日本が世界に先駆けて開発した電気自動車用の急速充電規格であるチャデモ規格を、世界中で今後採用しないという、いわゆるチャデモ外しの動きが本格化してきましたが、
充電規格のパイオニアであることに甘んじて、その後の改善を続けてこなかった、全ての日本メーカー勢の責任は重いということについて、
なぜチャデモ規格が完全にガラパゴス化してしまっているのを海外勢と比較しながら徹底的に解説します。
チャデモは世界初の充電規格
まず今回のチャデモ規格に関してですが、電気自動車用の急速充電規格となっていて、
そもそも論として、電気自動車には、急速充電と普通充電の2種類の充電方法が存在し、
電気自動車を運用されたことがない方ですとイメージしずらいと思いますが、
電気自動車の充電方法というのは、基本的には自宅やそれに準ずる場所で行う普通充電が一般的であり、
帰宅後に充電プラグを差し込んで、翌朝の出発時には満タンという運用方法が可能となり、
今皆さんがこの動画を視聴しているであろうスマホの運用と全く同じであるのです。
そして、その普通充電と共に、もう一つの重要な充電方法であるのが、急速充電という運用方法であり、
こちらは多くの方がイメージする、高速道路や自動車ディーラーなどある充電器で、
概ね30分程度の充電時間でもって、おおよそ80%程度の電力量を充電することができるというものですが、
この急速充電器と普通充電器の充電プラグの形状がそもそも違うだけでなく、国によっても異なっているのです。
というのも、まず我々日本市場における普通充電器と急速充電器の充電プラグの形状に関してですが、
このように普通充電器のプラグの形状については、J1772という種類でありながら、急速充電器のプラグの形状についてはチャデモという種類であり、
このチャデモ規格というのは、2009年に日本で開発された世界初の、電気自動車用の急速充電規格でありましたが、
何れにしてもこのように、普通充電と急速充電で2種類の充電プラグを使い分けなければならず、
その電気自動車側にも、普通充電ポートと急速充電ポートという、2種類の充電ポートを用意しなければなりません。
後発ながらUXに優れる海外勢の充電規格
それでは対する、欧米市場の充電プラグの形状はどうなっているのかというと、
まず北米市場に関してですが、その普通充電器のプラグの形状は、我々日本市場と同じであるJ1772となっていますが、
急速充電器のプラグの形状は、我々日本発のチャデモ規格ではなく、CCSタイプ1と呼ばれる急速充電プラグの形状を採用しています。
そしてこちらのCCSというのは、Combined Charging Systemの略称となっていて、そのCCSタイプ1の充電プラグの形状をよく見てみると、
2つのプラグが合わさって成り立っていることが見て取れ、
しかもそのプラグ上部の形状というのは、普通充電器で使用されていたJ1772の充電プラグと全く同じであり、
つまりどういうことなのかというと、我々日本のチャデモ規格というのは、急速充電専用の充電プラグとして単体で存在しているのに対して、
北米市場のCCSタイプ1というのは、普通充電器のプラグをうまくコンビネーションさせることで成立している、
つまり、日本市場におけるJ1772とチャデモというコンビによる、2種類の充電ポートを用意する必要がなく、
1つの充電ポートを設置するだけで、普通充電も急速充電にも両方対応させることができるのです。
また、この普通充電のプラグと急速充電のプラグをまとめてしまうという方式を、
ヨーロッパ市場をはじめとして、そのほかの電気自動車マーケットにおいても採用されているCCSタイプ2にも導入していて、
そのタイプ2に関しては、タイプ1とは違い、普通充電のプラグの形状が62196-2という種類となってはいますが、
急速充電については、充電プラグ下部にその接続部位を追加することによって、
1つの充電ポートを設置するだけで、普通充電と急速充電の両方に対応することができるような設計となっています。
またテスラに関しては、独自のテスラ規格という充電規格を採用し、
こちらはそのCCSよりも一歩進んで、普通充電と急速充電のプラグの形状を全く同じにしていますが、
何れにしても、そのCCSと同様に、充電ポートを1つにまとめることによって、ユーザー側の利便性を向上させると共に、
その車両開発のデザイン性などにおいても、充電ポートを複数設置しないことによるデザイン性の向上、
