中国市場において、既存の内燃機関車と遜色のないスペックを有するゲームチェンジャー的な電気自動車が、市場に続々と投入され始めます。
ハイブリッド車の航続距離にはまだまだ達せず
まず、今回の中国製電気自動車に関してですが、
本メディアにおいては、特にXpengやNIOといった電気自動車スタートアップの最新動向について、頻度高くアップデートを続けながら、
それとともに、特にSAICによる超格安小型電気自動車の成功であったり、
BYDのフラグシップセダンであるHanや、小型大衆電気自動車のDolphinという、
もともと内燃機関車を開発していた既存メーカーに関しても、現在質の高い電気自動車を発売し、
実際にかなりの販売台数を達成していますので、
とにかく電気自動車に関する知見においては、すでに我々日本メーカーに迫る、
もはや自動車大国である日本メーカーをも凌駕するようなレベルにまで達しているのです。
そして、我々日本メーカーやヨーロッパ勢の開発する最新の電気自動車に関しては、
やはりその電気自動車としての質が、既存の内燃機関車と比較してもどうしても実用面で劣ってしまう、
例えば満充電あたりの航続距離については、ガソリン車であれば、700-800km程度走行することは難しくないわけですが、
現在発売されている最新の電気自動車の航続距離トップは、テスラが発売しているフラグシップセダンのモデルSが652km、
今年である2021年中に発売がスタートする見込みであるLucidのAirにおいて、ようやく837kmという、内燃機関車に迫るような航続距離を達成しはじめてはいるものの、
それでも、ハイブリッド車のように航続距離1000kmを達成するようなことはできていないのです。
充電時間も燃料補給の時間に比べたらまだまだ
さらに、そのエネルギー補給の時間についても、
ガソリン車をはじめとする内燃機関車であれば、ガソリンスタンドに赴いておおよそ5分以内で給油を完了させることができますが、
それに対して電気自動車はというと、
2021年現時点においては、韓国ヒョンデが発売し始めたクロスオーバーEVのIONIQ5が、
充電残量80%まで充電を完了させるのに18分という、確かに極めて優れた充電性能を達成してはいるものの、
それでも内燃機関車の給油時間5分という数値とは、大きな乖離がある状況となっているわけなのです。
しかしながら、今回フォーカスしたい中国市場の電気自動車に技術力というのは、
いよいよ内燃機関車のスペックに匹敵し始めているという点が極めて重要であり、
特に先ほど取り上げている、満充電あたりの航続距離、そして充電性能というスペックが、
この2021年現時点で、いったいどれほどを達成しているのか、
そして、本当に内燃機関車に匹敵することができるのかについて、その実情を詳しく見ていきたいと思います。
まずは、その満充電あたりの航続距離に関してですが、
こちらは、2014年に立ち上がった電気自動車スタートアップのNIOが、
来年である2022年の第一四半期、つまり3月までに実際の納車がスタートするフラグシップセダンのET7については、
中国市場で一般的に採用されているNEDCサイクルという基準において、700km以上を達成するとアナウンスし、
したがって、高速道路を時速100kmでクーラーをつけても達成可能であるというような、実用使いにおいて最も信用に値するEPAサイクルに変換してみると、
概ね600km以上と、冒頭取り上げた、現在世界で最も航続距離の長いテスラモデルSと遜色のない航続距離を達成する見込みとなります。
固体電池を搭載し航続距離1000kmを達成へ
しかしながら、たったの600kmという航続距離というのは、既存の100kWhのバッテリーを採用した場合の航続距離であり、
今回のNIOに関しては、2022年の第四四半期、つまり、2022年末までには、150kWhという特大級のバッテリーを搭載し、
それによって、NEDCサイクルにおける航続距離がついに大台の1000km以上を達成する見込みであると説明し、
しかもその上、ただバッテリー容量を150kWhに増量しただけでなく、電解質をゲル状にした、いわゆる個体電池でもあり、
したがって、そのバッテリーのエネルギー密度は、業界最高水準の360Wh/kgにも達し、
そのような最新技術を詰め込んだことによって、航続距離1000km以上という数値を達成することができているのです。
ただし、この数値というのはあくまでNEDCサイクルにおける航続距離となりますので、
最も信用に値するEPAサイクルに変換してみると、概算値とはなりますが概ね875km程度となりそうですので、
やはり厳密に言えば、電気自動車においてEPA航続距離1000kmを達成するのには、もう少し時間がかかってくるのかもしれません。
また、今回のNIOの固体電池搭載のET7に関してですが、
こちらはNIOが独自に設置を進めているバッテリー交換ステーションにおいて、順次配備が進められていき、
したがって、2022年の第一四半期に、EPA航続距離600km程度バージョンのET7を購入したとしても、
2022年末をめどに、バッテリー交換ステーションに赴いて、
150kWhの個体電池にリプレイスすることができるという、非常に画期的な進化を達成することができます。
