マツダが中国市場において、新型電気自動車であるCX-30の電気自動車バージョンの発売を正式にスタートし、
特に実用的な航続距離、そして手頃な値段設定によって、その電気自動車のシェアの拡大を模索していますが、
それとともに中国国内において、日本メーカーの電気自動車が大苦戦中であるという非常に厳しい現実についても解説します。
コロナ以前から販売台数が低迷し始めていたという事実
まず、今回のマツダに関してですが、Covid-19によるパンデミックの影響を受ける前の、
2019年度におけるグローバルの販売台数ランキングにおいて、
日本勢第5位、グローバルにおいても第15位にランクインしているという、大手自動車メーカーとなっていて、
特にそのデザイン製の高さなども相まって、北米市場を中心に、一定のシェアを獲得することができていました。
しかしながら、その近年の販売台数の変遷を見ていくと、
実はCovid-19によるパンデミックの前から、すでにその販売台数が減少トレンドに入り始めてしまっていて、
直近である2021年3月期における販売台数というのは、2013年以来の低水準に留まってしまい、
果たしてアフターコロナの世界戦において、その低迷した販売台数をどこまで復活させることができるのかに、
大きな注目が集まっている状況となっています。
From: Mazda
しかしながら、現在世界を襲っているCovid-19とともに、自動車産業を襲っているのが、
世界的なカーボンニュートラルという潮流の中の、車の電動化であり、
特に欧米中という、世界の三大マーケットについては、
どこも電気自動車、特に日産リーフやテスラのような、
搭載された大容量のバッテリーに、充電して貯められた電力のみで走行する、完全な電気自動車を中心とする電動化戦略を掲げ、
実際にどの市場も、完全電気自動車の普及に必須であるバッテリーのサプライチェーンの内製化、
およびバッテリーを大量生産するための、大規模バッテリー生産工場に対する税制優遇措置、
さらには、その完全電気自動車に必須のインフラである充電インフラ整備など、
莫大な予算をつけて、国単位で、一気に電動化を推進しているという状況となっています。
マツダの”EVはエコではない論”は不正確です(定期)
そのような、電動化時代の幕開けにおいて、今回のマツダに関しては、どのようなスタンスでいるのかといえば、
残念ながらこれまで電気自動車を本格的に量産することをしてこなかっただけでなく、
電気自動車はライフサイクルで見たCO2排出量で、同セグメントの内燃機関車よりもCO2を多く排出するという独自理論を展開し、
こちらの理論については、すでにグローバル基準においては、数々の専門家やシンクタンクから、
その数値の前提条件があまりにも現実離れしているという指摘を受け、
一部日本国内では、いまだにそのマツダの論文を引用して、
電気自動車はCO2を多く排出するのでエコではないんだー、という電気自動車懐疑論が散見されてしまっているわけですが、
すでにグローバル基準で見れば、ガラパゴストンチンカン理論となってしまっている、ということなのです。
MX-30は低スペックゆえに全く売れず
そして、そのようなマツダが、ついに昨年である2020年中にヨーロッパ市場で発売をスタート、
我々日本国内においても、2021年初頭から発売をスタートした、
マツダ初の本格量産電気自動車であるMX-30の電気自動車バージョンを発売したものの、
その35.5kWhというバッテリー容量の小ささによって、SUVセグメントの車種であるのにも関わらず、
高速道路を時速100kmでクーラーをつけても達成可能であるというような、実用使いにおいて最も信用に値するEPAサイクルにおいても、
たったの161kmしか走行することができず、
さらにその値段設定が、451万円からという極めて高額な値段設定ということもあり、
我々日本市場においては、1月から8月までの販売台数を合計して、たったの174台、
つまり、月間平均にしてたったの20台程度しか売れていないという、極めて厳しい販売台数に留まってしまっているのです。
ただし、その販売の中心マーケットであるヨーロッパ市場に関しては、
やはり、そのデザイン性に定評のあるマツダの電気自動車を購入したいという層が一定層いるわけか、
例えば日本市場の次に大きな自動車マーケットであるドイツ市場において、
同じく1月から8月までのMX-30の販売台数の合計が1874台、月間平均にしておよそ230台以上売れ、
日本市場の、実に10倍以上売れているということを勘案すれば、
その電気自動車としての質の低さであったとしても、一定程度の需要を見出すこともできているわけなのです。
残念なスペックのMX-30よりも大幅に進化
そして、そのような背景において、今回新たに明らかになってきたことというのが、
そのマツダが、中国市場において初めてとなる完全電気自動車を発表し、
ちょうど直近で実際の発売がスタートしたということで、
それが、日本市場でもラインナップされているCX-30という内燃機関車の電気自動車バージョンであるということで、