さらには、より柔軟度の高い車両設計を可能にすることができそうです。
何れにしても、電気自動車における充電方法とは言っても、普通充電と急速充電という2種類の充電方法が存在し、
さらに、その充電プラグの種類がそれぞれ存在するばかりか、世界の主要マーケットごとに、さらにそれぞれ存在している一方で、
そもそもの利便性を考えてみると、やはりテスラを筆頭に、欧米で採用されているCCSについては、普通充電と急速充電を一つに統合することができているため、
ユーザー側には、より良い充電におけるユーザーエクスペリエンスの向上、
開発側には、より柔軟性の高い設計を可能にすることができるということなのです。
世界のチャデモ外しが活発に
そしてそのような充電規格の背景において、今回新たに明らかになってきていることというのが、
その世界初の急速充電用の充電規格であったチャデモ規格を、世界中の市場でで今後採用することを取りやめるという、
いわゆるチャデモ外しの動きが本格化してきたということで、
そもそも先ほどまで解説していた、そのマーケットごとの充電規格というのは、あくまで一般的に普及している充電規格のことであって、
例えば我々日本市場における急速充電規格の普及状況については、
その日本発のチャデモ規格、そしてテスラ独自のテスラ規格のみとなっていますので、
特に充電規格の乱立という観点において、電気自動車ユーザー側が充電に対する不便を感じることはないのですが、
問題は、その世界初の急速充電規格であるチャデモが2009年と、そのほかの急速充電規格よりも早く開発され、
しかもそのチャデモ規格を採用した、世界初の本格量産電気自動車である日産リーフが、2010年の12月からグローバルに普及し始めてしまったことによって、
そのグローバルにおいても、チャデモ規格の急速充電器を普及させてきたという経緯があるのです。
したがって特に欧米市場に関しては、その後チャデモ規格に対抗する形でCCSを開発し、一気に普及を進めている最中ではありますが、
元々から普及を進めていたチャデモ規格が、すでに一定程度普及してしまっている状況となっていますし、
そして2021年現時点においてはデュアルガン方式という、1つの急速充電器に対して、チャデモ規格とCCS規格の充電プラグを両方搭載することによって、
どの充電プラグを採用している電気自動車にも対応できるようにしていたりもいます。
しかしながら、グローバルにおけるその日本発のチャデモ規格のプレゼンスは、近年加速度をつけて低下してしまっているという点が最も重要なポイントであり、
すでに欧米で発売されている電気自動車のほとんどすべてが、チャデモ規格ではなくCCS規格の充電プラグを採用し、
例えば北米市場において現状チャデモ規格を採用して発売されている電気自動車は、日産リーフただの1車種ともなってしまい、
しかもその上、その日産リーフに関しては、モデル末期のために販売台数が空前のともし火でありながら、
さらにだめ押ししてしまえば、そのリーフに続く日産の新型電気自動車であるアリアに関しては、
欧米市場向けには、今までのチャデモ規格をついに捨てさり、CCS規格の採用に完全シフトしてしまいましたので、
特にその北米市場に関しては、もはや新車で発売されるチャデモ規格を採用した電気自動車が、ほぼ完全に絶滅状態となる公算でもあるのです。
フランスとアメリカはチャデモは完全縮小に
よって、現在まではチャデモ規格の併用という充電インフラ戦略を採用している欧米各国なのですが、
まず、フランス市場に関してですが、元々は法律の制約上、電気自動車の公共の急速充電器を設置する場合は、CCSとチャデモ規格の充電プラグを両方設置しなければならないのですが、
ついにその法律が改正され、今後は、CCSおよび、22kWの普通充電器を両方設置するようにという制約に法律が改正されましたので、
つまりフランス国内において、これからはチャデモ規格の充電プラグを併設する必要がなくなった、ということなのです。
しかもその上、北米市場最大の超急速充電ネットワークであるElectrify Americaに関してですが、
こちらも現状は、一つの充電ステーションに対して最低でも1基分は、チャデモとCCSのデュアルガン仕様でなければならないという制約があったのですが、
この直近で、最新の充電器の設置計画をアップデートし、
