【EVはエコじゃない?】ボルボ「EVはCO2多く排出します」 それ、トンチンカンすぎるので反論します

ボルボ

北欧の自動車メーカーであるボルボとポールスターが、電気自動車のトータルのCO2排出量において、

ガソリン車をはじめとする内燃機関車よりも実質多く排出してしまっている、というデータを公表しました。

2030年に完全EV専業メーカーになるボルボ

まず、今回のボルボとポールスターに関してですが、どちらも北欧スウェーデンの自動車メーカーであるわけで、

ポールスターに関しては、電気自動車専業メーカーとして、ボルボグループの傘下に所属しているわけですが、

こちらのボルボグループに関しては、さらに、中国最大の民間自動車メーカーであるジーリーグループの傘下に鼠族しているという、

すでに中国資本の影響を受けている自動車メーカーとなっています。

そして、そのボルボグループというのは、

2030年までには、電気自動車のみを販売する電気自動車専業メーカーになるという大方針を発表し、

実際に、そのために必要となる大量のバッテリーを確保するために、

同じく北欧スウェーデンのバッテリーサプライヤーであるNorthvoltとパートナーシップを締結し、

まずは、来年である2022年からNorthvoltと協業で、ボルボのための次世代バッテリーの研究開発センターを稼働させながら、

さらにその2年後である2024年からは、現在目下建設中であり、2023年からの操業を目指している、

Northvolt初のバッテリー生産工場であるNorthvolt Ettから15GWh

大型電気自動車に換算して15万台分のバッテリーを調達する契約を結んでいます。

さらに、その2年後である2026年からは、これまたNorthvoltと協業して建設していく、独自のバッテリー生産工場から、

ボルボの電気自動車に搭載する専用のバッテリを完全な異性化していく計画も表明、

したがって、Norhvoltからの15GWh分の調達量と合わせて65GWh分のバッテリー、

一台につき100kWhという大容量バッテリーを搭載した大型電気自動車であったとしても、65万台に匹敵、

ボルボの直近の自動車販売台数が70万台程度であるわけですので、

すでにそのほとんどを賄うことができてしまうバッテリーを確保、

要するに、2030年までの完全電気自動車化については、その最も肝であるバッテリー調達という観点をとってみても、

すでに準備完了状態にある、

ということなのです。

EVは11万km走らないとエコにならない?

