【ホンダ新型EV】アリア・bZ4Xを超えることはできた? コンパクトSUV 「e:Ny1」発表 欧州市場へ挑むも競合に完敗の恐れ

e:Ny1: The next all-electric vehicle from Honda combines comfort, performance and technology
e:Ny1

ホンダが新型電気自動車としてコンパクトSUVセグメントのe:Ny1を正式発表しながら、電気自動車戦争が激化している欧州市場へ販売を開始する一方で、

中国で製造した車両を欧州に出荷するという中国製でありながら、競合車種と比較することで見えてくる、そのホンダのEV戦略の現在地を含めて一挙に解説します。

ホンダ新型EVは流行りの電動SUV

ホンダはこれまでEVをあまりラインナップしてこなかったが、近年では急速にそのラインナップを拡充しようとしています。2020年にはコンパクトカーのHonda eを欧州と日本で販売し、2022年には中国向けのコンパクトSUVセグメントのEV、e:NS1とe:NP1を発売開始。さらに2024年にはe:NS2、e:NP2、e:NプロローグといったSUV型EVや、2025年にはクーペ型EVのe:N GTの発売も予定しています。

北米市場についても、GMのEV専用プラットフォームであるアルティウムプラットフォームを活用し、2024年に中大型セグメントのSUVのプロローグと、アキュラブランドからのZDXを販売する予定です。日本市場については、2024年に商用車セグメントのN-VAN EV、2025年にはN-ONEのEV版の発売を予定し、さらに2026年には2種類の小型EVを投入予定です。

しかし、現状のホンダのEVは全て販売が低迷しています。第一弾となるHonda eは、日本国内で450万円からという価格設定やEV性能に見合ったコストパフォーマンスの低さが原因と思われ、その販売台数は低迷しています。また、販売促進キャンペーンを展開しているe:NS1とe:NP1も、月間合計2,3000台が最高で、中国市場においては月間1万台というヒットEVともなれていません。

したがって、ホンダのEV戦略は現状、うまくいっていないと言えます。

そのような背景において、新たに明らかとなったのは、新型電気自動車のe:Ny1というコンパクトSUVセグメントのEVの発表でした。このホンダの電動SUVは、日産アリアやトヨタbZ4X、スバルソルテラなど、既に欧州に投入されている日本メーカー勢の電動SUVに追随する形です。

e:Ny1の車両サイズは、全長が4400ミリ以下、全幅も1800ミリ以下で、コンパクトSUVセグメントに位置しています。これは、アリアやbz4X、ヒョンデIONIQ5などのミッドサイズSUVセグメントと異なります。

このコンパクトSUVセグメントは欧州で非常に人気があり、ヒョンデKonaやプジョーのe-2008などが存在します。そのため、これらの車種との比較も必要です。

また、特に今回のe:Ny1の競合車種となるのが、韓国ヒョンデのコナエレクトリックです。このモデルはヒョンデのEVとして最も安価であり、直近のフルモデルチェンジで性能も向上しています。このコナエレクトリックとの競争力は、e:Ny1のセールスにとって重要となります。

ホンダのe:Ny1は68.8kWhという大容量バッテリーを搭載しています。これはアリアの66kWh、bZ4Xの71.4kWh、コナの65.4kWhと比較しても同様のバッテリー容量です。しかし、航続距離においては、e:Ny1は欧州WLTCモードで412kmを達成しているのに対し、コナは490kmとe:Ny1を大きく上回っています。同じようなバッテリー容量でありながらe:Ny1の航続距離が短いということは、電費性能、つまり効率性でコナに遅れをとっていることを示しています。

また、車両サイズに占めるホイールベースの長さという観点からも注目すべき点があります。e:Ny1は全長4380ミリに対してホイールベースが2610ミリ、一方でコナエレクトリックは全長4355ミリに対してホイールベースが2660ミリと、全長が短いにも関わらずホイールベースが長いという逆転現象が起きています。

