フォルクスワーゲンが中国市場において、売れ筋のコンパクトEVであるID.3の正式な発売をスタートし、
特にその値段設定がテスラの本命電気自動車でもある、25000ドルのコンパクトカーに匹敵するコストパフォーマンスの高さを達成してきました。
中国市場に新型EVを矢継ぎ早に設定
まず、今回の中国市場におけるフォルクスワーゲンに関してですが、
すでに2021年における、グローバルのベストセラーEVの1つにもランクインしている、ミッドサイズSUVのID.4をラインナップしたり、
さらには、より大型のSUVセグメントである、3列目シートを搭載したID.6など、
すでに電気自動車を複数投入することによって、
直近である9月度の電気自動車の販売台数で、月間1万台の大台を、既存の自動車メーカーが初めて突破したという、
中国市場における快挙を達成してきたのです。
そして、そのような背景において今回新たに明らかになってきたことというのが、
その電気自動車に最も積極的な既存メーカーであり、中国市場においても一気に販売台数を伸ばし始めているフォルクスワーゲンが、
その中国市場において、新たな電気自動車をラインナップしてきたということで、
それが、コンパクトハッチバックセグメントのID.3であり、
実はこのID.3に関しては、ちょうど一年前である2020年の9月から、お膝元でもあるヨーロッパ市場において発売をスタートし、
そして、そのヨーロッパ市場においては、最も人気の電気自動車の1つにも君臨しています。
実は、今回フォルクスワーゲンのID.3に関しては、元々はヨーロッパ市場のみの展開を想定し、
それ以外の、特に北米市場や中国市場には導入しないという方針であったわけですが、
やはり直近における、中国国内の電気自動車需要の急増を見て、
より幅広い車種をラインナップする必要性に迫られたのではないかと推測することができそうですし、
何よりも、このID.3のコンパクトハッチバックというセグメントについては、
中国国内においては一定の需要がある可能性を秘めながら、
現状電気自動車のラインナップが少ないということもありますので、
むしろ今回の矢継ぎ早のラインナップ追加の動きというのは、
フォルクスワーゲンが、アグレッシブな電動化戦略をさらに加速させてきている、
というようにも捉えることができるのではないでしょうか?
実航続距離は想定以上の可能性濃厚
それでは、実際に発売がスタートした、
中国製ID.3の電気自動車としてのスペック、およびコストパフォーマンスについてを、
中国国内で発売され、同じくコンパクトハッチバックセグメントの競合車種である、
BYDのDolphin、そしてGreat Wall MotorのGood Catとを比較して、一挙に解説していきたいと思います。
まずはじめに、ラインナップに関してですが、
その電気自動車としての質という意味においては、
例えばDolphinやGood Catのように、2種類ラインナップしてくるのではなく、
現状1種類のみのラインナップに絞ってきた格好となりますが、
その搭載バッテリー容量は57.3kWhと、ミッドサイズ級のバッテリー容量を搭載してきています。
そして、気になる満充電あたりの航続距離に関してですが、
中国市場で一般的に採用されているNEDCサイクルにおいて、430kmという航続距離を達成してきているわけですが、
今回のミッドサイズ級のバッテリーを搭載した、欧州市場用のID.3の航続距離というのが420kmという航続距離であり、
というのも、NEDCサイクルと欧州市場で採用されているWLTPサイクルについては、その計測方法が大きく異なり、
したがって通常では、WLTPサイクル、特に、そのWLTPサイクルという基準を基にした欧州市場向けのWLTCモード、
本メディアにおいては便宜上欧州WLTCモードと定義しているわけですが、
この欧州WLTCモードの方が、かなり悪い航続距離の数値に留まってしまうわけなのです。
しかしながら、今回のID.3におけるNEDCサイクルと欧州WLTCモードとの数値の乖離を見てみると、
ほとんど見られない、ということになりましたので、
果たしてなぜ、このような奇妙な結果となってしまっているのか、
個人的な推測としては、おそらくNEDCサイクルの計測結果を追求することをせずに、
発売計画から実際の発売スタートまでの、たったの1年弱という圧倒的短期間でのローンチにフォーカスした結果、
よりNEDCサイクルの結果を良くするための最適化にまで手が回らなかったのではないか、と推測してはいます。
それに対して、すでに一足早く発売をスタートさせていたBYDのDolphinについては、
今回のID.3のスペックに近いロングレンジグレードにおいて、45kWh弱というバッテリー容量を搭載しながら、
NEDCサイクルにおいて405kmという航続距離を達成していたり、
ちょうど直近の動画でも解説したGood Catについても、51.35kWhというバッテリー容量を搭載し、
NEDCサイクルにおいて401kmを達成してきてもいますので、
やはりそのNEDCサイクルの電費性能という観点では、ID.3が圧倒的に劣ってしまっている、ということになるかとは思います。
ただし、高速道路を時速100kmでクーラーをつけても達成可能であるというような、実用使いにおいて最も信用に値するEPAサイクルに変換してみると、
やはり、より厳しい条件が適用されるWLTPサイクルで、
420kmを達成したID.3が、おおよそ350km程度という航続距離を確保する見込みであるのに対して、
DolphinとGood Catは概ね270km程度に留まるということを考慮すれば、
実用的な航続距離ではID.3が一枚上手である、と推測することができるでしょう。
充電性能は競合を上回る高性能
さらに、充電性能に関しても、充電残量10%程度から80%まで充電するのにかかる時間が、おおよそ30分程度であり、
したがって、このスペックというのはヨーロッパ市場向けのID.3と全く同様のスペックとなりますので、
今回は公表されてはいませんが、その充電出力については、最大で100kw程度を許容することができそうです。
それに対してDolphinとGood Catについては、最大60kWという充電出力しか許容することができず、
充電残量30%から80%まで充電するのにかかる時間で、30分ほどを要してしまいますので、
この充電性能という指標に関しても、
やはりID.3の方が一枚上手、ということになるかとは思います。
テスラ製コンパクトカーよりも安いかも!?
