【パナソニック敗北へ、、】韓国SKイノベーションが3兆円投資&EV1000万台分以上の電池生産受注

SKイノベーション

韓国のバッテリーサプライヤーであるSKイノベーションが、バッテリー生産部門に今後4年間で3兆円に迫る規模の大規模投資を表明し、

なんと日本の最後の砦であるパナソニックを抜いて、世界トップ3のバッテリーサプライヤーに君臨することを目標に掲げたという驚きのニュースについて、

なぜ世界がバッテリーの生産体制を強力に推進しているのかの本質に着目しながら、徹底的に解説します。

存続の危機を迎えていたSKイノベーション

まず今回のSKイノベーションに関してですが、韓国のバッテリーサプライヤーとして、現在世界第6位のバッテリーサプライヤーに位置しているのですが、

実は今年である2021年の初めまでは、そのバッテリー生産事業が大きく傾いてしまう危機に直面してもいて、

というのも、同じく韓国のバッテリーサプライヤーであり、現在世界第2位というバッテリー生産量を誇る、LGエナジーソリューションが、

バッテリー特許に関する秘密事項を盗まれたとして、今回のSKイノベーションを相手取り、2019年から訴訟を起こしていたという一件があり、

その後、アメリカの当局がそのLG側に有利な決定を下し、

なんとSKイノベーションに対して、アメリカ国内における、バッテリー生産、輸入、さらには自動車メーカーに対してバッテリーを販売するという、

関連する全ての事業を、10年間も禁止するという決定を下し、

すでにSKイノベーションに関しては、アメリカ国内に2つのバッテリー生産工場を目下建設中ともなっているため、

本当に10年間もバッテリー生産に関する活動を禁止されてしまった場合、もはやその工場の建設に意味はなくなってしまい、

こちらに関する動向、特に訴えを起こされているアメリカ市場と韓国市場においても、

特にバッテリー事業を10年間も禁止されてしまうというアメリカ市場の動向について、非常に心配されていたのです。

急転直下の和解劇

しかしながらその後に、LGエナジーソリューション側がアメリカ市場と韓国市場の両方で、その訴えを突如取り下げ、SKイノベーション側が2兆ウォン、

日本円にして、およそ2000億円という和解金を支払ったことによって和解が成立し、

特にその動向が心配されていた、アメリカ国内のバッテリー事業を問題なく継続する運びとなったのです。

ちなみに、こちらの急転直下の和解劇に関しては、

今年の初めから新たに就任し、電気自動車を始め、その電気自動車におけるコアテクであるバッテリー製造のサプライチェーンのローカライゼーションを目指しているバイデン政権側の圧力が、

SKイノベーション側にうまく働いたことが明らかとなっていますので、

何れにしても、SKイノベーションについては、今後の事業展開において大きな不安材料がなくなり、いよいよその事業拡大に本格的にコミットすることができるようになったのです。

バイデン政権側が仲介に

日本のパナソニックを超えるバッテリー受注数獲得へ

そしてそのような背景において、今回新たに明らかになってきたことというのが、

そのSKイノベーションが、今後の中長期戦略である、「Innovation Completion」を発表してきたということで、

こちらは2017年に発表した「Innovation Direction」、そして2019年に発表した「Innovation Strategy」に続く、中長期形成戦略の一環となっていて、

特に今回は、「Carbon to Green」、つまり脱炭素という標語を掲げているという点がポイントであり、まずは2050年までの会社全体でもカーボンニュートラルの達成を目標とし、

その前である2035年までには、主力事業でもあるバッテリー事業と、そのバッテリーを構成するセパレーター事業のそれぞれの、カーボンニュートラル達成を目標とする方針を示しています。

From:: SK Innovation

そして、今回の発表において最も特筆すべきは、

今後のきたる完全電気自動車時代を見据えて、そのコアテクであるバッテリー生産体制を大幅に増強する計画を表明し、

現状の年間生産キャパシティである40GWh

100kWhという大容量バッテリーを搭載した電気自動車に換算して40万台というキャパシティから、

2年後である2023年までには、その倍以上である85GWh、電気自動車85万台分にまで高め、

さらに、2025年までにはその倍以上である200GWh、電気自動車に換算して200万台分

そして2030年までには、さらにその倍以上である500GWh、電気自動車に換算して、なんと驚きの500万台分という生産キャパシティにまでもっていくことを表明しているのです。

