既存メーカーの中で最も電動化を強力に推進するフォルクスワーゲングループトップのディースCEOが、
このままの電動化シフトのスピードであれば、3万人もの雇用を失ってしまうと、
電動化シフトのスピード感に改めて警鐘を鳴らしました
EV販売で絶好調なフォルクスワーゲン
まず、今回のフォルクスワーゲングループを取りまとめるトップのディースCEOに関してですが、
2015年からフォルクスワーゲングループのトップに就任し、
その2015年というのは、フォルクスワーゲンがディーゼルスキャンダルによって、経営陣が一新された時であり、
今回のディースが就任してからというもの、今までのイメージを払拭するために、
今後は電動化に大きく舵を切っていくという大方針を発表し、すでに様々な変革を実践してきていました。
実際に、ついに昨年である2020年の9月からは、フォルクスワーゲングループを横断して採用を進めていく、
電気自動車専用プラットフォームであるMEBプラットフォームを採用した、初めての電気自動車であるID.3の納車をスタートさせ、
特に今年である2021年度については、いよいよ本格的な電気自動車を一気に市場に投入することに成功し、
その電気自動車の販売台数は、まさに右肩上がりの状況でもあるのです。
特に、直近である7月から9月度という、第三四半期の電気自動車の販売台数は19万6800台、
特に日産リーフやテスラなどの、搭載された大容量のバッテリーの充電して貯められた電力のみで走行する完全な電気自動車の販売台数は12万2100台、
要するに、完全な電気自動車のみの販売台数だけで、年間50万台規模のキャパシティを備えてきているということになり、
この年間50万台という生産規模というのは、
このフォルクスワーゲングループが昨年である2020年度に記録した42万2000台という数値を、すでに余裕で超えてきているということ、
さらに、世界最大の電気自動車メーカーであるテスラが、
2020年度に記録した年間49万5000台程度という販売台数のペースにすでに達し始めている、というレベルなのです。
さらに、プラグインハイブリッド車も含めた電気自動車全体の販売台数に関しても、
特に今年に入ってから9月までの販売台数の合計で53万9100台、
しかも世界的な半導体不足の影響を大きく食らいながら、ということで、
確かに業界トップであるテスラが、9月までで62万7350台を達成しているわけであり、
まだ9万台もの差がついているわけでもありますが、
何れにしても、現在世界最大級の自動車グループであるフォルクスワーゲングループというのは
別に口だけでもなんでもなく、電気自動車を強力に推進し、
実際に、テスラに迫るような販売台数へと爆速で突き進んでいる、ということなのです。
ポルシェがEV専業メーカーになる日も近い
ちなみにですが、第三四半期のグローバルにおける、完全電気自動車の人気車種の内訳に関してですが、
5位から、スコーダブランドのENYAQ iV、ポルシェタイカン、
アウディe-tron、フォルクスワーゲンID.3、そして、フォルクスワーゲンID.4となっていて、
特に4位にランクインしているポルシェのスポーツセダンであるタイカンに関しては、
カイエンとマカンという売れ筋のSUVを除いて、
なんとポルシェのラインナップの中で最も売れてしまっているモデルであり、
しかも史上初めて、ポルシェのフラグシップモデルである911の販売台数を超えてきてしまったという、
まさにタイカンというポルシェ初の電気自動車が、
ポルシェブランドの中でも、しっかりと通用するということがお分かりいただけると思いますし、
やはりこの販売台数の比率を見ても、スポーツカーと電気自動車の相性が良い、
だからこそ、ポルシェの中で最も人気の車種の1つとなっているということも、お分かりいただけたのではないでしょうか?
