搭載することのできるCell to Packという搭載方法を合わせた技術を、同時に採用することによって、

例えばちょうど1年前である2020年中旬から納車がスタートしている、フラグシップセダンのHanなどは、

その電気自動車としての質を高めることに成功しています。

BYD Han

ちなみに、安価なバッテリーの種類であると説明したLFPバッテリーに関してですが、

高価な原材料であるコバルトなどのレアメタルを使用しないことによる、その安さが魅力であるとともに、

こちらは、耐久性をはじめとする寿命という観点で優れているバッテリーセルの種類であり、

100万マイル、160万キロ走行したとしても耐用することができると主張するメーカーが複数存在していますが、

このLFPの最大の弱点というのが、エネルギー密度の低さ故の、満充電あたりの航続距離の短さであり、

現在各社が、このLFPのエネルギー密度の向上に注力している状況となっています。

LFPの弱点はエネルギー密度の低さ

Cell to PackとLFPの併用は今後のスタンダードか

さらに、Cell to Packというバッテリーの搭載方法に関してですが、

通常電気自動車におけるバッテリーの搭載方法というのは、最小単位であるバッテリーセルが存在し、

そのバッテリーセルをいくつかまとめてモジュールという単位を構成し、

そして、そのモジュールをいくつか組み合わせることによって、最終単位であるバッテリーパックを構成し、

その重量級のバッテリーパックを車体底面に搭載することによって、電気自動車というのは低重心となり、その走行安定性の高さに強みを持っているわけなのです。

Cell to Packはモジュールを撤廃

では、Cell to Packというのはどのような技術なのかというと、中間単位であったモジュールという単位を撤廃し、

バッテリーセルを直接バッテリーパックに敷き詰めてしまうことによって、

そのモジュールを構成しない分だけ、より多くのバッテリーセルを詰め込むことが可能となり、

故に、その電気自動車の航続距離を伸ばすことに成功する、

したがって、エネルギー密度が低く、航続距離が短くなりがちなLFPバッテリーと併用することによって、そのLFPの弱点をうまくカバーすることができるのです。

また、このLFPとCell to Packという技術の併用に関しては、CATLにおいても全く同様に採用してきている技術の組み合わせであり、

すでに私自身も所有しているテスラモデル3のスタンダードレンジ+グレードでは、この最新技術が併用されていますので、

現時点で日本で購入することのできる最新のバッテリー技術を体感したい場合は、このスタンダードレンジ+グレードを購入するべきである、ということですね。

中国製モデル3のスタンダードレンジ+は全てLFP搭載

個人的に注目のGotion High-Tech

また、第10位にランクインしているGotion Hi-Techに関しても、

BYDやCATLと同様に、LFPバッテリーに強みを持っているバッテリーサプライヤーであり、

すでに発売し始めているLFPバッテリーのエネルギー密度が210Wh/kgと、業界最高水準値であった概ね200Wh/kgを超えてくるような、高いエネルギー密度を達成していて、