なんと来年である2022年から設置されるElectrify Americaの急速充電ステーションについては、CCSのみ設置し、チャデモ規格の充電プラグを併設しない方針を明らかにしてきたのです。
そして、そのチャデモの充電プラグの採用を取りやめた理由について、
Electrify America側は、現在アメリカ市場で発売されている電気自動車のうち、ほぼ全ての車種がCCSを採用し、
そのアメリカ市場においてチャデモ規格を採用している唯一の車種がリーフだけであり、
そのリーフを発売している日産の新型電気自動車であるアリアはCCSに乗り換えてくるということ、
さらには、2021年度の上半期においてElectrify Americaが提供している全ての急速充電器のうち、
現状20%以上を構成しているチャデモ規格の充電器があるのにも関わらず、その利用率はというと、なんと9%と、
2年前である2019年度の15%と比較しても、明らかにその利用率が低下してしまっているのです。
ちなみにですが、もちろん現状チャデモ規格の急速充電器を使用できる車種というのが、日産リーフだけであることもさることながら、
このチャデモ充電器の利用割合であるたった7%という数値の中には、テスラがチャデモアダプターを通して、チャデモ規格の充電プラグを使用しているというケースも含まれていますので、
いずれにしても、もはや北米市場において、今後新たにチャデモ規格の急速充電器を設置する積極的な理由が存在しないのです。
チャデモ外しの理由は、チャデモの質の低さによるものです
ただし今回のElectrify Americaの、チャデモ規格の急速充電器の採用終了に関しては、
アメリカのほぼ全土に適用されるものの、唯一の例外が存在していて、
それが、アメリカ市場でぶっちぎりで電気自動車の販売台数が多いカリフォルニア州であり、
こちらについては、今後も最低一台分は、チャデモ規格の充電プラグも併設されることになり、
その理由について、コネクターの種類や技術のミックスが、どのような状態が最適であるのかを調査していく説明してはいますが、
おそらくそのカリフォルニア州においては、やはりリーフが一定程度売れているので、
公共の急速充電ネットワークという特性上、どの電気自動車に対しても最低限の公平性を記すために、
せめてカリフォルニア州のみは、チャデモ規格の息の根を止めることができなかったという、
おそらくチャデモ規格の充電プラグについては、惰性で設置を進めざるを得なかったのではないかと推測してはいます。
そして、なぜここまでして世界が一斉に、いわゆるチャデモ外しのような動きを見せているのかに関してですが、
それはひとえに、チャデモ規格の急速充電器としてのスペックがあまりにもポンコツであるという点に尽きるからであり、
というのも、これまで比較対象として取り上げたテスラ規格やCCSに関しては、その充電性能が高いだけでなく、
そのスペックを最大限発揮することのできる充電器を各メーカーが開発し、実際にマーケットに展開することができているということで、
例えばテスラ規格に関しては、現在では最大250kWという充電出力を発揮することのできるスペックを達成しながら、
もちろんのこと、そのスペックを達成することのできるV3スーパーチャージャーという種類の充電器を、自社で生産していて、
すでに我々である日本市場においても、複数地点において設置が進められています。
また、欧米で主流のCCSに関しては、さらに高出力である350kW級の超急速充電器を開発し、
特にヨーロッパ市場においては、フォルクスワーゲンやBMW、ダイムラー、ヒョンデ、そしてフォードが出資して運営している、充電器管理運営企業であるIONITYが、
その350kWの充電器を、実際にヨーロッパ全土に設置を進めている状況であり、
また、先ほど取り上げた北米市場についても、フォルクスワーゲングループ傘下の、Electrify AmericaとElectrify Canadaが全く同様に350kW級超急速充電器を設置し、
すでにアメリカ大陸を横断することのできるルートを、複数確保することができているという状況であるわけなのです。
それに対してチャデモ規格はというと、すでにチャデモ2.0という規格が発行済みであり、
すでに最高で350~400kW程度の充電出力を発揮することのできるチャデモ急速充電器を開発することは可能なものの、
問題は、そのような欧米で一般的に普及しているようなハイスペックな充電器を開発しようとしている充電器メーカーが、全く存在していないということであり、
