【日産アリアとBZ4X購入決定?】高速道路上のEV充電器を大量設置するという超朗報!だが、、

e-Mobility Power

電気自動車の長距離運用において必須となる高速道路上の急速充電器を、たったの4年後までに現状の2.5倍である、なんと1000口にまで大幅拡充するという、電気自動車オーナーにとっての朗報が報道されましたが、

その電気自動車用の急速充電器設置計画に関するただの朗報とはいかない、想定される問題点、および、その改善提案についてを、現状の日本の充電インフラの実情とともに改めて解説します。

高速道路上の急速充電器を大幅拡充へ

まず、今回の報道に関してですが、読売新聞による独自取材によって明らかとなったことで、

2021年現時点において、やはり同セグメントの内燃機関車と比較しても、その満充電あたりの航続距離で劣る電気自動車に乗って、長距離を走行する場合に必須となる、

電気自動車用の急速充電器、特に、その長距離走行においてほぼ必ず利用される高速道路上における急速充電器の数を、

現状の400口という数から、4年後である2025年までには2.5倍もの大幅拡充によって、およそ1000口に達するという計画が明らかとなってきたのです。

そもそも論として、現状の電気自動車の急速充電器の普及状況についての前提知識を改めて共有していきたいのですが、

まず、今回フォーカスしたい高速道路上の急速充電器だけに関わらず、

2021年8月27日現時点で、日本全国に設置されている全ての充電器の数は19284箇所存在していて、

例えば内燃機関車に必須のガソリンスタンドの数というのは、全国でも30000箇所をすでに割り込んでしまっているくらいですので、

この数値だけを聞くと、もはや電気自動車用の充電器というのは、ガソリンスタンドの設置数に肉薄し始めているんだと感じてしまうのですが、

この充電器の数には、満充電するまでに半日以上を要してしまうような、

基本的には自宅やホテル、ショッピングセンターなどに設置してある普通充電器も含まれてしまっていて

したがって、皆さんが一般的にイメージする、

特に、長距離移動の際に、30分程度の充電時間でもってある程度の充電を完了させることのできる急速充電器以外の数も、多分に含まれてしまっているのです。

From: GoGoEV

そして、その全ての充電器から、急速充電器の設置台数のみに絞ってみると、

その数は7841箇所と、全ての充電器の半分以下という割合にまで低下してしまいますので、

そもそも電気自動車に興味がある方で、自動車ディーラーや電気自動車を勧めてくる友人などが、この2万台弱という充電器の設置台数だけを取り上げて、

電気自動車の充電インフラは相当整っているので、インフラ面の心配は少ないなどと説明してきた場合は、

すぐにでもその方の話を聞くことを中断することをお勧めしたいと思います。

”低速な”急速充電器の存在

しかしながら、この7841箇所という数値というのも全く信用するに値せず、

一口に急速充電器とは言っても、そのスペックが大きく異なっているという点が最も重要であり、

簡単に言ってしまえば、ガソリンスタンドによって、ガソリンを給油できるスピードが全く異なってしまうという意味であり、

例えばこの20kWという低速のカテゴリーの急速充電器の場合、

仮に30分間充電したとしても、理論値でも10kWh、基本的には9kWh程度が実際の充電量となりますが、

もし日産リーフで9kWhを使用して走行できる航続距離に変換してみると、

高速道路を時速100kmでクーラーをつけても達成可能であるというような、実用使いにおいてもっとも信用に値するEPAサイクルという基準において、

たったの50km程度しか走行することができない、

つまり、その低速カテゴリーの急速充電器で30分間充電したとしても、たったの50km程度分の充電量しか充電することができないのです。

よって、実用的ではない、その低速、および中速カテゴリーを除外した急速充電器の数に絞ってみると、

その急速充電器の設置数は3908箇所ということになり、

このようにイメージしてみると、やはり最初に聞いた、2万台弱という充電器の設置台数とは、かなりイメージが異なってきているのではないでしょうか?

