【元EV王者復活の狼煙!】日産ルノー連合が揃ってバッテリー生産工場建設へ

ルノー

日産が年間20万台の電気自動車を生産することができる規模のバッテリー生産工場を立ち上げるというアナウンスを、間も無く発表すると報道されましたが、

それを裏付けるかのように、アライアンスを組んでいるルノーが合計して50GWh級という、巨大なバッテリー生産工場を建設することが発表され、

いよいよルノー日産三菱連合が、一気に電動化に舵を切ってくるのではないかという可能性について、徹底的に解説します。

EVのパイオニアであった日産ルノー三菱連合

まず、今回取り上げていきたいルノー日産三菱アライアンスに関してですが、

現在では年間生産台数が1000万台程度という、世界第3位の自動車グループにまで成長しているのですが、

特に2018年ごろまでルノー日産三菱連合のトップを務めていたカルロスゴーンの類いまれなる先見性による指揮のもと、

既存メーカーの中では電動化に、早期から積極的な姿勢を見せていて、

まずは、日本市場において初の量産車であった、軽自動車セグメントの三菱のアイミーブを市場に投入しながら、

その後に、世界初の本格量産電気自動車として、日産からリーフが発売されていましたが、

そして、それに引き続き、現在もモデルチェンジを繰り返しながら発売され続けているのが、ルノーから発売されている、コンパクトハッチバックであるZoeであり、

実はその車齢の長さとは裏腹に、昨年である2020年度において、電気自動車先進諸国の集まるヨーロッパ市場において、その販売台数でトップに君臨してもいましたので、

何れにしても、電気自動車という観点においては、電気自動車黎明期から、現在もその一定のシェアを獲得しているアライアンスであるのです。

Renault Zoe

経営状態ボロボロな三社連合

しかしながら、そのヨーロッパ市場に関しては、特にこの1、2年で電気自動車のシェア率が急上昇中でもあり、

その一定の人気を獲得してはいるZoeやリーフだけでは、その電気自動車需要に対応することができず、

さらに、現在ルノー日産三菱連合に関しては、そのどれも経営状況が芳しくなく、

したがって、その3社それぞれが得意としているコアマーケットに集中するという、分業体制を構築する考えも表明し、

特に今回のルノーに関しては、お膝元でもヨーロッパ市場にフォーカス、日産については、北米と中国市場に集中するということで、

その市場ごとにより特化した電気自動車を、早急に投入しなければならない状況、でもあるわけなのです。

EVを簡単に大量生産することは絶対にできません(定期)

ただし、電気自動車需要が急増したので、そのマーケット需要に合わせて、電気自動車の大量生産に移行すればいいという単純な話では解決せず、

本チャンネルにおいては散々説明していることではありますが、電気自動車の大量生産において最もクリティカルなポイントというのが、

その電気自動車のコアテクでもある大容量のリチウムイオンバッテリーをどのように確保するのかという点であり、

その典型的な例であるのが、トヨタが昨年である2020年に発売をスタートさせているプラグインハイブリッド車であるRAV 4 PHVなのですが、

実は我々日本市場をはじめ、メインマーケットである北米市場においてもその納車が大幅に遅れてしまっていたという経緯があり、

その理由が、まさに今回のバッテリーの供給体制が間に合わなかったからであると説明されていて、

しかもそのRAV 4 PHVというのはたった18.1kWhというバッテリー容量しか搭載していないプラグインハイブリッド車であり、

もしこれが、おおよそ4倍程度のバッテリーを搭載する、日産リーフやテスラのような完全な電気自動車であった場合、そのバッテリー調達のハードルがさらに跳ね上がることは想像に難くないとは思います。

Lexus UX300eの販売台数の低さは、
電池供給体制による制限なのか、それとも、、

つまり、電気自動車時代の到来に合わせて、電気自動車を一気に大量生産するという、いわゆる後出しジャンケン戦法が、今回の電気自動車市場においては全く通用しないということであり、

