【アリアもbZ4Xもマジで駆逐されます】 トヨタと日産が守るべき充電インフラ設置三大原則とは

チャデモ

日産アリアの発売が間近に控える中、その質の高い充電性能を達成可能にする高性能な充電インフラの設置計画が未だに発表されず、

さらにトヨタに関しても、今後の本命電気自動車であるBZ4Xの発売が控える中においても、独自に急速充電インフラ網を整備しない方針を表明していますが、

なぜこの充電インフラ戦略では、アリアとBZ4Xが売れることがないのか、

そして、今後のEV戦略がうまくいくことがないのかに関する理由、および、それに対する対案についてを、

グローバルでなぜ電気自動車が普及しているのかを比較しながら徹底的に解説します。

急速充電器という言葉に気をつけよ

まず、我々日本市場における充電インフラについては、以前の動画も度々、その問題点についてを取り上げてはいたのですが、

特に本メディアにおいて問題視しているのが、実用的な急速充電器があまりにも脆弱、

というよりも、2021年現時点においてもほぼ設置されていないという状況であり、

まず大前提として、日本市場において、いったい全国にどれほどの急速充電器が存在するのかといえば、7851基存在しているわけですが、

この急速充電器については、20kW級急速充電器であったり、90kW級急速充電器であったりなど、

そのスペックがかなり異なっているという点が重要であるのです。

From: GoGoEV

というのも、例えば、その20kW級と90kW級のそれぞれで、

間も無く発売がスタートする日産のフラグシップクロスオーバーEVであるアリアを30分充電を行った場合、

まず20kW級急速充電器の場合、30分で最大10kWh弱という電力量を充電することができるのですが、

それを航続距離に換算してみると、高速道路を時速100kmでクーラーをつけても達成可能であるというような、実用使いにおいて最も信用に値するEPAサイクルの電費性能で計算してみた場合、