50kW級急速充電器は”急速充電器”ではありません

しかし、その実用的な急速充電器と説明した高速カテゴリーの充電器に関しても、果たしてこれが実用的なのか、

これは現在の電気自動車ユーザーがどう思うのかではなく、いわゆる世間一般がどう思うのかという話ですが、

例えば、50kWという出力を発揮することができる急速充電器で、先ほどの計算と同様に30分間充電した場合、

その充電量は理論値で25kWh、実際の充電量ですと概ね22kWh程度となり、

日産リーフのEPA航続距離に換算してみると、概ね120km程度というのが、30分充電した回復することができる航続距離であり、

例えば一日500kmの距離を走りきる場合、日産リーフe+であれば、

EPAサイクルの満充電あたりの航続距離である364kmに加えて、

その充電して得られる120km程度の電力量を加えても、やはり500kmにはわずかに達しない

つまり、国産電気自動車の中で最もスペックの高い日産リーフをもってしても、

500kmの距離を走破するというロングトリップにおいて、一回の充電で走破することができないというのが、

この50kWという出力を発揮する高速カテゴリーの急速充電器のスペック、ということなのです。

90kW級の充電器が”最低限のスペック”

それでは、その高速カテゴリーを上回る、さらに高性能な超高速カテゴリーの急速充電器はどうなのかというと、

その90kWという充電出力であれば、同様に30分充電した場合、

理論値で45kWh、現実的にも40kWh程度の電力量を充電することができ、

したがってリーフで計算してみると、240km程度もの航続距離を回復することができ、

したがって、往復500kmの往復においても、30分の充電時間一回だけで、余裕を持って走破することができてしまいますので、

したがって、やはりこの超高速カテゴリーの急速充電器こそが、皆さんの想像する急速充電器の最低限のスペックを兼ね備えた充電器となり、

今後その設置台数の大幅拡充が待望されているのです。

しかし、現時点までの、その超高速カテゴリーの充電器の設置台数というのは、全国でたったの121箇所しか設置されておらず、

したがって超高速カテゴリーの充電器は、2万台弱もの充電器の総数のうちたったの0.6%程度の割合である、とイメージしていただければ、

やはり日本市場において、電気自動車を実用的に運用することは、事実上難しいと結論づけるべきであるという考えが、やはり世間一般の考え方であり、

電気自動車を7年以上運用している一個人の見解としても、同じ結論に至ってしまうのです。

超高速充電器は日本にたったの6か所、、

そして、この日本の極めて脆弱な充電インフラ網に対する前提知識を持った上で、今回フォーカスしたい高速道路上の急速充電器に話を移すと、

そもそも高速道路上におけるサービスエリアとパーキングエリアの数は、上下線合わせておそらく1008箇所程度となっていますが、

その設置台数は424箇所ということであり、

さらに、その中でも高速カテゴリー以上の急速充電器に絞ってみると、それでも402箇所と、

つまり、高速道路上に設置されている急速充電器のほとんどが、その高速カテゴリーの急速充電器であり、

したがって、全てのSA・PAの半分弱にすでに急速充電器が設置されている、ということになります。

ただし、その真の意味で実用性のある超高速カテゴリーの急速充電器に絞ってみると、

なんと驚愕の、たったの6箇所にしか設置されていないという、

つまり、すでに世界で電気自動車戦争が勃発している中においても、

今だに実用的な急速充電器を利用して、高速道路上を移動することは実質不可能な状況、ということなのです。

最大200kW!6台も設置!これ、騙されないでください

そしてそのような背景の中で、現在の日本の公共の充電器を一括に管理しているe-Mobility Powerという充電器管理運営企業が、

現在設置されている424箇所もの高速道路上の急速充電器を、

