中国の電気自動車スタートアップであるNIOの最直近である8月度の販売台数が速報されましたが、販売台数が急落し、
自動運転支援中の事故による販売台数への影響だけでなく、その経営戦略にも疑問の声が上がっているという気になる動きについて、
その新型車の最新動向などとともに、徹底的に解説します。
NIOの販売台数がここにきて急減速
まず、中国の電気自動車スタートアップであるNIOに関してですが、
こちらは2014年に設立され、たったの4年後である2018年には、初の量産高級SUVであるES8を発売しながら、
現在までに3種類の電気自動車SUVをラインナップするという、爆速の成長を遂げ、
特にNIOに関しては、高級自動車メーカーとして、電気自動車以外の様々な付加価値を提供し、
まずは、通常の電気自動車のエネルギー補給のインフラである急速充電ステーションの独自設置だけではなく、
あらかじめ充電されてあるバッテリーとを、たったの5分程度の時間でもって交換することができてしまう、バッテリー交換ステーションの普及を促進したり、
また、オーナー間のコミュニティづくりの一環として、NIO HOUSEという、そのNIOオーナーのみが利用することのできる施設を提供するなど、
何れにしても、競合の中国EVスタートアップ勢と比較しても独自路線を開拓し、これまで大きな成功を収めていました。
そして、直近である8月度の販売台数が速報され、その販売台数の合計が5880台と、
前年同月と比較しても1.5倍近い成長を達成することにはなりましたが、
前月である7月度の販売台数とを比較すると、特にその販売台数の落ち込みが顕著であり、
したがって一部からは、そのNIOの需要に陰りが見え始めてしまったのではないかという声が立ち始めてもいるのです。
外的要因なので販売台数低迷は問題なし?
しかしながら、NIO側のアナウンスによって、
この直近の8月度の販売台数の落ち込みというのは、需要の落ち込みではなく、
現在世界的に供給不足が続いている半導体をはじめとするサプライチェーンの脆弱さによるものであると説明し、
実際のその販売車種の内訳を見ていくと、
フラグシップ大型SUVであるES8については、その販売台数が横ばいであるものの、
問題は、ミッドサイズSUVであるES6、そしてクロスオーバーEVであるEC6の両車種が、ともに販売台数が落ち込んでいて、
その両車種のAピラーとBピラーに採用されているインテリアのトリムパネルを生産している、Nanjingに位置するサプライヤーが、
Covid-19によるロックダウンのために、その生産を中断していたことが原因であるとし、
すでにその生産は再開していると主張してはいます。
また、半導体に関しては、マレーシアに位置するSTMicroelectronicsという半導体サプライヤーの生産工場が、
これまたCovid-19によるロックダウンによって、その生産が中断してしまっていることによって、
全車種の生産台数が制限されてしまった、ということですので、
ここまでのNIO側の説明を聞くと、その販売台数の落ち込みというのは外的要因によるものなので、特段心配する必要はないのではないか、と思うのですが、
それではいったいなぜ、競合メーカーであるXpengやLi Autoなどの販売台数はそこまで落ち込んでいないのか、という理由が腑に落ちないのです。
NIOの弱みはローカライゼーションができていないところ?
