【豊田社長が物申す】政府の急速充電器設置プランに対する、日本トップの重要な指摘

トヨタ

日本最大の企業であるトヨタのトップである豊田社長が、

政府の提示してきた電気自動車用の急速充電器の設置計画について、特にその設置方法について釘を刺してきましたが、

その質の高い充電器設置プランとは、具体的にどのようなものであるのかについてを、電気自動車特有の運用方法とともに改めて考察します。

全部EVにリプレイスされても電力は足りなくなりません

まず、今回の豊田社長についてですが、日本最大の自動車メーカーであり、日本最大の企業でもあるトヨタ自動車のトップであり、

しかもさらに、日本自動車工業会の会長も兼任しているのですが、

電気自動車という観点においては、政府が昨年である2020年において、2035年までに新車販売に占める電動車の割合を100%にまで高めるという大方針を示したことを受けて、

そのような性急な電動化に懸念を表明しながら、自動車産業に関わる550万人というイメージ動画を公開し、

特にガソリンエンジンの技術が廃れてしまった場合、最大で100万人という単位での雇用の喪失が発生するとも発言し、

世界的な電動化への流れが急加速している中において、やはり世界で見られる、電気自動車への性急な転換に釘を刺しているという立場となっています。

また、その豊田社長は以前の発言において、

仮に全ての車両が電気自動車にリプレイスされてしまった場合、原子力発電所をかなりの数新設しなければならないという類の発言をしていましたが、

本チャンネルにおいては、以前から繰り返している通り、

仮に明日、全ての乗用車が電気自動車にリプレイスされたとしても、その使用電力量は13.5%ほど上昇すると計算でき、

こちらで13.5%の数値を計算しています

私以外にも同様の計算を行なっている数値を見ても、

概ね10%から15%という電力がさらに必要とはなりますが、

それと同時に、日本全体で必要とされる電力量も毎年減っているというのも事実であり、

実際に10年前と比較して、その総発電量は10%以上も減少していますので、

よって、今後も技術革新をベースにしたさらなる省エネの推進であったり、そもそも論として、我々衰退国家である日本市場に関しては、今後急速に人口が減少してもいきますので、

