テスラが現在アメリカのテキサスに目下建設中である、ギガファクトリー5において、最新のセルの種類である4680セルを採用することをイーロンマスクが発表し、
したがって、最初に生産されるモデルYの航続距離が、現状の500km程度を大きく超えて700km近くにも達する可能性が浮上し、競合車種を寄せ付けない異次元のスペックを達成してくる可能性について、徹底的に解説します。
現在巨大工場を2つも同時建設中
まず、今回のギガファクトリー5に関してですが、テスラが現在アメリカのテキサスに目下建設中である、テスラ第5のバッテリー生産工場兼車両生産工場であり、
現状では今年である2021年末までの生産スタートを見込んでいるのですが、
このギガファクトリー5と同時並行で建設が目下進行中であるのが、ヨーロッパのドイツベルリンに位置するギガファクトリー4となっていて、
こちらも全く同様に、車両を生産するだけではなく、電気自動車においてコアテクであるバッテリーも生産することによって、その調達コストを抑えることができ、
例えば現在アメリカのネバダに位置にし、パナソニックと協業してバッテリーを生産しているギガファクトリー1から、そのベルリンやテキサスにわざわざバッテリーを輸送する必要がなくなるのです。
そして、今回のテキサスに位置するギガファクトリー5と、ドイツベルリンに位置するギガファクトリー4については、どちらも、まずは現在世界的に人気のセグメントであり、
お膝元であるアメリカ市場ではすでにミッドサイズセダンのモデル3よりも販売台数を伸ばしている、モデルYの生産をスタートするとアナウンスしていて、
やはり現在カリフォルニアのフリーモント工場と中国上海のギガファクトリー3でしか生産されていない状況では、グローバルの需要を満たすことができていないということもあり、
このモデルYの生産拡大に関しては至極当然の流れであると容易にイメージすることができるのですが、
以前の動画においても解説している通り、実は今回建設中のギガファクトリーにおいて生産されるモデルYの質は、現在生産中のそれとは全く異なることになるということで、
特に、ドイツベルリンのギガファクトリー4で生産されるモデルYに関しては、その電気自動車としての質が極めて向上する公算ともなっているのです。
バッテリーの革新技術がいくつも発表されたBattery Day
というのも、テスラが昨年である2020年に開催したBattery Dayという、最新のバッテリー技術を発表するイベントにおいて、
その新たなバッテリー開発技術によって、バッテリー生産のコストを低減したり、そしてその航続距離を大幅に向上させることができたりという、さらなる改善についてをプレゼンテーションしていたのですが、
特に後者である、新たなバッテリー技術を採用することによって、その航続距離をアップさせることができるという点が、多くの皆さんもイメージしやすい点であると考えられますが、
大きく4種類の改善アプローチが存在し、
まずは、テスラに興味がある方ですと一度は聞いたことがあるかもしれない、最新のバッテリーセルの種類である4680セルの採用というアプローチとなっていて、
この4680セルの名称というのは、直径が46ミリ、そして高さが80ミリのサイズのバッテリーセルであることから来ていて、
バッテリーセルの大きさが大きくなればなるほど、そのエネルギー量や量産コストを下げることができ、
今回の4680セルに関しては、現在生産されているモデルYに採用されている2170セルよりも倍以上の太さとなるくらいの大きさですので、
したがって、その量産コスト、そして航続距離の向上に期待することができ、
テスラは、この4680セルを採用するだけで、現状よりも16%もの航続距離の改善を見込むことができると説明しています。
マイナス側の素材はシリコンでコーティング
次に、その搭載されるリチウムイオン電池についてですが、そのマイナス側、つまり負極側に採用される素材である負極材の種類の変更というアプローチとなっていて、
現在多くのメーカーが、この負極材にグラファイト、別名黒鉛を採用しているのですが、
テスラに関しては、シリコンをコーティングするという方法をとり、
このシリコンという素材は、現状の主流であるグラファイトと比較しても、より多くのエネルギー密度を達成することが可能であり、
したがって、この負極材の種類を変更することによって、現状よりも20%もの航続距離の改善を期待することができたり、5%ものコスト削減に貢献することもできるのです。
プラス側の素材は車種によって適材適所に使い分け
次に、そのマイナス側であった負極側ではなく、プラス側である正極側の素材の変更というアプローチとなっていて、
こちらの正極材の種類に関しては、1種類の素材に限定するのではなく、様々な種類の素材をその車種ごとに使い分けるという方法であり、
特に、私自身も所有しているモデル3のエントリーグレードであるスタンダードレンジ+に採用されているバッテリーの種類が、リン酸鉄リチウム、別名LFPと呼ばれる正極材の種類であり、
このLFPに関しては、鉄という世界中どこでも手に入る素材を採用していることによって、その製造コストが低いというメリットがあるものの、