さらに直近では、世界最大の自動車グループであるフォルクスワーゲングループとタッグを組んで、

ドイツ国内にバッテリー生産工場を立ち上げながら、

フォルクスワーゲングループ専用のバッテリーセルの開発でもパートナーシップを締結するという、

おそらくGotion Hi-Techに関しては、今後そのプレゼンスをさらに強めてくることを期待することができるのです。

LFPで210Wh/kgは業界最高水準値

ちなみにですが、このバッテリーサプライヤーのシェア率のランキングについて、韓国のシンクタンクによれば

中国と韓国勢については、その電気自動車市場の急激な盛り上がりとともに、そのバッテリー生産量が上昇しているものの、

我々日本勢については、その市場の成長率には遠く及ばず、

特に3位にランクインしてはいるパナソニックのマーケット占有率を見てみても、

昨年である2020年度の上半期を見てみると、22.5%と、トップであるCATLや、韓国のLGエナジーソリューションとほぼほぼ横並び、

まさにバッテリーサプライヤービッグ3の一角を成していたのですが、

今年である2021年度の上半期を見てみると、その市場占有率は15.0%と、完全にCATLとLGの後塵を拝する結果となってしまっていますので、

いよいよ日本のものづくり最後の砦でもある電池産業においても、グローバルで先頭争いから脱落し始めてしまっていることが、図らずも浮き彫りとなってきていると感じます。

パナソニックの市場占有率は大幅低下へ

リチウムイオンバッテリーの弱点とは

それでは、このような背景において今回新たに明らかになってきたことというのが、

その世界最大のバッテリーサプライヤーである中国のCATLが、新たなバッテリーの種類であるナトリウムイオンバッテリーのワールドプレミアを開催してきたということで、

そもそも論として、現行のリチウムイオンバッテリーの原理というのは、

正極であるプラス側と、負極であるマイナス側とをリチウムイオンが行き来することにより、その電位差によって電気を発生させているのですが、

今回のナトリウムイオンバッテリーとの違いというのは、

その正負極間を行き来する電子が、リチウムイオンではなくナトリウムイオンになっているという点であり、

もちろんそれによって、使用することのできる正負極材の材料を変更できたり、

その電子が行き来する通り道である電解質の種類を、従来のリチウムイオンバッテリーでは採用できなかった新たな種類を採用できたりはしますが、

何れにしても、電気を発生させる原理原則は、基本的には似通っているということなのです。

From: 三ツワフロンテック

また、その元素周期表を見てみると、リチウムとナトリウムというのは、その周期表の一番左に該当する、いわゆる一価に属するアルカリ金属でありますので、

そのような点においても、リチウムイオンバッテリーとナトリウムイオンバッテリーというのは、実は様々な点で共通性が見られる、

故に、その実用化にも期待することができていたのです。

それでは、なぜ現行型のリチウムイオンバッテリーだけでなく、今回のナトリウムイオンバッテリーを始め、次世代型のバッテリーの開発を続けているのかといえば、

もちろん現行のリチウムイオンバッテリーにはいくつかの弱点が存在しているという点であり、

まずは電気自動車用に搭載するためには、特にその充電性能を高めなければならず、

例えば現在世界で最も充電性能が高い電気自動車である韓国ヒョンデのIONIQ5であっても、充電残量10%から80%まで充電するのにかかる時間は18分

私自身が所有しているモデル3スタンダードレンジ+であっても23分と、

本チャンネルにおいては、そのほとんどの方にとって、このレベルの充電時間を達成した場合は問題とならないことを繰り返し説明していますが、

もちろんそのごく一部の特殊な運用をされる方に対しては、やはり現状電気自動車をお勧めすることができませんので、

この充電時間の短縮という点は、リチウムイオンバッテリーの欠点と捉えることも可能なのです。

さらに、先ほど解説したLFPバッテリーについてはコバルトフリーのバッテリーであると説明していましたが、

それでもそのほかのリチウムイオンバッテリーの種類に関しては、コバルトを使用しなければならず、

さらにリチウムに関しても、今後大量に採掘していかなければならず、その産出地域が一定程度偏ってしまっていて

長期的に見た地政学上のリスクにも波及していきますので、この原材料の調達という観点も問題点として捉えることも可能なのです。

長寿命&低温状態でも安定作動

そして、今回のナトリウムイオンバッテリーに必要なナトリウムに関してですが、地殻上で4番目に多い元素であるそうで、

したがって、より安価な採掘技術を確立することができれば、

先ほどのリチウムでの産出地域が偏ってしまっていることによる、地政学上のリスクを最小限に抑えることができ、

よって、特にそのような地政学上のリスクを嫌う中国市場にとってみれば、まさに今回のナトリウムイオンバッテリーの開発に注力するということは道理にかなっているわけなのです。