したがって、現在グローバルで最もハイスペックなチャデモ急速充電器というのは、基本的には最大でも90kWという充電出力に留まる、
要するに、欧米ですでに大陸横断ルートが複数確保されているくらいに普及している350kW級超急速充電ネットワークと比較しても、
実に4分の1程度の、ポンコツスペックしか発揮することができない、
だからこそ、そのような低スペックな急速充電器を、2021年現時点からわざわざ新たに設置する合理性を世界は見いだすことができず、
故に、世界はチャデモを見限る、いわゆるチャデモ外しの動きを見せているわけなのです。
ハイスペックなチャデモ充電器に対応するEVが存在しません
それでは、この日本のチャデモ規格が世界から見てガラパゴス規格となってしまっている要因が、そのやる気のない充電器メーカーだけのせいかといえば、全くそうではなく、
そもそも2021年8月現時点において、
地球上のどこを見渡しても、その350kW級などという超高出力を許容することのできるチャデモ規格を採用した電気自動車が1車種も存在しないということで、
逆に世界ではすでに、最大250kW級程度という超高出力を許容できる、CCS規格やテスラ規格を採用した電気自動車がゴロゴロ存在するばかりか、
さらに今年である2021年中にも、最大300kW級程度の出力を許容できる車種も誕生している、
つまり、そのようなハイスペックな充電器を、充電器メーカーが開発するメリットが、このチャデモ規格においては存在しない、
ある種、自動車メーカーが電気自動車に対してやる気がないことによって、
充電インフラという観点においてもガラパゴス化を許している遠因となっているわけなのです。
さらに、そもそも350kW級などという超高出力な充電器を設置する場合、
電気事業法をはじめとする関連法の制約上、実際に設置することが、コストの面などを含めて現状不可能に近く、
よって、それらの規制緩和を所管する経済産業省をはじめ、その電気料金体系を管理する東京電力などの電力会社など、
その様々な既得権益勢によって、このグローバルスタンダードな急速充電ネットワークを設置する環境が整備されていないことも、
大きな問題点であるわけなのです。
オールジャパンで立ち向かわなければEV戦争で完敗します
何れにしてもこのように、世界で初めての電気自動車用の急速充電の規格であり、
我々である日本が開発したチャデモ規格について、現在グローバルで一気にその普及から降りるという、チャデモ外しの動くが加速している状況であり、
その理由というのは、チャデモ規格を採用している急速充電器のスペックが明らかに低いからであり、
そのようなハイスペックな充電器を開発しない充電器メーカーだけのせいではなく、
そのハイスペックな充電性能を発揮することができる電気自動車を開発する気のない自動車メーカー勢、
さらには、そのハイスペックな充電ネットワークを構築するための、様々な規制緩和を所管する該当省庁、
ならびに電力料金を管理する電力会社など、関連する全ての日本企業や中央官庁の体たらくっぷりによるものであることが明らかでありますので、
果たして、今後も全てのおいてグローバルスタンダードに満たない低スペックな電気自動車や充電器、電気自動車に関連する制度設計を行うという、やる気のなさを露呈し、
現状電気自動車が普及しないことによって利益を受ける、既得権益勢のケツを舐めるのか、
電気自動車とセットである充電インフラを普及させ、すでに圧倒的に劣勢な状況である電気自動車戦争の巻き返しを図るために、
官民全ての日本勢が結集して、この戦争に立ち向かおうとするのか、
電気自動車に関連する全日本企業の懸命な判断に期待したいと思います。
From: Electrive、Electrify America(National)、Electrify America(California)
Author: EVネイティブ
コメント
ガソリン車と比較すると、部品点数が1/10になるBEVは、
いずれ30万円位で買えるようになると 大手部品メーカーの
会長が言っています。
https://www.newsweekjapan.jp/kaya/2021/04/ev.php
ぜひ、EVネイティブさんの御意見も聞きたいです。
自動運転なしでミニマム装備な30万円で買える車両と、自動運転ありのコネクテッド増し増しな高級車に分かれていくんでしょうか。