仮に使用電力量が13.5%増えてしまったとしても、いわゆる世間で言われている、全部電気自動車にしてしまったら、電力が足りなくなるだろうがー、という主張は、

そもそも何を根拠に主張しているのか、非常に怪しいということなのです。

ピーク需要の平準化こそEVの持つポテンシャルを発揮可能

ただし、そのトータルで見た発電量においては、ほぼ心配する必要がないと考えられる、いわゆる電力が足りなくなる問題ですが、

ピーク需要という観点では確かに重要な指摘でもあり、

というのも、毎年真夏や真冬シーズン、しかも特に局所局所の時間帯において問題となる、電力逼迫の問題においては、

今後の電気自動車の急速な普及によってさらに問題を悪化させる可能性があるという指摘は重要なのですが、

もちろんこの問題にもしっかりと解決方法が存在し、

そもそも電気自動車を運用された経験がない方ですとイメージすることができないと思われますが、

電気自動車というのは、既存の内燃機関車のように、エネルギー補給のために近くのガソリンスタンドに行くという行為が発生せず、

基本的には自宅やそれに準ずる場所での充電、いわゆる基礎充電がベースとなります。

そして、この自宅等での基礎充電というのは、皆さんがイメージするような、数十分かけて充電するというような急速充電ではなく、

何時間もかけてゆっくり充電する普通充電という充電方法となりますので、それでは非常に使い勝手が悪いだろと思われた方もいるかもしれませんが、

この運用方法というのは、実は皆さんが今手にしているスマートフォンの運用方法と全く同じであるということで、

寝る前に充電プラグを差して、翌朝起きたら満タンという運用方法であると思いますが、

電気自動車も、帰宅後車を降りたら充電プラグを差しこみ、翌朝の出発時においては、ほとんど満タンの状態で出発というような運用方法となりますので、

そもそもスマホの充電に何時間かかるのかということを気にされた方はほとんどいらっしゃらないと思いますが、

実は電気自動車においても、基礎充電において充電の時間が一晩かかったとしても、全く問題とはならないのです。

そして、この基礎充電によって、電力逼迫の問題がどう解決に結びつくのかという点に関してですが、

つまり、例えば100kWという高出力の急速充電器を使って、仕事を終えて自宅に帰宅する前に充電するという運用方法を全員が行なってしまえば、

まさにそのような電力需要が増加する夕方以降にかけて、電気自動車のせいで、より電力逼迫問題が深刻化してしまうのですが、

今回の基礎充電という運用方法であれば、別に帰りがけにわざわざエネルギー補給のために充電をしに行くという、

今までの内燃機関車と同じようなエネルギー補給の仕方をせずに、

そのまま自宅に帰宅し、車を降りたついでに充電プラグを差し込んでおくだけで、翌朝の出発時には満タンとなっていて、

そして、基礎充電における充電出力は概ね3kW-6kW程度という、急速充電と比較しても圧倒的に低出力である、

つまりそれだけ電力需要への影響を低減することが可能であり、

さらに、今後のコネクティッド技術の革新によって、仮にそのユーザーの走行データを分析し、平日は1日に数十キロ分しか走行していないということが判明すれば、

そのような特に電力需要が高まることがわかっている猛暑日や大寒波襲来時においては、

その充電量を全ての電気自動車が少しづつ、少なく抑えたりであったり、

その局所局所の充電開始時間をずらすであったりというような、エネルギーマネージメントが可能となるのです。

さらにその上、むしろ電気自動車であれば、電力逼迫時において、電力平準化にも貢献することができ、

電気自動車というのは大容量のリチウムイオンバッテリーを搭載していますので、

例えば2日後に大寒波が襲来し、暖房需要の増加で電力が逼迫することがわかっているのであれば、その前に、日本中の電気自動車が少しづつ多めに充電しておき、

それを、暖房需要が急増する局所的な時間帯において、むしろそのためておいた電力で、自宅の暖房にかかる電力を賄ったり

もはや発電所であるグリッド側に、ためておいた電力を供給したりすることも可能となりますので、

このように、電気自動車というのは、日本の電力逼迫問題のネガティブな側面になってしまうのではなく、

もはや逆に、この電力逼迫問題の強力な解決策にもなり得てしまうほどのポテンシャルを秘めているのです。

世界はすでにその絵空事を爆速で検証中

そして、このことを話すと、そんな絵空事を実現できるわけないだろとご批判をいただくのですが、

なんとすでに、自動車メーカー自身が構想し、実際に実証実験すらも開始しているということで、

それが今回のトヨタと肩を並べ、世界最大級の自動車グループを形成しているフォルクスワーゲングループとなっていて、

すでにドイツのある街の1250ものアパートメントに、巨大な蓄電池を導入し、その一画においてエネルギーマネージメントを実証実験中であり、

そして今後は、フォルクスワーゲングループで発売される電気自動車に、自宅側に電力を供給することが可能となるV2Home機能も実装し、

それを含めたエネルギーマネージメントを実験しながら、

最終的には、一軒家や集合住宅、そしてフォルクスワーゲングループの電気自動車や、大規模な蓄電設備、さらには発電所であるグリッド側とを、

全てをクラウドベースで紐づけてしまうことによって、国全体におけるエネルギーマネージメントの最適化を測ろうとしているくらいですので、

もはや車を作る自動車メーカーが先陣を切って、一国のエネルギーマネージメント事業も手がけようとしているという、

まさに今回の豊田社長の言葉を借りれば、100年に1度の大変革時代ということなのです。

電力足りなくなるだろうガー、聞け

何れにしても、その豊田社長が懸念していた、電気自動車が増えることによって電力が足りなくなる問題というのは、

そもそも論として、明日から全ての自動車が電気自動車にリプレイスされるというような天変地異でも起こらない限り、マクロな視点では問題とはならず

さらに、ミクロ的な視点における、その局所局所の時間帯における電力逼迫問題に関しても、こちらは国全体で取り組むべき安全保障上の問題とはなりますが、

そもそも電気自動車は基礎充電が一般的な運用方法となり、想像されるような電力需要過多には繋がらないという点、

むしろ大容量バッテリーを搭載し、そのバッテリーにあらかじめ電力を貯めながら、それによって電力逼迫をむしろ安定化させるポテンシャルを、電気自動車が秘めているという点を考慮すれば、

