【EV先進国の不都合な現実】北欧ノルウェーでEV急速充電の遅さに不満を持つユーザーが過半数の模様、、

EV普及動向

電気自動車が最も普及している北欧のノルウェー市場において、その電気自動車を所有しているオーナーの過半数が、依然として充電に時間がかかりすぎると考えているという驚きの報告が発表されたことを受けて、

そのEV最先進国家のEVオーナーたちのリアルな声から考える実用性の高いEVについてを考察します。

お金がない若者世代の方がEV購入に前向き

まず、今回取り上げるノルウェー市場は、厳しい寒さの中に位置する北欧でありながら、現在世界で最も電気自動車(EV)の普及率が高い最先進国家です。その電気自動車への移行率は、バッテリーEVとプラグインハイブリッド車の販売比率が最近の5月において88.9%、バッテリーEVだけでも80%に達しています。つまり、5人のノルウェー人のうち4人は新車購入時に電気自動車を選んでおり、ガソリン車やハイブリッド車の購入は非常に珍しい行動となっています。

このノルウェー市場において人気のある電気自動車を見てみると、2023年5月までのバッテリーEVの販売台数ランキングでは、テスラモデルYがフォルクスワーゲンのID.4とID.5を大きく上回り、圧倒的な売上を誇っています。一方、トヨタのbZ4Xは一時第2位に位置していたものの、4月以降の販売台数は急速に減少しています。

そして、最新の6月の販売動向を見てみると、6月23日までの段階でのbZ4Xの販売台数はわずか162台に過ぎず、ランキングでは16位に甘んじています。今後の販売台数の上昇は予見できません。一方、2020年末から販売が始まったフォルクスワーゲンID.4は、bZ4Xの5倍以上の販売台数を誇っており、このことからノルウェー人が日本製の電気自動車を好まない傾向が見え隠れしています。

このような状況の中、ノルウェーの自動車連盟が行った調査で明らかになったのが、電気自動車の充電時間に対する不満と年齢別の電気自動車の購入検討度合いの2つの観点です。

まず後者の年齢別のEV購入検討度合いについて見てみましょう。この調査はヨーロッパの調査会社ノルスタッドが行ったもので、次に購入する車は電気自動車にしたいかという質問に対する回答を世代別に集計しました。

全体的に見ると、次に購入する車をEVにすると考えているユーザーは全体の42%に上ります。これはノルウェーの中古車市場におけるEVの販売シェアが20%以下であることを考慮すると、妥当な数値だと言えるでしょう。また、全く同意しないと答えたユーザーは全体の11%で、この数値からはEVに対して懐疑的なユーザーも一定数存在することがわかります。

さらに、年齢別の結果を見ると、18歳から29歳、30歳から39歳の若者世代は次に購入する車をEVにしたいと考える割合がそれぞれ47%、51%と半数に近い一方、50歳から59歳、60歳以上の年代では、それぞれ39%、34%若者世代と比較してEV購入を消極的に考える傾向が見られます。

この調査は、個人的にかなり興味深いと感じています。若年世代は、基本的に所得が低く、子育てを始めとする生活費で車に使えるお金も相対的に少ないはずです。また、電気自動車は初期投資が高いです。

さらに、2023年1月にノルウェーの税制が変更され、電気自動車への課税が増加したことで、内燃機関車との価格差がさらに縮まった状況でした。これらの事情から、若年層とおじさん世代の間で電気自動車への興味度が大きく変わらないと予想していました。

しかし、実際に調査結果を見ると、若年層の方が電気自動車への関心が高いことが明らかになりました。これは、若年層が電気自動車の総所有コストの低さを理解していることを示していると考えられます。

逆に、おじさん世代が電気自動車への関心が低いという結果は、彼らの頑固さを示しているのかもしれません。ともあれ、電気自動車の購入に対する価値観は、世代間で大きく異なることが分かります。

