中国のBYDが新型電気自動車として、Dolphinというコンパクトカーセグメントの電気自動車を予告していましたが、その正式なスペックがリークし、
実用的な電気自動車としてのスペックを兼ね備えながら、なんと185万円から購入することができるという、
いよいよ電気自動車戦争の新時代に突入するのではないかという、世界の電気自動車最前線について徹底的に解説します。
BYDの本気EVのスペックがついにリーク
まず今回のBYDに関してですが、中国の自動車メーカーでありながら、それと同時に世界でも有数のバッテリーサプライヤーでもあり、
なんとその生産キャパシティは、世界で第4位というトップサプライヤーでもあり、自社で製造する電気自動車には、その自社で生産したバッテリーを採用するという、
電気自動車のコアテクでもあるバッテリーを完全に内製化できていて、
この意味において競合他社と比較しても、今後その電気自動車としての質、さらには量産体制、特にその量産コストなどにおいて、
大きなアドバンテージとなっていくことは間違い無いですので、現在最も注目するべき自動車メーカーの一つとなっているのです。
ちなみにBYDに関しては、すでに商用車、特にバスやタクシーを世界中に展開していて、
例えば我々に日本市場においても、富士急ハイランドで有名な富士急バスに導入された大型バスであったり、
上野動物公園内の移動用小型バスであったり、栃木県や福島県、新潟県の県境付近に位置している尾瀬国立公園内のシャトルバスなどなど、
すでに中国製BYDの商用車が、日本にも展開しています。
そして以前、そのBYDが新型電気自動車として、Dolphinというコンパクトハッチバックの公開を予告してきたということで、
その際に公式情報ではないものの、BYDの関係者の証言から、そのスペックを推測して解説していたのですが、
今回ついにそのスペックが、中国のMIITと呼ばれる中国の工業関係の情報を一手に管理する国家機関において発表された、そのメーカーが正式にMIITに提出したスペックとなる、
つまり、そのリークされたスペックこそ、今回のDolphinの正式なスペックとなりますので、
今回はそのBYDの次世代型の電気自動車のスペックを徹底的に解説していきたいと思います。
航続距離は最大405kmを達成
まずはじめにラインナップに関してですが、30.72kWhという、比較的コンパクトなバッテリーサイズを搭載したスタンダードレンジと、
44.928kWhと、例えば私自身が所有している、現行型の日産リーフである40kWhよりもやや多いサイズ感のLonger Rangeという2種類をラインナップしてきています。
次に、気になる満充電あたりの航続距離に関してですが、中国市場で一般的に採用されているNEDCサイクルという基準において、
スタンダードレンジが301km、そしてLonger Rangeが405kmと、期待値よりもやや下回ってしまっているのですが、
しかしながら、こちらのNEDCサイクルという基準というのは、実用使いにおいて全く使用するに値しませんので、
高速道路を時速100kmでクーラーをつけても達成可能であるというような、実用使いにおいて最も信用に値するEPAサイクルに変換してみると、
それぞれおおよそ201km、そして270kmという航続距離に留まってしまい、
例えばこの数値というのは、スタンダードレンジに関しては、同じくコンパクトカーセグメントに該当するHonda eであったり、
さらにLonger Rangeに関しては、私自身も所有している日産リーフの243kmよりもやや長い航続距離となります。
したがってこのように比較してみると、
確かに当初予測されていた数値よりかは見劣りするものの、その航続距離が取り立てて短いということではないですし、
実際問題として、現行型の日産リーフよりも航続距離が長いとイメージしてもらえれば、実は一定程度のスペックを達成していると捉えることができます。
充電性能はe-platform3.0を採用したことによる質の高さを期待
次に、その充電性能に関してですが、こちらの最大充電出力であったり、その充電にかかる時間などは公表されていないのですが、
実は今回のDolphinという新型電気自動車からは、
BYDが独自に開発した、最新型の電気自動車専用プラットフォームであるe-platform3.0を始めて採用していて、
そのe-platform3.0に関しては、例えばポルシェのスポーツセダンであるタイカンであったり、韓国ヒョンデのクロスオーバーEVであるIONIQ5など、
現在グローバルで発売されている一部の電気自動車で採用されている800Vシステムに対応しているということで、
つまり、世界で発売されている多くの電気自動車のシステム電圧である400Vと比較しても、倍の電圧を許容することができる、
要するに、その充電性能を単純計算でも倍程度にまで高めることができますので、
その最終的にかかる充電時間も、大幅に短縮するポテンシャルを秘めているのです。
したがって、特に今回のDolphinに搭載されている比較的コンパクトなバッテリー容量であれば、
充電残量80%まで充電するのにかかる時間は、おおよそ15分程度で完了することができそうですので、
この質の高い充電性能を考慮してみると、確かに先ほどの、最大でも270km程度の航続距離というスペックに対してやや不安を持たれた方であったとしても、
この圧倒的な充電性能さえあれば、往復500km程度のような比較的長距離のドライブにおいても、必要十分なスペックを達成することができているのではないでしょうか?