おおよそ56km分の電力量しか充電することができないのです。

それに対して、90kW級急速充電器で30分充電すると、最大で45kWh弱という電力量を充電することができ、

したがって、EPAサイクルにおける航続距離に変換してみると、おおよそ250km分の電力量を回復させることができる、

したがって、同じ急速充電器とカテゴライズされている2つの充電器を使用した場合、

同じ30分の充電を行うと、実際に回復することのできる電力量は35kWh程度

航続距離に変換すれば、なんと200km近い差になってしまい、

このように、明らかに異なるスペックを持つ充電器を、急速充電器と一括りにして取り上げてしまっているのです。

日本では”実用的な”急速充電器は皆無

そして、やはり電気自動車を一般的に運用するという視点に立ってみると、

もちろん20kW級など論外、

さらに現在日本市場の急速充電器のほとんどを占めている50kW級の急速充電器でもスペック不足、

しかしながら、90kW級の急速充電器であれば、

30分の充電時間だけで、EPA航続距離にして250km程度の電力量を充電することができる、

つまり、日産アリアに乗って東京を満充電で出発し、

途中京都付近で、その90kW級急速充電器で30分の休憩時間県充電時間を挟んだだけで、

なんと広島県に上陸することができるということになりますので、

このようにイメージしていただければ、

この90kW級の急速充電器こそが、電気自動車を実用的に、かつ一般的に運用するために最低限のスペックである、ということなのです。

それでは、現状我々日本市場において、いったいどれほどの90kW級急速充電器が存在するのかというと、

その数はたったの127箇所と、

急速充電器の合計7851箇所の中の、ほんの一握りしか存在していないということになっていますし、

さらにその127箇所については、そのほぼ全てが日産をはじめとする自動車ディーラーに設置、

しかも、アウディやポルシェのディーラーについては、自社の電気自動車しか充電を認めていないという店舗すら存在していますので、

実際に、公共の充電器として90kW級の急速充電器を使用して、電気自動車で長距離を移動するという運用方法は、

極めて難しい状況に置かれてしまっているのです。

韓国「E-pit」

それでは、海外市場の公共の充電器の普及状況はどうなっているのかに関してですが、

まず、お隣韓国市場については、

韓国最大の自動車グループであるヒョンデグループが主導して設置が進められているのが、

E-pitと名付けられた超急速充電ステーションとなっていて、韓国全土のハイウェイ上に設置されていますので、

我々日本市場とは違い、市街地に位置する自動車ディーラーなどではなく、高速道路を走りながら、その合間に充電することができるという、

まさに経路充電という運用方法を体現することができます。

そして、そのE-pitについては、一つのステーションにつき最低6基もの充電器が設置されていますので、

こちらも日本市場に設置されている、1つのサービスエリアに一基しか充電器が設置されていないという状況とは違い、

したがって、先客がいた場合の充電渋滞を心配する必要が当面ありませんので、

この点を比較してみても、その電気自動車における充電のストレスが極めて軽減されるのです。

さらに、最も特筆すべきポイントというのは、

今回のE-pitに設置されている急速充電器というのは、350kW級の超急速充電器であるということで、

先ほど私が説明した90kW級の急速充電器というのは、あくまで必要最低限のスペックを有した充電器であるということであり、

すでにお隣の韓国市場においては、日本の4倍もの充電性能を発揮することのできる急速充電ステーションを、現在全土に普及させている状況、ということなのです。

ヨーロッパ「IONITY」

次に、現在電気自動車戦争が勃発しているヨーロッパ市場についてですが、韓国市場と全く同様に、すでに欧州全域に、

フォルクスワーゲングループ、ダイムラー、BMWグループ、ヒョンデグループ、そしてフォードが共同で出資して設立されたIONITYという充電器管理運営企業によって、

350kW級超急速充電ステーションが、ハイウェイ上に設置され、

その1つのステーションにつき、最低でも4基程度、最大で10基程度もの充電ストールを設置しています。

北米「Electrify America/Canada」

また、北米市場についてですが、

こちらはフォルクスワーゲングループ傘下のElectrify America、およびElectrify Canadaがそれぞれ、

北米大陸の全域に350kW級超急速充電ステーションを設置している最中であり、

特に2021年末までに、3500基もの充電器が設置される見込みともなっていて、

もちろんこちらに関しても、ハイウェイ上に設置しながら、

1つのステーションに、最低でも4基、最大で8基程度もの充電ストールを設置しています。

このように世界を見渡してみると、

来たる電気自動車時代を見据えて、すでに電気自動車用の急速充電ネットワークを、全土に普及を進めている最中であるということが一目瞭然であるわけですが

それでは一体、日本市場の充電器の設置方法と、本質的にどの点が異なっているのかについてをピックアップしていくと、

まずは何と言っても、その充電性能が、どの国と比較してみても4倍も違うという点であり、

確かに350kW級という充電出力をフルに許容できる電気自動車は、現状ほぼ存在しないものの、

今後数年で、一気にその車種が増えてくるということ、

つまり、そのような数年先を見越した充電インフラ網の構築を先行投資的に行なっている、ということなのです。

海外ではハイウェイ上に複数機設置

次に、その海外市場の高性能な急速充電ステーションというのは、例外なく全てハイウェイ上に設置されているということであり、

当たり前のことですが、人々が長距離を移動する場合、ほとんどのケースでハイウェイを利用することは当然であり、

そもそも2021年現時点における電気自動車というのは、一般的には最も信用に値するEPAサイクルにおいてでも300km程度は走行可能ですので、

特に高性能の急速充電器というのは、そのハイウェイ上にのみ設置するべきであり、

実際問題として海外市場に関しては、

その長距離移動の際に必須となるハイウェイ上に、350kW級という高性能な急速充電器を集中的に配備しているわけなのです。

Electrify Americaの配備状況

さらに、その設置方法についても日本とは大きく異なっているということであり、

日本市場においては、特に日産の尽力によって、

最近の日産ディーラーには、1箇所につき2つ以上の急速充電器が設置されるケースがかなり増えてきましたので、

仮に充電器に到着しても、先客がいたので充電待ちが発生してしまうというリスクがかなり軽減され始めてはいるものの、

今回フォーカスしている高速道路上の急速充電器については、全部で424ステーションが存在している中で、

その複数台設置されているサービスエリアは、なんとたったの14箇所と、

まさに悲惨な充電インフラ環境であると言って、全く過言ではありませんし、

何より海外市場については、何も2基なんてケチくさいことは言わずに、

最低でも4基、最大で10基というレベルで充電ストールを設置してもいますので、

何れにしても、今後急激に増えていく電気自動車の数に対応するために、先行投資的に、今から充電ストールの数を大幅に増やしているのです。

そもそも誰が充電器を設置しているのか?