ちなみにですが、このポルシェに関しては、
2023年モデルとして、売れ筋のエントリーモデルであるマカンの電気自動車バージョンの発売もアナウンスしていますので、
このマカンの電気自動車バージョンは、タイカンを遥かに凌ぐ、
正真正銘ポルシェ史上最も売れるベストセラー車となるのかもしれません。
EVを本気で売るためには販売体制の変革に着手がマスト
また、今回のフォルクスワーゲングループの完全電気自動車の販売台数において、特に強調したいのが、
現在成長著しい中国市場の販売台数が伸びているということであり、
特に第三四半期については28900台と、前年同四半期と比較しても、実に315.2%もの販売率を達成、
つまり、いよいよ月間1万台をコンスタントに超えてくるような水準にまで、販売台数を伸ばしてきているということであり、
特にフォルクスワーゲンブランドが展開しているIDシリーズの販売台数が、急速に伸びてきていることが好影響を及ぼしています。
こちらは以前にも複数回取り上げていることではありますが、
フォルクスワーゲンのIDシリーズは、当初販売台数で低迷してしまったものの、その販売手法を徹底的に改善し、
主要都市部のショッピングセンターに、IDシリーズ専門のショールームを立ち上げ、
電気自動車のみの販売にフォーカスする店舗を広げていったことによって、
電気自動車を売りたくない既存ディーラーによる販売台数の低迷を脱却し始めているわけですので、
やはり既存メーカーが電気自動車を売るためには、
質の高い電気自動車に合わせて、いかにその販売体制を電気自動車向けに最適化していくのかも、
今後メーカーが問われる部分であると思われます。
自社の経営幹部会合にライバル社のCEOを招待という珍事?
そして、そのような電気自動車シフトを鮮明にし、
実際にその販売台数を伸ばし、成功を収め始めているかに見えるフォルクスワーゲングループについて、
今回新たに明らかになってきていることというのが、
ディースCEOが、フォルクスワーゲングループの幹部総勢200人を集めて、今後の経営方針、
特に電気自動車と完全自動運転という大津波に対して、
いわゆるレガシーな既存メーカーの筆頭格として、どのように対応していかなければならないのかという、
危機感を共有するための会合を開催してきたということで、
特に欧州経営大学院であるInseadのErin Meyerを招聘して、
その既存のビジネスモデルからの転換として、ネットフリックスのビジネスモデルを例に、
今後フォルクスワーゲングループの掲げる、新たなモビリティカンパニーへの変革のプレゼンテーションが行われたようです。
そして、その中においてもサプライズであったのが、
電気自動車としてライバル関係にもある、世界最大の電気自動車メーカーの、テスラのトップであるイーロンマスクが、
そのフォルクスワーゲンの経営幹部の会合でプレゼンテーションを行ってもきたということで、
こちらについては、Diessがファシリテーターとなり、対話形式で話が進んでいったそうですが、
特に、なぜ敏捷性の高い経営を行うことができるのかを問われた際に、イーロンマスクは、
自分は本来エンジニアであり、やはりサプライチェーンやロジスティックス、そして、生産工程への改善に興味があり、
したがって、より現場の問題に迅速に対応することができる、
と結論づけています。
また、なぜ現在既存の自動車メーカーが軒並み半導体不足によって生産台数を落としている中においても、
生産台数を堅持することができているのかに関してDiessは、
テスラはソフトウェアを一から独自で書き上げ、
新たな種類の半導体を採用するとなったとしても、そのハードに合わせたソフトウェアの書き換え作業を、ものの2-3週間で完了させてしまうため、
より柔軟に半導体のサプライチェーンを適宜変更することができるからである
と例を挙げて、
そのテスラの垂直統合をはじめとする、プロダクトの完成度について賞賛しています。
EVシフトの遅れで3万人の雇用消失!?