そして、極め付きは、その世界第6位のバッテリーサプライヤーであるはずのSKイノベーションが、すでに1TWh以上という、

つまり大容量バッテリーを搭載する電気自動車に換算して1000万台分以上ものバッテリーのバックオーダーを、2021年現時点においてすでに抱えているということで、

ちなみにこのTWh級のバックオーダーを抱えているバッテリーサプライヤーというのは、現状SKイノベーションの他に2社しか存在しないと説明し、

おそらくですがその2社というのは、同じく韓国のLGエナジーソリューションと、中国のCATLであると思われますが、

何れにしても、現在そのバックオーバーの大きさで言えば、すでに世界トップ3にランクインしている状況でもあるわけなのです。

SKイノベーションは発火事故ゼロです

また、なぜ現在その人気が急増しているのかに関してSKイノベーション側は、今まで2億7000万以上ものバッテリーセルを供給しているものの、

そのバッテリーセルからの発火事故が一度もないという、SKイノベーションに対する信頼性の高さが認知され始めたことによって、

現在より多くの自動車メーカーなどから、大量のバッテリー供給に関する契約が増えているのではないかとも説明し、

実際問題として、韓国の自動車メーカーであるヒュンダイグループについては、

今まではLGエネジーソリューションを中心として、バッテリー供給体制でパートナーシップを締結していたのですが、

以前も解説している通り、残念ながらLGエネジーソリューション製のバッテリーセルの不良によって、今年に入って、電気自動車史上過去最悪のバッテリーリコール問題に発展してしまってもいて、

