【最新中国EV動向】EV税制優遇の延長でどうなる? 23年6月中国EV販売動向から、今後の中国EVシフトを徹底予測

EV販売台数

最直近である6月度の中国の電気自動車メーカーの販売台数の速報値が続々と公開され、各社記録的な販売台数を達成しながら、

電気自動車の車両購入税が2027年まで減税されることになったという最新動向によって、さらに中国EVメーカーの勢いが増す可能性についてを含めて、この中国EV市場の最新動向をアップデートします。

EV税制優遇継続の中身とその背景とは

まず、今回の中国市場については、そのEV販売動向について毎月本チャンネルでアップデートしています。すでに新車販売のうち四台に一台以上がバッテリーEVであるため、世界で最も販売台数が多いEV先進国と言えます。

また、中国現地の自動車メーカーが販売する電気自動車が圧倒的なシェア率を支配しているため、電気自動車が売れていくことは中国メーカーの販売シェアが上昇し、逆に、日本メーカーのような海外メーカー勢の販売シェアが縮小しています。これは、極めて厳しい動向と言えます。

一方、中国市場における電気自動車の販売台数の伸び率が、この半年ほど鈍化していたという点が重要です。特に、2022年末のCovid-19のノーガード戦法への方針転換によって、年末以降、経済活動が大きく縮小してしまいました。さらに、2022年末で電気自動車購入に対する補助金も終了しました。その結果、2022年9月以降は目立った販売台数の増加が確認できていません。

そして、トドメを刺したのが、テスラを発端とする自動車メーカー各社の値下げ合戦です。これによって、電気自動車はもちろん、内燃機関車も大幅な値下げを余儀なくされました。この内燃機関車については、7月以降施行される新たな排出規制に適合しない車両を早く販売し切る必要があり、その在庫処理として大幅な値下げを断行しました。

結果として、中国のユーザーはさらなる値下げを期待して電気自動車と内燃機関車の購入を控える動きが見られました。このため、2022年末から2023年前半にかけて、中国市場でのEVシフトは停滞していました。

それゆえ、EVシフトをさらに加速させたい中国政府としては、自動車市場全体を安定させる必要があったのです。

そのような背景から新たに発表されたのが、2023年末で期限を迎えるはずだった電気自動車などに対する車両購入税の免除措置を2024年以降も延長するという政策です。これまで何度も解説しているように、2022年末までは電気自動車の購入時に補助金が適用できていました。また、中国国内で自動車を購入する際には車両購入税として10%の税金が課されますが、この車両購入税も免除されていました。

この車両購入税の免除はもともと2023年末で終了する予定でしたが、今回その期限を2027年末と大幅に延長する方針転換を行いました。

ただし、2024年以降については、すべての電気自動車が一律に車両購入税を免除されるわけではありません。まず、第一フェーズとして2024年から2025年末までの期間は、その車両購入税の免除対象を最大30万元(約600万円)の電気自動車、プラグインハイブリッド車、および水素燃料電池車に限定しました。

さらに、2026年から2027年末までの第二フェーズでは、車両購入金額の上限は30万元で変わらないものの、車両購入税については全額免除ではなく半額免除となります。

したがって、これまで通りの税制優遇を受けるためには、遅くとも2025年末までに電気自動車を購入する必要があります。しかし、この大幅な期間延長によって、一般消費者はすぐに電気自動車を購入する必要を感じず、自動車メーカーも年末までに電気自動車を大量に販売するための値下げをする必要がなくなりました。

この税制措置により、自動車市場に安心感がもたらされ、現在の加熱している値下げ競争が落ち着く可能性があります。

中国EVスタートアップが急速に販売台数回復中

この発表を受けて、中国のEVメーカーたちの6月中の販売台数の速報値が出てきました。その注目車種や2023年下半期の販売動向予測についてまとめていきたいと思います。

まずは、中国のXpengについてですが、その販売台数は8620台で、2023年の最高販売台数を達成しました。前年同月と比較しても販売台数は半減近く落ち込んでいますが、6月末に新型EVであるG6の正式発売を開始し、既に3万5000台を超える予約注文を獲得しています。

実際の納車は7月中となる予定ですが、発売前の段階で既に大きな注目を集めています。G6のスペックは競合となるテスラモデルYを凌駕し、現在Xpengのショールームでは試乗が殺到しています。そのため、夜の10時半を過ぎても試乗が終わらない状況です。

正式な販売台数が出てくるまでは推測の域を出ないものの、このG6の存在によって、2023年末に月間2万台という販売ペースを達成するかどうか、Xpengの販売台数の回復に注目していきたいと思います。