そのことをすでに見抜いていた、日産のカルロスゴーンやテスラのイーロンマスクは、

その電気自動車黎明期から電気自動車用のバッテリー生産工場を、自社専用に立ち上げ、

特に日産に関しては、初代日産リーフの生産がスタートした2009年には、そのバッテリー生産工場を神奈川の座間に建設することによって、

リーフ用のバッテリーの供給体制の確立、つまりリーフの生産体制を盤石のものにしていった、ということなのです。

Nissan battery plant in Tennessee

このように、その電気自動車を大量に生産、および質の高い電気自動車を開発するためには、

やはり自社でバッテリー生産工場、いわゆるギガファクトリーを立ち上げて、電気自動車のコアテクであるバッテリーの内製化、そして大量生産にコミットする必要がある

裏を返せば、その自動車メーカーが本気で電気自動車にコミットしようとしているのかを評価する最大の判断材料というのが、

このバッテリーの供給体制をどのように確保しているのかということになりますので、

その自動車メーカーの電動化戦略を評価する際は、このバッテリー供給体制をどのように確保しようとしているのか、

自社で内製化を推し進めようとしているのか、それとも外部サプライヤーにその生産を委託しているのか

このようなポイントを判断材料とすることをお勧めしたいと思います。

ルノーのアグレッシブな電動化戦略

そして、そのような状況の中において、今回新たに明らかになってきたことというのが、

そのルノー日産三菱連合が、そのバッテリーの内製化という観点で大きな動きが立て続けに起きている状況となっていて、

日産に関しては直近の動画において速報を解説していますのであわせてご参照ください。

そして、こちらの日産のバッテリー生産工場建設の発表の一足先に、アライアンスを組んでいるルノーについても、今後の電動化戦略を大幅に見直してきていて、

まず最も驚くべきポイントというのが、

2030年までに発売する車両のうち、なんと90%を完全電気自動車のみにするという大方針を発表してきたということで、

2030年までに欧州で発売する新車の9割が完全電気自動車

というのもルノーに関しては以前の電動化戦略として、2030年までに発売する車両の90%を電動車とすることを発表してはいたのですが、

この電動車というカテゴリーには、ガソリンエンジンを搭載しているプラグインハイブリッド車やハイブリッド車という車種も含めていましたので、

今回の電動化戦略の更新によって、そのガソリンエンジンをほぼ捨て去るという大方針を発表してきた、ということですね。

フランス国内に2つものギガファクトリー建設へ

そして、あと9年後には発売する9割の車両を完全電気自動車にリプレイスするために、そのバッテリーの供給体制を確立することもアナウンスし、

こちらも先ほどの日産と全く同様に、バッテリー生産工場を独自に建設するということで、

まずルノーのお膝元でもあるフランス国内において、これまた日産と協業関係を締結している中国のエンビジョンAESCと共同で、年間9GWh級のバッテリー生産工場であるギガファクトリーを立ち上げながら、

2030年までには、その生産キャパシティを24GWhにまで高める方針をとなっています。

From: Renault

さらに、フランスのバッテリースタートアップであるVectorと、これまたパートナーシップを締結するという覚書に合意し、

こちらは来年である2022年中にも、研究開発センターとバッテリー生産のパイロットラインを共同で設立しながら、

French Battery Startup Vector

2026年中にも、10GWh級のバッテリー生産工場であるギガファクトリーの操業をスタートさせ、

そして、2030年までには、その生産キャパシティを20GWhにまで高める方針であり、

こちらのVectorと共同で設立するギガファクトリーに関しては、主にCセグメント以上の車種に使用されるバッテリーであり、

より長い航続距離やより高いパフォーマンス性能を発揮するための、パフォーマンスバッテリーの生産にコミットするとも説明され、

もちろんルノーのパフォーマンスブランドであるAlpineブランドにも中心的に採用していく方針も明らかにしています。

2030年までにEV100万台規模のバッテリー内製化に成功見込み

また、その完全内製するバッテリー生産工場とは別に、

現在発売している電気自動車のZoeにも採用されている、韓国のLGエナジーソリューション製のバッテリーも、今後一定程度契約を続ける方針となっていて、

特に来年である2022年に発売がスタートするMeganEに関しては、そのLGエナジーソリューション製のバッテリーセルを引き続き搭載することをアナウンスし、

MeganEは2022年に発売スタート予定

したがって、それらすべてを合わせて、ルノーグループ全体で2030年までに50GWh

おそらくルノーの発売する電気自動車の航続距離は、国土の比較的狭いヨーロッパ市場用ということで、概ね50kWh程度の容量に抑えてくると考えられる、

つまり、年間にして100万台という電気自動車のバッテリーをほぼ内製化することに成功するということになりましたので、

その生産規模の大きさが、イメージできるのではないでしょうか?

日産アリアとは違う新型EV専用プラットフォームも披露

また、ルノーは新たな電気自動車専用プラットフォームを発表してきてもいて、

先ほど説明したMeganEについては、日産アリアで初採用されたCMF-EVプラットフォームを採用しますが、

よりコンパクトであり、2024年中に発売されることがアナウンスされているRenault 5については、CMF-BEVプラットフォームを初採用することをアナウンスし、