そのエネルギー密度、つまり航続距離が短くなりやすいというデメリットも存在するのですが、
逆に、そのエネルギー密度を極限まで高めなければならない、例えばピックアップトラックであるサイバートラックや、配送トラックであるSemiなどに関しては、
High Nickelと名付けられた、文字通りニッケルの割合を高めた正極材の種類となっていて、
このニッケルというのは、エネルギー密度を高めることができる素材ではあるのですが、
例えば、現在レアメタルとしてその安定供給という側面で懸念されているコバルトよりかはマシであるものの、やはり希少物質であることには変わりませんので、
何れにしてもこのように、正極材の種類に関してはどれも一長一短である、
裏を返せば、その車種にマッチする正極材の種類を使い分けることによって、そのニーズにあった電気自動車としての質、そしてそのコストとをうまくバランスを取ることができる、ということなのです。
そして、こちらの正極材を適材適所に使い分けるというアプローチによって、現状よりも4%ほどの航続距離を改善し、12%ほどのコスト削減を見込むことができるとも説明されています。
航空機から着想を得た革新的なバッテリー搭載方法
そして最後に、そのような正負極材の素材を変更したバッテリーの搭載方法を刷新するというアプローチに関してですが、
そもそも現在の電気自動車の一般的なバッテリーの搭載方法というのは、いわゆる単三電池のような、バッテリーセルという最小単位が存在し、
そのバッテリーセルをいくつも組み合わせることで、モジュールという単位を構成し、
さらに、そのモジュールをいくつも組み合わせることによって、最終的なバッテリーパックという単位を構成して、そのバッテリーパックを電気自動車の車両底面に搭載しているのですが、
例えば、私の所有している現在上海工場で生産されている、モデル3スタンダードレンジ+に関しては、その中間の単位であったモジュールという単位を採用しないで、
最小単位であるバッテリーセルを、直接バッテリーパックに詰め込むという、Cell to Packという搭載方法を採用し、
そのモジュールという単位を排することによって、その分だけより多くのバッテリーセルを詰め込むことができる、
故に、より長い航続距離を達成することができているのです。
そして今回テスラが新たに開発してきたのが、その最終単位でもあったバッテリーパックすらも撤廃して、バッテリーセルを直接シャシーに埋め込むという、
Structural Battery Pack、日本語で言うなれば、シャシー一体型バッテリーパックという搭載方法となっていて、
こちらは、飛行機の燃料タンクから着想を得たを説明されていて、
このように、当時の飛行機では燃料タンクと機体のボディの間に空間が生じてしまい、その分だけ燃料を詰め込むことができていなかったのですが、
現代の飛行機に関しては、ボディ一体型として燃料タンクを構成していますので、その搭載燃料を最大化することができ、
したがってテスラに関しても、そのバッテリーパックという単位を廃止することによって、その分だけより多くのバッテリーセルを詰め込むことができる、
故に、先ほどのCell to Packよりもさらに長い航続距離を達成することができるのです。
そして、このシャシー一体型バッテリーパックの採用によって、現状と比較して14%もの航続距離の向上を見込むことができたり、7%ものコスト削減も見込むことができるとアナウンスしています。
全てを総合すると、航続距離は1.5倍へ
よって、ここまで説明してきた、
- バッテリーセルの種類を最新の4680セルに変更
- バッテリーセルの負極材の種類をシリコンコーティングに変更
- 正極材の種類も、そのセグメントによって適材適所に使い分け
- Structural Battery Packと呼ばれる、いわゆるシャシー一体型バッテリーパックという、新たなバッテリー搭載方法の採用
この4つのアプローチを全て採用した場合、最も気になるその航続距離に関しては、現状と比較して、
なんと衝撃の54%も改善することができる計算となる、
つまり、現行のテスラの車両の航続距離が500kmの場合、なんと、その航続距離が770kmにまで向上するということになるのです。
2021年中に生産されるモデルYも航続距離1.3倍か
そして、ここまで解説した前提条件を元に、冒頭説明したドイツベルリンのギガファクトリー4で生産されるモデルYについては、
この最新のバッテリー技術のうち、4680セルと、シャシー一体型バッテリーパックの2つを採用するとイーロンマスクがツイートしていますので、
つまり、その2つの新技術の採用によって、合計して現状よりも30%もの航続距離を達成することができる計算となり、
現状発売されているモデルYロングレンジの航続距離が、高速道路を時速100kmでクーラーをつけても達成可能であるというような、実用使いにおいて最も信用に値するEPAサイクルにおいて、525kmですので、
つまり、ドイツベルリンのギガファクトリー4で生産されるモデルYの航続距離は、最も信用に値するEPAサイクルにおいても、682km程度にも達するのではないか、という推測が成り立つのです。
そして、この直近においてさらに明らかになってきていることというのが、
