【自動車産業、失業に備えよ】EVの大津波に備えるため、GMが契約ディーラーを4割も大幅カットへ
アメリカ最大の自動車メーカーであるGMが、契約ディーラーの数を40%もすでに削減してしまったという、衝撃的なアナウンスを行ってきました。
GMは25年までにEVと自動運転に4兆円投資
まず、今回のGMに関してですが、
アメリカ最大の自動車メーカーとして、フォードと肩を張り合うレガシーオートメーカーの象徴であるわけで、
その中でも、グローバルにおける自動車の販売台数で言えば、
Covid-19によるパンデミックの影響を受ける前の2019年度において、
770万台を販売し、世界第4位の販売台数を誇っているほどの巨大自動車メーカーでもあります。
そして、こちらのGMに関しては、昨年である2020年中に今後の電動化戦略を発表し、
たったの14年後である2035年までには、現在グローバルで発売している770万台もの車両を全て、
走行中にCO2を一切排出しない、完全な電気自動車、もしくは水素燃料電池車というゼロエミッション車のみにするという大方針を発表、
つまりアメリカ最大のGMは、14年後には内燃機関車を完全に捨て去るということになったわけですので、
実際に、この直近で開催されていたCOP26の中においても、
今回のGMを始め、すでに2030年までに、発売する全ての車両を完全な電気自動車のみに移行すると表明している、北欧のボルボであったり、
さらには、同じくアメリカのフォードなど、全部で6つの自動車メーカーが、
2040年までに、内燃エンジンを搭載している車両の販売を独自に禁止するという方針に、賛成の立場を表明していました。
また、2035年までの内燃機関車販売禁止を達成するために、
電気自動車、および自動運転技術という次世代テクノロジーに対しての投資を加速させ、
4年後である2025年までという短期間に350億ドル、
日本円に換算して、なんと4兆円もの投資を行うという、極めてアグレッシブな投資を行っている最中でもあり、
その2025年までには、GMの全てのブランドを合わせて、グローバルで30車種もの完全な電気自動車をラインナップすることを表明しているという、
何れにしても、来たる電気自動車時代に向けて、
その投資、そして実際の電気自動車の販売車種を一気に拡充しにきている、ということなのです。
ディーラーの数は40%近くも減少
そして、そのような背景を抱えたGMについて、今回新たに明らかになってきていることというのが、
そのアグレッシブな電動化戦略によって開発してくる電気自動車を、実際に効率よく販売していくために、
その販売形態にも大きなメスを入れてきているということであり、
それが、GMの中でも高級車ブランドに該当するキャデラックブランドにおいて、
今後、各ディーラーへの充電器設置費用や、電気自動車のための様々な機材の導入、
また、従業員の教育費に最低でも20万ドル、日本円に換算して2200万以上を投資せず、
そして、今後発売する電気自動車を売る気がない場合、
なんと、GM側との、今後の自動車販売に関する一切の契約を打ち切るという、
まさに最後通牒を、ディーラー側に対し突如突きつけていて、
しかもその回答期限が2020年の11月末であった、ということなのです。
ちなみに、こちらの最後通牒に関してですが、
この条件を飲まなかったディーラーに関しても、
今年である2021年末までは、キャデラックブランドの自動車の販売を継続することはできているわけですが、
その決断の期限である昨年11月末が過ぎた段階で、
アメリカ全土にあるキャデラックを取り扱うディーラー、全880店舗のうち、
なんと17%にも当たる150ものディーラーが、今後のキャデラックブランドから出される電気自動車の販売を行わないことを決定、
つまり、来年である2022年からは、キャデラックブランドの車両を金輪際取り扱わない決定を下してきたのです。
そして、さらに2021年に突入してからは、その電気自動車の投資を行うと表明したディーラーに対して、さらなる再編にも着手し、
結局は2021年末までには、キャデラックブランドを取り扱うディーラーの数は、全米で560箇所にまで減少する見込み、
つまり、元々の880箇所というディーラー網を40%近くも減らしてきた、ということになったのでず。
テスラの直接販売方式はスタンダードに
まず、こちらのディーラー再編の動きに関しては、率直に驚いたと思われますが、
このディールには裏があって、
まずGM側からすれば、もともとキャデラックブランドを扱うディーラーの数が、あまりにも肥大化してしまっていた、という現状があって、
そのディーラーの数をいかに穏便に減らしていくか、というのが喫緊の課題でもあったわけなのです。
というのも、電気自動車というのは、既存の内燃機関車と比較しても部品点数が3分の1、
特にハイブリッド車など、近年はさらに複雑化していますので、
