トヨタが2022年度における好調な決算を発表、特に2023年度におけるバッテリーEVの販売台数20万台という極めてアグレッシブな販売目標を立てながら、EV最大マーケットである中国国内のバッテリーEVの販売台数が急増中、
さらに今後数年間で販売される新型EVの詳細として、スポーツカーセグメントのバッテリーEVも予定するなど、そのトヨタのEVシフトに関する最新動向を一挙にまとめます。
BEV販売台数5倍へ虎視眈々
2022年度のトヨタの決算発表によれば、トヨタレクサス、ダイハツ、日野を含むトヨタグループ全体の自動車販売台数は、1,055万8,000台に達し、前年度比で101.7%の成長を達成しました。半導体不足の影響が緩和され始めたこともあり、ほとんど全てのマーケットで販売台数が増加しました。
また、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、バッテリEV、水素燃料電池車を含めたトヨタの電動車両の販売台数は、284万9,000台に達し、トヨタレクサスの販売台数全体に占める電動車のシェア率は、約30%に達しました。これは、トヨタが22年度にグローバルで販売した新車のうち、10台中3台が電動車に置き換わったことを示しており、電動車の王者として世界各地で電動車両を圧倒的に販売していると言えます。
さらに、2022年度の営業収益は37兆円を突破し、営業利益は2兆7,250億円、営業利益率は7.3%となりました。これは、2021年度の営業利益3兆円弱、9.5%からは落ちていますが、2023年度の決算見通しでは、営業利益3兆円を目指す方針が示されています。
つまり、2023年度には、トヨタが歴史上最高の売上と利益を両立しようとしていることが伺えます。その絶頂期を見ることができるかもしれません。
トヨタの電動車販売台数の中でも、特にバッテリーEVやPHEVの販売台数実績と販売見通しに注目してみましょう。
2022年度のPHEV販売台数は、8万8,000台で、前年度比75.6%となり、販売台数が4分の3にまで落ち込んでいます。新型レクサスNXやRX、トヨタハリアーのPHEVバージョンが追加されたにもかかわらず、販売台数が伸びない状況です。しかし、2022年末にフルモデルチェンジしたプリウスのPHEVバージョンが追加されたことで、2023年度のPHEV販売台数は伸びる可能性があります。
バッテリーEVの販売台数は、3万8,000台で、前年度比230%の成長率を達成しています。これは、リコール明けのbZ4Xの販売がグローバルで好調であり、2023年3月から中国国内専売EVであるbZ3の納車が始まったことが要因です。
日系メーカーは4月から翌年3月をフィスカルイヤーとして発表しているため、1月から12月までの年間販売台数を見ると、2021年よりもバッテリーEVとPHEVの販売台数全体が下落しています。しかし、2023年1月から3月までの3ヶ月間のバッテリーEVの販売台数は、すでに2万台に迫る勢いであり、たったの3ヶ月間で2022年の販売台数を超える可能性があります。
このことから、2023年シーズンには、これまでにないバッテリーEVの販売に期待が持てると言えます。
今回の決算発表で最も驚くべき点は、2023年度のバッテリーEV販売目標が、前年度の3万8,000台から、なんと20万2,000台へと、前年度比で5倍以上に増加することです。これにより、バッテリーEV市場で遅れていると言われていたトヨタは、1年間でEVスタートアップの販売台数を抜き去る可能性があります。しかし、2023年シーズンには、トヨタはまだEV戦争で後塵を拝する形が続くでしょう。
また、このトヨタのアグレッシブなバッテリーEV販売台数見通しについて、気になる点は、販売車種のラインナップです。現在、トヨタがグローバルで発売している主要なバッテリーEVは、ミッドサイズSUVのbZ4X、中国専売車両のミッドサイズセダンbZ3、欧州市場向けのプロエースのEVバージョン、そしてレクサスブランドからUX300eとRZの5車種です。
しかしながら、2023年シーズンに関しては、新型EVの販売計画がほとんどない状況です。2024年には新型EVが投入される見込みですが、それまでの間、トヨタは限られたラインナップで戦わなければなりません。現行の5車種のバッテリーEVのみで、販売台数を5倍に引き上げることが求められるわけですから、果たして本当にそれだけの販売台数の増加が見込めるのかという疑問が残ります。