やはりこの世界的な電気自動車への流れをむしろ逆手にとって電気自動車を推進し、電力逼迫問題の解消を図るという、

国全体の安全保障問題の解決を図ろうとするという考え方の方が、よっぽど未来的な思考法であり、

実際問題として、ドイツでは同じ自動車グループであるフォルクスワーゲングループが主導して、国全体のエネルギーマネージメント事業を担おうとしているくらいでもある、ということですね。

政府の充電器設置プランに物申した豊田社長

そして、そのような性急な電動化に対して慎重な姿勢を見せていた、豊田社長に関して今回新たに明らかになってきたことというのが、

直近で開催された自動車工業会の記者会見内において、

政府が打ち出してる、電気自動車における充電インフラである急速充電器の大幅拡充に関して、特にその設置方法についてを釘をさしながら、

自分自身の自動車業界をあてにするべきであるという、むしろその充電インフラの拡充に積極的に協力する姿勢を示したのです。

まず、そもそも今回の豊田社長が指摘した政府の充電インフラに対する方針についてですが、2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略という題名で、

日本の産業の多岐にわたる分野において、カーボンニュートラルの実践のためにどのような戦略を採用することができるのかをまとめてきたもので、

特に電気自動車という観点においても様々な施策を打つ予定を示唆していて、

まずは、電気自動車をはじめとする電動車に対して、高速道路利用時のインセンティブを付与したり、国立公園の駐車場利用の際の料金も減免するという方策によって、

現状よりもより電気自動車をはじめとする電動車の普及を加速させようとする意図が見られるとは思います。

そして、特に電気自動車や水素燃料電池車の運用において最も重要となる、充電・充填インフラを今までよりも普及させる方針も示してきていて、

まず水素燃料電池車における水素の充填インフラに関しては、2030年までに全国で1000基程度設置するとしながら、

電気自動車における充電インフラに関しては、まずは、老朽化設備を更新する他、既存のインフラを活用するために、ガソリンスタンドに急速充電器を1万基をはじめ、

公共の急速充電器を合計で3万基設置し、さらに、先ほど解説していた急速充電器よりも圧倒的にスピードが遅い、普通充電器の設置も12万基進め、

合計して15万基もの電気自動車用の充電器を全国に設置するという成長戦略を示しているのです。

そして、この成長戦略に対して今回豊田社長が、

完全な電気自動車であるBEVも、水素燃料電池車であるFCEVにおいても、政府主導でインフラを構築する動きに謝意を示した一方で、

目標に定めた設置数だけを目標とし、その設置された充電器が結果として稼働率が悪いという状況にならないようにしていただきたいとも発言し、

その設置プランについて釘をさすという場面があったのです。

日本トップの経営者による重要な指摘

まず、こちらの豊田社長の充電器設置に対する懸念というのは、まさに的を得ている発言となっていて、

というのも、冒頭詳しく解説したように、電気自動車のエネルギー補給手段というのは、既存の内燃機関車におけるそれとはまるで違い、

とにかく自宅などにおける基礎充電を併用することができてしまいますので、

現状のガソリンスタンドのように、別に街中いたるところに設置してある必要が存在せず、

むしろ自宅などで満充電にできる設備を整えてしまえば、そのような街中における急速充電器の設置は、むしろ最小限に留めることが可能なのです。

しかしながら逆に、そのような街と街を移動するような長距離走行時においては、むしろ既存の内燃機関車よりも燃料補給のインフラが必要となりますので、

特にそのような長距離走行時において、ほぼ必ず利用される、高速道路上や幹線道路沿いの道の駅などに、今までとは異なる規模での急速充電器の設置が必要である、

