【日産アリアとBZ4X完全敗北確定】 EVユーザー待望の超急速充電器が全く期待できなくなった件

e-Mobility Power

日本の公共の充電器管理運営企業であるe-Mobility Powerが、今年の秋から順次設置していく、高速道路上などへの超急速充電器に関する最新情報を発表してきましたが、

その追加情報における予想を超えるスペックに驚愕したと同時に、このe-Mobility Powerの抱える構造上の欠陥についても、海外の事例と比較しながら徹底的に考察します。

日本には2万基もの充電器が存在するが、、

まず、今回取り上げていきたいe-Mobility Powerに関してですが、今年である2021年の4月から発足した日本の充電器管理運営企業となっていて、

それまで存在していたNCSという日本の公共の充電器を管理運営していた企業から、丸ごと事業を継承した格好となり、

今後はこのe-Mobility Powerが、日本市場における公共の充電器を中心的に設置していくということになりますので、

まさに今後来たる電気自動車時代において、特にその電気自動車とセットとなる充電器を管理する企業として、国の命運を左右するほどの重要なミッションが課せられていると言っても過言ではないのです。

そもそも論として、日本市場においてどれほどの充電器が存在しているのかの事実確認をしていくと、2021年6月現在において、合計して19285ヶ所もの充電器が存在していますので、

まずこの数値だけを聞くと、私が本チャンネルにおいてよく形容している、電気自動車ガラパゴスという状態でもないのではないかと率直に感じている方もいるのではないかと思われますが、

こちらの2万ヶ所弱もの充電器についてを、より詳しく分析してみると、急速充電器が7827ヶ所、そして、普通充電器が13744ヶ所と記載されていますが、

From: GoGoEV

こちらの普通充電器というのは、基本的には3kWという充電出力を発揮することができ、

例えば私の所有する日産リーフを充電した場合、空の状態から満充電までにかかる充電時間が、なんと12時間以上という、とんでもない時間を要してしまい、

実はこの普通充電器というのは、基本的には自宅やそれに準ずる場所、さらには買い物の間に比較的長時間駐車するショッピングセンターであったり、

また、通勤の際に車を使用することができる方は、その職場の駐車場、その上、旅行における滞在先の駐車場など、

とにかく普通充電器というのは、長時間の駐車が見込める場所に設置をするものであり、

一般的にイメージすることのできる、高速道路を使用した際などの急速充電器とは全く性質が異なりますし、

そしてこのような普通充電器については、もちろん自宅に設置する場合は公共性はなく、自分たちで設置を進めることになり、

それ以外のショッピングセンターやホテルについても同様に、基本的には自分たちの資産を新たに構築する一環として、普通充電器を設置することになりますので、

何れにしても、今回取り上げたい公共の充電器という意味においては、同列に扱うことはできない、

少なくとも、日本には充電器が2万器も存在しているから電気自動車を運用するのは難しくない、と紹介するのはトンチンカンである、ということなのです。

日本には”実用的な”急速充電器が存在せず

それでは、その充電インフラの実態を表す急速充電器に話を移してみると、

まずその設置台数は7827ヶ所と、この時点で、先ほどの2万器と比較しても、そのイメージがかなり異なってくると思いますが、

それ以上に、我々日本市場におけるこの急速充電インフラ網の最大の問題点というのは、「実用的な」急速充電器がほぼ存在していないという点であり、

それはさすがに誇張しすぎだろうと思った方もいると思いますが、

例えば、日本市場において2021年中にも購入することができ、ついに日本メーカー初の、世界に通用する実用的な電気自動車であるアリアを例に考えてみると、

現状日本市場に設置してある急速充電器のほとんどが50kW以下という出力に留まっていて、そもそもこの50kWというスペックの充電器がなぜダメなのかというと、

そのアリアを、50kW級の急速充電器で充電した場合、理論値とはなりますが、ベストな状態でも最大で25kWh弱という電力量を充電することができ、

アリアの前輪駆動かつ、大容量バッテリーを搭載したロングレンジグレードの、実際に使用可能なバッテリー容量というのが87kWhとなりますので、

30分間充電したとしても、その28.7%ほどの充電量しか回復することができず、

つまり、80%程度まで充電しようと思ったら、1時間半以上も充電し続けないといけないということになり、

これではいくら大容量バッテリーを搭載して、満充電あたりの航続距離が長かったとしても、その充電にかかる時間がとてつもなく長くなり、

結局ロングドライブにおいてストレスを抱えることになるのです。

したがって、そのアリアのような実用的な電気自動車を実用的に運用する場合、50kW級なんかではなく、より高出力、

特にアリアにおいては最大130kWという充電出力を許容することができ、

もし仮に130kW級の急速充電器を使用することができれば、80%充電するまでにかかる時間は概ね35~40分程度と、その充電時間を半減以上にまで短縮することができるのですが、