実は、今回のNIOについては、そのサプライヤーへの依存率、特に海外工場からの依存率が、競合メーカーと比較しても高く、
したがって、中国国内へのローカライゼーションにコミットできていないため、
特にCovid-19による、現地の生産体制がストップしてしまうと、
それにつられて、自動的に中国国内にあるNIOの車両生産もストップしてしまうわけで、
その理由として、一部のアナリスト曰く、
NIOの車両が採用しているプラットフォームは、競合他社と比較してもやや古く、その分採用することのできるパーツを柔軟に変更することができず、
したがって、いざ中国国内のサプライヤーへ、サプライチェーンのローカライゼーションを行おうとしても、すぐには対応することができない、
だからこそ競合メーカーよりも、その外的要因の影響をもろに食らってしまっているのではないか、ということなのです。
NIOの自動運転支援機能使用中に死亡事故
また、今回のNIOに関しては、さらに悪いニュースも飛び出していて、
それが、500以上ものフランチャイズを有する、中国料理店のレストランブランドの、若干31歳の創業者であり、
NIOのフラグシップ大型SUVであるES8を運転していた人物が、なんと交通事故に遭い、死亡するというニュースであり、
今回何が問題となっているのかというと、
その運転中であったES8については、NIOが提供する自動運転支援技術であるNavigation On Pilot、略してNOPを作動中であったということで、
したがって、そのNIOの自動運転支援技術が果たして安全であったのかという疑念が巻き起こってしまってもいるのです。
ただし、今回のNOPに関してはレベル2自動運転機能であり、つまり、運転中の責任は全て人間側にあるわけですので、
仮に今回問題となっているNOPであるシステム側が、仮に判断ミスをしてしまっていたとしても、別にそれはNIOに責任があるのではなく、
最終的な責任は、あくまで運転手側である、つまり有名レストラン経営者の方にある、ということなのです。
何れにしても、このニュースに関しては著名人の不慮の事故ということもあり、中国国内ではかなりの話題を集め、
すでにNIO側に関しては、オーナーに対して自社の自動運転支援技術に対する前提知識を、再教育させるような試みをスタートするなど、
その自動運転と自動運転支援の違いを、改めて明確に説明しようとする動きを見せることで、事態の沈静化を図ろうともしていますので、
果たしてこのNIOに対する疑念が落ち着きを見せ、今後の販売台数に影響していくという最悪の流れは起きないのか、
特にこの直近の年末までの販売台数の動向に、注視していく必要がありそうです。
ノルウェー市場に納車スタート秒読み
しかしながら、今回のNIOについてはそのようなマイナスなニュースばかりではなく、明るいニュースもいくつか存在しているということで、
まずは、ついに海外市場において納車がスタートするという動きとなっていて、
それが、先ほど解説したXpengと全く同様に、電気自動車最先進国であるノルウェー市場に対して、
ついに今月である9月度中に、ES8の納車をスタートさせながら、
さらにその納車に合わせて、NIO独自のバッテリー交換ステーション、
さらには、NIOオーナーのコミュニティーを形成することができる空間であるNIO HOUSE、
もちろん車両を整備点検するサーボスセンターに至るまで、
中国国内で展開している事業を、一気にノルウェー市場においてもスタートしますので、
電気自動車の目が肥えているノルウェー市場において、一体どの程度受け入れられるのか、
今後の販売台数とともに、期待しながら注目していきたいと思います。
NIOが独自ワインを発売!?
ちなみに、NIOはフランスのワイナリーと契約し、なんと独自のワイン園を運営し始めたということで、
しかもそのワイン園では、独自ブランドであり、英語でThe Fantasy of Blue、青の幻想という名前で、独自のワインブランドを発売していくことも表明したり、
さらにその上、今後質の高いワインをNIO Lifeという専用ブランドに加入しているオーナーに提供していくために、
中国国内のワインソムリエからしっかりとフィードバックをもらい、
自社で運営するワイン園において、そのフィードバックをもとに、より質の高いワインを製造していくという、
NIOは一体なんの会社であるのかわからなくなるほどの力の入れようでもあるのです。
何れにしてもこのように、NIOという電気自動車スタートアップに関しては、現在様々な課題が山積し、
果たして競合メーカー勢と比較して、その販売台数を維持することができるのかに注目が集まっていますが、
すでに中国市場を飛び出して海外マーケットに進出し、その販売台数を大きく伸ばそうとしているということ、
また、ワイナリー事業というのはあくまで一つの例ですが、NIOというのは、ただ電気自動車を発売するだけでなく、
そのオーナーのライフスタイルを変容させるような、周辺のあらゆるビジネスに波及させて事業を行なっていますので、
ただ電気自動車の質だけではない様々な付加価値にも、同時に注目していきたいと思います。
From: NIO
Author: EVネイティブ
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