中国の巨大自動車グループであるジーリーのプレミアム電気自動車専門ブランドの、Zeekr初の電気自動車SUVが、いよいよ今月である10月中に納車がスタートし、
航続距離700kmオーバー、最大充電許容出力360kWという世界最高クラスのスペックを引っさげながら、
競合メーカーであるテスラやNIOなどに、どれだけ対抗することができるのかなどに関するその将来性についてを、徹底的に解説します。
習近平と蜜月関係のジーリーはEVに本腰へ
まず、今回のジーリーに関してですが、
ジーリーホールディングスの中の一自動車グループを構成していて、
そのジーリーオートグループ以外にも、スウェーデンの自動車メーカーであるボルボグループを傘下に収めていたり、
さらに、ドイツの高級車メーカーであるメルセデスの親会社であるダイムラーの筆頭株主であったりと、
特に海外での買収や出資について規制が強い中国においても、
非常に国際色が豊かな、中国の民間自動車メーカーとなっています。
ちなみに、そのジーリーホールディングスのトップである李書福に関しては、
現在の中国のトップである習近平国会主席が、中国東部の浙江省のトップを務めていた時代に、
その習近平から、「吉利のような企業を支援しなくて、どの企業を支援するのか」と言われていたとみられるなど、
何れにしても蜜月関係にあるとされ、
だからこそ、中国企業でありながら、ボルボやダイムラーなど、外資企業との提携を進めることができているとされていますので、
今回のジーリーについては、今後も隙あらば海外にも積極的に進出し、
さらなる自動車メーカーの吸収を模索していくのかもしれません。
そして、今回フォーカスしていきたいジーリーについては、今後電気自動車にフォーカスする方針を示し、
その傘下であるボルボグループを構成する、ボルボ、および高級電気自動車ブランドであるポールスターについては、
2030年までに、完全な電気自動車のみを発売する電気自動車専業メーカーとなることをアナウンスしていたり、
ジーリーオートグループに関しても、昨年である2020年末に、
グループ共通の電気自動車専用プラットフォームである、Sustainable Experience Architecture、SEAプラットフォームを発表し、
小型車セグメントであるAセグメントから、商用車セグメントまでに対応することができたり、
モーターを最大3つまで搭載、かつ、レンジエクステンダー用の発電用エンジンすらも搭載することのできる冗長性を備えていたりと、
何れにしても、電気自動車専用プラットフォームを開発し、
そのプラットフォームを採用した、本気の電気自動車がいつ発売されるのかに非常に注目が集まっていたのです。
10月中の納車スタートに変更なし!
そして、今年である2021年になって、ついにジーリー側が発表してきたのが、
今後の完全電気自動車時代を見据えて、電気自動車専門ブランドであるZeekrを立ち上げ、
そして、そのZeekrから発売する初めての電気自動車として、
001と名付けられた、クロスオーバータイプの完全電気自動車を発表し、
そしてその001において、ついにグループ初のSEAプラットフォームを採用してもきました。
そのような背景において、今回新たに明らかになってきたことというのが、
Zeekr側が、昨今の世界的な半導体不足の影響を受けながら、当初のスケジューリング通り、その001の生産をスタートさせ、
ついに今月である10月中にも実際の納車がスタートするということで、
それでは一体、このZeekr001という中国勢本気の電気自動車が、一体どれほどのスペックを達成してきているのかについてを、
一挙に紹介していきたいと思います。
まずはじめにラインナップに関してですが、
搭載バッテリー容量、および、搭載モーターの数によって、全部で3種類をラインナップし、
特にその搭載バッテリー容量に関しては、86kWh、そして100kWhという、どちらも大容量バッテリーを搭載することによって、
プレミアムセグメントとして、実用使いにおいて全く問題ない航続距離を確保しようとしています。
EPA航続距離は600kmオーバーか
そして、気になる満充電あたりの航続距離に関してですが、
中国市場で一般的に採用されているNEDCサイクルにおいて、
特に100kWhのバッテリーを搭載した後輪駆動グレードが712kmという、
中国市場で最も航続距離の長い電気自動車SUVに君臨することになりましたが、
こちらのNEDCサイクルについては、実用使いにおいては全く参考にならない数値ですので、
高速道路を時速100kmでクーラーをつけても達成可能であるというような、実用使いにおいて最も信用に値するEPAサイクルに変換してみると、
概算値とはなりますが、最大でも、概ね570km程度と、
何れにしても、NEDCサイクルよりもある程度航続距離が悪化してしまうものと考えられます。
ただし、現在中国市場において最も航続距離の長い電気自動車に君臨している、テスラのフラグシップセダンであるモデルSについては、
そのNEDCサイクルにおける航続距離が713kmと、今回のZeekr 001とたったの1km差であり、
そのモデルSについては、EPAサイクルにおける航続距離が、その当時の最高値であった647kmでもあるということ、