次に、中国のEVスタートアップ、NIOについてです。販売台数は10707台となり、直近の販売落ち込みを挽回しています。特にNIOでは、新型モデルであるミッドサイズSUVのES6のモデルチェンジバージョン、およびET5 Touringを立て続けに投入し、その効果が6月の販売台数から反映されていると推測できます。両車種の生産体制がさらに拡充されれば、販売台数はさらに加速度的に伸びることでしょう。2023年末に月間2万台の販売ペースを達成できるかどうかが、NIOの短期的な動向を判断する上で最も重要な指標となります。

次に、ジーリーのプレミアムEV専業ブランド、Zeekrについてです。販売台数は10620台を記録し、2023年に入ってから最高の販売台数を達成しました。2023年に突入してから、高級ミニバンであるZeekr 009を投入しました。このミニバンの価格は日本円で約1000万円で、Zeekrの利益率を大いに上げています。また、6月の販売台数は通過点にすぎません。第注目のZeekr Xの投入によって、このメーカーも月間2万台ペースへ向けて走り続けることが期待できます。

また、中国のEVメーカーHozon AutoのNeta12000台超を販売しました。注目すべきは2点で、一つ目は2ドアクーペのNeta GTの販売台数が早速1298台に達したこと、二つ目は海外市場の動向です。Netaはタイ市場を中心に海外市場への出荷を進めており、6月の海外販売は1201台に達しました。

次に、中国の大手自動車メーカーGACのEV専門ブランド、Aionについてです。販売台数は45000台以上で、歴史上最高の販売台数を更新しました。特に、ミッドサイズセダンのAion S Plusが月間2万5000台という水準で販売され、コンパクトSUVのAion Yも月間2万台に迫る販売規模を達成しました。さらにAionはもう間も無く、新型EVとしてスポーツセダンのHyper GTの正式発表が控えています。

BYDが日産越えに虎視眈々

最後に、巨人BYDについてです。販売台数は253046台で、歴史上最高の販売台数を2か月連続で更新しています。特に中国国内の販売規模を見てみると、BYDは2022年の後半に中国最強の自動車メーカーに躍り出ており、その販売規模はますます広がっています。

次に、最近公表された第二四半期の販売実績によると、BYDとテスラの比較が注目されます。グローバルにおけるBYDの商用車販売台数とテスラの販売台数を比較したグラフを見てみると、既にテスラはBYDに販売規模で追い越され、その差はさらに広がっています。

一方で、バッテリーEVの販売規模についても同時に確認してみると、テスラは最近の第二四半期で46万6140台、BYDは35万2000台となり、バッテリーEVのみのカテゴリーではまだテスラがリードしています。しかし、2020年以降の成長速度を比較すると、バッテリーEVのカテゴリーでもBYDの成長速度がテスラを上回っています。

また、BYDの月間販売台数25万台以上という規模感は、日本のメーカー三強の一角を占める日産と同等のレベルにまで達しています。2020年以降の日産とBYDの月間販売台数の変遷を示すと、日産は販売規模を落としているのに対し、BYDは急速に販売規模を拡大しています。

さらに、BYDについては、当初の目標でもあった年間販売台数300万台の達成が高い確度で見込まれています。昨年2022年には年間180万台以上の販売規模で、15万台を突破していたのが後半の7月からでしたが、今年は6月中に既に25万台という平均月間販売台数を達成しています。

BYDの下半期における注目点としては、新型EVのBYD Song+と小型EVのSeagulの販売規模、また新型EVのYangwangブランドのU8、モデルYの競合車であるSong L、高級ブランドDenzaの最新EVであるN7の市場反応、そして海外マーケットでの販売台数の増加が挙げられます。

中国では、混乱する自動車市場を安定させるために電気自動車などを対象とした車両購入税の免除措置を延長する方針を表明しました。これにより、特にEVの販売に対するマイナス材料がなくなりました。

さらに、その市場の混乱が落ち着いてきたことも相まって、各中国EVメーカーの販売台数は過去最大規模を実現しました。特に注目すべきは、巨人BYDが年間300万台という販売台数をどこまで超えていくか、そしてBYDの台頭により中国国内の日本メーカーの販売シェアがどこまで低下するかです。

2023年下半期の中国EVマーケットの最新動向については、引き続き注視していく必要があります。

BYDの真の快進撃が始まります

From: BYDXpengNIONetaGAC AionMinistry of Finance

Author: EVネイティブ