その日本の急速充電インフラに関しては、そのアリアの発売が迫っている2021年6月現時点においても、今だに130kW級の公共の急速充電器が全国に一台も存在していないばかりか、

国内最大出力は90kWに留まりながら、しかもその90kW級の急速充電器は全国に116台しか存在していないという、

つまり、2021年から発売される実用的な電気自動車を、ストレスなく運用するために実用的な急速充電インフラが全く整備されていない、

というのが現状の電気自動車発展途上国家である日本の現状なのです。

From: GoGoEV

グローバルでは”実用的な”急速充電器がすでに普及中

それに対して、ヨーロッパ市場などの電気自動車の販売台数が急上昇しているマーケットにおいては、その実用的に運用することが可能な急速充電インフラがしっかりと整備され始めていて

特にヨーロッパ市場における急速充電インフラの筆頭でもある、IONITYという、

フォルクスワーゲングループやダイムラー、BMWグループ、そしてヒュンダイグループが共同で出資している充電器管理運営企業は、

すでにヨーロッパ全土に350kW級という、日本市場で一般的に普及している急速充電器である50kW級と比較しても、

実に7倍もの超高出力を許容することのできる、超急速充電ステーションが設置され、

しかもその1ステーションあたり、最大で10基以上もの充電器が設置されてもいますので、

仮に複数の電気自動車が同時に充電を始めたとしても、充電待ちが発生する確率が限りなく低いというような、非常に利便性が高く、実用的であり、

電気自動車を使って安心して、ロングドライブすることを可能にしています。

休憩時間に充電することで、充電時間実質ゼロ

ちなみにですが、この充電時間の話をすると、電気自動車の急速充電に30分も時間をかけていられないという反論が想定されるのですが、

事実ベースとして、走行距離が300kmを超えてくるようなロングドライブにおいては、94%のドライバーが、少なくとも一回以上は途中休憩時間を挟むというデータが存在し、

From: 都市間高速道路における休憩行動分析と休憩行動モデル
のネットワークシミュレーションへの実装に関する研究

しかもその上、その休憩時間についても、30分以上休憩するというドライバーが全体の7割弱も存在していますので、

その30分以上という休憩時間の間に、電気自動車に充電プラグを差し込んでおくだけで、休憩終了とともにまた数百キロのロングドライブを再開することができる、

つまり、この30分程度という充電時間を達成することができる電気自動車としての質、そしてそれを達成可能にする急速充電インフラ側の質が合わさることによって、

どんなに少なく見積もったとしても7割弱、

さらに冒頭説明した滞在先などへの普通充電器の設置が進むことによって、そもそも高速道路上における急速充電をする必要がなくなるケースも多分に想定されますので、

ロングドライブにおいてでも、電気自動車の充電のためだけの時間をかける必要性が全くなくなっていくのです。

よって、この経路充電のインフラ網の普及に特化することができれば、もはや電気自動車の運用というのは、別にポジショントークでもなんでもなく、

特にロングドライブを年2、3回行うような一般の方にとっては、割と真面目に内燃機関車と比較しても遜色のない、

むしろ給油の時間を考慮すれば、電気自動車の方が利便性が高いと感じるケースが多くなると推定でき、

実際に、その電気自動車の充電性能の質とそれに見合う充電インフラ網を、自前でしっかりと整備しているテスラ車を所有している方であれば、

現状でもその多くにおいて、内燃機関車の運用と遜色のない、むしろより高い利便性を感じている方がいらっしゃるのではないでしょうか?

ついに超急速充電器設置プロジェクト始動

そして、そのような世界のマーケットと比較して圧倒的に遅れてしまっている日本の急速充電インフラ網について、

そのe-Mobility Powerが、今後新たに、急速充電器を全国の高速道路上のサービスエリアなどに、複数台ずつ設置していくという方針を示し、

今年である2021年の秋をめどに、首都高速道路大黒パーキングエリアに、

昨年度グッドデザイン賞を受賞し、東京電力や充電機の開発を行うニチコンなどと共同して開発された、新型急速充電器を設置するという内容であり、

さらに、その後準備が整い次第、NEXCO3社の管内である全国の主要サービスエリアやパーキングエリアにも、順次同様の新型急速充電器が整備されていくとも説明しています。

そして、その急速充電器の最大出力が、合計で200kWというスペックであり、

確かに200kWという数値を聞くと、先ほどの90kW級の急速充電器と比較しても倍以上、

特に現在一般的に普及している50kW級と比較しても、実に4倍もの出力を発揮することが可能ですので、国土の狭い日本市場においては、まさに必要にして十分なスペックと言えるのですが、

問題なのは、今回の急速充電器は最大で6つものストールを用意し、まずは1つのストールで、最大90kWという出力しか許容することができないという点であり、

つまりそもそも論として、200kWという超高出力な数値は、1つの充電ストールに全て適用することができず、その半分以下のスペックしか許容することができないという点であり、

