【EVで長距離はやはりムリ!?】中国の大型連休でEV充電渋滞がまた発生 EVの長距離運用を諦めるケースも

中国

中国市場で人の大移動が発生する大型連休の春節の間に、またもや電気自動車の充電渋滞が発生してしまいました。

超繁忙シーズン「春節」でEV充電渋滞が発生

まず、今回の一件に関してですが、

直近である1月末から2月の初めにかけて、中国市場における大型連休に該当する春節の期間が該当していたわけであり、

基本的には、この春節に合わせて、都市在住者が一気にそれぞれの故郷に帰省を行ったり、

近年では、帰省だけに留まらず、タイや日本などへの海外旅行であったり、中国国内への旅行を行う人も増えるなど、

何れにしても、中国において年に何度かある大型連休の中でも、最も人が動く季節、

まさに超繁忙シーズンとなっているのです。

そして、実は本メディアにおいては、昨年10月中に位置していた大型連休である、

日本のゴールデンウィークに該当するような、国慶節という超繁忙シーズンについてを取り上げていたわけであり、

それではなぜ電気自動車専門メディアが、国慶節を取り上げていたのかといえば、

人の大移動が集中してしまったことによって、電気自動車の充電渋滞がとりわけ目立つ格好となってしまい、

実際に、一部の充電ステーションについては、充電のために電気自動車が長蛇の列を作ってしまい、

充電を行うために、何時間も待たなければならなかったという体験談まで報告されてしまっていたのです。

そして、いよいよ今回春節の期間が終了し、その間にレポートされた、充電渋滞の最新状況、

それとともに、電気自動車ユーザーの間に起こった、超繁忙シーズンにおける電気自動車の利用に対する、

ある変化についてをまとめていきたいと思います。

62%が超繁忙シーズンでEV運用を諦めていた件

こちらのレポートについては、中国現地のメディアがまとめてきたレポートとなっているのですが、

まず結論から申し上げて、国慶節の時と全く同様に、複数の電気自動車オーナーから、

充電渋滞に遭遇してしまったという報告が上がってきている状況であり、

例えば、自宅から250km離れた地点において、充電待ちに3時間を要してしまったという投稿さえ報告されていたりなど、

こちらに関しては、その国慶節からまだ半年も経っていないという状況からも、

「まあ、改善が見込めるわけはない」、というところだと思います。

しかしながらその一方で、上海に在住するテスラモデル3のオーナーによれば、

その国慶節で遭遇したような、とてつもない充電渋滞よりかは、充電ステーションの充電待ちの状況は改善されているようにも感じたと説明しており、

確かにこちらは、1電気自動車オーナーの感覚値な訳ですから、特段重要視する必要はないと思う方が多いかもしれませんが、

実は、この感覚値には、一定程度明確な理由も存在しているのではないか

つまり、この数ヶ月間の間にも、電気自動車の充電渋滞について、改善が見られる兆候があったのではないか、

ということなのです。

というのも、2022年度の春節に関する調査を行ったリサーチ会社によれば、

なんと62%のユーザーが、電気自動車を利用して帰省することを検討していないという調査結果を報告していて、

やはりその理由というのが、昨年の国慶節において、世界中で取り上げられてしまった充電渋滞の様子を見て、

その電気自動車を使用した長距離ドライブに対する信頼性が、大きく低下してしまったからと結論づけているのです。

したがって、そもそも今回の春節において、そこまで深刻な充電渋滞が報告されなかった理由というのは、

別に充電インフラ整備が急ピッチで進んだことによって、充電渋滞が一定程度の改善を見せたというわけではなく、

単純に、電気自動車オーナー達が、自分たちは充電渋滞に巻き込まれたくないと考えて、

電気自動車を使用しないで帰省を行った割合が高まったからなのではないか、

何れにしても、本質的な問題である、

超繁忙シーズンにおける電気自動車の充電渋滞問題は、何も解消されていないのではないか、ということなのです。

航続距離600km以上でないとロングトリップでは使いたくない?

