BMWが新型電気自動車として、5シリーズのEVバージョンであるi5を発表し、航続距離600km弱、最大200kWを超える高い充電性能とともに、
ガチンコの競合であるテスラモデルS、メルセデスEQEなど日本でも購入可能なビジネスサルーンとして、どれほど競争力があるのかについてを解説します。
i5はBMWの電動化全方位戦略の最新EVです
BMWは電動車の開発において初期からリーダーシップを取ってきました。その歴史は、2013年のi3のローンチにまでさかのぼります。その後、BMWは次々と新しい電動車モデルをリリースし、その電動車のラインナップを急速に拡大しました。
そして、その最新の一環として発表されたのが、i5というビジネスサルーンセグメント向けの新しいEVモデルです。i5は、5シリーズの人気と信頼性を継承しつつ、電動化による静粛性と省エネ性を追求しています。これにより、ビジネスユーザー向けの車種として大きな需要が予想されています。
特に日本市場においては、BMWの多様な電動車ラインナップは、既存のBMWオーナーや新たにBMWに興味を持つ消費者にとって、EVへの移行を容易にする重要な要素となっています。
さらに、BMWがこのi5の先行発売を日本で開始したことは、日本市場への強いコミットメントを示しています。これにより、BMWの電動化戦略はさらに加速し、新たな顧客層を獲得する機会を増やすことが期待できます。
それでは、今回発表されたi5について、特にEV性能を、我々日本国内でも販売中の中大型セダン、メルセデスEQE、およびテスラモデルSと比較してみましょう。
まず初めに、i5のラインナップはeDrive 40と、パフォーマンスグレードのM60 xDriveの2種類で構成されています。なお、日本市場では初めて導入される「ファーストエディション」は、エクステリアカラーの白と黒、それぞれ50台、合計100台限定で販売されています。
バッテリー容量については、i5は83.9kWhとなっており、これは競合するテスラモデルSやメルセデスEQEの100kWhに比べてやや小さいです。
満充電あたりの航続距離は、i5 eDrive40では最長で582kmとなっています。ただし、ファーストエディションで標準装備の21インチホイールを装着した場合、航続距離は526kmに低下します。この航続距離は欧州WLTCモードでの数値です。そのため、EPAサイクルベースで航続距離を計算すると、i5は最長でも約480km程度と見積もられます。
これを競合するモデルSやEQEと比較すると、モデルSは欧州WLTCモードで700km以上、EQEも600km以上の航続距離を実現しています。したがって、航続距離の絶対値としてはi5はやや短いですが、一般的な日常使用においては大きな問題にはならないと思われます。
このBMW i5にはレアアースを一切使用しないモーターが搭載されており、特に高速域の電力消費に優れています。ドイツ車としてのアウトバーン向け設定も合わせて、高速走行時の電力消費性能は極めて高いです。
特に一回り小さいi4は、時速90kmで巡航した場合、18インチの夏タイヤを装着し、外気温平均18℃の条件下で、驚くことに599kmというカタログスペックを大幅に超える航続距離を達成しました。
このi5も車格が一つ上で、それにより車両重量が増え、タイヤもインチアップしていますが、空力性能を示すCd値は0.23と、i4よりも改善しています。そのため、実用上の航続距離はおそらく500kmを余裕で超えると見込まれます。実際のユーザーによる検証も楽しみです。
また、充電性能についても、最大200kWを超える高速充電が可能です。BMWは公式に充電性能を示す充電カーブを公開しています。205kWを達成した後は充電出力が断続的に低下しますが、充電残量80%まで約30分と、2023年に発売するEVとしては十分な充電性能があります。競合するモデルSやEQEも同程度の充電時間が必要です。
また、動力性能については、eDrive40はリア駆動で、ゼロヒャク加速が6秒フラットです。一方、M60は最高出力442kW、最大トルク820ニュートンで、ゼロヒャク加速は3.8秒です。これはEQE AMG53 4MATIC+やモデルSに比べてやや遅いですが、このレベルの動力性能であれば、多くのユーザーは満足するでしょう。
しかし、車両サイズと重量は競合と異なります。このi5は全長が5メーターオーバーで、ホイールベースが2995mmです。一方、EQEは全長4949mmながら、ホイールベースは3120mmと圧倒的です。しかし、EQEのラゲッジスペースは430Lで、i5よりも少ないです。これは、メルセデスの車内スペース最大化への設計思想が反映されていると感じられます。
車両重量に関して、BMW i5のeDrive40は2.2トンで、一方テスラのモデルSは2170キログラムに抑え込むことに成功しています。それでいてモデルSは、トランク部分だけで709L、さらにフランクに89Lを確保しています。これは軽量化と車内スペースの最適化の観点ではモデルSが優れていると言えます。
EQE・モデルSよりもお買い得なビジネスサルーンです
値段設定について、i5はドイツ本国で70000ユーロからのスタートで、これはメルセデスのEQEと競合する値付けです。モデルSは10万ユーロ以上と、i5 M60よりも高価です。テスラは車両をアメリカから輸入しているため、関税がかかります。これはドイツメーカーが欧州で販売するという観点で有利な部分です。
日本市場における値段設定では、ファーストエディションとして、一部オプションを標準搭載した場合で1098万円となります。5シリーズの523iのファーストエディションの値段設定が934万円からということから、内燃機関車とEVの価格差が150万以上です。この150万円という価格差があっても、EVとしての価値を認めるかどうかが、i5を購入するかどうかの判断基準となります。また、EQEは日本では1251万円からと、i5ファーストエディションよりも150万円以上高価です。その比較で考えると、i5はかなりお買い得であると言えます。
内外装の質感や先進性については、i4やi7と同様に、14.9インチの湾曲タッチスクリーンとクリスタル形状のドライブセレクターを採用しています。質感も5シリーズと同等で、既存のBMWユーザーを満足させるでしょう。また、音響システムはバウアーズ&ウィルキンスの17スピーカーを搭載し、655Wの出力を発揮します。EQEもブルメスターの15スピーカーで710W、モデルSは22スピーカーで960Wと、それぞれが高性能な音響システムを提供しています。
i5の先進性については、充電体験のシームレスさや、ビデオストリーミング機能の利用可能性、スマホをコントローラーとしてビデオゲームを操作できるといった点が挙げられます。これらは、テスラやBMWが重要市場と見なす中国市場を意識した機能実装であると思われます。
今回発表されたi5については、BMWの最新テクノロジーを取り入れ、優れたEV性能を持つことが伝わるでしょう。特に5シリーズはBMWの売れ筋モデルであるため、このi5の販売はBMWのEV市場全体の成長に大きな影響を及ぼす可能性があります。
一方で、すでにモデルSやEQEといったラグジュアリーEVセダンが市場に存在する中で、i5がどれほど市場に受け入れられるかは注目される点です。特に、ラグジュアリーEVセダンが多くラインナップされる中国市場では、どれほどの消費者がBMW i5を選ぶのかが見ものです。
日本市場においても、特にこれまで5シリーズを所有していたユーザーは、i5を試乗し、割高な電気自動車バージョンを購入する価値があるかを判断することが期待されます。
BMWのEV、特にセダンタイプのi4は、EV専用プラットフォームを採用せずとも、非常に満足度の高い一台となっていました。その経験を活かし、i5もまた満足度の高いEVに仕上がることが期待されます。今後、その実際のEV性能について詳しく検証していくことが重要となります。
Author: EVネイティブ