中国市場において、全部で5種類のモデルYのグレードが新規登録され、そのモデルYの航続距離が大幅アップする公算となっています。
モデルYがEV激戦区ヨーロッパ市場へ
まず今回の中国市場におけるモデルYに関してですが、
ちょうど今年である1月中から納車をスタートし始めた、テスラのミッドサイズSUVとなっていて、
現状月間にして1万台以上を生産しているという、たった1年未満という短期間でもって、その生産体制を拡充してきているのですが、
そもそもこちらのミッドサイズSUVセグメントというのは、現在お膝元でもある中国市場をはじめとして、世界的に人気のセグメントであり、
特に、現在電気自動車戦争が激化しているヨーロッパ市場においては、
そのミッドサイズSUVセグメントにおける競合車種が次々と市場に投入されており、
特に本メディアにおいて注目しているのが、
韓国ヒョンデのクロスオーバーEVであるIONIQ5、さらに同じく韓国キアのEV6、さらにはプレミアムブランドとして、アウディのQ4 e-tron、
もちろん今後は、日産のクロスオーバーEVであるアリアなど、
何れにしても、モデルYと同じく、電気自動車としての質の高さに定評のあるミッドサイズSUVセグメントの電気自動車が、
すでにヨーロッパ市場で一気に販売台数を伸ばしている最中であるわけなのです。
Audi Q4 e-tron Nissan Ariya
最新型モデルYが中国市場で新たに登録
そして直近でも解説している通り、
ついにモデルYについても、予定よりも早くヨーロッパ市場に向けて納車をスタートさせるという、その販売の実質的な前倒しが行われたということで、
実はそのヨーロッパ市場向けのモデルYについては、
全てドイツベルリンに目下建設中である、テスラの車両生産工場兼バッテリー生産工場であるギガファクトリー4において生産される予定であったのですが、
現在そのギガファクトリー4の工事の進捗が、大幅に遅れてしまっているということで、
一時期は、ヨーロッパ市場におけるモデルYの納車スタートが、来年である2022年の前半にまでずれ込んでしまうのではないかとさえ言われていたのです。
しかしながらこの直近で開催された、テスラの第二四半期の決算発表内において、そのヨーロッパ市場におけるモデルYの販売を直ちにスタートするとし、
そのために、中国市場で生産されているモデルYを輸出する形でもって対応するということが発表され、
したがって、ヨーロッパ市場で待望されていたモデルYの納車が、いよいよ今月である8月中にもスタートするわけなのです。
そして、そのヨーロッパ市場で納車される中国製のモデルYについて、今回新たに明らかになってきていることというのが、
中国工業情報化部、通称MIITと呼ばれる、中国国内の工業関係に関する情報を一挙に管理する国家機関による情報から、
モデルYのスペックがアップデートされる公算であるということが判明したということで、
特に注目に値するのが、その電気自動車としての質である満充電あたりの航続距離が、大幅にアップしているという超朗報となりますので、
まずは、その明らかとなった最新型のモデルYのスペックを、現行バージョンのグレードと比較しながら、徹底的に解説していきたいと思います。
航続距離は最大40km以上もアップへ
まずはじめに、そのラインナップに関してですが、
現在ラインナップされているのが、ロングレンジAWDと、よりパフォーマンス性能を高めたパフォーマンス、
そして直近である7月中に追加設定された、より安価なエントリーグレードであるスタンダードレンジという3種類となっていますが、
今回のアップデートというのは、新たにグレードを追加設定してきているのではなく、それぞれのグレードの質が改善されているということですので、
今後もスタンダードレンジ、ロングレンジAWD、そしてパフォーマンスという3種類が継続してラインナップ格好となりそうです。
そして、気になる満充電あたりの航続距離に関してですが、中国市場で一般的に採用されているNEDCサイクルにおいて、
まずエントリーグレードであるスタンダードレンジが、現状525kmという航続距離を達成しているのに対して、
アップデート後に関しては545kmと、その航続距離が20kmほど向上しているということであり、
さらにロングレンジAWDに関しては、現状の594kmという航続距離から、アップデート後ではなんと640kmと、
その航続距離が40km以上という、大幅な改善となっているのです。
ただし、こちらのNEDCサイクルという基準というのは、実用使いにおいて全く信用するに値しませんので、
