【日本メーカーピンチ】バイデン政権のEV急加速政策によって、日本製EVへの補助金が消滅する可能性

アメリカ

アメリカのバイデン大統領が、フォードの電気自動車を生産する新工場を訪問し、バイデン政権が掲げている総額19兆円にものぼる超大規模な電気自動車への投資の概要を説明しました。

日本メーカーが最重要視するアメリカ市場はEVへ

まず今回のアメリカ市場に関してですが、中国に次ぐ世界で2番目の自動車大国となっていて、どの自動車メーカーも無視することができない重要なマーケットでもあり、

特にホンダや日産、そしてトヨタなどの我々主要日本メーカーに関しては、その北米市場に注力しているのですが、

主要3社の北米市場への依存率は高い From: 東洋経済オンライン

実は電気自動車という観点においては、いまだに発展途上国に留まってしまっていて、

というのも、まず前職であったトランプ政権に関してですが、一貫して地球温暖化対策には力を入れず、むしろ排ガス規制を緩和するという、世界の流れから逆行する政策を採用し、

特に、気候変動に対する世界的な枠組みでもあるパリ協定から脱退するという、かなり大胆な方針転換を行なっていましたが、

そのトランプ政権に変わって、今年の初めに新たに大統領職に就任したバイデン政権というのは、むしろ気候変動問題をトッププライオリティとして、それを主軸に雇用を創出していくという政策を採用するとしていますので、

特に本チャンネルが関心を置いている電気自動車に関しても、様々な優遇政策が実施されるのではないかと、かなり期待されているという現状となっていました。

そして、政権が発足した当日中にもパリ協定へ復帰する旨の大統領令に署名し、さらに連邦政府が所有している、合計64万5000台もの公用車を、全て電気自動車にリプレイスするとアナウンスしたり、

さらに、アメリカ全土でなんと50万基もの充電器を設置できるように、州政府とも協力して予算をつけ、このインフラ投資によって、最大100万人もの雇用を創出することが可能であるとも説明していて、

とにかく政権自らが、電動化を主導する狙いがあるとみられていました。

EV購入補助が拡大適用される可能性

さらに、バイデン政権側の民主党から新たに提出されている法案というのが、現存している電気自動車購入に対する優遇措置である税額控除の対象範囲を、

今までよりもさらに拡大適応する法案となっていて、

現在においてでも、オバマ政権時代から続く、電気自動車を購入したオーナー向けに7500ドルもの税額控除が適用され、

その電気自動車を購入した翌年に7500ドルがリターンされるという制度が存在してはいるのですが、

実はこの制度には制約が存在していて、その自動車メーカーが、累計で20万台以上の電気自動車を販売すると、その7500ドルの税額控除が適用されなくなってしまうという制約となっていて、

From: Find The Best Car Price

現在、世界最大の電気自動車メーカーであるテスラや、さらには電気自動車ハッチバックであるシボレー・ボルトが一定の成功を収めているGMに関しては、すでに20万台以上の電気自動車を販売してしまっているため、

そのメーカーの電気自動車を購入したとしても、オーナーは7500ドル、日本円に換算して82万近い控除を受けることができず

このように電気自動車に対して古くから積極的に展開し、電動化に貢献してきた自動車メーカーが、現状ではその恩恵を受けることができず、

逆に、時を見て突如として参戦してきた自動車メーカーが、その恩恵を受けることができるというのは不公平なのではないか、という声が一部からは上がっていたのです。

よって、今回のバイデン政権側である民主党が提出した新たな立法として、その20万台という販売台数の上限を大幅に変更し、合計60万台にまで、その税額控除を受けることができる対象台数の上限を引き上げるという旨を含んだ、新たな電気自動車への税制優遇措置法案ということで、

これらの法案をはじめとする一連の電気自動車に対する優遇措置については、以前の動画でも取り扱ってはいました。

EV税制優遇法案の続報には注視

ただし、こちらの税制優遇拡大適用の法案については、まだ議会で審議中という状況にとどまっており、いまだにこの法案が施行されるかは確定していないという点で、

From: Congress.gov

一応現状では、バイデン政権側である民主党が上下院の過半数を抑えていますので有利な情勢とはなっていますが、

特に上院に関しては数が拮抗しているということ、そして、日本の政党政治とは違い法案によって寝返る議員が存在することもあって、

過半数を抑えれば、その法案が必ず通るということでもないという懸念がありますので、

まずは、その法案審議に関する動向についてを注視していかなければならないとは感じます。

バイデン政権の19兆円もの超大規模EV投資

そしてこのような電気自動車に対して積極的な姿勢を見せていたバイデン大統領について、今回新たに明らかになってきたことというのが、

そのバイデン大統領が直々に、アメリカの自動車メーカーであるフォードに赴いて、そこで自身が掲げている1740億ドルもの、電気自動車関連に対する投資の内容、そしてその重要性に関する演説をおこなったということで、

特に強調していたのが、やはり中国の台頭という点であり、特に電気自動車という観点で言えば、まずその販売台数では、現時点においてでも、中国の3分の1程度の販売台数しか達成することができていないということ、

