【EVシフト後退】フォルクスワーゲンEV販売不振で生産ストップ&リストラも、、 EVシフトでリードしていたVWに何が?

フォルクスワーゲン
Arno Antlitz, COO and CFO Volkswagen Group

フォルクスワーゲンの電気自動車の受注台数が急速に落ち込みを見せている状況によって、生産ラインを大きく削減しているという驚きのニュースとともに、

このドイツ・フォルクスワーゲンのソフトウェア部門の構造的な大問題という極めて厳しい最新動向を解説します。

EV販売好調のフォルクスワーゲンでEV生産ストップ&リストラも

まず、フォルクスワーゲングループは、中核ブランドのフォルクスワーゲンに加え、プレミアムブランドのアウディ、スポーツブランドのポルシェ、そしてランボルギーニ、ベントレー、商用車ブランドのトレイトンなどを傘下に持つ全方位的な自動車グループです。Covid-19の影響を受ける前までは、日本のトヨタを抜いて世界最大の自動車グループを形成していました。

しかし、Covid-19によって自動車産業全体が影響を受けた2020年以降、フォルクスワーゲンはトヨタに首位を奪われ、現在世界第2位の販売規模となっています。特に2022年シーズンは、前年比で7%もマイナスの826万台という厳しい状況にあります。これは、前年比0.1%マイナスのトヨタグループや、販売台数を伸ばしている韓国のヒョンデグループと比較しても、現状既存メーカーの中では厳しい戦いを強いられていることがわかります。

ヒョンデグループは、2023年シーズンの販売台数目標を750万台以上と設定しているため、フォルクスワーゲンが2番手の座を死守できるかどうかには大きな注目が集まっています。

フォルクスワーゲンは前年比7%の落ち込み。23年は950万台を計画しているが、、

一方、フォルクスワーゲンは、既存メーカーの中で早くからEVシフトを積極的に打ち出し、実際の電気自動車の販売台数では世界のトップメーカーの一角を占めています。特に、グループ共通のEV専用プラットフォーム、MEBプラットフォームを活用し、フォルクスワーゲンからはID.3、ID.4、ID.5、ID.6、アウディからもQ4 e-tron、大衆車ブランドのスコーダはEnyaq、CupraもBornを発売しています。

これらのEVは、EV専用工場として稼働中のズウィッカウの工場を中心として一括生産され、グループ全体の車両生産コストの低減に貢献しています。実際、バッテリーEVの販売台数はフォルクスワーゲンが最も多く、2022年シーズンの販売台数は57万台以上となっています。これは、ヒョンデグループの32万台や、トヨタの24,466台を大きく上回っています。

販売規模ではトヨタに負けているものの、バッテリーEVの販売台数ではトヨタの20倍以上を販売しているフォルクスワーゲンに対し、今後どれほどEV販売台数を伸ばすことができるのかに大きな注目が集まっています。

フォルクスワーゲンは現在、電気自動車(EV)へのシフトに伴ういくつかの問題に直面しています。以下に、その主な問題点を列挙します。

  1. 生産・販売の課題: フォルクスワーゲンは、販売不振によりエムデン工場でのID.4とID.7の生産を停止しています。これは、特に世界戦略車であるID.4にとって大きな打撃です。この工場で働いている1500人の臨時職員のうち、300人が8月から雇用を打ち切られるという問題も抱えています。
  2. バックオーダーの問題: フォルクスワーゲンはIDシリーズのバックオーダーが約10万台に達していると発表しています。しかし、その一方で、特定のモデルに需要が極端に集中し、他のモデルの需要が伸び悩んでいる可能性があります。具体的には、ID.4の販売が伸び悩んでいると見られています。
  3. 競争相手との競争力: フォルクスワーゲンは、特にミッドサイズSUVセグメントでテスラのモデルYと競争しなければなりません。しかし、モデルYは人気があり、その競争が困難になっています。また、ID.3は性能の更新がなく、内外装の一部改良に留まっています。さらに、フォルクスワーゲンのエントリーEVは、中国メーカーのMG4やBYDドルフィンと比較して、コストパフォーマンスに劣ると見られています。
  4. コスト削減と投資の課題: フォルクスワーゲンは電動化やソフトウェアに対する莫大な投資を計画していますが、その一方で、大規模なコスト削減を進めています。これには、フォルクスワーゲンの10モデル、スコーダの5モデル、クプラの3-4モデルを削減するというラインナップの大幅な削減が含まれています。このコスト削減が成功しなければ、計画している投資が頓挫する可能性があります。

これらの問題は、フォルクスワーゲンがEVへのシフトを困難に感じていることを示しています。企業は適切な戦略と対策を講じなければ、その競争力を失う可能性があります。

フォルクスワーゲンは、電気自動車の市場で好調のように見えますが、さらに多くの問題を抱えています。最も懸念するべきは、ソフトウェア開発部門Cariadの運営です。

Cariadは元々、グループトップだったディース元会長が担当していましたが、彼が事実上更迭されて以降、新たにトップが着任していました。しかし、Cariadのソフトウェア開発が順調に進まず、2023年中に発売予定だったポルシェマカンのEVバージョンやその兄弟車であるアウディQ6 e-tronは、2024年中の発売に遅れています。

マカンのEVバージョンは2024年に延期

さらに、グループを横断する共通の第二世代のソフトウェアプラットフォームの開発も遅れています。このプラットフォームは、2025年中にアウディのアルテミスと名付けられた次世代EVから搭載され、ソフトウェアのアップデートだけでレベル4自動運転まで達成可能にする計画でした。しかし、現在のところ、このソフトウェア2.0の導入は2027年から28年にずれ込むとの説明がされています。

このような状況は、フォルクスワーゲンが2030年までにソフトウェア部門を収益の柱とし、EV販売と同等にまで高めていくという計画を大きく妨げています。

Cariadの問題は、ディースさんの後任が直近で解任され、その後任にベントレーのトップであるPeter Boschが就いたことにより一層深まっています。彼は自動車メーカーの経営には長けていますが、ソフトウェアの開発経験がないということが問題となっています。このような人材配置は、フォルクスワーゲンの現トップであるオリバー・ブルームの判断にも疑問が投げかけられています。

2022年9月からVWグループトップを指揮するのがオリバー・ブルーム(左)。ディース(右)は事実上更迭された。

さらに混乱を深めているのが、ポルシェが独自に自動運転開発を行うために、大手モービルアイと提携を発表したことです。これはCariadに対する不信感を示す行動と解釈されており、グループ内のソフトウェア開発の一元化を揺るがしています

内製化を進めているはずなのに、ポルシェは外部企業と自動運転システム開発の提携を発表、、

ドイツの巨人が、今静かに、危機に直面し始めているのです。

From: electrive

Author: EVネイティブ

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