よって、実際は、現在少しずつ普及し始めている90kw級の急速充電器と変わらないスペックである、ということなのです。

しかしながら最もクリティカルな問題であるのが、最大で合計6ストール設置される今回の充電ステーションは、合計で200kWという充電出力というスペックであるという点で、

つまりどういうことかといえば、現状の最大充電出力である90kWをフルに許容することのできる電気自動車が、3台以上同時に充電している場合、その90kWという充電出力を許容することができず、

各車両概ね60kW程度という出力にまで制限されてしまうことが推測でき、

また、今回追加で明らかとなったe-Mobility Power側の資料によれば、まず先に到着した側の電気自動車の充電出力のみが50kW程度に制限され、

2台目と3台目に到着した電気自動車が、優先的にその残りの充電出力である150kW分を半々でシェアし、それぞれ75kWという充電出力を許容することができる、というようなアルゴリズムであるそうなのです。

From: チャデモ協議会

したがって、今後1、2年で一気に車種が増えてくる、アリアを筆頭とする150kW級程度という急速充電に対応可能な電気自動車は、

そもそも論として、充電器側の制約上最大90kWという充電出力でしか充電を行うことができないという点、

そして最もまずいのが、複数台の電気自動車が同時に充電する確率が高まる可能性が高い、と予測することができる今後の電気自動車市場において、

6つの充電ストールを合計してたったの200kWという出力しか発揮することができないという点は、

確かにこの1、2年という短期的なスパンで見れば、なんとかごまかしが効く応急処置的な対策には見えますが、

今回のe-mobility Power側の資料で示されている、10年先を見据えた設備更新を、先行投資的に行うという考えとは全く相容れないのが、今回の新型急速充電器のスペックの実情であり、

よって、以前の解説においても、この充電ステーションが公共の急速充電インフラとして全国の高速道路上に設置されるのだとすれば、

電気自動車を一般ユーザーに対して積極的にオススメすることができなくなる、というような結論を出していました。

ガラパゴスに突き進む日本の急速充電インフラ網

そして、今回追加で公開された資料によって、さらに明らかになってきた驚愕の事実というのが、

ユーザビリティを高めるブーストモード活用というタイトルで、充電ケーブルをより軽量化させたという説明となっていて、

まずこちらに関しては、現在普及し始めている90kW級の急速充電器において問題点として指摘されていた、

ケーブルの太さ故に、その取り回しの悪さによって、特に女性であったり、体に障害を負っている方などが取り回すことが厳しいという指摘であり、

この点を改良し、そのケーブルの重量をなんと40%以上も軽量化し、現在一般的に普及している50kw級の急速充電器と同じ重量にまで抑えることに成功していますので、

この点に関しては、まさにより多くの方が扱いやすい充電インフラを目指すという意味において、賞賛に値するとは思います。

しかしながら、その軽量化に伴う弊害として、

最大電流量は200アンペア、つまり90kWという最大充電出力を発揮することはできるものの、

そのケーブルの太さを細くしたことによって、その最大電流量である200アンペアを15分しか流すことができないスペックに留まってしまっているという点であり、

そのブーストモード作動中である15分が経過すると、自動的に125アンペアにまで出力が強制的に制限されてしまい、

最大でも50kWという充電出力に落ち込んでしまうというアルゴリズムを採用してきたのです。

したがって、仮に先客や自車以外に充電する電気自動車がいなかったとしても、当初想定されていた、最大90kWという充電出力を30分間維持することがそもそも不可能な設計となり、

例えば仮にアリアが、このe-Mobility Powerの設置する急速充電ステーションで30分間充電した場合、先客や自車以外に充電する電気自動車が全く現れなかったというベストケースにおいて、

90kWの充電出力を15分間、つまり22.5kWh、そして50kWの充電出力を15分間、つまり12.5kWh

したがって、アリアをベストコンディションで30分充電した場合の、実際に充電することのできる電力量は、理論値でも35kWh

つまりアリアのロングレンジバッテリーを搭載した車両では、およそ40%分程度の電力量しか回復させることができない、

よって、高速道路を時速100kmでクーラーをつけても達成可能であるというような、実用使いにおいて最も信用に値するEPAサイクルの航続距離に換算して、

理論値でも190km分ほどしか回復させることができないということになってしまったのです。

確かに190km分と聞くと、いうほど悪くない数値なのではないかと考える方もいるかとは思いますが、

それは一般ユーザーからしたら、やはり想定以上の低スペックであり、

特に今回の急速充電ステーションに関しては、3台以上の電気自動車が同時に充電をしている場合、その充電性能の上限を達成することができないばかりか、

今回の追加情報によって、そもそも上限の90kWという出力すら15分しか許容することができないということも判明しましたので、

何れにしてもこのスペックに関しては、電気自動車の普及を推進する立場としては、非常に厳しい現実ということになったかと思います。

繰り返しとはなりますが、今回の大黒パーキングエリアを皮切りに設置予定の最大6ストールが併設された急速充電ステーションに関しては、

今後10年先を見越した電気自動車の充電インフラであるとも説明されていますので、

流石にこのスペックの急速充電インフラが、基本的には今後長期間にわたって設置されていくとイメージしてしまうと、

とてもではないですが、電気自動車を万人に、そして手放しにオススメすることはできない、ということですね。

なんでガラパゴスな充電ケーブルを採用するんすか?