また、同様に行われた興味深い調査結果として、

今後春節の際に、電気自動車を利用して帰省を行う場合、どの程度のスペックを達成していることが条件であるのかを、

3000人以上を対象に調査したところ、

中国で一般的に採用されながら、実用使いにおいてはあまり参考にならないNEDCサイクルベースの航続距離にして、

最低でも600km以上という航続距離が必要であると回答した割合が、なんと67%以上という結果となり、

さらに、その長距離ドライブの際に必要な途中の充電時間についても、

全体の74%以上の回答者が、最長でも30分以内で充電を完了することができなければ、

春節に電気自動車を使用して帰省することはないと回答しています。

From: Moneyball

何れにしても、中国在住の電気自動車オーナーについては、

今回の春節の大移動の際には、電気自動車にまつわる航続距離や充電時間という観点から、

電気自動車を使用せずに帰省を行った割合が高くなった可能性が濃厚であり、

したがって、このことからも、

世界でぶっちぎりに充電器の数が多い中国市場をもってしても、

充電インフラが、全くもって需要に追いついていないということがお分かりいただけますし、

電気自動車自体のスペックについても、

まだ繁忙期における移動には適していないのではないかと、多くの中国人が考えている、ということなのです。

移動式充電器&充電料金体系の工夫がポイント

ただし、こちらの充電渋滞という観点については、いくつか現状でも改善する方法は残されているということであり、

まずは、今回取り上げているレポートの中でも指摘されていることではありますが、

テスラ車を中心として、多くの電気自動車メーカーについては、

そのような充電渋滞に遭遇した際には、充電のために待つ時間がどうしても必要となると、公式に声明を出しているものの、

例えば、バッテリー交換サービスを展開しているNIOに関していえば、

独自に整備している急速充電ステーションだけでなく、

バッテリー交換ステーションのサービスを利用することで、充電の時間を大きく短縮することができますし、

さらにNIOに関しては、それ以外にもモバイル充電サービスという、

移動式の充電設備を整えた車両を用意しているため、

充電ステーションが整備されていない地域、

もしくは、充電待ちが発生している地域でも、充電待ちを緩和することができたりします。

したがって、充電渋滞を解消するために、ただ闇雲に充電ステーションを増設すればいいという話ではなく、

例えばタクシーなどの商用車については、充電ステーションなどではなく、バッテリー交換ステーションでエネルギー補給を行ってもらうことによって、

一般乗用車に対して、充電ステーションを優先的に使用してもらうであったり、

NIOであったり、アメリカ本国ではすでにテスラも行っているような移動式の充電ステーションを、

政府や自治体単位でも、期間限定で設置することによって、

そのような超繁忙シーズンにおける需要を、一定程度裁くことができるのではないか、ということなのです。

また、電気自動車に搭載されているリチウムイオンバッテリーの特性充電残量が80%を超えてくると、充電性能が大きく低下するという特性を持ち合わせているため、

このような超繁忙シーズンに限っては、充電残量80%を超えて充電を続ける場合には、

充電料金が跳ね上がるなどという、充電料金体系を設定することによって、

より充電ステーションの回転率を引き上げることにすら繋がっていきますので、

何れにしても、特に高速道路上の充電ステーションというのは、

あくまでも経路充電において必須となるものの、

通常のシーズンにおいては、その利用率はそこまで高くならないわけですから、

闇雲に急速充電ステーションを増設するだけではなく、

局所的に集中する充電需要を裁くための、移動式充電ステーションというハード面、

および、充電残量満タンまで充電させないように、一定程度の充電残量で充電を切り上げるような、充電料金体系という、

ソフト面の両方を整備していくことによって、

確かに全てのオーナーの不安を取り除くことはできないかもしれませんが、

少なくとも2022年シーズンの春節における充電渋滞よりも、大きな改善を見せることができるのではないか、ということですね。

充電課金体系にも工夫が必要

何れにしても、

残念ながら、現在急上昇を続ける中国国内の電気自動車の販売台数に対して、

その電気自動車を充電する充電ステーションというインフラ整備が追いついていないという事実は、

半年近くが経過しても、特に大きな変化はない、

むしろ、そのような不便を避けようと、電気自動車オーナーが、電気自動車を利用せずに、

春節の大移動を行なっているのではないかという調査結果も出てきているくらいですので、

先ほど説明したような、まずは局所的な需要の増加に対応可能な方策を、

ハードとソフトの両面において実装していきながら、

航続距離の延長や充電時間の短縮という、

電気自動車の技術革新の動向とともに、充電インフラの整備を進める必要があるのではないか、ということですね。

From: Yicai, via CNEV Post

Author: EVネイティブ