よって、その目標設定した設置台数の数値だけを達成するために、急速充電器を設置しやすい場所だけに設置し、

本当に必要となる、高速道路上や主要幹線道路沿いに集中的に設置するという、最も合理的な急速充電器の設置を達成できない可能性があり、

したがって、充電器の数は増えているものの、その利便性は悪く、しかも必要のない充電器の稼働率が悪く、経済性も悪化するばかりとなり、

その充電器を更新するのをやめ、結果的に電気自動車の発展を阻害してしまう可能性すらはらんでいるのです。

From: 朝日新聞デジタル

したがって、このような意味において、今回豊田社長がその急速充電器の設置方法に釘を刺し、より合理的な場所に設置するべきであるという主張は、

電気自動車の合理的な充電インフラ設置という観点において、最も重要な指摘であり、

是非ともこのことを肝に命じて、特に公共の急速充電インフラの設置を担うであろうe-Mobility Powerには、

高速道路上などの経路充電にフォーカスするという、急速充電器設置における選択と集中作戦を実行してほしいと、改めて確信することができるのではないでしょうか?

ガソリンスタンドに急速充電器は必要なし、マジで

ちなみに、この選択と集中という方策をしっかりと履行すると、すでに政府の成長戦略内で示されている、既存のガソリンスタンドに1万基、

つまり今後9年間で設置する予定の急速充電器の、なんと3分の1が、主に街中に存在するガソリンスタンドに設置されることになりますが、

ここまでの説明を理解された方であればお分かりかとは思いますが、

まさにこの街中のガソリンスタンドへの急速充電器の設置という設置方法こそ、豊田社長、そして私自身が説明してきた、電気自動車の運用において全く重要ではない設置方法の典型例であるのです。

しかしながら、この充電インフラの合理的な設置方法を理解できていない電気自動車オーナーも存在しているくらいで、

今回の豊田社長の発言に対して、トヨタのディーラーの急速充電器がほとんど設置されていないことを取り上げて、その発言を批判していますが、

EVオーナーによるトンチンカン発言

この指摘は全くもって的外れな意見であると断言することができ、

というもの、そもそも自動車ディーラーというのは街中に存在しますので、

まさに先ほど取り上げたガソリンスタンドへの急速充電器の設置という方策と、本質的には全く同一となり、

したがって、自動車ディーラーに急速充電器を設置するという設置戦略は、まさに経済合理性が低い設置方法であり、

繰り返しとなりますが、基礎充電で通勤や買い物などの日々の使用用途はことが足り、

長距離の運用のみにおいて必要となる、高速道路上などの急速充電器である経路充電にフォーカスすべきでありますので、

この発言の意図を汲まず、単純に豊田社長の発言を的外れに批判しているだけのトンチンカンツイート、ということですね。

急速充電器の「選択と集中作戦」を実施できるかが鍵

何れにしてもこのように、電気自動車の運用経験がない方は当然なのですが、すでに電気自動車を運用している方に関しても、

ただ電気自動車への動きに慎重なトヨタからの発言を頭ごなしに否定し、トンチンカンな運用方法を唱えている状況でもありますので、

なぜ電気自動車用の急速充電器を、ガソリンスタンドのような街中に設置することがトッププライオリティではなく、

高速道路上や主要幹線道路上における、経路充電の普及がトッププライオリティであるのか、

そして、これを実現するためには、同時に、自宅やそれに準ずる基礎充電の敷居を大きく下げる必要があるということについてを、

今後も定期的に情報発信していきたいと思いますし、

是非とも今回重要な指摘をしている豊田社長率いるトヨタ、そして、トヨタも出資する日本の公共の充電器を管理するe-Mobility Powerには、

この重要性を再度認識していただきたいと思います。

From: 日本自動車工業会内閣官房

Author: EVネイティブ