高速道路を時速100kmでクーラーをつけても達成可能であるというような、実用使いにおいて最も信用に値するEPAサイクルに変換してみると、
現状の概算値とはなりますが、スタンダードレンジがおよそ421km、そしてロングレンジAWDがおよそ566kmと、
どちらにしても、非常に質の高い航続距離を達成していることがお分かりいただけると思いますし、
実はこのEPAサイクルにおける航続距離というのは、
なんと現在ラインナップされている、ミッドサイズセダンのモデル3のEPAサイクルにおける航続距離と、ほぼほぼ同じ航続距離を確保することに成功していますので、
したがって、航続距離という観点で不利となるミッドサイズSUVセグメントであったとしても、
その満充電あたりの航続距離で全く妥協がないということも、おわかりいただけると思います。
搭載モーターとバッテリーを変更
ちなみに、今回の満充電あたりの航続距離をどのようにして改善してきているのかということ、
まずはその搭載モーターを変更してきているということで、
現行型のモーターに関しては中国国外で製造されたものを輸入している形となっていたのですが、
今回のアップデートからは、中国製のモーターにローカライゼーションしてきたことによって、より高性能なモーターが搭載されていると推測することができますが、
ただし、その後輪側に搭載される、Parmanent Magnetic Switched Reluctance Motorの変更によって、
最高出力が220kWから202kWに、そして最大トルクも440Nmから404Nmとわずかに低下してしまっていますので、
もしかしたら時速100kmまで加速するのにかかる時間などの加速性能については、わずかに劣ってしまっているかもしれません。
さらに、ロングレンジAWDとパフォーマンスに関しては、その搭載モーターだけではなく、搭載バッテリー容量も変更してきていて、
現行型では、76.8kWhというバッテリー容量を搭載していたのですが、
今回のアップデートによって、その搭載バッテリー容量を78.4kWhと、わずかばかり増量してきた格好となり、
しかもその上、以前にも取り上げたニュースとして、韓国のLGエナジーソリューション製のバッテリーセルの種類にも変更が加えられていて、
以前はNMCという、日産リーフをはじめとして、多くの電気自動車で採用されている3元系のバッテリーセルを採用していたのですが、
新たにNMCAという、アルミニウムを新たに追加配合したバッテリーセルの種類を採用してきていて、
それによってエネルギー密度が向上、つまり、同じバッテリー容量であったとしてもより航続距離を伸ばすことにつながるのです。
バッテリー容量が増えているのに車重には変化なし?
したがって、搭載モーターの変更のみによって、NEDCサイクルで20km分の航続距離の延長を達成したスタンダードレンジとは異なり、
より高いエネルギー密度を達成した新たなバッテリーセルの種類、および、わずかに搭載バッテリー容量も増やしてきたことによって、
NEDCサイクルで43kmもの航続距離を延長してきたわけなのです。
ちなみに、航続距離が延長され、特にロングレンジAWDとパフォーマンスは、わずかに搭載バッテリー容量が増えているのにも関わらず、
その車両重量については、現行型と一切変化がない、
したがって、より高密度なバッテリーセルを採用したことによる、バッテリーパックの重量を低下させることに成功しているという進化を、
この車両重量という観点からも推測することができそうです。
モデルYの販売台数が急増するのは必死
そして、最も気になる値段設定に関してですが、
こちらに関しては、もちろん今回MIITに登録されたアップデートバージョンによって、値上げされる可能性もなくはないのですが、
今までの流れを見るに、その可能性は限りなくゼロに近いと推測していますので、現行型に引き続いて全く同じ値段設定、
したがって、エントリーグレードのスタンダードレンジが日本円に換算しておよそ470万円から、
さらに、ロングレンジAWDが593万円、そして最上級グレードのパフォーマンスも644万円と、この実用的な電気自動車としてのスペックを鑑みるに、
今回のアップデート後の中国製モデルYというのは、やはり極めて質の高い電気自動車SUVであるということが改めておわかりいただけたのではないでしょうか?
From: MIIT(P23-P25)
Author: EVネイティブ
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