中国市場の見通しはかなり厳しい
急速にEVシフトが進む中国市場での販売動向が注目されています。ミッドサイズセダンのbZ3の販売台数は、予想を上回る成績を示しており、中国市場における他の海外メーカーの主要EVと比較しても健闘しています。しかし、まだ販売開始から間もないため、現時点で好調な滑り出しを見せているとは断定できません。
もし月間2000台程度の販売台数を継続できるならば、中国市場だけで年間6万台の販売規模にまで成長する可能性があります。ただし、2023年度の目標20万台の販売台数に対しては、まだ達成が厳しい状況です。
中国市場においても、トヨタはbZ4XとbZ3の販売台数がさらに伸びることを見込んでいると思われます。特に2023年後半以降、両車種の合計販売台数が月間7000~8000台に達成できるかどうかが、目標達成の分水嶺となるでしょう。
しかし、中国市場には大きな懸念点も存在しています。営業利益が大幅に減少していることや、値下げラッシュが深刻化していることが問題となっています。これにより、内燃機関車も含めたトヨタ車の販売台数が低下している可能性があります。
中国市場でEV販売台数を伸ばさなければ、年間20万台の目標達成は困難とされています。そのため、トヨタの中国市場での販売動向は、EVシフトの観点からも注目が必要です。
そこで、最後の1車種については、どのようなタイプのバッテリーEVがラインナップされるのかが注目されますが、現状では、ミニバンタイプのEVについては明確な情報がありません。これにより、ミニバンタイプのEVがラインナップされる可能性は低くなってきていると言えるでしょう。
まとめると、トヨタは2026年までに10車種のバッテリーEVを追加発売する方針であり、その中にはスポーツカータイプのEVが含まれることが明らかになっています。しかし、ミニバンタイプのEVについては現状不明で、ラインナップされる可能性は低くなっていると言えます。トヨタは引き続き、市場ニーズに応じて適切な車種を投入することが求められるでしょう。
トヨタは、2022年から2030年までの9年間で、バッテリーEVや電池に対する研究開発費や設備投資を5兆円に増額し、2026年までに10車種のバッテリーEVを発売する予定です。その中には、スポーツカーセグメントのEVも存在し、LFAの後継モデルやスープラなどのバッテリーEVバージョンが考えられますが、詳細はまだ不明です。
一方で、ミニバンタイプのEVがラインナップされる可能性は低くなっていることが懸念されています。すでに確定している8車種に加え、bZ1XやbZコンパクトSUVなどの小型EVが考えられますが、ミニバンタイプのEVについては明確な情報がなく、ラインナップされる可能性は低いと言われています。
最後に、トヨタは全固体電池の搭載も視野に入れていますが、2026年に発売されるスポーツEVに全固体電池が搭載されるかどうかは注目されるポイントです。
日本でトヨタの本格EVを変える日はまだまだ先になりそうです
トヨタは、2022年度の過去最高水準の販売台数と利益率を達成し、2023年度にさらに販売台数と利益を増やす方針を発表しています。特に、バッテリーEVの販売台数は1年で5倍以上を目指すという極めてアグレッシブな戦略を展開し、バッテリーEVへの投資額も1兆円増額しています。
しかし、中国市場の業績は芳しくなく、アルファードのEVバージョンがラインナップされる可能性が低下していることから、中国市場での競争が厳しくなると推測されます。今後のバッテリーEV販売台数20万台越えの達成や、2026年までにトヨタが発売する最後の1車種がどのような車種となるのか、特に中国で急速に立ち上がっているミニバンセグメントのEVとなるのか、最新動向に注目していきたいです。
日本市場においては、2026年までにトヨタが発売する10車種のうち、日本国内に導入される車種は2-3車種程度で、大部分がレクサスブランドから発売されることが予想されます。そのため、日本人がトヨタの電気自動車を気兼ねなく購入できる日は、2026年以降になると考えられます。
From: Toyota
Author: EVネイティブ