こちらは電気自動車専用プラットフォームとなりますので、より電気自動車としての質を最大化することができるのはもちろんのこと、

すでにアライアンスで活用されている内燃機関車用の、CMF-Bプラットフォームで使われているパーツの最大50%を共有することができるということでですので、

部品共用によるコスト低減を図りながら、よりスムーズに電気自動車に移行することができるという意味において、

非常に期待することのできるプラットフォームであると考えられます。

ちなみにですが、そのCMF-BEVプラットフォームを採用するRenault 5に搭載されるバッテリーセルについてですが、

先ほどのエンビジョンAESCと協業して運営されるギガファクトリーで生産されるバッテリーセルを採用するのですが、

今回のルノーに関しては、基本的には現在も採用しているNMCと呼ばれる、三元系のバッテリーセルの種類を採用し続けると表明し、

ルノーはNMC一本でコスト低減を図る模様

実は一部報道において指摘されていた、Renault 5に搭載されるバッテリーセルが、

コバルトフリーのバッテリーセルの種類であるLFPバッテリーになるのではないかという話が否定された格好となり、

ルノー側の説明によれば、2030年までは、基本的には既存の三元系バッテリーを改良することによって、

欧州WLTCモードにおいて最長580kmという、ルノーのラインナップする電気自動車に必要十分なスペックを確保しながら、

そのコストに関しても、現在テスラをはじめ一部の中国のバッテリーサプライヤーなどが採用を進めている、Cell to Packというバッテリーの新たな搭載方法などによって、

Cell to Packは今後数年で業界のスタンダードとなりそう

バッテリーのコストを、内燃機関車と同等クラスの利益率を達成することができると言われる、1kWhあたり100ドルを、2024年ごろに達成することができるとも説明しているのです。

そして、2030年ごろまでには、そのバッテリーの価格を1kWhあたり80ドル程度にまで下げながら、

そして、日産とのアライアンスを横断して共同で開発が進められている、全固体電池に一本化していくというロードマップを掲げてもいますので、

2030年以降は全固体電池に一本化する計画

何れにしても、ルノーに関しては、テスラやフォルクスワーゲンなどのように、バッテリーの種類を使い分けるのではなく、

一本化することによって、その量産コストを下げようとする狙いがあるとみられますので、

果たしてこの戦略が吉と出るのか、それとも凶とでてしまうのか、非常に興味深い戦略であるとは感じます。

95%の原材料をリサイクル可能&コストも3分の1まで低減

ちなみに、このルノーの発表において、私が以前から推測していた、日産が今後コバルトフリーのLFPバッテリーを採用する可能性がやや低くなったということで、

今回の発表でも、その日産とのアライアンスを重要視することによって調達コストの低減を図るとしていましたので、

もしかしたら日産に関しても、現在発売しているリーフであったり、間も無く発売がスタートするアリアでも一貫して採用を続ける、

三元系のバッテリーセルを中心戦略とするのではないかと推測できるのではないでしょうか?

2022年発売予定とされている
軽EVに採用されるバッテリーはNMC?LFP?

また、こちらも日産と全く同様に、電気自動車黎明期から電気自動車の発売をしていたことによって、

特に今後需要が急増するであろう、バッテリーのリサイクル問題にも対処し、

まずその使用済みバッテリーの原材料の95%をリサイクルすることができるという、最先端のリサイクル技術を表明しながら、

さらにそのバッテリーリサイクルのコストに関しても、現状の1000ユーロというコストから、

特にそのリサイクル需要が急増するであろう2030年までには、3分の1程度にまで抑制するとも発表しています。

大注目のMeganEの価格はズバリ450万円から!

ちなみにですが、今回のルノーの電動化戦略のプレゼンテーション資料において、

来年発売され、非常に注目されているMeganEの値段設定がおおよそ概算出来てしまっているということで、

欧州WLTCモードにおける航続距離1kmあたり、どの程度の値段となるのかを比率の比較において、競合車種と比較して、かなり安い値段設定となっていますが、

今回のMeganEの航続距離が450kmとすでにアナウンスされていますので、

この比率である76という係数と450kmを掛け合わせた34200ユーロ

日本円に換算して、おおよそ450万円程度という値段設定が、来年発売されるMeganEの値段設定ということになり、

こちらは2022年に発売される電気自動車としても相当競争力のある値段設定を実現していますので、その販売台数にも大いに期待することができるでしょう。

ちなみにRenault 5も競争力のある値段設定となりそう

何れにしてもこのように、電気自動車黎明期から積極的に電気自動車を展開していたルノー日産連合に関しては、

そのどちらからも、電気自動車におけるコアテクでもあるバッテリーの生産工場の建設が発表され、

特にルノーに関しては、完全に電気自動車に舵を切ってきた格好であり、またひとつ、既存の自動車メーカーが電気自動車に全振りを表明してきましたので、

今後発売してくる電気自動車、

特に大注目のMeganEの詳細な電気自動車としての質についても、わかり次第情報をアップデートしたいと思います。

7種類の完全電気自動車が登場予定

From: Renault

Author: EVネイティブ