テスラの初期型のモデルSでの発火事故を防ぐために、ソフトウェアの無線アップデートによって、バッテリー性能をオーナーに知らせず抑えていたという問題で、
ついにテスラ側がその非を認め、合計で1億6000万円以上もの賠償金を支払うことを決定しました。
初期型モデルSの発火事故で係争中
まず今回の初期型のモデルSに関してですが、
2012年から発売し、我々である日本市場においても2014年から発売をスタートさせている、テスラのフラグシップセダンとなっていて、
さらについ直近において、大規模なモデルチェンジを行い、パフォーマンス性能をはじめとする電気自動車としての質を、さらに向上させてきていますので、
まさにテスラの最もロングセラー車ということになるのですが、
しかしながら、特に2012年から2016年ごろまでに生産され、フェイスリフトが行われた前後である、その初期型のモデルSに関しては、
自然発火案件が相対的に多くなってしまっていたのです。
実は、その初期型のモデルSにおいて、中国を始め、衝突事故による発火案件ではない、駐車中などにおける自然発火案件が複数報告されていて、
昨年である2019年に、中国市場における、駐車中のモデルSからの自然発火事故に関しては、
日本のメディアなどにおいてもニュースとして取り上げられるくらいで、その安全性に、中国当局も責任を持って調査するよう指示が出され、
その発火案件の後でテスラ側は、無線アップデートによって問題を修正したと説明していたのですが、
その後、実際のオーナーたちによって明らかとなったのが、満充電あたりの航続距離がかなり減ってしまっているという点であったのです。
というのもテスラに関しては、このアップデートにおいて、もともと100%まで充電できる仕様を変更し、
意図的に満充電できない状態を、満充電であるかのようにアップデートしていて、
よって、その満充電状態にしたとしても、アップデート後の航続距離が短くなってしまっていたわけで、
したがって、その当時のオーナーからはかなりの批判を浴びていて、
実際問題として、その初期型のモデルSを所有しているオーナーによると、
使用可能なバッテリー容量が68.2kWhから、アップデート後には60.2kWhまで落ち込んでしまい、
満充電あたり走行可能な航続距離が大幅に下落してしまっていること、
そして充電スピードに関しても、かなり低下してしまっていることなどが挙げられ、
よって、そのオーナー達に関しては、テスラを相手取り訴訟を起こしていた、という状況となっていました。
また、そのような経緯において、交通事故による死亡・障害の防止、および経済的損失の削減を図るために、自動車の安全性に関する調査を行う、
アメリカの運輸省道路交通安全局、通称NHTSAがいよいよ主導して、そのバッテリーの自然発火案件の調査を2020年の11月から開始し、
NHTSA側はさらに、テスラは広範囲において危険で、潜在的なバッテリーの安全性に関わる問題を、無線アップデートによって覆い隠している、
とまで主張していましたので、
何れにしても、NHTSA側も、テスラに対してかなりの疑念を持って調査が進められていたことがお分かりいただけると思います。
テスラが和解を申し出、実質敗訴が確定
そして、そのような背景において今回新たに明らかになってきたことというのが、
その初期型のモデルSのオーナー側に、2019年の8月から訴えられていた訴訟において、
ついにテスラ側がその非を認め、訴えを起こしていた初期型のモデルSのオーナーに対して賠償金を支払う公算であるということで、
まずこちらの対象車種に関してですが、サンフランシスコの1753台もの初期型のモデルSとなっていて、
その罰金額が一台あたり625ドル、日本円にしておよそ6万8000円程度となり、
その弁護士費用なども含めて、その賠償金額の合計が150万ドル、日本円にして1億6000万円以上というかなりの額となってしまいました。
ただし、今回の裁判の資料を詳しく見ていくと、
まずそのバッテリー性能である電圧が低下していたのは、最初のソフトウェアアップデートが行われた後の3ヶ月間が、概ね10%程度でしたが、
その後には、さらなるアップデートが行われ、その後の7ヶ月間の電圧低下はやや改善しましたが、その電圧は7%程度の低下率であり、
そして、昨年である2020年の3月中のアップデートによって、最終的にはその電圧が元に戻っています。
よって、現時点において、その対象車種である1753台のうち、1552台が最初のアップデート以前のバッテリー性能を回復し、
さらに57台については、ソフトウェアのアップデートではなく、
バッテリーパックを交換することによって、同じくアップデート以前のバッテリー性能を回復させていますが、
テスラ曰く、残りの144台については、今後のさらなるアップデートによって元どおりの電圧に回復できるようにするともアナウンスし、
したがって、すでに現状の大部分の車両については、すでに元どおりのバッテリー性能を回復しているということになりますので、
今回一台あたり7万円弱という、そこまで多くない和解金を支払うという状況とはなっています。
イーロンマスク自身が過ちを認める
したがって、私が昨年から複数回、その訴訟の動向をアップデートしていましたが、
結論から申し上げて、テスラ側が事実上の敗訴となり、そしてテスラ側がその過ちを認めた格好となりましたので、
まずは、その不便、特にNHTSA側の言葉を借りれば、その潜在的なバッテリーの問題をアップデートによって覆い隠されてしまっていた、
初期型のモデルSオーナーについては、その勝訴に対して祝福したいと思いますし、
逆にテスラ側に対しては、その無線アップデートによるバッテリー性能の意図的な抑制については、
その問題点を真摯に受け止めなければならないとは感じました。
そして、なんとイーロンマスクがツイッター上において、自らそのテスラ側の過ちを認めてきたということで、
特にイーロンマスク曰く、
たとえテスラが負けるとしても嘘の要求には屈しないとしながら、テスラが勝つとわかっていても、真実の主張に対して戦うことはないと説明し、
何れにしても、イーロンマスクが公式に過ちを認めてきたことは、非常に賞賛することができますし、
今後も今回の問題を教訓に、この世界の電気自動車への移行を加速していって欲しいと感じました。
頓珍漢テスラシェアホルダー信奉者、聞け
しかしながら、それと同時に一点、個人的にどうしても指摘させていただきたいことというのが、
私が昨年この問題を指摘した際に、一部のテスラ信奉者から、SNS上において、
今回のバッテリー性能の制限は一時的なものであり、したがって大々的に取り上げる必要はないのだー、
という内容の批判を、複数コメントされたのですが、
今回の裁判結果からも、テスラ側に非があることが確定しましたし、
何より貴殿らが信奉しているイーロンマスク自身が、今回の問題を認めていますので、是非ともその誤った認識を訂正していただきたいですし、
今だに該当オーナーやNHTSA側の揚げ足取りであるとさえ主張している、テスラ信奉者のトンチンカンなポジショントークに惑わされないようにすることを、オススメしたいと思います。
何れにしても、そのアップデートが行われた後に関しても、今だに初期型のモデルSからの発火案件が発生してもいましたので、
仮に今後そのような発火案件が発生してしまったとしても、今回のようにしっかりと問題点を認めて、
その情報公開を徹底、少なくとも該当のモデルSオーナーとのコミュニケーションを図っていくことを期待していきたいと思います。
From: Automotive News、Elon Musk
Author: EVネイティブ
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