特に今回のCX-30については、MX-30よりも搭載バッテリーを大幅に増量してきたことで、
SUVセグメントの電気自動車として、一定の航続距離を確保することができていますので、
果たしてその電気自動車としての質が、総合的にどの程度高めることができているのかを、
中国市場で発売されている、同じくSUVタイプの電気自動車として、
ガチンコの競合車種である、フォルクスワーゲンのID.4と比較しながら、
そのCX-30が、どれほどの販売台数を達成することができそうであるのかを含めて、徹底的に考察していきたいと思います。
まずはじめに、搭載バッテリー容量に関してですが、
CX-30は61.1kWhと、ミッドサイズ級のバッテリーサイズを搭載し、
先ほども取り上げている通り、我々日本市場でも発売されているMX-30に関しては、
SUVセグメントであるのにも関わらず、たったの35,5kWhしか搭載していませんでしたので、
やはり、マツダ第二の電気自動車については、
SUVとして求められる最低限の航続距離を確保するために、一定程度のバッテリー容量を搭載してきた格好となります。
EPA航続距離はまずまずのスペックを達成
そして、気になる満充電あたりの航続距離に関してですが、
中国で現在導入され始めているCLTC-Pサイクルにおいて、450kmを達成しているのですが、
こちらのCLTC-Pサイクルという基準は、中国市場において今まで一般的に採用されていたNEDCサイクルと同様に、
実用使いにおいては全く参考にすることができない基準となりますので、
最も信用に値するEPAサイクルに変換してみると、概算値とはなりますが、おおよそ360km程度という航続距離に留まってしまいますが、
それでもMX-30の161kmという数値と比較すれば、
SUVとしての利便性で、圧倒的に向上するものと考えられます。
ちなみにですが、CLTC-PサイクルとNEDCサイクルの違いに関してですが、
例えば、その試験方法の示したグラフを見てみると、
若干ではありますが、その試験時間自体が伸びていることによる、より厳しい測定方法のように見受けられるものの、
その実際の平均車速については、NEDCサイクルが時速33.6kmであるのに対して、
CLTC-Pサイクルが時速28.96kmと、むしろ遅い、
つまり、どちらの方がより厳しいテストサイクルであるのかに関しては、どっこいどっこいである、
と結論づけて問題ないとは感じます。
また、競合車種であるフォルクスワーゲンのID.4については、52kWhという、さらに小さいバッテリー容量ながら、
EPAサイクルにおける航続距離が、およそ339km程度となりますので、
その電費性能という指標で見ると、ID.4の方が一枚上手である、ということなのです。
CX-30は電気自動車専用に開発されていない
また、充電性能に関してですが、
充電残量が空の状態から80%まで回復させるのに、55分を要するということで、
それに対して、ID.4に関しては概ね30分で充電を完了させることができ、
先ほどの電費性能も含めて、なぜID.4と比較しても、これほどの差がついてしまっているのか、
それは、やはり電気自動車として一から設計開発していないことによる、
最適化にコミットすることができていないからである、ということで、
というのも、今回のCX-30に関しては、我々日本市場とともに、中国国内についても、すでに内燃機関車バージョンが発売されており、
その中国の研究開発センターにおいて、CX-30の内燃機関車モデルを改良して、電気自動車にリプレイスされたということだそうですので、
要するに、今までの内燃機関車をただ改良してきただけ、という見方ができるのです。
しかしながら、対するフォルクスワーゲンのID.4というのは、
フォルクスワーゲングループが独自に開発してきた、電気自動車専用プラットフォームであるMEBプラットフォームを採用して開発されているため、
その電気自動車に最適化ができていることによって、
やはりその分、電費性能、
さらには、充電性能を共通化することができることで、
CX-30のためだけに、充電性能を向上する改善をおこなわなければならないマツダとは異なり、
MEBプラットフォームを採用した全ての車種の充電性能を改善することに直結させることができるフォルクスワーゲンとは、
やはり、その電気自動車としての質の最適化という観点で、どうしても妥協せざるを得ない、ということなのです。
中国製・角形セル・三元系と全て同じセルを採用
ちなみに、その搭載バッテリーの種類ですが、
CX-30は、中国最大のバッテリーサプライヤーであるCATL製の角型の三元系バッテリーを採用しているのですが、
今回の比較対象であるID.4についても、全く同様に、
中国CATL製(おそらく)の角型三元系バッテリーを採用しているわけで、
やはりこのことからも、どこで電気自動車としての質が異なってしまっているのか、
やはりそれは、本メディアにおいては一貫して主張し続けていることですが、
電気自動車専用プラットフォームを採用することによる最適化ができているか否か、
という点に尽きるのではないでしょうか?
