中国の電気自動車専業ブランドであるAionが、航続距離1000kmオーバーの新型電気自動車を間も無く発売する見込みであり、
したがって、ついに史上初めて、航続距離1000kmを達成した電気自動車が地球上に爆誕することになりました。
日本メーカーにも認められたAion製EV
まず、今回の新型電気自動車に関してですが、
中国の自動車メーカーであるGACの、完全電気自動車やプラグインハイブリッド車のみを発売する、
電気自動車専門ブランドであるAionが発売を間も無くスタートする新型EVとなっていて、
そもそも今回のAionについては、本メディアにおいては以前にも取り上げていたわけですが、
というもの、その中国市場においては、トヨタやホンダなどの日本メーカーが、
このAionと協業して、OEM供給を受けているということで、
特に、ホンダが現在発売している、EA6というミッドサイズ級の電気自動車セダンに関しては、
搭載バッテリー容量が58.8kWh、
そのバッテリー容量に依存する、満充電あたりの航続距離に関しても、
中国市場において一般的に採用されているNEDCサイクルにおいて510km、
高速道路を時速100kmでクーラーをつけても達成可能であるというような、実用使いにおいて最も信用に値するEPAサイクルにおいてでも、
概算値とはなりますが、概ね400km程度を達成する公算で、
そして、その値段設定が日本円に換算して、おおよそ300万円程度から購入することができるという、
非常に競争力のあるコストパフォーマンスを実現しています。
したがって、日本メーカーがOEM供給を受けているということ自体が、
このAionの電気自動車の質の高さを、暗に証明しているということにもなるわけですが、
実際問題として、この際直近である10月度の中国国内の電気自動車の販売台数においては、
そのホンダの発売しているEA6のAionバージョンであるAion Sが、
8020台で、第7位にランクインしているということからも、
やはりAionの発売している電気自動車の質が、広く認められていることを示していると思います。
充電性能世界最高「Aion V Plus」
そして、このAionについては、ちょうど直近の10月中ごろから、
新型電気自動車として、Aion V Plusという、ミッドサイズ級のSUVを発売し始めたということで、
この電気自動車SUVに関しては、特に電気自動車としての質の中でも、充電性能が極めて高いという点が注目され、
充電残量0%から80%まで充電するのにかかる時間がたったの8分間という、
トイレ休憩を挟んだだけで、さらに数百キロ分の航続距離を回復させることができてしまうという、
世界最強の充電性能を達成することができているわけですし、
そして、その超急速充電に対応した専用グレードであったとしても、NEDCサイクルにおいて500km、
最も信用に値するEPAサイクルにおいても、概ね400km程度という航続距離を確保しながら、
22万9600元、日本円に換算しておよそ405万円程度から購入することができてしまうという、
少なくともトヨタやホンダなどがOEM供給として日本で発売してくれば、
爆売れ間違いなしの、圧倒的なコストパフォーマンスを達成してきているのです。
世界初、航続距離1000kmオーバーEV爆誕
そして、そのAionに関して今回新たに明らかになってきていることというのが、
先ほどのAion V Plusに続いて、さらなる新型電気自動車SUVをラインナップしてきたということで、
それが、Aion LX Plusという車種であり、
そのグレードの名の通り、すでにラインナップ済みであったAion LXの改良バージョンであるわけですので、
特にDセグメント級の車両サイズなどに、大きな違いはありません。
しかしながら、今回のAion LX Plusの最も特筆すべきスペックというのが、
電気自動車としての質において、最も重要なスペックである、満充電あたりの航続距離を飛躍的に伸ばしてきたということで、
その航続距離というのが、なんと驚愕の1000kmを超えてきた、
つまり、現状いくつかの自動車メーカーが、航続距離1000kmを達成する電気自動車を、今後数年のうちの発売するとアナウンスはしているものの、
実際の販売にこぎつける見込みの、初めての電気自動車ということになりますので、
この点だけを取ってみても、Aion LX Plusは史上初の快挙を達成してきた、ということなのです。