また、一点興味深い点として指摘されているのが、

以前の動画でも指摘していた、なぜ日本が、より高出力な充電出力を発揮することのできる水冷ケーブルを、頑なに開発しようとしないのかという点に関して、

保守メンテナンスの手間が多く、安定性とコスト面で課題があるとして、その採用を見送っていると説明されていますが、

これは残念ながらただその開発を避けようとする詭弁にしか聞こえず、

実際問題として、すでにヨーロッパ市場と北米市場においては、その水冷ケーブルを採用した350kw級の急速充電器を大陸全土に配備していますので、

まさにこれは、できない理由を徹底的に探し、グローバルと比較して明らかにガラパゴスな急速充電器を採用しているだけとしか言いようがないと、私はここで断言させていただきます。

ユーザビリティ最悪な30分縛りは継続確定へ

ちなみにさらに一点ほぼ確定案件になった点として、

今後設置される急速充電ステーションに関しても、現状と全く同様に、その充電時間が30分に制限される公算であり、

こちらのグラフを見ても、30分という充電時間を区切りにその安全確認試験を実施していますが、

実はこの充電時間の30分制限という制約も、グローバルで見て、基本的には日本市場しか導入していないガラパゴス制約であり、

この制約というのはそもそも初代日産リーフが、概ね30分程度という時間でもって、およそ80%ほどの充電量を回復させられるところから決定している制約であり、

この点に関しても、初代リーフが発売されてから11年間、完全に思考停止状態に陥っているということが図らずも浮き彫りとなった、ということですね。

電力会社にはユーザーファーストな充電器は設置できません

また、なぜこのようなガラパゴスな決定が採択されてしまっているのかに関する個人的な推測に関してですが、

先ほども説明したヨーロッパ市場におけるIONITYという充電器管理運営企業は、主に自動車メーカーが資本を注入している、

つまり、電気自動車を本気で売りたいからこそ資金を投入しているわけであり、まさにユーザーファーストな充電器のスペックや設置計画を立てることができるのですが、

今回取り上げているe-Mobility Powerの出資者というのは、

確かにトヨタ日産ホンダ、そして三菱という4つの自動車メーカーも含まれているものの、その出資比率はわずか1.9%と、その経営に口出しするようなパワーバランスではなく、

基本的には東京電力と中部電力という電力会社が実質的な決定権を有している、つまり、本質的に電気自動車を推進したいと考えているかといえば非常に怪しく、

少なくとも海外のような、自動車メーカーが主導して充電インフラを設置していくことによる、

実際に電気自動車を運用するユーザー目線でのインフラ整備が行えるという点とは、明らかに一線を画しているということも、

今回の一連のガラパゴス設置計画となってしまっている要因であると推測することができそうです。

EVを万人にお勧めできる時代は来ないかもしれません、マジで

何れにしても、今回e-mobility Powerの追加資料において、

やはり今後数年というタイムラインにおいても、日本市場の充電インフラというのは、完全にガラパゴス化していく流れにあるということであり、

非常に残念なことではありますが、この電気自動車の運用において最も重要な高速道路上の急速充電器の設置台数ではなく、その充電器の質が担保されずして、

現状公共の急速充電器を使って長距離をドライブするというような運用方法をお勧めすることはできないというのが、

電気自動車に7年乗りつづけている1ユーザーの結論、ということになりそうではありますが、

それと同時に、この大黒パーキングエリアに設置予定の急速充電ステーションが、来年である2022年中までに、

例えば高稼働率である、東名高速海老名サービスエリアであったり、足柄サーボスエリア、中央道の談合坂サービスエリア、

さらには関西においては名神高速道の草津パーキングエリアなどの、なんと30ヶ所もの充電器設置箇所が、順次リプレイスされていくとも同時にアナウンスしてきてはいますので、

ここまで説明した、最大90kWという充電出力が15分しか持続しないということ、さらにその充電時間も従来通り30分に制限されてしまうこと、

というようなガラパゴススペックを許容することのできる方においては、この朗報に期待しながら、続報をリサーチしてみることをお勧めします。

From: チャデモ協議会

Author: EVネイティブ