そのギガファクトリー4と同時並行で建設している、テキサスのギガファクトリー5において生産されるモデルYに関しても、
現行の2170セルではなく、4680セルを採用するとイーロンマスクがアナウンスしてきたということで、
つまり、テキサスで生産されるモデルYについても全く同様に、その満充電あたりの航続距離がEPAサイクルにおいてでも700km近くを達成してきてしまうのではないか、ということなのです。
最初は超限定生産or最上級パフォーマンスグレード設定かも
ただし、この4680セルに関しては、すでに2021年第一四半期の決算発表でも説明されている通り、その大量生産にはまだまだ時間がかかってしまうと説明され、
早くとも12ヶ月、うまくいっても18ヶ月程度の時間を要する、
つまり、どんなに早くてもその量産体制を構築するためには、1年以上もの歳月を費やしてしまうということであり、
したがって、イーロンマスクがアナウンスしている通り、ギガファクトリー4とギガファクトリー5のどちらにおいても、その初めて生産され、4680セルを採用するモデルYは、
当面の間は、その生産台数が大幅に制限される公算ということになると推測できるのです。
さらに、そもそも論として、4680セルを採用したモデルYと、現状カリフォルニアのフリーモント工場で生産されている現行型の2170セルを採用したモデルYとで、
これほどまでに電気自動車としてのスペックが変わってくれば、ほとんどのユーザーは、フリーモント製のモデルYの購入を控え、
なんとかしてテキサス製のモデルYを購入しようとして、買い控えなどの混乱が発生する可能性が高いですので、
つまり、現状2021年末までの生産スタートを表明しているテキサス製のモデルYに関しては、その値段設定をかなり高めに設定してくる可能性があり、
個人的にはおそらく、パフォーマンスグレードのみにこの4680セルを採用したグレードを設定してくるか、
もしくは、間も無くその納車がスタートするフラグシップセダンであるモデルSの最上級グレードであるPlaid+のように、
パフォーマンスグレードのさらに上をいく最上級グレードを設定してくるのか、
こちらは現時点では推測の域を出ませんので、今後の公式のアナウンスを待ちたいとは思います。
日産アリア&トヨタBZ4Xでは勝負にならない
何れにしてもこのように、現在目下建設中であるギガファクトリーから生産されるミッドサイズSUVであるモデルYに関しては、どちらも最新の4680セルなど、最新のバッテリー技術を最初から採用し、
それによって、その航続距離が最大30%程度もアップする公算であり、
おそらくその航続距離は、600kmを大きく超え700km近い距離を達成してくることが予想でき、
仮にこれが事実であった場合、現在ミッドサイズ電気自動車SUVとして競合車種と目されている、フォードのマスタングマックEやフォルクスワーゲンのID.4、
Ford Mustang Mach E Volkswagen ID.4
さらには、我々日本勢である日産アリアやトヨタのBZ4Xでは、完全に太刀打ちできなくなるほどのスペックを、達成してくる公算ともなりそうなのです。
Nissan Ariya Toyota BZ4X
したがって、とにかくその最新のバッテリーセルである4680セルの本格量産が始まる前までに、早く競合メーカーは自社の電気自動車SUVの販売を促進し、販売の機会ロスを最小限にしながら、
それと同時に、やはりテスラがバッテリーデイにおいて発表してきたように、少なくとも自社内でバッテリーの研究開発を加速させ、
そして、そのバッテリーを自社内で生産できる体制を構築していかなければ、今回主に解説したような電気自動車としての質だけではなく、
その価格競争力という観点においても、テスラに全く歯が立たなくなってしまうことは、火を見るよりも明らかなのではないでしょうか?
航続距離800km&300万円台のモデルYも射程圏内
ちなみに、今回の解説を聞いてお分かりかとは思いますが、
そのモデルYの30%もの航続距離アップの可能性というのは、テスラのバッテリー技術革新の、ほんの序章に過ぎないということであり、
その航続距離は、さらにアップし、最大で54%、つまり、現状の1.5倍以上も高まる公算であり、
しかもその上、4680セルの採用によってさらなる充電スピードの短縮、
さらに、そのバッテリーのコストに関しても、最大で56%も抑制することができますので、
これらが全て揃った暁には、EPAサイクルにおける航続距離が800km、しかもその値段設定が30000万ドル台、日本市場においてでも、400万円強程度、補助金などを適用してしまえば、300万円台の、
将来的に完全自動運転に対応可能で、常にワイアレスアップデートによって機能をアップデートすることができる、ミッドサイズ電気自動車SUVを購入できてしまう世界線が、割と現実に存在してしまう、
この驚愕の未来を想像するだけで、夜も眠れないのは私だけでしょうか?
From: Tesla Battery Day
Author: EVネイティブ
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