ただし、今回のAion LX Plusのスペックについては、今だにAion側からの公式情報ではないわけで、
今回明らかになったのは、中国の新車情報を登録する公式の機関であるMIITが公開してきた資料によって、その存在が明らかになったわけであり、
したがって、その発売時期や値段設定などの公式情報は、現時点では不明なわけですが、
慣例的には、このMIITに新車情報が登録されてから、間も無くして実際の生産がスタートされていますので、
今回の史上最高の航続距離を達成してきたLX Plusについても、
2022年の早い時期には、実際の納車がスタートしているようなタイムラインである、と推測することができそうです。
144.4kWhものシリコンベースのバッテリーを新採用
それでは、今回のAion LX Plusに関して、
MIITに登録されたスペックの中でも、特に特筆すべきスペックをピックアップしていきたいと思いますが、
まずは、その搭載バッテリー容量に関して、なんと144.4kWhという、
おそらく2021年現時点で発売されている電気自動車の中で、最も多くのバッテリーを搭載している電気自動車となったわけですが、
その特大級のバッテリーを搭載したことによって得られる、満充電あたりの航続距離に関しては、
1000kmを超えて、1008kmを達成しました。
ただし、こちらの航続距離の基準というのは、中国で一般的に採用されているNEDCサイクルを基準としているわけで、
最も信用に値するEPA航続距離に変換してみると、
同セグメントの電気自動車の変換率を適用して、おおよそ800-850km程度という航続距離に留まる見込みでありますので、
実際問題としては、1000kmを達成したのかといえば微妙なところなわけですし、
それこそ直近も解説した通り、アメリカの電気自動車スタートアップであるLucidのフラグシップセダンであるAirに関しては、
最も信用に値するEPAサイクルにおいて、837kmを達成してきているわけでもありますから、
まあ、Lucidと肩を並べる、史上最高クラスの航続距離を達成してきた、
というような認識の方が正しいとは感じます。
ただしそれでも、その144.4kWhという特大級のバッテリー容量を搭載していたとしても、
その車両重量というのは、概ね2.2トン程度に抑えることに成功しているという点が、
今回のAion LX Plusの技術力の高さを知る上で重要なポイントであり、
というのも、今回1000kmを達成する航続距離を確保する上で、そのバッテリーを新たに開発してきているわけであり、
それが、GACグループが独自開発した、バッテリーの負極材として、これまでのグラファイトに変わって、
シリコンをベースに採用することで、よりエネルギー密度を高めることに成功、
つまり、同じような重量のバッテリーを搭載したとしても、よりエネルギー密度を稼ぐことができている、
よって、それだけ多くのエネルギーを充電することができるわけですので、
より少ないバッテリーで、より長い航続距離を達成することができる、ということなのです。
テスラを超えるエネルギー密度「205Wh/kg」を達成
実際に、そのバッテリーのパック全体あたりでのエネルギー密度というのは、
205Wh/kgと、非常にエネルギー密度が高いわけであり、
それこそ、そのエネルギー密度という観点でも定評のあるテスラの採用している、
韓国LGエナジーソリューション製のNMCAという最新のバッテリーセルのエネルギー密度を見てみても、
168Wh/kgと、今回のAion LX Plusに採用されている、シリコンベースのバッテリーの方がエネルギー密度が高い、
ということがお分かりいただけると思います。
また、電費性能という観点を見てみても、
航続距離100km分を走行するのに、15.8kWhという電力を必要とするわけですが、
それこそ最新型のモデルYに関しては13.6kWhと、やはりモデルYの電費性能の高さが伺えるわけですが、
それとともに、モデルYは78.4kWhというバッテリー容量しか搭載されておらず、
それでいて、Aion LX Plusについては144.4kWhと、倍近い重量級のバッテリーを搭載しているということを鑑みれば、
全長4835ミリ、全幅1935ミリ、そして全高1685ミリにも達するSUVとしては、
実は想像以上に、電費性能にも優れている、とも言えるのではないでしょうか?