ちなみに、そのサイズ感についてですが、
全長が4410ミリ、全幅が1852ミリ、そして、全高が1655ミリと、
日本市場で発売されているCX-30と比較しても、全体的にややサイズアップしているわけであり、
おそらくその61.1kWhというミッドサイズ級のバッテリーを搭載するための変更なのではないか、と推測することができます。
格安なCX-30は売れる可能性が低い件
そして最後に、その値段設定に関してですが、
CX-30が日本円に換算して、およそ275万円という、
インテリアの質感などが極めて簡素なエントリーグレードではあるものの、非常にコストパフォーマンスが高いということが見て取れ、
特に競合車種となるID.4と比較しても、そのエントリー価格が344万円と、大きく差をつけていることからも、
今回のCX-30の電気自動車バージョンに関しては、
その搭載バッテリー容量と比較して、非常に競争力のある値段設定を実現してきた格好となりそうです。
それでは、このマツダが中国市場で発売する初めての電気自動車であるCX-30について、
特に販売台数が盛り上がる年末から2022年以降にかけて、一体どれほどの成功を期待することができるのかに関してですが、
まず結論から申し上げて、今回比較対象としているID.4のような販売台数を期待することはできない、
ということで、
というのも、中国国内で発売されている日本メーカーの電気自動車というのは、何も今回のCX-30が初めてではなく、
すでにトヨタからは、CH-Rの電気自動車バージョンであったり、
ホンダからも、EA6と名付けられたミッドサイズ級のセダンがラインナップされていたりします。
CH-R EV EA6
そして、その電気自動車としての質について、
例えば後者の、ホンダのEA6というのは、
58.8kWhというミッドサイズ級のバッテリー容量を搭載しながら、
NEDCサイクルにおける航続距離が510km、
最も信用に対するEPAサイクルでも、概ね400kmを達成見込み、
そして、その値段設定が、日本円に換算してなんと287万円から購入することができるという、
今回のCX-30と同様の値段設定を実現することができていますので、
まさに電気自動車としてのコスパは高い、むしろ、今回のCX-30よりも高いと言えるのかもしれません。
日本のEVは中国で全く売れていない事実
しかしながら、その実際の販売台数を見てみると、
この直近の販売台数は、たったの293台と低迷していながら、
今年である2021年通しの販売台数で見ても1445台、
さらに、トヨタのCH-Rの電気自動車バージョンについては、8月度の販売台数がたったの21台、
2021年通しでも531台と、
特に月間数千台、
それこそ超格安小型電気自動車である、かの有名なHong Guang Mini EVが、月間4万台以上も売れている中国の電気自動車マーケットにおいては、
全く売れていないと言って差し支えない、ということなのです。
それに対して、フォルクスワーゲンのID.4というのは、
直近の8月度の販売台数が4679台と、
中国の電気自動車の人気車種ランキングで、トップ20にランクインしているわけで、
特に最直近である9月度の販売台数の速報値では、
そのID.4とともに、同じくMEBプラットフォームを採用したID.6を含めて、ついに月間1万台の壁を突破してもきていますので、
確かに電気自動車としての質は、ID.4の方がやや上であるものの、
そのコスパの高さという観点では、特に負けていないCX-30というのは、
これまでの日本車と同様に、なぜか不発に終わる可能性がある、ということなのです。
フォルクスワーゲンのEVが売れ始めた理由
その理由について個人的に一点推測可能なことというのが、
その販売体制の差ではないのかということで、
というのも、実はそのフォルクスワーゲンのIDシリーズに関しては、
ちょうど今年の3月ごろから、実際の納車をスタートさせたわけですが、
その販売台数は、当初の想定を大きく下回る1000台程度に留まり、
6月になっても3415台という、
