【EV充電規格戦争】名門メルセデスもテスラ式充電規格「NACS」採用決定~日本のユビ電もNACS採用で高速道路に150kW充電器設置へ

NACS

メルセデスベンチが北米市場においてテスラの充電規格であるNACSを正式に採用することを表明するという驚きの動向とともに、なんと日本の充電サービスを手掛けるユビ電についても、日本国内に設置予定の急速充電器に対してチャデモの他にもNACS規格を採用する方針を表明、

他方で、この日本の急速充電器設置における深い闇、高速道路上の急速充電器設置における不正競争に対して公正取引委員会が実態調査を行い始めたという更なる動向も含めて解説します。

名門メルセデスもテスラ規格を採用へ

今回取り上げるのは、テスラが2012年から独自に開発し、採用してきた充電規格NACS(North American Charging Standard)についてです。

テスラはもともと自社の充電規格を開発し、北米や欧州、日本などで採用してきました。しかし、この規格はテスラが独自に開発したものであり、各地域で広く採用されているスタンダードな規格とは異なります。欧州ではCCSタイプ2、中国ではGB/T、北米ではCCSタイプ1、そして日本ではCHAdeMO規格が主流です。

そのため、テスラユーザーはその地域の主流な充電規格を採用している充電器を使用できる方が、より多くの充電オプションが利用可能となります。このため、テスラは中国市場ではGB/T規格を、欧州市場ではモデル3の本格納車がスタートした時点でCCSタイプ2を採用し、新たに設置するスーパーチャージャーもCCSタイプ2に一本化しました。これにより、テスラの独自規格は北米と日本市場のみに採用されるようになりました。

最近では、北米市場の競合メーカーが相次いでテスラのNACS規格への切り替えを表明しています。フォードが先鞭をつけ、GM、Rivian、ボルボ、ポールスターが続きました。さらに、充電器メーカーや充電サービスプロバイダーもNACS規格の採用を表明しています。特に、北米の主要公共充電プロバイダーであるEVgo、Electrify America、Charge PointがNACS規格を採用したことで、テスラ以外のメーカーもNACS規格を採用する流れが加速しています。

そんな中、ドイツのメルセデスがNACS規格の採用を発表しました。これはドイツメーカーとして初の事例です。メルセデスは2024年初頭から、既存のEVに専用のスーパーチャージャーアダプターを導入することで、テスラのスーパーチャージャーが利用可能になるとしています。そして2025年からは、北米で発売する全てのメルセデスのEVにNACS規格の充電ポートが搭載され、テスラのスーパーチャージャーが直接利用可能になるとのことです。

つまり、メルセデスも北米市場において、テスラのNACS規格への移行を決断したということです。これにより、NACS規格の採用がさらに広がることで、電気自動車の普及と利便性向上に大きく寄与する可能性があります。

メルセデスがNACS規格への移行を決めた背後には、単にテスラスーパーチャージャーの利用を可能にするためだけではなく、自社の急速充電ネットワークの整備計画も存在します。具体的には、2030年までに全世界で2000箇所以上のハイパワー充電ステーションを設置し、合計で1万以上の充電器を設置する予定としています。北米市場においては、同じ期間で400以上の急速充電ステーションと2500以上の充電器を設置する計画です。

メルセデスの充電ネットワークは、テスラスーパーチャージャーと同様に、メルセデスのEV以外の車種も使用可能となります。これにより、北米市場において2023年末までに設置され始める充電ステーションは、開放当初からすべてのEVオーナー、テスラオーナーを含めて使用可能となる予定です。

メルセデスも全世界で独自の充電ステーションを建設へ

このようなメルセデスの動きを受けて、他のドイツメーカー、特にフォルクスワーゲンとBMWが、今後NACS規格の採用を発表する可能性が高まっています。すでにこれらのメーカーはテスラと交渉中とされています。

一方で、日本の自動車メーカーからはNACS規格の採用についての発表はまだありません。レクサスが採用を検討中と発表していますが、全体としての動きは遅いと言えます。充電規格はEVユーザーにとって非常に重要なポイントであり、この遅れは日本メーカーがEVオーナーファーストの決定を行っていないことを示していると言えるでしょう。

高速道路上にNACS規格の150kW充電器が設置されます

そして、ソフトバンクの社内ベンチャーであるユビ電が、2024年から急速充電器設置ビジネスに乗り出すことを発表しました。高速道路のサービスエリアや道の駅などに、150kW級以上の超急速充電器を設置し、2027年までに全国100ヶ所に整備する計画です。また、彼らはその充電器において、日本の充電規格であるチャデモ規格だけでなく、CCS規格、そしてNASC規格にも対応すると表明しました。これにより、日本の高速道路上に、初めてテスラ専用規格であるNASC規格の急速充電器が設置される可能性が出てきました。