このようにして、
現在グローバルの販売台数1000万台規模という、世界最大級の自動車グループとして成功を収め、
確かに、その過去の成功体験としては、フォルクスワーゲンは素晴らしい会社であるとしながらも、
残念ながら、現状の電気自動車と自動運転という変革の波による、新たな自動車産業の勢力図において、
フォルクスワーゲンが生き残っている保証はないと結論づけるなど、
自動車産業の大変革に対し、極めて危機感を有しているDiessなのですが、
実はこの数日にわたって開催されていた経営幹部の会合において、
今後フォルクスワーゲングループの電気自動車シフトが遅れれば、最大で3万人もの雇用を失う可能性があるという、
ディース自らの部下である経営幹部に対して、極めてアグレッシブな警告を発しているのです。
というのも、本メディアにおいては繰り返し主張していることではありますが、
やはり電気自動車の生産にシフトしてしまうと、
特に複雑な内燃エンジンを搭載しないことによって、部品点数が圧倒的に減る、
つまり、それだけ車両生産に関わる仕事が減ることを意味するわけであり、
一部の電気自動車懐疑論者の中には、その雇用の問題を取り上げて、
電気自動車を推進してしまったら雇用にあぶれる人が大量に発生してしまうのだから、
電気自動車を推進するなんて、売国奴であるのだー、
という類の主張が、散見されているわけなのです。
しかしながら、今回のディースCEOの発言というのは、むしろ全く逆の発想であり、
電気自動車シフトを1日でも早く進めなければ、むしろ大量の雇用が消失してしまうという懸念であり、
今回のディースに関しては、
特にテスラが今年である2021年末までに操業をスタートさせるとしている、
ドイツベルリンの車両生産工場であるギガファクトリーを取り上げて、
そのテスラのギガファクトリーでは、合計12000人もの雇用によって、
年間50万台もの車両を生産することができる生産性を有している一方で、
フォルクスワーゲングループ最大の車両生産工場であるWolfsburg工場に関しては、
そのギガファクトリーよりも多い年間70万台もの車両生産キャパシティを有してはいるものの、
その車両生産に関わる人員は25000人と、
テスラギガファクトリーの倍もの人数を要してしまっているのです。
つまり、テスラの最新工場のほうが、同じ生産台数を達成するのにより少ない人数で裁くことができる、
したがって、間違いなくコストを抑制することができますし、
その従業員の数というだけでなく、
そもそも現状フォルクスワーゲンの主力EVであるID.3については、
その車両を一から製造するまでに、おおよそ30時間を要するわけなのですが、
テスラの主力EVであるモデル3については、最短で10時間程度で完成させることができてしまうという、
その車両生産における生産性に関しても、すでにテスラの方がより高い次元を達成してしまっているわけなのです。
フォルクスワーゲンの変革プロジェクト「Trinity」
このように、ただテスラを口だけで賞賛しているのではなく、そのテスラとの生産能力の差は間違いないわけであり、
だからこそ賞賛とともに、テスラに追いつくために現状をしっかりと認識しているということになりますので、
特にフォルクスワーゲングループについては、
自動運転レベル4に対応可能な電気自動車を生産するために、その生産アプローチから抜本的に改革をしていく、
Trinityというプロジェクトが目下進行中であり、
そのTrinityに沿って、フォルクスワーゲン最大の車両生産工場であるWolfsburgヴォルクスバーグの工場の抜本的な改修工事の進捗についても、
特にその抜本的な車両生産アプローチとして導入が噂されている、
ボディ鋳造の一体成型であるギガキャスティングの導入をはじめとして、その動向に注視していく必要がありそうです。
何れにしても、フォルクスワーゲンのトップであるディースCEOについては、
日本人がよく主張する、電気自動車シフトによって雇用が消失してしまうのだー、という主張とは正反対の、
むしろテスラや中国勢のような電気自動車メーカーたちに、そのシェアを完全に奪われないように、
より早くEVシフトを進めていかなければ、むしろEVシフトの遅さによって、より多くの雇用が消失してしまう、
とさえ主張しているのです。
大出血覚悟で大手術を英断するか?それとも、、
日本トップの企業の社長については、
電気自動車へのシフトによって、非常に多くの雇用を失ってしまうという趣旨の発言を何度も主張されているわけですが、
果たして過去の技術にしがみついて、雇用を守るべきであると主張した企業が、いったい今どれほど生き残ることができているのか、
競合メーカー、特に新興EVスタートアップのトップに、自分の社内の経営会議に招待して講演してもらうという、
自分たちの現状をしっかりと認識した上で、その中で生き残りをかけて、新たな産業へと自社を昇華させようとするのか、
既得権益にしがみついて雇用の数を守ることが、本当に日本の成長にとってベターな判断であるのか、
間も無く取り返しのつかないほどまで病気が進行していることが、白日の下に晒されると確信していますが、
そのような、すでに手術不能の状況まで、臭い物に蓋をするのか、
それとも、大きな出血を伴うことは避けられないが、日本全体で、自動車産業の大手術を断行する決意を見せるのか、
自動車産業550万人を守るためにも、賢明な判断を期待したと思います。
From: Linkedin(Herbert Diess)、Volkswagen(Q3 Sales)、Porsche(Taycan Sales)
Author: EVネイティブ
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