さらに、その電気自動車において最も重要な充電インフラの設置台数に関しても、アメリカ市場は2020年時点で10万器程度の設置台数であるのに対して、

中国市場では、なんと80万器もの電気自動車用の充電器が設置されているという、圧倒的な差となってしまっていることを取り上げていて、

バイデン大統領は、これからの自動車の未来は電気自動車であると断言しながら、

この流れが後退する、つまりガソリン車をはじめとする内燃機関車に戻ることはない

とも明確に主張し、

したがって、今後の電気自動車の購入の際の税制優遇を始め、充電インフラへの投資、

また、電気自動車生産における新たな設備投資への支援、さらには、アメリカ国内で電気自動車におけるコアテクであるバッテリーを生産することができるサプライチェーンの構築など、

より具体的なプランを発表してもきたのです。

高級EVは税額控除の対象外に

まず、今回の演説の中の注目ポイントをピックアップすると、

まずは冒頭も説明した、電気自動車購入の際の税額控除についてですが、こちらは現在法案が審議中であり、かつ今回その控除金額などの数値は明確にしてこなかったため、

おそらく審議中の法案の内容がベースとなる、つまり、テスラやGMに関しても税額控除の対象車種となる公算が高まったのですが、

今回追加された注釈というのが、高級車価格帯の電気自動車に対してはこの税額控除は適用されないという点であり、

やはり高級車に対しても同程度の優遇措置を行うのは、明らかに不公平であり、それこそ日本円にして1000万円を超えてくるような車種にも同じく補助金が適用されている、我々日本市場における電気自動車に対する補助金制度も、是非とも今回のバイデン政権に見習って、政策修正していただきたいと思いますし、

今回のアナウンスにはありませんでしたが、バイデン政権についてはさらに、その税額控除を受けることができる対象を、所得に応じて制限する考えも示唆していますので、

こちらも全く同様に、公平性を担保するためには必要不可欠であり、限られた財源を、そのシェア率を高めたい中間所得層に行き届かせるという観点においても重要であるとは感じます。

アメリカ国内で生産されたEVのみ優遇対象か

そしてもう一点のポイントというのは、この税額控除の対象車種を、アメリカ国内で生産された車種に限定する公算が高まったということであり、

やはりバイデン政権の思想でもある、アメリカの雇用を創出するという考え方を体現するためには、ただ電気自動車の販売を促進するだけではなく、

アメリカ国内で現地生産されることによって、雇用の創出を期待できることもさることながら、

例えば、現在世界的な半導体の供給不足によって、その生産体制の縮小に追い込まれてしまっている自動車産業のように、サプライチェーンを他国に依存している状況の場合、

それを人質に、国家間のパワーバランスを捻じ曲げられてしまう懸念がありますので、

やはり国内でサプライチェーンを完結することができている自動車メーカーに対して、優遇措置を実施するという考えは、国家安全保障上必要不可欠であるとも感じますし、

特に電気自動車におけるコアテクとなるバッテリーに関しては、現在テスラ以外は中国などに依存してしまっている現状ですので、

今後の電気自動車時代に安全に移行するためにも、ローカライゼーションは最重要ミッションである、ということですね。

ベストセラーF-150のEVバージョンでベタ踏み

ちなみに、今回バイデン大統領が訪れた、ミシガン州に位置するフォードの工場というのは、電気自動車を生産する専用の工場となっていて、

こちらの隣には、来年中にオープンさせる予定の、フォードのバッテリー生産工場の建設もスタートしていますので、

今回のバイデン大統領の演説がなぜここで実施されたのかという点も、一定の意味合いが込められていますし、

さらに今回の訪問に際して、翌日にワールドプレミアを控える、アメリカでベストセラーの自動車である、F-150というピックアップトラックの電気自動車バージョンである、F-150 Lightningのワールドプレミアが控えていて、

そのプロトタイプにバイデン大統領が自ら運転するというサプライズもあり、時速130km以上まで加速したり、停止状態から時速96km加速するまで4.4秒というパフォーマンス性能を楽しんでいたりしていて、

まさにこの次の日にワールドプレミアをぶつけてきたというのは、話題性という観点から見ても、フォードしてはしてやったりという流れとはなりそうです。

アメリカ製EVの優遇措置に対する日本メーカーの対応

何れにしても、今回のバイデン大統領の電気自動車に対する総額19兆円にものぼる大胆な投資によって、今後のアメリカ市場の電動化の流れが急速に拡大していくことは間違い無いでしょうし、

しかもその上、電気自動車の生産において重要な半導体やバッテリーの、サプライチェーンのローカライゼーションの推進によって、現在海外で電気自動車を生産しているメーカーは、急遽その対応を迫られることになりますので、

現状日産が発売しているリーフはアメリカ国内で生産されていますが、やはりアメリカ市場に大きく依存している我々日本メーカーが、この流れにどのように対応してくるのか、

特に電気自動車に最も積極的な国産自動車メーカーとなるホンダであったり、日本最大の自動車メーカーであるトヨタの電気自動車戦略についても、同時に注目していきたいと思います。

From: White House

Author: EVネイティブ