4年後である2025年までに、1000口にまで増やすという方針を示してきたということになるのですが、

まずこのニュースに関して注意しなければならないのが、1000という数字というのは、設置台数ではなく充電口の数のことであり、

というのも、超高速カテゴリーに該当する90kWの急速充電器については、1つの充電器に対して合計して2つの充電口を搭載しているケースが多く、

よって、充電器の設置台数の数よりも多い数値となる、という点なのです。

さらにポイントであるのが、その2つの充電口を備えている急速充電器の場合、

仮に2台の電気自動車が充電した場合、その最大90kWという出力を両車種に振り分けるというアルゴリズムが組まれ、

したがって状況によっては、最大45kW程度の充電出力しか発揮することができない

つまり、超高速カテゴリーに該当する急速充電器であったとしても、

2台目の充電がスタートすると、そのその充電スピードが低下、少なくとも90kWという充電出力を発揮することができなくなるのです。

そして、こちらは以前にも詳細に取り上げている、今後その高速道路上に設置されていく、

最大200kWという超高出力を発揮することのできる急速充電ステーションについてですが、

こちらも複数の充電口が設置されていて、こちらは1つの充電器に対して1つの充電口ではあるものの、

そのサービスエリアに設置される6つの充電器を合計して200kWという出力が適用される、

つまり、先ほどの90kWの急速充電器を2台でシェアすると、その出力を割り振るといった挙動と全く同じく、

したがって、3台が同時に充電をスタートすると、その最大充電出力である90kWを発揮することができず、

50kWに強制的に制限されてしまう、ということなのです。

こちらのe-Mobility Powerが今年の秋から、神奈川の大黒パーキングエリアを皮切りに設置を開始する、

6台の充電器を備えた200kW級急速充電ステーションに関する詳細な解説は、以前の動画を改めて参照いただきたいとは思いますし、

そちらでは主に、200kWというスペックでありながら、

そもそも1つの充電器に対して、最大90kWという、長距離運用における最低限実用的なスペックしか達成することができないという点、

さらにはその200kWを6台の充電器でシェアするということで、

3台以上の電気自動車が充電した場合、その充電出力が制限され、期待通りの充電時間で充電を完了させることができなくなってしまうのです。

最大充電出力90kWも、実は達成できない?

しかも、さらにやばい点であるのが、

その最大出力である90kWという数値は、その充電時間の最初の15分しか発揮することができず

その残りの15分間というのは最大50kWに制限される、つまり200kW級の急速充電器とアナウンスされ、

かつ、今後8-10年先を見据えた先行投資的な設備投資と謳っている、このe-Mobility Powerが展開を始める急速充電ステーションというのは、

そもそも1台に対しては、半分以下のスペックである最大90kWという充電出力が上限であり、

なおかつ、その90kWという上限すらたったの15分しか許容することができない、

しかもそのような充電ステーションが、e-Mobility Power側から見ると、8-10年先を見据えた先行投資であると見えている、

それに対して350kW級の超急速充電器を、6-10台程度設置している超急速充電ステーションを、

大陸全土に爆速で配備を進めている欧州やアメリカというグローバルを知ってしまうと、

このe-Mobility Powerさんの発言は、別の地平から見てきた言葉であると感じてしまうのは、私だけでしょうか?

充電は一回30分?それただの惰性ですよね?

しかしながら、このように現状を批判ばかりしていても、それはそれで何も問題は解決していきませんので、

ここからは、すでにこのe-Mobility Powerが設置を進める200kWを6つの充電器でシェアするという充電ステーションを、今後も設置を進めていくという前提で、