そもそも部品の修理や交換作業が発生する確率が、それだけ減るということですし、
それ以上に電気自動車は、複雑なエンジンを搭載せず、構造が極めて単純ですので、
専門的な知識を有するメカニックに関しても、現在ほどの数は必要とされなくなってしまい、
しかもその電動化の大波以上の、完全自動運転という、超巨大津波が同時に襲ってきますので、
そう遠くない時期に、自動車を個人相手に売るという、これまでの販売業態自体が終焉を迎えてしまうのです。
よって、その販売業態の先頭にいるディーラー網をいかに縮小させていくのかが、今回のGMに関わらず、
すべての既存メーカーの長期的な課題となっていて、
特にテスラなどをはじめとする、電気自動車専業メーカーが、ディーラー網を介さない直接販売という手法を採用し、
実際に世界で大きな成功を収め始めているわけですし、
さらに、この直接販売の動きに追随する形で、
日本メーカー勢についても、日産が直近で、フラグシップクロスオーバーEVであるアリアで、
ディーラーを介さずに、オンライン上で注文完了までの手続きを一貫して行うことができるという販売形態をスタートさせていたり、
ホンダに関しても、このオンライン上の直接販売方式を順次採用していくという方針を表明しているのです。
そして反対に、キャデラックブランドを取り扱う、ディーラー側に関しても、
GM側からの、キャデラックブランドのバイアウトオファーを受諾した場合、
少なくとも30万ドル、最高で100万ドル、
日本円に換算して、最低でも3300万、最高で1.1億円以上の報奨金を受け取ることが可能となっており、
しかもその上、GM側から提示されている、
電気自動車導入に対する、充電器の設置や人材育成に対するおよそ20万ドル、日本円に換算して2200万以上もの投資を行わずに済みますので、
ここでキャデラックブランドの販売権を売り払ってしまえば、
短期的には、かなりの恩恵を受けることができるのです。
よって、この取引は一見すると、
GM側がかなり厳しい態度を、ディーラー側に示したと見えるのですが、
実はディーラー側にとっても、目先の利益につながるということにはなりますので、
実際に、当初17%ものディーラーがバイアウトオファーを受諾し、
そして、その後の再編によって、
最終的には40%近いディーラーが消滅した、ということになったのです。
今までのディーラーの数は急速になくなります
ただし当たり前のことですが、
一旦バイアウトをしてしまえば、自分たちの販売できる車種がなくなってしまうということになりますので、
短期的には利益を生むかもしれませんが、
長期的には、そのディーラーは車を売ることができなくなっていきますので、
遅かれ早かれ、ビジネス転換を迫られることは必至、ということになります。
今回の一件で本メディアが感じたことというのは、
このような、メーカーとディーラーの関係性の抜本的な見直しという流れは、
確実に、日本メーカーを含めたすべての既存メーカーが、間も無く直面する課題となるということで、
急激に完全電気自動車の販売台数が増えていくことによって、
みなさんが想像するよりも急速にディーラーの仕事がなくなる、
つまり現在のような、かなり田舎の町に行っても複数のディーラーが存在する、などというような状態は、
完全に必要性がなくなってしまう、ということになります。
したがって既存メーカーには、
来たる完全電気自動車社会において、このような既存エコシステムの崩壊に関する事実を包み隠さず説明し、
気付いた時にはもう手遅れ、みんなの雇用は守れませんでした、ごめんなさい、などという死刑宣告ではなく、
少しでも出血を少なくするためにも、早く大胆な電動化戦略を打ち出し、
そして、今までの自動車産業が、もろくも崩れ去ってしまうという事実を、
本音ベースで語る時期が近づいているのではないか、ということなのです。
何れにしても、今回のキャデラックブランドのディーラー再編の動きというのは、
今後その他のGMのブランドにも広がっていくことは必至であり、
しかも、先ほどオンライン上での直接販売方式を採用し始めた、日産やホンダに関しても、
今後訪れる、販売体制が抜本的に見直しが必要なことはわかっているはずですので、
特に日本メーカー勢のどこが最初に、どの経営者も言い出したくない、
しかしながら、どこかで絶対に言い出さなければならない厳しい現実を直視して、大批判覚悟で改革を進めようとしてくるのか、
経営者の度胸が試されると思いますし、
逆に、この収益構造上、電気自動車を売りたがらないディーラー網という、
自動車産業のエコシステムを抜本的に見直すことができなければ、
今後の電気自動車時代に対応することなど無理な話、
少なくとも、テスラをはじめとするそのしがらみがない新興勢力、
および、今回の大改革に手をつけた、GMなどに対抗することなど、その構造上不可能である、ということですね。
From: Reuters
Author: EVネイティブ