【批判覚悟】ヒョンデ「IONIQ5 N」の物議を醸す機能:EVユーザーが考える、マニュアルEV・擬似エンジン音の必要性

韓国ヒョンデが長らく待望されていたIONIQ5のハイパフォーマンスバージョンであるNのワールドプレミアの前に、最高速度250kmを達成していたり、マニュアルトランスミッションを擬似体験できる機能や、2リッターターボエンジンの音を再現するなど、

この日本でも発売が計画されているIONIQ5 Nに関する最新情報とともに、そのEV時代における変速機構やエンジン音の是非についてを考察します。

電気自動車初の高性能モデル「N」導入へ

今回取り上げるのは、すでに多数の電気自動車をラインナップしている韓国ヒョンデについてです。特に日本国内でも発売中のIONIQ5は、EV専用プラットフォームを採用しており、満充電あたりの航続距離はEPA基準で480km以上。さらに充電性能についても、最大240kW級というセグメントトップクラスの充電出力に対応しながら、その充電時間は最短で18分と、競合のテスラと比較しても10分以上短縮に成功しています。

さらに、EV専用プラットフォームを採用していることで全長4635ミリのミッドサイズ級ながら、ホイールベースは3000ミリ。その全長に占めるホイールベースの長さが広大な車内スペースを生み出しています。そして、IONIQ5の強みの一つとして、電気自動車ならではの機能性があります。特に注目すべきは、車内に100Vコンセントが搭載されていること。これは内燃エンジン車では提供できない新たな価値観であり、特に車中泊などに重宝します。

そして、以前からIONIQ5のハイパフォーマンスバージョンの開発が進行しているとの噂がありました。その理由としては、IONIQ5の兄弟車であるKia EV6が既に2022年末からハイパフォーマンスグレードのEV6 GTを納車開始しているからです。EV6 GTは前後に搭載された高性能モーターにより、最高出力430kW、最大トルク740ニュートンで、時速100kmまで加速するのにわずか3.5秒というパフォーマンス性能を実現しています。

このような事情から、IONIQ5もハイパフォーマンスバージョンがラインナップされると期待されており、2023年中にIONIQ5 Nの発売を正式に発表しました。Nはヒョンデのハイパフォーマンスブランドを表しており、すでに電気自動車もラインナップしています。このブランドでは、各車両に対して高性能化したエンジンと専用チューニングが行われています。

そして、今回新たに明らかになってきているのが、そのIONIQ5 Nの正式なワールドプレミアの開催がアナウンスされたわけであり、それが、ズバリ7月13日ということで、おそらく程なくして、実際の発売がスタートするでしょうから、韓国や欧州については、2023年中にも、実際の車両を使用した検証動画などが出てくるはずです。

その一方で、なぜこのIONIQ5 Nをあえて取り上げているのかというと、なんと、我々日本市場においても、導入が決定しているという点です。具体的には、2024年の初頭に導入されるということですので、電気自動車には興味があるが、遅い車には乗りたくないという方に対して、このIONIQ5 Nをお勧めすることができるということなのです。

それでは、なぜワールドプレミアの発表内容を聞く前に、IONIQ5 Nの話題を取り上げているのかについてですが、それが、すでに一部公開され始めている、IONIQ5 Nに採用される特別な機能の是非という観点です。

というのも、今回のIONIQ5 Nでは、通常のIONIQ5とは大きく異なり、バッテリーの冷却エリアをさらに拡大させるなど、まずはハードウェア部分の冷却性能を大きく高めているわけで、それに合わせて、ソフト面でも特に注目するべきは、バッテリーの温度の2種類の管理方法です。

1つ目はドラッグモードという、瞬発的な加速性能を最大化させるために最適なバッテリー温度にまでバッテリーの温度を引き上げるというモードであり、すでにヒョンデについては、急速充電性能を安定化させるためにプレコンディショニング機能を実装していますが、おそらくそれとは全く異なりさらにバッテリーを昇温するのではないかと推測可能です。