そのハード面以外で、どこを変更すれば、電気自動車ユーザーにとって、よりマシな公共の急速充電ステーションとなるのかについてを考えていきたいと思います。

まず、私の改善提案というのは大きく2点存在し、

まずは何と言っても、充電時間の上限である最大30分という制約を即時撤廃するべきであるということで、

もうそのスペックの低い充電器という、ハードを変更することができないまでも、

確かにその充電器の設置台数という観点で言えば、

1ステーションにつき6台設置されれば、当面の間は、年末年始などの超繁忙シーズンを除いて、充電渋滞となる可能性は限りなく低く、

したがって、もともと初代日産リーフの充電時間を前提とし、後続車両の充電渋滞を緩和する目的であった30分という充電時間の上限を、

諸外国と同様に、この際完全に撤廃することで、確かに充電時間が想定よりも伸びる可能性があるものの、

それでも一回の充電のみで、しっかりと希望通りの電力量を充電することができるようになる、ということなのです。

さらに、その30分という時間というのは、車内で充電を終了するのを待つには長すぎる一方で、

サービスエリア内の飲食店に食事をしにいくのには、明らかに短い充電時間となり、

まさに、その初代日産リーフからの惰性で続いてきた慣習なだけである断言できますので、

このような観点からも、早急にこの30分という充電時間の制限を撤廃するべきである、ということですね。

従量課金制の導入の本格的な議論は不可避

また、もう一点として、やはりこの機会に、

充電時間単位での課金システムを終了し、充電できた電力量単位という従量課金の制度に移行するべき時なのではないかということで、

今回のように、後続車両が次々ときてしまった場合、もともと期待することのできた充電出力を途中から維持することができなくなってしまい、

予想以上に充電に時間がかかってしまうというだけでなく、

現状の充電にかかる料金の計算方法というのは、充電時間1分あたりという時間制課金制を採用しているため、

後続車が次々と充電し始めればし始めるほど、最初に充電をスタートしていた電気自動車の充電効率が、加速度的に低下していく、

要するに、同じ時間充電していても、充電できる電力量も加速度的に低下していく

故に、後続車が来たせいで、充電にかかる料金が事実上高額となってしまうのです。

したがって、仮にそのように充電時間が遅くなったとしても、

従量課金制を採用することによって、その充電料金だけは、充電できた量によって課金される、

つまり、充電時間の延長に対するストレスは残るものの、充電料金に対するストレスはほぼなくすことができますので、

確かに電力体系の法律の制約上、現状従量課金制の採用はできないのが実態ではありますが、

むしろ逆に、今回導入されるように充電器のシェアリング機能が全面的に導入されるのであれば、

この従量課金制の導入も同時に議論していかないと、

充電の時間に対する不満だけでなく、その充電料金に対する不満という新たな問題すら発生してしまうのです。

電力会社にEVオーナーファーストな充電器を設置できると思います?

このように、電気自動車発展途上国である日本というのは、

この充電インフラ、特に長距離の運用の際にマストである高速道路上の、実用的な急速充電インフラ網があまりにも脆弱であり、

今回ようやくそのインフラ拡充のために、新たな急速充電ステーションが建設されていく運びとはなりましたが、

残念ながら、今回8-10年先を見越して導入される急速充電ステーションの質は、

今後発売される日産アリアを皮切りとする、質の高い電気自動車には、そもそも対応できない最大90kW級というスペックに留まってしまうなど、

繰り返し説明している通り、残念ながら日本市場の公共の急速充電器を使用して、

電気自動車をストレスなく運用する未来は、今後10年経っても訪れることはないでしょう。

しかしながら、そのストレスを少しでも改善できる可能性のある施策として、

まずは、充電時間の制限時間30分という制約を即時撤廃することによって、

充電時間を気にせずに、サービスエリアなどで食事休憩するなど、その休憩時間をストレスなく過ごすことにつながり、

さらに、その充電器の特性上、一定の充電スペックを発揮することができない、

かつ、後続車によってさらにその性能が悪化する可能性があるため、

充電時間に対して課金するのではなく、充電量によって課金する従量課金制の導入を進めるために、ロビー活動を超積極的に進めなければならない、

逆に、この2点の改善すら行わないで、

とてもではないですが、今後発売される日産アリアを皮切りとする、質の高い国産電気自動車をお勧めすることなど、口が裂けても言えませんし、

東電をはじめとする電力会社に首根っこを掴まれている今回のe-Mobility Powerが、

真の意味で、電気自動車ユーザーのために、そして電気自動車を推進するために行動する気があるのか、

懸命な判断を期待したいと思います。

From: 読売新聞

Author: EVネイティブ