さらに、収納スペースの広さという観点からもコナが優れています。e:Ny1の収納スペースのサイズは現時点では公表されていませんが、コナはトランク部分だけでも466Lと、車格が一つ上のアリアやbZ4Xと同等の収納スペースを確保しています。これに対し、e:Ny1も同等の収納スペースを確保することが求められます。

コナの最大の特長はボンネット下にも収納スペースを確保していることです。フロントにモーターを搭載する通常のEVでは、フランク(ボンネット下の収納スペース)を確保することが難しいのですが、コナは既にクラストップのトランクスペースを確保している上で、さらにフランクも確保しています。

これはコナが、内燃機関車とプラットフォームを共有しながらも、フルモデルチェンジに合わせてEVファーストで設計を行い、内燃機関車バージョンを追加するという、従来の自動車メーカーとは逆のアプローチをとった結果です。これにより、EVならではのフランクの確保やホイールベースの最大化に成功しているのです。

ホンダのe:Ny1は、中国市場専用のEVプラットフォーム、e:NアーキテクチャーFを使用していますが、航続距離、フランク、ホイールベースなどの観点から競合と比較すると、その完成度は最適化には程遠いと言えるでしょう。これは、e:NアーキテクチャーFがEV専用プラットフォームとはいえ、最適化されたプラットフォームとは程遠いという点で、このチャンネルでも一貫して指摘してきました。

したがって、e:Ny1の完成度は、内燃機関車とプラットフォームを共有するコナに比べて大きく劣ると言えます。また、ホンダは例外的に中国市場で製造されたe:Ny1を欧州市場へ輸入しています。これは、中国市場専売のe:NS1やe:NP1の兄弟車であり、同じ生産ラインを使用しています。つまり、中国市場で売れていないe:Nシリーズの兄弟車を単純に欧州に持ってきただけという状況です。

そのため、EV性能が劣る車をEV先進国の集結地である欧州市場で発売することは、販売上の苦戦を予想させます。これからのホンダは、価格設定での戦いが避けられない状況にあるでしょう。

コナの価格設定はまだ公開されていませんが、予想では4万ポンドを切る価格になると思われます。そのため、ホンダがe:Ny1を成功に導くためには、このコナの価格を下回る、おそらく3万ポンド後半レベルの価格設定を行うことが求められるでしょう。

EV性能以前にネーミングに重大な問題あり

e:Ny1が中国のZeekr Xと同じコンパクトSUVのセグメントで競争することを考えると、その見通しは厳しいものとなるでしょう。中国本国においては、e:NS1とZeekr Xの価格設定はほとんど変わらず、品質や機能の観点から比較すると、e:Ny1は競争力に欠けています。同様に、中国から欧州への輸出に関しても同じ状況で、e:Ny1とZeekr Xの価格差は大きくないと予想されます。

このため、e:Ny1を選ぶ理由が少なく、そのEV性能も劣るため、現時点で見込みは厳しいと言えるでしょう。

さらに、ホンダのe:Nシリーズ全体について、ネーミングセンスについて考えるべきだと感じます。e:Ny1のような読みにくい名前は、ユーザーの認知度に影響を与える可能性があります。これは日本人だけでなく、英語ネイティブのヨーロッパ人にとっても同じことです。

加えて、e:Ny1のような名前には、SNSのハッシュタグをつける際に問題となるカンマが含まれています。SNSを活用したマーケティング戦略は現代のビジネスにおいて必要不可欠ですが、この名前ではハッシュタグを付けることができません。

少なくともカンマの問題は解決するべきであり、また、読みにくいe:Ny1のような名前についても、今後のe:Nシリーズの展開に当たっては再考が必要かもしれません。

ネーミング、EV性能、内外装の質感、ソフトウェアの完成度などを考えると、ホンダが本当にe:Ny1を売りたいのか疑問に思うのは、きっと私だけではないでしょう。

From: HondaHonda uk

Author: EVネイティブ