そしてもう一つのトラックモードについてですが、こちらは瞬発力ではなく、サーキットなどにおけるラップ数の増加に合わせて、可能な限り、バッテリー温度を低く保つために、冷却性能を最大化させるモードとなります。

さらに、そのサーキット走行を前提とした、さらにもう2つもの走行モードが存在します。まずスプリントモードについては、IONIQ5 Nのデフォルトモードであり、ドライバーの要望に合わせて、フルパワーをいつでも発揮可能です。

その一方で、エンデュアランスモードについては、サーキットにおける航続距離の最大化を目的とした走行モードであり、このモードを使用すると、バッテリーの温度上昇の抑制のための冷却を幾分抑える分、その電気を航続距離の延長に回すことで達成します。

なんといっても、これらのセッティングというのは、整備士などによる調整作業が必要になるものの、IONIQ5 Nについては、全て、車両のタッチスクリーン上から、それぞれドライバー自身がセッティングすることが可能です。

いずれにしても、このサーキット走行を前提とした走行モードについては、非常に面白い試みであると思いますし、実際にIONIQ5 Nを使用したニュルの走行映像を見る限り、最高速は250kmに到達しながら、1周走行した段階で、バッテリー温度が42度と、まだ制限がかかるような温度ではないということから、まだまだ余力を残しているようにも見えますので、是非とも、ニュルの倍以上も走行距離がある日本のEVレースに持ち込んでいただき、その冷却性能の実力を見てみたいとは感じました。

電気自動車に擬似マニュアル・エンジン音は必要か?

IONIQ5 Nには電気自動車としては特殊な機能が搭載されており、その中でも最も注目を集めているのがマニュアルトランスミッションと擬似エンジン音の存在です。

電気自動車には通常、変速機能が存在せず、ポルシェのタイカンやアウディのe-tron GTのように2速の変速機を搭載するモデルも稀です。それらはスポーツカーとしての最高速や超高速域での動力性能を高めるためのもので、テスラのモデルSプラッドのようにゼロヨンタイムが9.2-9.3秒、最高速も320kmオーバーを達成する車に対しては特に変速機は必要とされていませんでした。また、変速機の導入は車両の重量を増加させるため、ほとんどのEVでは変速機の導入が見送られてきました。

同様に、電気自動車の魅力の一つとされる静粛性も、擬似エンジン音の導入により放棄される可能性がありました。ですので、電気自動車にマニュアルトランスミッションや擬似エンジン音が必要なのか、という議論が起こっています。

私個人の見解としては、マニュアルトランスミッションや擬似エンジン音の導入は全く問題ないと思います。なぜなら、ヒョンデが導入をアナウンスした8速、デュアルクラッチのマニュアルトランスミッションシステムは、実際の変速機を車両に搭載するのではなく、モーターの出力をうまく制限することによって、あたかも変速しているかのような感覚を演出するものだからです。

この擬似的な変速システムは「N e-Shift」と名付けられた走行モードの一つで、ユーザーが自ら設定できます。必要ないと感じたユーザーは通常のIONIQ5と同様に変速せずに走行することができます。これにより、ユーザーが不必要な変速機の搭載による車両重量増加や航続距離の悪化などを心配する必要がありません。

同様に、擬似エンジン音についても、ヒョンデは「N Active Sound +」というシステムを開発し、ユーザーが好みの音を選択できるようにしました。これらの音は車内だけでなく車外からも聞こえるように設定されていますが、騒音問題の観点からは懸念が残ります。

トヨタも同様にマニュアルトランスミッションや擬似エンジン音の開発を進めており、これらの機能はモーター出力の制御によるもので、電池の性能に影響を与えることはありません。ただし、擬似エンジン音は質の高い演出が求められると感じました。

IONIQ5 Nに関する詳細情報はこれからもアップデートしていく予定です。これらのユニークな機能がEVの新たな価値を創造することを期待しています

From: Hyundai

Author: EVネイティブ