したがってそのヒュンダイグループが新たに発売し始めた、IONIQ5を皮切りとする、本気の電気自動車となるE-GMPを採用した電気自動車に関しては、

今までのLGエナジーソリューションとの関係を解消し、中国のCATLであったり、

そして今回の安全性の高さが認知され始めているSKイノベーション製のバッテリーセルを採用するという流れにもなっていますので、

何れにしても、韓国製のバッテリーは発火のリスクがあるので危険であると、ただ短絡的に決めつけるのは、まさにトンチンカンな感情論であるということですね。

2021年最も注目のEVであるIONIQ5は
発火事故ゼロのSKイノベーション製

ちなみに、そのSKイノベーションに関しては、その安全性の高さとともに、その技術力に関しても業界で最高水準に達しているという点も重要であり、

まず、先ほども取り上げた、韓国ヒュンダイが納車をスタートさせているIONIQ5というクロスオーバーEVに搭載されているバッテリーセルについては、

NMC811という最新型のバッテリーセルの種類であり、

このNMCというのは、ニッケル、マンガン、そしてコバルトという3種類の原材料の頭文字からとっていて、

811という数字は、その順番通りの原材料の配合割合を示しているのですが、

電気自動車において最も重要な航続距離を左右するエネルギー密度を高めるためには、その原材料の中でニッケルの割合を増やさなければならず、

よって、旧来型であるNMC111と比較しても、今回の最新型のNMC811というバッテリーセルの種類というのは、そのニッケルの割合が相対的に高い、

つまりその分だけ、電気自動車における航続距離を伸ばすことにつながるのです。

ニッケルの割合を増やす=EV航続距離アップ

実際に、そのIONIQ5に関しては、満充電あたりの航続距離が、高速道路を時速100kmでクーラーをつけても達成可能であるというような、

実用使いにおいて最も信用に値するEPAサイクルにおいて、最長483kmを達成し、しかもその搭載バッテリー容量が77.4kWhと、

こちらは例えば、航続距離が同じく483kmを達成する見込みである日産アリアの搭載バッテリー容量が91kWhであったり、

航続距離が525kmを達成しているテスラのミッドサイズSUVであるモデルYの搭載バッテリー容量も、およそ82kWhですので、

アリアよりも電費性能が高く、業界最高水準であるモデルYにも匹敵するような電費性能を達成してもいますので、

やはりその電費瀬能の高さは、この最新型のバッテリーセルであるNMC811を、搭載しているからなのです。

また、そのニッケルの割合を相対的に増やすということは、それ以外の構成原材料であるマンガンとコバルトを相対的に減らすということと同義でもあり、

特にコバルトに関しては、希少物質であるレアメタルに該当し、その安定供給という観点で数多くのリスクを抱えてもいますので、

つまりニッケルの割合を増やしていくということは、その分コバルトの含有量を減らすことが可能、

したがって、その分安定供給であったり、コスト低減につなげることができ、

実際問題として、旧来型であるNMC11から、現行型のNMC622、そして最新型のNMC811とのコストを比較してみても、

最新型のNMC811のコストは、旧来型のNMC11と比較しても、ほぼ半減レベルにまでコストを抑制することにも繋がっていることが見て取れると思います。

次世代型最新バッテリーセルを2022年春から搭載スタート

そして、今回のSKイノベーションに関しては、最新型のNMC811だけでは留まらず、

さらにニッケルの配合割合を最新型の8割から、さらに9割へと引き上げた、NMC91/21/2と呼ばれる、次世代型のバッテリーセルの開発をすでに完了し、

こちらの次世代型バッテリーを、今回のSKイノベーションと大型契約を果たした、アメリカのフォードの新型電気自動車であり、

来年である2022年の春から生産をスタートする、F-150 Lightningに初めて搭載することも表明していますので、

こちらも以前の動画で解説している通り、なぜそのF-150 Lightningが、4万ドル以下という圧倒的な安さで購入することができるのかが、

この次世代型の搭載バッテリーの種類からも推測することができる、というわけですね。

また、今回のSKイノベーションに関しては、ただバッテリーを大量に生産するだけではなく、

その大量に生産し、電気自動車として使用された後に発生するバッテリーのリサイクル問題にも対応し、

その「Battery Metal Recycling」と名付けられたリサイクルプロジェクトにおいては、

まずは、試験生産ラインを来年である2022年から稼働させながら、「“picking batteries out of batteries.”」、

つまり、バッテリーからバッテリーを作り出すというスローガンのもと、

2025年までには30GWh分ものバッテリーを、リサイクルによって再生成するとも発表していますので、今後問題となってくるバッテリーリサイクル問題にも積極的に関与し、

そこから新たなビジネスモデルを構築しようとするビジョンすら提示してきている、というわけなのです。

EV戦争=バッテリー戦争=化石燃料利権からの本質的脱却へ

このように、現在世界第6位である韓国のバッテリーサプライヤーであるSKイノベーションに関しては、

同じく韓国のLGエナジーソリューションとの係争に終止符を打ち、

その発火事故ゼロという高い信頼性を武器として、一気にそのシェアを拡大させていく姿勢を鮮明にし、

実際にすでに、日本の最後の砦でもあったパナソニックを抜いて、衝撃の1TWhを超える業界トップ3のバックオーダーを抱えることに成功し、

そのバックオーダーを裁くために、2030年までにその生産キャパシティを500GWhにまで高める方針も示してきましたので、

すでに世界では、電気自動車戦争に参戦するために必須の、バッテリーの調達戦争という囲い込みも始まっているという点が最も重要であり、

世界でようやく電気自動車のシェアが普及しきったので、後出しジャンケンで電気自動車の販売台数を一気に増やそうと思っても、

その電気自動車を動かすための大容量のバッテリーを確保することができないであったり、

その供給体制を全て他国にあるバッテリー生産工場からの輸入に頼ってしまうという、国内におけるサプライチェーンの構築に失敗してしまえば、

ただバッテリー調達戦争に負けただけではなく、今後の安全保障上のリスクにまで発展することと同義であり、

すでに現状の石油の輸入を頼っている中東とのパワーバランスと全く同じことになってしまい、

その一方でバッテリー生産のサプライチェーンを自国内で構築できた国は、そのパワーゲームにおいて、今後より自分たちの外交戦略をうまく進めることができ

よって、我々日本の国力が、さらに低下の一途をたどることは明らかなのではないでしょうか?

何れにしても、現在世界で巻き起こっている電気自動車戦争とは、バッテリー調達戦争のことであり、

今後はその再生可能エネルギーの普及にマストな、バッテリーの調達をいかに自国で完結させることができるのかが、

現在世界が中東地域に支配されている、エネルギー利権からの真の脱却を図るための最も近道であり、

その本質を理解しているからこそ、世界が、まずは電気自動車を強力に推進しているということを、是非とも一人でも多くの日本人が理解し、

このエネルギー革命に乗り遅れないために、パナソニックを中心とするバッテリーサプライヤー、さらには電気自動車を開発製造するトヨタをはじめとする自動車メーカー、

そして国が、挙国一致体制で、バッテリーのサプライチェーンの構築に全力を傾けるべきなのではないでしょうか?

From: SK Innovation

Author: EVネイティブ