サイズ感は日本のコンパクトカーと一緒
また、そのサイズ感に関してですが、
全長が4070ミリ程度、全幅が1770ミリ、そして全高が1570ミリと、
例えば日産が発売しているコンパクトハッチバックであるノートe-POWERと似たようなサイズ感となりますので、
そのようにイメージしていただければ、中国市場の都心部であっても取り回しやすいサイズ感でありながら、
特に国土の狭いヨーロッパ市場、さらには我々日本市場においても完璧なサイズ感となりそうです。
しかしながら、そのコンパクトカーサイズの車両とは思えないほどにホイールベースを長くとることに成功し、
そのホイールベースの長さが、なんと2700ミリと、1ランク上のセグメントの車種のホイールベースの長さを確保、
つまりそれだけ車内スペースを広くとることに成功していますので、
やはり電気自動車専用プラットフォームを採用していることによる車内スペースの最適化、
特にこのようなコンパクトカーにおいても、その車内スペースの狭さを妥協する必要がないという点も、今回のDolphinの強みであると考えられます。
ちなみに、その重量に関してですが、
搭載バッテリー容量が44.928kWhであるLonger Rangeが1405kgと、
例えば、日産リーフ40kWhの重量が1490kgと、より搭載バッテリー容量が多いのにも関わらず、かなりの軽量化を達成できていますので、
まさにこの点からも、
電気自動車専用プラットフォームを採用したことによる、電気自動車としての最適化を達成することができていると推測することができそうです。
しかも、その車両重量、特にバッテリー重量については、今回のDolphinの方がより不利であるということで、
というのも、今回のDolphinに採用されているバッテリーの種類が、LFPというコバルトフリーのバッテリーであり、
希少物質であるコバルトを使用しないことによって、安定調達、特に、より安価に調達することができるというメリットが存在する一方で、
LFPの最大の弱点というのが、エネルギー密度の低さであり、
つまり、同じ航続距離を達成するためには、その分余分にバッテリーを搭載する必要がありますので、通常であれば、その車両重量はかなり重くなってしまうのですが、
例えばリーフと比較してみても、確かにリーフの方が一回り大きいサイズ感であるものの、明らかに軽量化に成功していますので、
このLFPという種類のバッテリーを採用していることからも、やはりDolphinの最適化が成功していることが見て取れるのではないでしょうか?