ユビ電の設置計画は大規模なもので、2027年までに100箇所の急速充電ステーションの設置を予定しています。そして、それぞれのステーションでは最大で20台の電気自動車を同時に充電可能にする計画です。

また、個人的に注目している点として、ユビ電が公開した2030年時点での急速充電ステーションの数が100箇所、そしてその急速充電器のストール数が800基に達するという予定があります。

すでにユビ電は急速充電スポットとして4台同時充電可能なスケール感を持つものと、最大で20台の電気自動車を同時に充電可能な大規模充電施設という二つの充電施設をラインアップしています。

これらの数値を元に推測すると、2027年までに小規模な充電スポットが75箇所、大規模な充電ステーションが25ヶ所設置される予定ということになります。この大規模充電施設は主に高速道路上に設置されることから、ユビ電は全国25箇所のサービスエリアに対して、電気自動車20台を同時に充電可能とする急速充電ステーションを設置する計画があると言えます。そして、これらの充電ステーションにはNASC規格が設置される予定となっています。

さらに、この動きを加速させる新たな動向が確認されています。それは、2023年度に公正取引委員会が高速道路のサービスエリアに設置される電気自動車用の急速充電ステーションについて、新規参入を阻害する行為や制度が存在しないか、また不当に競争から締め出される可能性がないかを調査しているという事実です。

現在、日本の公共の急速充電器、特に高速道路上の急速充電器のほとんどを管轄しているのはe-Mobility Power(通称:イーモビ)です。そして日本政府は2030年までに公共の充電器の数を現状の5倍の15万箇所に増やす計画を立てており、そのための補助金などの支援策を拡充する方針を表明しています。

しかし、現状では補助金を利用して高速道路上に急速充電器を設置しているのはイーモビだけで、他の新規プレイヤーの参入は見られていません。その理由として、高速道路上での急速充電器設置に関して、新規参入を阻害するような行為や制度が存在している可能性があるからだと思われます。これが原因で、海外のように急速充電プロバイダーが乱立するような状況が日本で見られない理由かもしれません。つまり、日本国内では急速充電ビジネスに対する競争が起きていないという状況なのです。

高速道路上に設置しているイーモビの急速充電器

公正取引委員会の実態調査によって、ネクスコがイーモビ以外の急速充電プロバイダーによる急速充電器の設置を推進する可能性が高まっています。この動向は、2024年から設置を開始すると予定しているユビ電にとって大きな追い風となるでしょう。

このような動きが進展すると、日本のEV市場に対する影響も大きくなります。第一に、これまでイーモビが独占していた高速道路上の急速充電ビジネスに、新たな競争が生まれる可能性があります。これにより、EVユーザーにとってより良いサービスが提供されるようになるでしょう。

また第二に、高速道路上にNACS規格の急速充電プラグが設置されることで、テスラ車の長距離移動の利便性が大幅に向上します。これにより、高速道路を降りることなく、150kW以上の急速充電が可能になります。

そして最も重要なのは、高速道路上にNASC規格の急速充電器が設置されることで、北米でNACS規格を採用している自動車メーカーが、日本市場でも同じ規格への移行を検討することが可能になる点です。これにより、輸入車メーカーは日本市場でのビジネスを一挙に拡大させることが可能になるでしょう。

メルセデスが北米市場でテスラの充電規格であるNACS規格を採用するという発表を受け、日本の充電プロバイダーであるユビ電もこの流れに乗り、高速道路上にNACS規格の充電器を設置する可能性が出てきています。公正取引委員会の調査もこれを後押ししており、ユビ電以外の充電プロバイダーがNACS規格を採用し、高速道路上などに急速充電器を設置する可能性も出てきました。

これにより、NACS規格を採用している電気自動車を所有するユーザーも、充電の利便性に困ることはなくなります。この動きは、北米でNACS規格を採用している輸入車メーカーにとって、日本市場でも同じ規格を採用する電気自動車を導入するメリットをもたらします。

実際のEVユーザーの意見を聞き、日本市場においてNACS規格の導入を検討するきっかけにするのが良いと思います。

From: Mercedesユビ電(Twitter)ユビ電(プレスリリース)朝日新聞(公正取引委員会)

Author: EVネイティブ

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