そして最後に、日本と海外の急速充電器の設置に関して、一点明確に異なり、しかしながら最も重要なポイントであると考えているのが、

その設置主体が誰であるのかという点であり、

というのも、例えば韓国市場におけるE-pitに関しては、ヒョンデグループが出資して建設が進められていますし、

さらにIONITYについても、先ほど説明したように、ドイツ御三家を筆頭に、フォードやヒョンデグループも参画して共同で出資、

さらにElectrify Americaに関しても、主にフォルクスワーゲングループが出資して設置が進められているという、

つまり、基本的には自動車メーカーが主体となって充電インフラに対して投資を行っている、ということなのです。

それでは、対する日本の公共の急速充電インフラを整備する充電器管理運営企業はというと、

ちょうど昨年である2020年度から発足したe-mobility Powerという企業であり、

この企業の出資比率構成を見てみると、

確かに自動車メーカーとして、トヨタや日産、ホンダ、そして三菱という4社が参画してはいるものの、その出資比率はたったの1.9%ずつ、

つまり4社が合わさっても、たったの7.6%ということで、

もちろんその設置方法などについて、大きく関与することができないわけであり、その筆頭出資者というのが東京電力と中部電力という、

要するに、電力会社が主体となって日本の公共の急速充電器を設置するということになりますので、

果たして、本当に電気自動車を売りたいメーカーが、自分たちの意思で設置を進めることができる海外の公共の充電インフラと、

自動車メーカーの声はほぼ届かず、電力会社の意向によって、充電器の仕様が決定してしまう日本の公共の充電インフラの、

どちらがより電気自動車オーナーファーストな充電器を設置することができるのか

一見明らかであると感じるのは、私だけでしょうか?

充電インフラ設置三か条とは?