ノルウェーのEVオーナーの過半数は急速充電の時間が長いと考えている

次に、充電時間に対する価値観についての調査結果を紹介します。具体的には、2022年12月から2023年1月の間に、ノルウェーの電気自動車オーナー996人、非オーナー859人に対して、長距離走行の際の充電時間についての質問を行いました。

全体として、長距離走行で充電時間が長いと感じる人が57%で、逆に充電時間が長いと感じない人が17%でした。電気自動車の長距離走行には充電時間が長いという問題は、日本だけでなく世界中で指摘されている課題で、電気自動車先進国であるノルウェーでも同様であることが分かります。

それとは反対に、電気自動車のオーナーの中で、充電時間が長いと感じる人の割合が19%であり、非オーナーでは30%でした。電気自動車のオーナーの中でも充電時間に不満を持つ人が想像以上に多く、それでも電気自動車を所有しているということは、他の魅力、例えばランニングコストの安さや走行性能の高さ等が優っていることを示しているのかもしれません。

最も注目すべきは、電気自動車のオーナーのうち36%が、長距離走行時の充電時間が長すぎると部分的に同意している点です。非オーナーと比較してもこの割合は高く、電気自動車のオーナーの方が充電時間に不満を持つ可能性が高いことが示されています。

これは、実際に電気自動車を使ってみて、充電時間が長いと感じる経験をしたことが原因かもしれません。いずれにせよ、電気自動車先進国であるノルウェーの電気自動車オーナーでも、急速充電時間が長すぎると感じる人が多いという事実は注目に値します。

「EV充電の長さに部分的に同意する」と回答した割合は、EVオーナーの方がむしろ多かった

ノルウェーの市場では、繁忙期に充電器の混雑が問題になっています。この状況がアンケートの一部に影響を与えている可能性があります。それにもかかわらず、急速充電器の充電能力をさらに向上させることが求められています。

また、ノルウェーのEVオーナーが直面しているもう一つの問題は、季節による充電速度の差です。リチウムイオンバッテリーは、温度が低い場合には充電速度が遅くなります。したがって、夏と比較して冬の充電時間が長くなることがあります。

特にノルウェーでは、冬の寒さが厳しいため、安定した充電が求められています。その解決策の一つが、バッテリーのプレコンディショニング機能です。この機能を設定しておくと、充電器に到着する前にバッテリーを予熱し、最高の急速充電性能を発揮できます。

この機能は、テスラをはじめとする一部の車種に導入されています。しかし、日本のメーカーが製造する電気自動車、例えばアリアやbz4Xには、このプレコンディショニング機能は採用されていません。

テスラにはバッテリー予熱機能が存在

このため、冬場の充電性能の低さに不満を感じたユーザーは、次の乗り換えの際に日産やトヨタを選ばないかもしれません。日本も冬場は寒く、充電速度の低下は大きな問題となります。そこで、バッテリーのプレコンディショニング機能の有無は、日本でEVを購入する際の判断基準になるでしょう。

ノルウェー市場でのアンケート結果を見ると、日本のEV懐疑論と同様に、ユーザーが不満を感じていることがわかります。特に、急速充電の時間が長すぎるという問題については、技術革新による充電性能の向上だけでなく、充電インフラの整備も必要だと思われます。

充電インフラがノルウェーでも追いついていないことから、急速充電ネットワークのさらなる拡充が必要とされています。急速充電ネットワークに満足しているEVオーナーは少数派であるため、これらの問題を理解し、対策を講じることが重要です。

EVの購入を考えている方には、現実を見据えた情報を提供し、セカンドカーとして、あるいは独自の充電ネットワークを持つメーカーのEVを選ぶことを提案します。また、気温が低い時でも安定した充電性能を発揮できるEVの選択も重要です。

日本はEVの所有にはハードルが高い国ですが、後悔するオーナーを減らすために、現実を見据えたEV情報の発信に努めていきたいと思います。

From: NAF

Author: EVネイティブ