ET7がヨーロッパ市場に次々と進出へ
ちなみに、そのET7に関しては、いよいよプロトタイプの試験生産がスタートしているということで、
現状までにおいては、半導体の供給不足などによる、2022年第一四半期の納車スタートというタイムラインの遅延は発生していないものと推測することができ、
さらにその上、このET7については中国国内を飛び出して、
2022年中にも、電気自動車最先進国であるノルウェー市場への納車もアナウンスされているということ、
また、直近でNIOが公式に、ノルウェー市場だけでなく、欧州最大の自動車マーケットであるドイツ市場への参入も表明し、
2022年第四四半期、つまりノルウェー市場と全く同様に、2022年末までの納車予定と、
何れにしても、この極めて質の高い航続距離を達成したET7が、いよいよヨーロッパ市場にも侵略を開始するということなのです。
そして、以前も紹介している通り、NEDCサイクルにおいて航続距離1000kmという数値というのは、
BYDが来年である2022年中にも正式発表する予定である、Ocean-Xに関しても達成してくる公算となりますので、
少なくとも、EPAサイクルで800km台という航続距離というのは、
中国の多くの自動車メーカーが達成してくるスタンダードなスペックとはなってきそうです。
充電時間10分切りを達成したAion V Plusがまもなく登場
それでは次に、充電性能に関する中国勢の最新動向についてですが、
こちらも以前詳細に解説してはいた、中国の既存メーカーであるGACの電気自動車専門ブランドであるAionが、
ミッドサイズSUVのAion Vのモデルチェンジバージョンである、Aion V Plusというモデルを発売するのですが、
その充電性能というのが、最大で480kWという、地球上最高の充電出力を許容することができ、
充電残量0%から50%まで充電を完了させるのにたったの5分、
そして80%充電を完了させるのにも、たったの8分間という、
現在世界最高の充電性能を達成しているIONIQ5の、半分以下の充電時間でもって充電を完了させることができるのです。
よって、確かにガソリンの給油の5分程度と比較してしまうと、8分と、数分長く時間がかかってしまうものの、
電気自動車の充電とは、ガソリンの給油とは違い、充電中その場を離れていても問題ありませんので、
その間にトイレ休憩を挟むなど、
もはや10分以内という充電時間を達成すれば、電気自動車における充電時間を気にする人はほとんど存在しなくなる、ということなのです。
ちなみに、Aion V Plusの解説をした際に、そんなものは中国の眉唾ものであるので信用するべきではないのだー、といった意見が散見されましたが、
この直近のAion側からのアナウンスによって、
9月29日にも、今回のAion V Plusの正式なワールドプレミアが開催されることが予告されましたので、
本メディアにおいてもその動向を注視していた、
果たして本当に、Aion側が主張している9月中の正式発表というタイムラインを達成できるのかについては、
しっかりとタイムラインを守ってくる公算となった、ということですね。
また、その解説でも説明しているのにも関わらず、
そんな超高出力を流せば、バッテリーから発火するので危険なのだー、という主張についても、
特に今回のグラフェンベースのバッテリーセルについては、耐久性が非常に高く、
そのバッテリーセルを針で貫通させたとしても、発火することがなかっただけでなく、
そのような超高出力な急速充電によって懸念されるバッテリー劣化の問題に関しても、
充放電回数が1600サイクルの段階においても、そのバッテリー劣化率はたったの5%に留まっている、
つまり、今回のAion V plusの航続距離が500km程度と言われていますので、
なんと80万km走行した後においても、バッテリーの劣化率は5%程度という、
ここまでくれば、もはや電気自動車におけるバッテリー劣化の問題も解消したと言って、差し支えないと考えられます。
何れにしてもこのように、2021年現時点における我々日本メーカーや欧州メーカーの開発する電気自動車では、
内燃機関車と比較しても、特に満充電あたりの航続距離や充電性能という指標において、スペック不足感が否めなかったわけですが、
特に中国メーカー勢の電気自動車に関しては、満充電あたりの航続距離、そして充電性能という観点で、
内燃機関車のスペックに肉薄し始めているということも同時にお分りいただけたと思いますし、
したがって、ただ中国製の電気自動車が、競合EVのシェアを奪っていくだけでなく、
内燃機関車についても、同様にそのシェアを急速に奪い始めるのではないか、
故に、中国製EVに気づいたら自動車マーケットを支配されていたなんていう未来が、割と現実味を帯び始めている、ということですね。
From: CNEV POST(Aion V Plus launch date)、CNEV POST(ET7 prototype roll off)
Author: EVネイティブ
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