このように、電気自動車に対して極めてアグレッシブな姿勢を見せているボルボであったわけですが、

そのような背景において今回新たに明らかになってしまったことというのが、

ボルボ、およびその傘下であるポールスターが、

揃って、自社がすでに発売している電気自動車である、

クロスオーバーEVのC40 Rechargeと、ミッドサイズセダンであるPolestar2の、

それぞれの、バッテリー製造時、およびバッテリー廃棄までのトータルで見た、

いわゆるライフサイクル全体で見た、CO2排出量を公開してきたということで、

そして、その中で明らかとなった驚愕の数値というのが、

例えばC40 Rechargeの場合、同セグメントの内燃機関車であるXC40の内燃機関車と比較して場合、68400マイル、

つまり、およそ11万km走行しないと、内燃機関車が生涯排出するトータルのCO2排出量より低く抑えることができない、であったり、

さらに同じく、ポールスター2に関しても、内燃機関車であるXC40と比較して、

11万2000km走行しないと、CO2排出量を低く抑えることができない、という主張を行ってきたのです。

そして、この海外の自動車メーカーであるボルボの発表は、我々日本市場においても話題となり、

電気自動車は製造時に大量にCO2を排出するので、

エコになるのは相当な距離を走らなければならないという話題に対して、

やはり電気自動車はエコにはならないので、電気自動車推進派の陰謀であるのだー、であったり、

11万kmも走行している間に、バッテリーが劣化するので、すでに電気自動車の時代、完全終了のお知らせであるのだー、

など、電気自動車懐疑論者界隈が、これでもかと盛り上がりを見せている状況となっています。

それでは、こちらのボルボの主張に対して、反論を行なっていきたいと思いますが、

今回の反論に関しては、

オランダのアイントホーフェン工科大学の、電気自動車と再生可能エネルギーを調査する専門家のツイートが、極めて参考になりますので、

こちらのツイートをもとに、ボルボの主張の中の、誤った前提条件についてを読み進めていきたいと思います。

電池製造時・車体製造時のCO2排出量

まずはじめの反論ポイントであるのが、

ボルボ側が、バッテリー生産時におけるCO2排出量と、車両本体を生産する際のCO2排出量を、

ともに多く見積もっているのではないか、という点で、

具体的には、まずバッテリー生産については、

電気自動車であるC40に搭載されている、バッテリー1kWh生産するのに、

90kgというCO2が排出される、と説明されているわけですが、

すでにアメリカ国内で生産されるバッテリーについては、37-58kg程度のCO2排出量で生産されているわけであり、

そして、そのほかの生産地域やバッテリーの種類を全て平均した、

世界全体のバッテリー1kWhあたりのCO2排出量の平均値というのは、概ね65kgとなり、

したがって、まず前提条件となっている、バッテリー製造時におけるCO2排出量がなぜか多めに見積もられている、ということなのです。

次に、電気自動車であるC40の車両に使用される、原材料を製造するのに発生するCO2排出量についてですが、

こちらは電気自動車であるC40に使用される原材料の排出量自体を問題視しているのではなく、

内燃機関車であるXC40に使用される原材料を生産する際に発生するCO2排出量よりも、

なぜか、電気自動車バージョンのC40 Rechargeの原材料分の方が、より多くのCO2排出がなされている、

つまり言い換えれば、

我々は、内燃機関車バージョンのXc40を生産するよりも、

電気自動車バージョンのC40を生産する方が、ずっとエコではない生産方法を採用している

ということになるわけです。

ちなみにですが、今回のXC40とC40に関しては極めて似た車格なわけであり、

それもそのはずで、両車種ともボルボの内燃機関車用の同じプラットフォームを共有しているため、

別にXC40だろうとC40だろうと、そこまで大差がないだけでなく、

そもそもC40は電気自動車専用プラットフォームですらない、

まさに内燃機関車の流用バージョンであるわけですから、

電気自動車だからこそ、CO2排出量が明らかに増えてしまったという流れには至らない、ということなのです。

バッテリー劣化率、下に見積もりすぎ

次に、C40に搭載されているバッテリーの寿命が、現状のテクノロジーよりも、

下に見積もられてしまっているのではないか、ということで、

というのも、今回のボルボ側が見積もっているバッテリー寿命というのが、おおよそ20万km程度ということですが、

例えば、現在世界で最も電気自動車の販売台数が多いテスラ車が、

2012年から発売しているモデルSと、2015年から発売しているモデルXという2車種の、

現時点までのバッテリー劣化率の平均データを見てみると、

20万マイル、つまり32万km以上走行した後の状態においても、

バッテリー劣化率は、85%以上を維持することができているわけで、

例えば、ヨーロッパ市場における平均的な歯医者までの距離は24万km程度、

より自動車を酷使するアメリカ市場であったとしても、32万km程度、

つまり、アメリカで電気自動車を走行させたとしても、

廃車する際に、いまだにバッテリー劣化率が15%未満に収まっている、ということなのです。

ちなみに、先ほども説明している通り、

この平均データというのは、2012年から発売しているモデルSも全て含めての平均値、

つまり、バッテリーの種類やバッテリーマネージメントシステムが最新のモデル3やモデルY、

さらには最新型のモデルSやモデルXであれば、このバッテリー劣化率の数値はさらに改善されている可能性が高い、

つまり、32万km走行したとしても、もしかしたらそのバッテリー劣化率は10%程度

もしくはそれ以下にまで抑制することすらできているのかもしれない、ということですね。

さらに駄目押ししてしまうと、

すでに中国製モデル3に採用されている、LFPというバッテリーセルの種類であれば、その寿命や耐久性の強みによって、

さらにバッテリー劣化率が抑制されていることは間違いない、

したがって、2021年現時点においても、

電気自動車用のバッテリー劣化率に関しては、特段気にする必要がない、ということなのです。

グリッドのエネルギーミックスの割合は今後変わります