そして、今回CATLが開発したナトリウムイオンバッテリーのスペックを、同じくCATLがすでに発売しているリチウムイオンバッテリーであり、

先ほども解説した、そのCATLが強みを持っているLFPバッテリーとを比較したグラフを発表してきたのですが、

まず注目するべきポイントというのは、LFPバッテリーと同様に、そのバッテリー寿命という点が非常に優れているという点で、

LFPバッテリーについてはすでに160万キロ耐用可能とアナウンスしていたりもしていますので、

したがって、今回のナトリウムイオンバッテリーについても、同程度の圧倒的な耐久性を達成していると推測することができます。

次に、低温状態におけるパフォーマンスに関してですが、バッテリー温度がマイナス20度という極寒の環境下においても、

適温状態の90%程度のバッテリー容量を維持することができると説明され、

現行のリチウムイオンバッテリーのさらなる弱点として、

氷点下を大きく下回る環境においては、その使用可能なバッテリー容量をはじめとする、そのバッテリー性能が大きく低下してしまい、

例えば、ヨーロッパ市場において最も売れている電気自動車の1つである、ルノーのハッチバック電気自動車であるZoeの、

バッテリー温度によって、その容量がどれほど変化してしまうのかを示している表なのですが、

今回CATLが例示しているマイナス20度の環境下においては、なんと60.2%というバッテリー容量しか確保することができていません。

From: Queen Battery

また、CATLは同時に、マイナス40度という極めて厳しい環境下において、もちろんリチウムイオンバッテリーでは安定して作動することはできない一方で、

ナトリウムイオンバッテリーは安定して作動させることができるとも説明していますので、

何れにしても、その超極寒状態においても、そのバッテリーをより安定して使用することができるのです。

エネルギー密度は第二世代に期待大

また、システム統合効率という、いわゆる充放電時の損失であったり、実際に車両に搭載する際にバッテリーパックに統合する時の効率が、LFPよりも高いとしていますが、

それと同時に、今回のナトリウムイオンバッテリーの最大の弱点ともなってしまっているのが、そのエネルギー密度の低さとなっていて、

そもそも今回の比較対象のLFPは、エネルギー密度の低さが課題ですが、ナトリウムイオンバッテリーの方が、より低いエネルギー密度に留まってしまい、

そのエネルギー密度が160Wh/kgですので、

やはり電気自動車用としては、現状まだまだ低スペックなのではないかと考える方が無難とは感じます。

ただし数年後までには、そのエネルギー密度が200Wh/kgにまで達するとも同時にアナウンスされていて、

つまり、このエネルギー密度であれば、もはや最新のLFPバッテリーのエネルギー密度と変わらない、

しかもその上、最新のバッテリーセルの搭載方法であったCell to Pack技術を併用することができれば、

航続距離という観点で、既存のリチウムイオンバッテリーと遜色がなくなるという、かなり明るい将来性を期待することもできるのです。

また、その充電性能という観点においても、既存のリチウムイオンバッテリーよりも高性能であり、

充電残量80%まで充電するのに、たったの15分と、既存のリチウムイオンバッテリーよりもより早く充電を完了させられ、

しかもその安全性や寿命という点も両立することができるという、その実際の数値からも、かなりの期待を寄せることができそうです。

2023年には量産体制を構築完了見込み

そして、この第一世代のナトリウムイオンバッテリーを量産するための、様々なサプライチェーンを構築が完了するのが、

2年後である2023年ということですので、

つまりたったの2年後には、次世代型バッテリーであるナトリウムイオンバッテリーの量産体制が整う、ということと同義でもあり、

こちらの爆速のタイムラインについてCATL側は、

その生産ラインについて、既存のリチウムイオンバッテリーを生産する際のラインの大部分を流用することができるからであるとも説明していますので、

本チャンネルにおいては繰り返し指摘している、実験室レベルで、その開発に成功しただけでなく、

最終的には電気自動車用として、大量に生産する量産体制をどれだけ低コストで構築することができるのかが最も重要であり、

そのような点においても、今回のナトリウムイオンバッテリーを期待することができる、というわけですね。

ただし、今回の第一世代のナトリウムイオンバッテリーに関しては、

やはりそのエネルギー密度が電気自動車用としてはやや物足りないスペックとはなりますし、

流石に最初の数年については、いくら原材料であるナトリウムの調達が安価に行えたとしても、

その量産コストは、既存のリチウムイオンバッテリーよりも高くつきますので、

航続距離の短くても問題ないような、短距離用の小型セグメントの電気自動車に実験的に搭載し、

今後の200Wh/kgを達成する第二世代で、本格的に電気自動車用に搭載する計画なのではないかと推測してはいます。

したがって、今回ワールドプレミアが行われた第一世代のナトリウムイオンバッテリーについては、

おそらく定置型の大型の蓄電池として採用してくるのではないかと考えられ、

特に外気温が低温状態になったとしても、問題なく使用することができ、

しかも長寿命という点は、特に貯蔵用の蓄電池として、長期間運用するのにはもってこいのメリットとなりそうです。

ナトリウムイオンバッテリーは地政学上のリスク分散?

このように、バッテリー業界の巨人であるCATLが発表してきた、ポストリチウムイオンバッテリーの1つとされていたナトリウムイオンバッテリーについては、

安全性や寿命という観点で強みを持ちながら、さらに低温環境下でのパフォーマンスであったり、

充電性能という観点では、現状のリチウムイオンバッテリーよりも、より高性能を発揮することができる可能性を秘めているのと同時に、

現時点における弱点とされるエネルギー密度の低さについても、

数年というタイムスパンにおいて、LFPと同等レベルにまで高める目処をつけながら、

その最新のバッテリーの搭載方法も相まって、ついに電気自動車用の搭載バッテリーとしても、

非常に競争力のあるバッテリーの種類へと進化するポテンシャルすら秘めている、ということですね。

何れにしても、おそらく地政学上のリスクから、今回のナトリウムイオンバッテリーの研究というのは、

今回のCATLを筆頭に、採掘地域が限られることを嫌っている中国などが中心となって、今後も開発が続けられることと思いますが、

特に電気自動車用として、より実用的なスペックを達成してくる数年後までの開発の最新動向、

および、個人的に最も重視したい、その量産コストという電気自動車用のバッテリーとして最も重要な指標が、

既存のリチウムイオンバッテリーと比較して、どの程度競争力のあるコストを実現してくるのかなど、

最新情報がわかり次第アップデートしていきたいと思います。

From: CATL

Author: EVネイティブ