【2023年6月最新】テスラでさえ勝てない中国製EVの支配力 東南アジア”タイ市場”で中国製EVが大躍進している件

東南アジアのタイ市場において電気自動車の販売台数が急上昇中であり、なんと日本国内の3倍以上の普及率を達成してしまっているという、そのEV先進国の仲間入りを果たしつつある最新動向について、

そのタイ国内で人気の電気自動車、および我々日本国内のEV動向とも比較しながら解説します。

タイのBEV比率はすでに日本の3倍以上です

まず、今回のタイ市場についてですが、東南アジアの中央に位置し、経済発展の観点では最も目覚ましい成長を遂げています。すでに人口は7000万人を突破しており、特に同じく成長が著しいインドネシアなどと共に、東南アジア全体として大きな経済成長を予測しています。

タイの自動車販売規模についてですが、2022年度には年間86万台以上の販売台数を達成しました。日本市場は概ね400万台程度ですので、人口規模との比率を考えると、まだまだ車を所有したくても所有できないタイ人が多くいます。さらに、タイ国内には日本メーカーをはじめとした様々な自動車メーカーや主要サプライヤーが工場を運営しており、タイは東南アジア全体の自動車生産のハブとなっています。したがって、タイ市場は日本メーカーにとって極めて重要な存在です。

しかし、2022年にはタイ市場で大きな変化の兆しが見られました。タイ国内で圧倒的なプレゼンスを持つ日本メーカーですが、電気自動車の販売シェアではほとんど存在感を示せていません。逆に、MG、Neta、BYDなどの中国メーカーがタイで売れている電気自動車の大部分を占めています。また、タイ政府は2030年までに国内で生産される自動車の30%以上を電気自動車に転換する方針を発表し、そのために自動車メーカーに補助金を提供したり、生産工場やバッテリー生産工場に対する税制優遇措置を発表しています。タイ市場は政府の主導で内燃機関車のハブから電気自動車のハブへと変貌を遂げようとしており、そのチャンスを狙っているのはこれまで市場シェアを取れていなかった中国メーカーたちです。

そのような背景から、タイ市場での最新の5月度の電気自動車販売台数とそのシェア率が明らかになりました。まず初めに、2022年からの電気自動車の月間販売台数の変遷を示すグラフがありますが、2023年に入ってからの販売台数の伸びは別次元です。販売台数は5500台を超え、3月に続いて史上最高水準を記録しました。特に1年前の2022年5月は500台程度だったので、わずか1年間で電気自動車の販売台数は10倍以上に跳ね上がったというわけです。

そして、その販売台数以上に驚異的なのは、タイ市場全体におけるバッテリーEVのシェア率です。

このグラフは、タイ国内で販売されたガソリン車を含む自動車販売全体のうち、バッテリーEVのシェア率を示しています。バッテリーEVのシェア率は、驚くことに7.26%を実現しました。

つまり、タイ国内で販売された乗用車全体のうち、約14台に1台がバッテリーEVに置き換わっていることを示しています。この結果から、この1年間でタイ市場のバッテリーEV普及率が歴史上最高水準に達していることがわかります。

私たちのチャンネルでは、タイ国内に住んでいる視聴者から定期的に最新の情報を得ています。彼らのコメントからも、バンコク市内では様々なEVが見かけられるようになったことが確認できます。

次に、タイ市場のEVシフトのスピードを我が国日本と比較してみましょう。

このグラフは日本市場(緑色)とタイ市場(水色)のバッテリーEVのシェア率を比較したものです。2022年末に日本市場が初めてバッテリーEVのシェア率3%の大台を突破した一方、タイ市場はその速さで日本を追い越しました。

そして、最新の5月時点では、タイ市場のバッテリーEVのシェア率は日本の3倍以上に達しています。つまり、2010年に世界で初めて量産EVを発売し、世界をリードしていた日本が、13年後には新興国であるタイ市場にEVシフトのスピードで追い越されてしまったというわけです。

最後に、現在のタイ市場でどのような電気自動車が人気なのかをランキング形式で見てみましょう。

このランキングは、2023年1月から5月までに売れたバッテリーEVの販売台数の合計を元に作成されています。そして、その中で特に注目すべきは、中国メーカーの台頭です。

ランキングトップ20のうち、なんと8車種が中国製EVで、トップ5のうち4車種も中国製EVが占めています。つまり、タイ国内で売れているバッテリーEVの大多数は中国製であるということがわかります。

ただし、唯一その中国製EVの間に割って入っているのが、ズバリ、テスラの存在です。中でも売れ筋であり、ちょうど1月から正式な納車をスタートしていたモデルYは、すでに5月の段階で、合計2800台以上という販売台数を達成しています。

また、モデル3についても、1000台オーバーという販売台数を達成し、年間ランキング第7位にランクインしています。

特に人気のモデルYについては、タイ市場において200万バーツ弱程度からのスタート、日本円に換算して、およそ800万円からのスタートということから、まさにタイ国内では高級車に該当します。それでも、バンコクに在住する富裕層を中心として、スマッシュヒットを記録している状況です。

よって、現在、テスラについてはスーパーチャージャーを急ピッチで建設中です。まだタイ国内に正式参入してから半年という状況ながら、2023年6月時点で、すでに5つものスーパーチャージャーを建設しています。