スポンジのように柔らかいシリコン負極
ちなみにですが、今回のAion LX Plusに採用されている、シリコンベースのバッテリーとは一体なんぞやということですが、
そもそもシリコンという素材は、現在多くの電気自動車で採用されている負極材の種類であるグラファイトと比較しても、
そのエネルギー密度の向上に寄与するため、
例えばテスラがすでにBattery Dayというイベントにおいて、今後はシリコンを負極材の中心として採用する方針を発表していたり、
フォルクスワーゲンに関しても、Power Dayというイベントにおいて、
シリコンを添加することで、さらなるエネルギー密度の向上に寄与することができると説明していたり、
それこそ、日産が現在中国Envision AESCと共同で開発中であり、
リーフの後継モデルとなるクロスオーバーEVに採用する予定の、第五世代のバッテリーセルに関しては、
負極材に通常のグラファイトともに、シリコンもミックスさせることで、
バッテリーセルあたりのエネルギー密度を300Wh/kgにまで引き上げる予定を説明しています。
また、テスラが説明している通り、シリコンに関しては、より安価に調達することができながら、
さらに、世界中に豊富に埋蔵しているため、
今後のバッテリー戦争における安定調達という観点においても、非常に期待されている負極材の種類であるのです。
ただし、そのシリコンの大きな問題というのが、
特に急速充電によって、バッテリーの寿命が極端に落ちてしまうという問題であり、
そのシリコンが充放電に従って、膨張収縮が激しく、結果的にバッテリー内部に負荷をかけてしまい、
最終的なバッテリー寿命を延ばすことができないという問題を抱えていたのですが、
今回のGACグループについては、
そのシリコンを、スポンジのように柔らかくすることによって、
その膨張収縮による、バッテリー内部の損傷を抑えることに成功している、と説明していますので、
こちらに関するさらなる技術解説がわかり次第、
そのほかの電気自動車メーカーやバッテリーメーカーのシリコン負極との違いも、詳しく解説していきたいと思います。
従って、今回のAion LX Plusに関しては、
すでにラインナップしている、既存のAion LXと比較しても、ほとんど車両サイズが変わっていない、
つまり、その車両底面に搭載することのできるバッテリーのサイズはほとんど変えることができないはずであるわけですが、
それでも、現状の最大バッテリー容量である93.3kWhという容量の、実に1.5倍もの144.4kWhというバッテリーサイズを搭載することができてしまっている、
要するに、エネルギー密度を向上させたことによって、
今までよりも多くのバッテリーを搭載したとしても、同じようなサイズ感にバッテリーを収めることができている、
ということも、シリコンベースの負極材を採用した、GACグループの独自内製バッテリーの質の高さを表していると思います。
果たして航続距離1000kmは必要なのか?
また、今回の航続距離1000kmを達成してきたLX Plusの値段設定について予測すると、
通常のLXのAWDグレードの最上級グレードというのが、34万9600元という値段設定となっていることから、
恐らく、40万元以下程度という値段設定、
つまり日本円に換算して、おおよそ700万円という、最上級グレードとして位置付けてくることは間違いなく、
この値段設定ですと、もちろん内燃機関車ですと、メルセデスやアウディなどのドイツ御三家、
さらに電気自動車であれば、テスラモデルYのパフォーマンスであったり、
バッテリー交換サービスなどの付加価値を提供しているNIOの高級SUVとも競合することになります。
従って、果たして、中国のユーザーは、電気自動車の航続距離にどれほど高い要求をしてくるのか、
仮に今回のLX Plusの販売台数が好調であれば、それはもちろん世界最高の航続距離の長さに需要があったことを示しますし、
特にNIOやモデルYの販売台数とまではいかないとしても、
逆に、それほどの販売台数を達成することができなかった場合は、
それこそNIOが独自に設置を進めている、バッテリー交換ステーションにおいて、バッテリーを数分間で交換してしまうであったり、
テスラが爆速で設置を進めているスーパーチャージャーのような、超急速充電ネットワークの普及度合いの方が、
より電気自動車購入においては、魅力度が高いということを示すわけですので、
ただ単純に、航続距離が1000kmあればいいというわけではないということも明らかになってくる、ということですね。
何れにしても、中国市場の規格ではあるものの、
いよいよ電気自動車の航続距離において、歴史上初めての1000km越えを達成した電気自動車が、公式機関に登録され、
間も無く実際の発売が始まる公算となりましたので、
その中国メーカーの技術力の高さを賞賛するとともに、
特に最後に主張した、「果たして人は、航続距離1000kmの電気自動車を本当に求めているのか」
を判断する、一つの試金石となるわけですから、
個人的には、航続距離戦争は、特に大衆車セグメントにおいては400km程度で終焉を迎え、
急速充電器であれ、バッテリー交換ステーションであれ、
エネルギー補給のインフラを、より利便性高く整えることができたメーカーの電気自動車が、より競争力を増す
という見解ですが、
このAion LX Plusの最新動向については、特にそのようなことを判断する意味合いにおいても注目していくべきであると感じます。
From: CNEV POST
Author: EVネイティブ
コメント