また、その車両サイズに関してですが、
ID.3は、全長4261ミリ、全幅1809ミリ、そして全高が1568ミリと、
コンパクトながら、それこそ我々日本市場にもってこいのサイズ感でもありますが、
特に注目すべきは、そのホイールベースの長さであり、
ID.3は2765ミリと、その全長からは想像できないほどのホイールベースの長さを確保することができているわけで、
その全長に対するホイールベースの長さの比率では、競合を凌駕しているわけでもありますので、
今回のID.3であれば、コンパクトハッチバックながら、より車内スペースの広さを確保することができそうですし、
それとともに、やはりフォルクスワーゲンが独自開発した電気自動車専用プラットフォームであるMEBプラットフォームの質の高さを、
うかがい知ることができるのではないでしょうか?
そして最後に、最も気になる値段設定に関してですが、
今回のID.3については、16万元弱から、
つまり日本円に換算して、なんと284万円程度から購入することができてしまうという、
まさに圧倒的なコスパの高さを達成してくることになりましたので、
もうこの時点において、フォルクスワーゲンの電気自動車の販売台数を、さらなる次元に引き上げることはまず間違いないでしょう。
そして、今回のID.3が達成してきた、日本円にして280万円程度という値段設定というのは、
なんとテスラが昨年アナウンスしたことで自動車業界に激震が走った、
25000ドルで購入することのできる、モデル3とシャシーを共用した一回り小さいサイズ感の、
テスラ製コンパクトカーと同じような値段設定を、すでに実現してきてしまったということであり、
したがって、確かにその満充電あたりの航続距離については、
おそらくテスラ製コンパクトカーの場合、EPAサイクルで、400kmをなんとか達成してくることは間違いないですので、
今回のID.3が、そのスペックでやや劣ることは間違いないものの、
やはり、テスラ製コンパクトカーより何年も早く実際の発売にこぎつけることができたということを考慮すれば、
やはり今回のID.3に関しても、実は2021年最も注目すべき電気自動車として捉えるべきである、ということですね。
フォルクスワーゲンEVが日本の公道テストをスタート!
ただし、その競合に目を移してみると、
それこそGood Catについては、日本円に換算しておよそ185万円程度から、
さらにはBYD Dolphinのロングレンジグレードについても、日本円で231万円からと、
このように、日本では取り上げられることのない中国の電気自動車を見渡してみると、
すでにその価格競争という観点では、今回のID.3すらも上回ってくるような、
極めて質の高い電気自動車が次々と市場に投入され始めているわけであり、
このような中国製の電気自動車の最新動向は、やはり追い続けて行く価値があると思います。
ちなみにですが、こちらはツイッター上の目撃情報として、
フォルクスワーゲンの電気自動車SUVであるID.4が、
すでに日本国内においてもテスト走行が重ねられているという情報が複数報告されているわけであり、
フォルクスワーゲンの日本法人曰く、2022年以降導入する可能性があると、その導入を確定させてはいないものの、
このテスト走行の様子を見る限り、まず間違いなく正式なアナウンスがどこかで行われるはずです。
要するに、もちろん今回複数リークされている、グローバル車種でもあるID.4については、
おそらく確実に日本市場に導入されるわけですが、
それとともに、今回のID.3に関しても、
特にそのコンパクトハッチバックという、国土の狭い市場において人気の高いセグメントを、
我々日本市場にも導入してくるのではないか、ということなのです。
何れにしても、すでに完全に電気自動車に舵を切ってきている世界最大級の自動車メーカーであるフォルクスワーゲンについては、
中国市場で最もコスパの高い電気自動車の1つに躍り出た、ID.3の発売をスタートしてきましたので、
その熾烈さを増す中国市場の電気自動車戦争の中においても、
今後もさらに販売台数を伸ばしていくことはまず間違いない、ということですね。
From: CNEV POST
Author: EVネイティブ
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