そして、今回のボルボの主張について、最も誤った前提条件を活用してしまっているポイントというのが、

エネルギーミックスを、その電気自動車であるC40が廃車を迎えるまで、

全く変化がないという条件にしてしまっているということで、

これはどういうことなのかというと、

2021年現時点における、火力発電や再生可能エネルギーによる発電などの割合では、

確かに、電気自動車の走行に使用する電力を発電する際のCO2排出量が、そこまで減らないように見えるわけですが、

大前提として、現在の脱炭素社会の実現のために、

再エネ発電の比率を今後さらに高めていくという世界の潮流において、その再エネ率が高まることは間違いないわけです。

実際に、2019年度における再エネをはじめとする、CO2を排出しない発電割合は、

2040年頃には、全体のエネルギーミックスの9割を占める、

要するに、2021年現時点におけるエネルギーミックスを、

C40の廃車まで同じ割合であると推定するのは、明らかに誤っている前提条件であるわけで、

したがって、実際に走行する際に排出するCO2排出量は、電気自動車の方はさらに減る、ということなのです。

よって、今回の主張を行ってきたイギリスボルボということで、そのイギリス市場で改めて算出し直してみると、

実際は、C40を1km走行させるのに、生涯平均で19gというCO2排出量となる見込みである一方で、

今回ボルボ側が主張してきているのは、生涯平均で1kmあたり120gと、

なんと6倍ものサバ読みを行なっている、ということなのです。

燃費性能、最も信用に値するEPAサイクルを使え

また、今回比較対象としている内燃機関車のXC40の燃費性能に関しても、

かなり楽観的なデータを意図的に使用しているとも反論し、

したがって、本メディアにおいても一貫して提唱している、

地球上で最も実用に近い数値を算出することのできる、アメリカのEPAサイクルを基準に計算するべきであり、

そうなると、実際の内燃機関車のXC40の、

1kmあたりのCO2排出量は、ボルボの算出していたおおよそ30%近い排出量の増加となり、

もちろんのことですが、こちらのEPAサイクル、特に電気自動車においては充電ロスも含まれている、より厳しい基準を適用すると、

先ほど紹介していた、1kmあたり19gという数値から、27gにまで増加するわけですが、

それでも、内燃機関車の排出する296gと、

電気自動車の27gとを比較すれば、その差は、ボルボの主張よりも大幅に差が広がる、ということになります。

EVはCO2排出量をゼロにできる”ポテンシャル”があります

そして最後に、電気自動車によるCO2排出に関する、全体のシステム構造を理解していないという指摘があり、

先ほども説明している通り、エネルギーミックスがより再エネ化していくことで、

電気自動車は走行中のCO2排出量がさらに下がっていき、

もちろん将来に生産されるバッテリー製造時に関しても、

そのグリッドの脱炭素化の恩恵を受けることができるため、さらにCO2排出量が低下していくわけですが、

対する内燃機関車の場合、

確かにガソリン生政治などをはじめとする最適化によって、将来的にはCO2削減の可能性も想定されるものの、

そもそも内燃エンジン搭載車両については、新車時が最高の燃費性能を達成する一方、

その後は経年劣化により、燃費性能は悪化する一方なわけで、

電気自動車については、

グリッドの脱炭素化が100%に近づけば、最終的なCO2排出量をゼロにすることが実現可能なわけですから、

すでにこの構造上、

脱炭素化という観点で、内燃機関車が電気自動車に勝てるわけがない、ということですね。

16000マイル走行後、EVの方がエコになります

したがって、これまでの反論をまとめると、

ボルボ側が主張していた、11万km以上走行しないと、電気自動車は内燃機関車のCO2排出量に追いつくことはできないという主張というのは、

現状のテクノロジーやエネルギーミックスの予測値をしっかりと当てはめて算出すれば、

バッテリー製造時から廃棄までを含めたライフサイクル全体で、1万6000マイル

つまり、おおよそ25750km走行した段階で、内燃機関車に追いつくことが可能、ということになりますので、

脱炭素という観点においては、

電気自動車と内燃機関車とで、どちらがCO2排出削減に貢献するのかという論争が、

すでに決着がついているということが一見して明らかである、

ということですね。

このように、電気自動車の基本的な前提条件を抑えずに、語弊を押されずに言えば、デマ情報を垂れ流す、

しかもCOP26の開催中であった、ということを鑑みれば、

ボルボの信頼は地に落ちた、といっても過言ではないですし、

しかも、今回の前提条件とほぼ全く同じ状態で、

傘下のポールスターに関しても、同じくCO2排出量の計算を行い、

その当時誤りを指摘されていたわけでもありますから、

もちろん程なくして、様々な反対論文が明らかとなってくるでしょうが、

今後ボルボが、この論文の前提条件を修正しなければ、

今後の電気自動車専業メーカーとしての信頼は消えていくわけですし、

少なくとも私自身は、電気自動車の普及を阻害するメーカーとして、

今後も、ボルボの電気自動車を購入することはなさそうです。

C40 Rechargeのサブスク購入計画、中止させていただきます

何れにしても、

脱炭素化という観点で、電気自動車が内燃機関車よりも貢献しないという類の主張というのは、

2021年現時点において、必ず根拠を欠いた不正確な条件で計算されていることは間違いありませんので、

それこそ今だに、マツダが発表した論文を鵜呑みにして、

電気自動車は16万km走行したらバッテリー交換が必要となるくらい劣化する、などの、

自分の都合のいい、みたい情報だけを見るクズにならずに、

なぜ世界が揃って電気自動車に舵を切っているのかも含めて、

様々な情報ソースをもとに、ご自身でも情報収集を行っていくことを強くお勧めしたい、ということですね。

From: This is Money.uk.com(ボルボの主張)、Volvo Car UK(ボルボイギリスの主張)AukeHoekstra(アイントホーフェン工科大学による反論)Cell.com(反論の論文)EPA(XC40とC40 Rechargeの燃費電費)Innovation Origins(内燃機関車のCO2排出量の考察)

Author: EVネイティブ