電気自動車に全振りし始めているフォルクスワーゲンにとっては、極めて厳しい結果であったわけなのです。
そこでフォルクスワーゲンに関しては、中国全土のディーラーから、一部報道によれば100店舗ほどをピックアップして、
電気自動車の専門知識のある従業員を集中して配備し直すことによって、
電気自動車の販売の機会ロスの低減を模索しながら、
さらに、NIOやXpeng、Li Auto、さらにはテスラなど、現在の中国の電気自動車スタートアップが行なっている戦略である、
より若いユーザーが集まるショッピングセンター内に、IDシリーズのショールームを急ピッチで設置することによって、
やはり電気自動車を購入する可能性の高い、特に若い層に対して、
フォルクスワーゲンの電気自動車を、効果的にアピールするように、その販売戦略を抜本的に改良してきたのです。
よって、そのおかげなのか、6月以降の販売台数に関してはコンスタントに伸び続け、
ついに9月度の速報値で1万台の壁を突破したという背景がありますので、
何れにしても、既存メーカーが電気自動車を売ろうとした場合、
いくらその電気自動車の質が高かったり、コストパフォーマンスに優れていたとしても、
やはりその販売体制、特に、実際に電気自動車を買おうとしているユーザーに接客するディーラーの従業員が、電気自動車に対して適切な知識を有していなかった場合、
それは機会ロスにつながりますし、
特に中国国内には、電気自動車のみを取り扱う、極めて競争力の高い電気自動車スタートアップたちがひしめき合ってもいますので、
その販売体制の質をいかに高めることができるのかも、重要な要素となるのです。
日本市場への導入はズバリ、、
したがって、確かに質の高い電気自動車を発売することができている日本勢の電気自動車が、なぜここまで完全沈黙してしまっているのか、
やはりそれは、旧来のガソリン車しか売ったことがなく、電気自動車への知識が乏しい、
さらには、その自動車ディーラー自体の収益構造上、
修理やメンテナンスの機会が極めて少なくなる電気自動車を販売することは、そもそもやりたがらないという、
構造上の問題も相まっているのではないか、
だからこそ、既存メーカーが本気で電気自動車を売るためには、
もちろん電気自動車専用プラットフォームを採用した、質の高い電気自動車を開発することはもちろんのこと、
さらに、その販売体制についても、電気自動車専用の販売体制へとシフトしていかなければ、
強豪ひしめく中国国内では、すでに電気自動車を売ることができなくなってしまっている、
ということなのではないでしょうか?
何れにしても、ついに発売がスタートしたマツダの新型電気自動車であるCX-30に関しては、
電気自動車専用に設計されていないことによって、その電気自動車としての質は、競合と比較してもやや劣るものの、
それでもコストパフォーマンスは一定程度を達成することができていますので、
その販売台数に期待することができると思いきや、
それ以外のコスパの高い日本メーカーの電気自動車の販売動向を見てみると、
その全てにおいて、全くと言っていいほど売れていませんので、
果たして今回のマツダが、このCX-30を本気で売るために、ディーラーの販売体制の転換にまでコミットしてくるのか、
おそらく現状のマツダについては、そのような考えはないと推測していますが、
そのCX-30の販売台数の変遷とともに、注目していきたいと思います。
ちなみに、今回のCX-30については、
右ハンドル市場であるオーストラリア市場への発売を前向きに検討しているという報道もありますので、
もし仮に中国市場において、私の予想に反して一定の人気が出て、海外市場に向けても積極的に販売していく姿勢につながれば、
もしかしたら我々日本市場への導入なんていうことも、ゼロではなさそうですので、
マツダの電気自動車が欲しいという方は、
このCX-30の電気自動車バージョンの最新動向に関しても、同時に注目していくべきであると思います。
From: Changan-Mazda
Author: EVネイティブ
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