このように、海外で設置が進められている公共の急速充電ネットワークに関して、

一体日本の充電インフラがどれだけ遅れてしまっているのか、

なぜその遅れが発生してしまうのかに関する構造的な欠陥についてを解説してきましたが、

しかしながら、そんな批判をしてみたところで、

今回のe-Mobility Powerの出資比率が明日から変わるのかといえば、そんなことはありえないですし、

それならお前は対案を持っているのか!という批判をいただく可能性もありますので、

今回は、本気で電気自動車を売りたい自動車メーカーが、

この絶望的な公共の充電インフラ環境の中で、打つことのできる最もましな充電インフラ戦略についてを、徹底的に考察していきたいと思います。

まず、ここまで解説したように、海外市場における充電インフラ設置戦略を、日本市場においてもそのままパクる戦略こそが最も定石であるわけで、

特に、設置場所、設置数、そして充電性能という3つの原則にフォーカスしていくべきであり、

最初の設置場所に関してですが、

こちらは自動車メーカー側、特に日産は全ての自動車ディーラーに、くまなく充電器を1基ずつ設置していくという戦略を採用していたわけですが、

すでにその設置が完了している日産については、今後は満遍なく設置を進めていくのではなく、

その設置場所を大胆に絞り込む、特にセオリーでもある高速道路上にするべきであるのです。

しかしながら、この高速道路上について各自動車メーカーが独自に設置を進めることは、e-Mobility Powerのもつ利権上、実質不可能ですので、

それではどうしたらいいのかといえば、

高速道路のインターを降りた、すぐ近くの店舗に設置を進めるべきであるということで、

これであれば確かに高速道路を降りる羽目にはなりますが、

それでも各自動車メーカーが、e-Mobility Powerの利権に左右されることなく、

自分たちの手によって、思い通りの充電器を設置することができるのです。

ここに行けば確実に充電することができるという感覚の重要性

次に、その設置数に関してですが、

こちらは1つのディーラーに対して、複数、できれば3-4基という充電器を設置するべきであり、

とにかくこのインターを降りて、このディーラーに行けば、確実に充電することができるという環境を整えることによって、

電気自動車における充電に対するストレスを大幅に低減することができるのです。

ただしこの設置数というのは、全てのディーラーに対して行うのではなく、

最初に説明した通り、とにかく高速道路のインターに近い、なるべく経路充電として利用することのできるような立地のディーラーに限定するという、

選択と集中作戦を実行すべきであり、

間違っても、各ディーラーごとに1基ずつ設置を進めるなんていう、充電インフラの全方位戦略だけは、

電気自動車オーナーにとって害悪でしかないということを、是非とも認識していただきたいと思います。

ここに行けば期待通りの充電時間で充電完了できるという安心感

そして最後に、その充電性能に関してですが、

こちらに関しては先ほどの、ここの高速インターを降りれば、すぐ近くにあるディーラーで必ず充電することができるという安心感とともに、

期待通りの充電スペックを達成することができるという点が、さらに重要であり、

特に冒頭説明した日産アリアに関しては、最大130kWという充電出力を許容することができるものの、

いまだに日本全国どこを見渡しても、その130kW級の公共の急速充電器が、たったの1箇所も存在していないというカオスな状況である一方で、

せめて、経路充電としてのディーラーに、そのアリアの性能に見合う充電器を設置してさえすれば、

全てのディーラーの充電器を、順次130kW級の充電器にリプレイスするなんて、方もないインフラ投資をせずに済みます。

また、何より日産に限って言えば、すでに公式に、

2021年度までに、全国の公共性の高いエリアに150kw級急速充電器を設置していくと明言してしまってもいますので、

この約束を信じて日産アリアの購入を検討している方を裏切らないためにも、最も費用対効果の高い充電インフラ投資というのは、

まさにこの、特定のインターにほど近いディーラーに限定して、150kW級急速充電器を複数台設置する、ということですね。

日本の充電インフラは「愛知日産春日井インター店」を模倣せよ!

ちなみにですが、実はこれに極めて酷似している急速充電ステーションが、日本で唯一1箇所存在しているということが興味深い点でもあり、

実はこの愛知県の春日井市に位置する、愛知日産春日井インター店となっていて、

まずこちらは、東名高速道路の春日井インターを降りて数百メートルという目と鼻の先の位置関係であり、

さらに、この春日井インター店に設置されているのが、90kW級の急速充電器がなんと3基も設置されているという、

確かにアリアの最大130kWという充電許容出力には及んでいないながらも、アリアのEPA航続距離にして、30分で250km近い航続距離を回復することができ、

まさに私の提唱する、経路充電インフラ三大原則を忠実に守っている、ゲームチェンジャー的な充電ステーションとなりますので、

是非とも日産をはじめ、トヨタに関しても、この充電インフラの原則を守るという、選択と集中作戦を敢行するべきであるのではないでしょうか?

From: GoGoEV

充電課金体系で自社メーカーEVを優遇せよ

また、この原則に則って設置した急速充電器に関しては、

やはりその自動車メーカーの電気自動車を優遇する措置を、自動車メーカー各社で実施するべきであり、

それこそ日産に関しては、充電インフラ投資にびた一文も支払わないという、

私をも超える腐ったケチ根性を持っている自動車メーカーの電気自動車も、平等に充電できる環境を与えてしまってもいますので、

そのようなメーカーの電気自動車を充電させないとまではいかないものの、

やはりその自動車メーカー独自の充電課金制度を整えて、その料金体系の制度には、その自動車メーカーの電気自動車しか加入することができず、

それ以外の一般利用は可能だが、多少なりとも割高となる、というような課金システムを構築するべきですし、

これこそが、電気自動車としての質だけでなく、充電インフラも差別化要素となることにつながり、

結果として各自動車メーカーが、本気で充電インフラ構築にコミットしていくインセンティブにすらつながっていく、ということですね。

何れにしても、日産についてはアリア、そしてトヨタについてはbZ4Xという、各社の威信をかけた電気自動車が一気に市場に投入されるわけであり、

しかしながら、それに見合った公共の急速充電インフラについては、

そのe-Mobility Powerの抱える構造的な欠陥も相まって、残念ながら今後も期待することができず、

その電気自動車を発売する自動車メーカーが独自に設置を進めていくことこそ、そのメーカーの電気自動車が売れる唯一の方策であると確信していますので、

特に今回の提言である、経路充電インフラ三大原則の本質を理解した上で、

選択と集中的に、実用的な充電インフラの設置を進めていくべきなのではないでしょうか?

From: GoGoEV

Author: EVネイティブ