特に直近にオープンしたスーパーチャージャーについては、合計して12もの充電器が設置されているという、タイ国内のみならず、東南アジア最大級のスーパーチャージャーが誕生しています。そして、2023年末までに、合計して13ものスーパーチャージャーを建設する方針すら示していますので、今後タイ市場において、テスラの販売台数のさらなるブーストにも期待することができるでしょう。

そして、そのテスラをはじめ、それ以外の中国勢を抑えて、ぶっちぎりの人気を獲得しているのが、BYDの存在です。特にAtto 3に関しては、たったの5ヶ月で9000台を超える販売台数を達成し、2位のNeta Vに2倍以上の差をつけています。

確かに、Atto3については、タイ国内の値段設定が109万9900バーツ、日本円で、およそ450万円程度と、日本国内の値段設定の方がむしろ安いレベルという感じです。確かにEV性能や内外装の質感、装備内容を考えれば、驚異的なコスパを達成していますが、それでもタイでこれだけのスマッシュヒットを記録しているということは、やはりこのレベルのお金を、車に出せる層が、想定以上に電気自動車を欲しているということを示しているのではないかと考えられます。

実は、このタイ市場におけるEV需要というのは、とてつもないポテンシャルを秘めているのではないか、ということなのです。

ドルフィンこそ、タイのEV市場に衝撃を与えるEVです

そして、そのタイ市場のポテンシャルを真に引き出す可能性を秘めている電気自動車が、いよいよ7月中から納車をスタートするということで、それが同じくBYDのコンパクトハッチバックであるドルフィンの存在です。

というのも、このドルフィンについては、まず44.9kWhを搭載し、航続距離が410kmというエントリーグレードを発売すると発表されており、先ほどのAtto3のエントリーグレードと全く同じ航続距離を実現しているわけですが、その先行発売価格が、実に80万バーツ以下、日本円で327万円程度からを実現しているわけであり、まさにAtto3と比較しても、同等のEV性能を実現しながら、さらに100万円以上も安価な値段設定を達成しています。

しかもその上、このドルフィンについては、政府からの補助金を適用できるようになるために、その実際の価格については、おそらく70万バーツ程度にまで引き下げることが可能と言われており、そうなってくると、その値段設定は、200万円台に乗ってくるわけです。

それでは、このコンパクトセグメントにおいて圧倒的な人気を博しているのが、トヨタヤリスの存在です。一方で、タイ国内については、セダンタイプが人気ということから、ヤリスAVIT(エーティブ)というセダンタイプのヤリスが販売されており、その値段設定は、ズバリ55万バーツからのスタートと、ドルフィンと比較しても、50万円以上の差がついてしまっているわけです。

さらに、同じくコンパクトセダンセグメントで人気の、ホンダシティについても、60万バーツ以下からのスタートですので、やはり同様に、ドルフィンの方が割高のように見えると思われます。

ところが、そのオプション設定を見てみると、ドルフィンについては、様々なオプションをセットにしながら、その上、有料のアフターサービスプランに加入すると、バッテリー保証が8年16万km、3年または10万kmまでは、メンテナンス工賃、およびスペアパーツの無料提供、外部給電機能であるV2Lを使用するための充電ケーブル、家庭用充電器の、設置費を含めた無償設置、車両登録料であったり、1年間無料の強制保険などなど、EVを購入する際の、様々な安心感も提供しています。

なんといっても、ヤリスエーティブやホンダシティについては、上位グレードを選択すると、どちらも70万バーツ級と、ドルフィンと変わらない値段設定となってしまいますし、特にホンダシティのハイブリッドバージョンですと、85万バーツと、むしろドルフィンよりも高額となってしまいます。

ちなみにですが、すでにタイ国内では、その大衆車として人気車種の一角であるホンダシティよりも、すでにAtto3の方が販売台数が多くなってしまっているという点は、実はかなりインパクトのある動向であると感じますが、

いずれにしても、このドルフィンの投入によって、これまで圧倒的な支配力を有していたトヨタエーティブを筆頭とする日本メーカー勢の内燃機関車の販売台数に、どこまで迫ることができるのか、個人的には、2024年シーズンにおけるヤリスの販売台数と同等を達成してくる可能性すらあると踏んでいます。

すでにAtto3はホンダCityの販売を抜いている

いずれにしても、東南アジアのタイ市場に関しては、現在電気自動車の販売台数が急速に伸びている状況です。特に中国BYDの発売中であるAtto3の勢いが留まるところを知らず、しかしながらその値段設定も、内燃機関車と比べてしまうと、そこまで安いという印象は抱かないことから、やはり潜在的な電気自動車需要が、想定よりも大きい可能性が存在します。

そして、ついに内燃機関車と同等のコストパフォーマンスを実現した、コンパクトハッチバックのドルフィンが販売されようとしています。

果たして、トヨタやホンダといった日本メーカー勢の庭である大衆セグメントにおいて、ドルフィンがゲームチェンジを起こすのか、2023年後半以降の販売台数には特に注目していきたいです。

そしてBYDが2024年中にタイで発売していく見込みの、さらに安価なSeagullの投入によって、日本車天国であったタイ市場が、どのように変化していくのか、ますます目が離せません。

ドルフィンに続く真のゲームチェンジャーSeagullは2024年に投入か

From: Department of Land TransportAutolife Thailand

Author: EVネイティブ