そして、このLFPのさらなる強みとして、そのバッテリーの安全性や寿命という観点で非常に優れているという点が挙げられ、
したがって先ほど解説した、極めて高い質を期待することができる充電性能によって、想定されるデメリットでもあった、
その超急速充電によるバッテリー劣化の問題、さらには、そのような超急速充電において懸念されてしまうバッテリーの安全性についても、
圧倒的に安全となりますので、
まさに800Vシステムを採用するために、その高性能な充電性能をしっかりと受け止めることができるLFPを採用してきたことは、自然な流れであるとも感じます。
BYD製コンパクトEVは、ズバリ185万円から
そして最も気になるその値段設定に関してですが、
エントリーグレードであるスタンダードレンジが日本円に換算して、およそ185万円からということで、
さらに、上級グレードであったLonger Rangeについても219万円からと、
当初の値段設定の予測値であった、エントリーグレードの170万円程度という値段設定と、そこまでぶれていない結果とはなりましたので、
次々と質が高く、故に総合的なコストパフォーマンスが高い電気自動車が次々と市場に投入されている中国市場においても、
競争力のある値段設定を実現してきているとは感じます。
それでは、今回のDolphinの電気自動車としての質以外、特にその内外装についてを簡単に紹介していきたいと思いますが、
まずはこちらの、リア側のテールランプに記載されているBuild your dreamsという言葉は、
文字通り、すべての人が欲しい車を購入することができるような自動車メーカーを目指し、その頭文字をとって、BYDと名付けていることからも、
より多くの一般層に訴求することのできる、より安価なセグメントへの展開を行ってきたことを示唆していると思います。
またインテリアに関しても、185万円から購入することのできる電気自動車とは思えないほどに、しっかりと作り込まれている印象を抱き、
そのシートの質感、さらには、そのセンターコンソールがブリッジ状になっていて、
おそらくその下に収納スペースを設けることができているのであろうと推測することができますが、
こちらは先ほどサイズ感の比較対象として取り上げた、日産ノートと偶然ながら全く同じような構造であるということですので、
新型日産ノートを試乗すると、今回のDolphinを日本にいてもイメージすることができるかもしれません。
BYD Dolphin 日産ノート
Dolphinを日本に導入するかもしれない話
しかしながらそのDolphinを、日産ノートに乗って仮想体験するのではなく、実際に乗ることができるかもしれないという可能性も存在し、
というのも、今回のDolphinをはじめとして、BYDは自社の電気自動車の海外展開を計画しているという点であり、
すでにヨーロッパ市場、そしてオーストラリア、ニュージーランド市場にも導入することを正式にアナウンスしており、
オセアニア地域については早ければ来年である2022年の前半頃にも納車がスタートするとされているのです。
そして、そのオセアニア地域というのは、我々日本市場と同じく右ハンドル市場であり、確かにそれだけでは日本市場への導入の信憑性は薄いのですが、
それでも冒頭説明している通り、
すでにBYDに関しては、バスやタクシーという商用車セグメントにおいて、我々日本市場に、静かに、不気味ながら上陸してしまっていますので、
その乗用車セグメント、特に今回のDolphinのような、我々日本市場なんかでいう、トヨタヤリスや日産ノート、そしてホンダフィットなど、やはり国土の狭い日本市場、
そして今回の都市部においては重宝される、コンパクトハッチバックセグメントの車種であれば十分に戦える、
むしろ、現状このコンパクトカーセグメントの電気自動車は、現状日本市場ではほぼ購入することができませんので、
逆に市場を一気に支配されてしまう可能性すら考えられるのではないでしょうか?
このようにして、今回中国の自動車メーカー兼バッテリーサプライヤーであるBYDが間も無く発表する、コンパクトハッチバックセグメントの新型電気自動車であるDolphinについて、
その公式機関からリークされた情報ソースをもとに、その電気自動車としてのスペックを徹底的に解説してきましたが、
BYDの次世代型の電気自動車専用プラットフォームであるe-platform3.0を初搭載するという、
まずこの時点だけでも、今回のDolphinに対するBYDの想いの強さを感じることができますし、
その質を見てみても、お膝元である中国市場はもちろんのこと、こちらはほぼ間違いなくグローバルを見据えて開発された電気自動車であることが見て取れますので、
特にオーストラリアの中心部、およびコンパクトカーが好まれるヨーロッパ市場において、
どこまで販売台数を伸ばすことができるのかにも、大いに期待していきたいと思います。
そして今回のDolphinには、BYDが独自内製しているバッテリーセルであるBlade Batteryを採用していますので、やはりそのスペックは洗練されているばかりか、
最も特筆すべきその価格競争力についても、やはり自社内で内製化ができていることによってのみ達成することができていると思われますので、
その電気自動車の車両生産能力と、EVのコアテクであるバッテリー技術の両方を併せ持つBYDの今後の電気自動車についても、非常に楽しみでありながら、
それと同時に、我々日本市場に攻め込んできた際には、実はテスラ以上に、非常に驚異的な存在となっているのではないでしょうか?
From: MIIT, via EVLOOK(spec)、PushEVs
Author: EVネイティブ
コメント
バッテリーの素晴らしさ、コスト、安全性、充電の速さ、どれをとっても現時点では最高ではないか。
また、日本に於いてのサイズはこれまた最適である。
全長4.2以下、全幅1.75以下、全高1.6以下でないと国内では非常に走り辛く駐車し難い。
当然ながら内外装ともとても良さそう。
従って保証期間が長くアフターサービスさえ整えれば凄い人気車になるだろう。
早く日本での販売を望みます。