そして、個人的に発見した法則である、
その車両のCd値が低ければ低いほど、NEDCサイクルの航続距離とEPAサイクルの航続距離の差も小さくなる、
実際に、モデルSのCd値が0.24であるのに対して、
今回のZeekr 001については、さらに低い0.23であるということを勘案すると、
おそらく今回のZeekr 001の実際のEPA航続距離は、600kmを超えてくる可能性が高いとも推測することができそうです。
充電性能も世界最高性能
次に、充電性能に関してですが、
その最大充電出力が360kWという超高出力を許容することができるということで、
こちらは、GAC Aionがすでに生産をスタートしている、
Aion VというミッドサイズSUVの電気自動車の最大充電許容出力である、480kWという異次元のスペックはおいておいたとしても、
現在グローバルで発売されている電気自動車の中で、最高レベルの充電性能を発揮することができますので、
やはり電気自動車としての質が、この点だけを取ってみても、極めて洗練されていることがお分かりいただけると思います。
バッテリーの耐用距離200万kmの衝撃
また、今回のZeekr 001の質の高い電気自動車としてのスペックの達成に貢献しているのが、
その搭載バッテリーの種類となっていて、
こちらは同じく中国のCATLという、世界最大のバッテリーサプライヤーとなっていて、
よりエネルギー密度やパフォーマンス性能を追求することができる三元系のバッテリーセルを採用しています。
しかしながら、今回のZeekr 001において最も特筆すべき点であるのが、
そのバッテリーの耐久性であり、その耐用航続距離が驚愕の200万kmと、
おそらくグローバルで発売されている電気自動車の中で、最も耐久性の高い電気自動車が爆誕したことになり、
先ほど取り上げた、その搭載バッテリーの種類については、
耐久性に優れるLFPではなく、三元系のバッテリーセルということで、
それでバッテリーの耐久性が極めて高いというのは、競合メーカーと比較しても圧倒的ですので、
果たしてそのバッテリーの種類以外に航続距離を最大化させている、いったいどのような技術が内包されているのか、
非常に興味深い部分であるとは感じます。
エアサス搭載&ホイールベース3000ミリ強で快適性も最大化
また、電気自動車としての質以外のスペックについても簡単に取り上げていきたいと思いますが、
まずは、そのパフォーマンス性能については、
前後にそれぞれモーターを搭載したAWDグレードにおいて、時速100kmまで加速するのに3.8秒という、
SUVタイプの車種としては極めて早いタイムを達成しながら、
そのスポーツ性能とは裏腹に、Adaptive Air Suspensionを搭載することによって、
非常に快適な乗り心地を追及することができているとも推測できますので、
まさに、走行性能と乗り心地の両方を達成しようとしている、
プレミアムSUVを目指していることがお分かりいただけると思います。
ただし、その車両サイズに関してですが、
全長が4970ミリ、全幅が1999ミリ、そして全高が1560ミリと、フルサイズ級のサイズ感となりますので、
そのサイズ感については、多少気にしなければならない方が多いと思われますが、
やはり今回のZeekr001については、
プレミアムセグメントをターゲットセグメントとしているということもあり、
その3005ミリという圧倒的なホイールベースの長さを確保できていることによる、
プレミアムセグメントに求められる車内空間の広さも含めた快適性を達成することができるということ、
そして、そもそも中国国内については、都市部においても比較的大きいサイズ感の車両も普通に選択されていること、などを勘案すると、
取り立てて懸念する必要性もないのだろうとも感じます。
EVとしての質を考えればコスパは高い
そして最後に、その値段設定に関してですが、
エントリーグレード、および最も航続距離の長い中間グレードについては、26万6000元から、
日本円に換算しておよそ458万円からと、
確かに中国市場で発売されている、それこそ50万円以下で買える、
超格安小型電気自動車のHong Guang Mini EVなどの中国製EVと比較してしまうと、高額な部類に該当するものの、
それでも、このように電気自動車としての質を見れば、まさに納得、
もやはそれ以上のコストパフォーマンスを実現してきていると思います。
それでは、いよいよ今月である10月中に納車がスタートするZeekr 001について、
特に、SUVセグメントのガチンコの競合車種として、現在中国市場で人気のテスラモデルYと比較して、
いったい今回のZeekr 001が、どれほど競争力のあるスペックを達成することができているのか、
そして、いったいどれほどの販売台数を達成することができるのかを、徹底的に予測していきたいと思います。
航続距離も充電許容出力もモデルYを凌駕
まずはじめに、満充電あたりの航続距離に関してですが、
NEDCサイクルにおいて、Zeekr 001が最長712kmを達成しているのに対して、
モデルYについては、最長640kmとなっていますので、今回のZeekr 001が一枚上手であるものの、
その搭載バッテリー容量については、モデルYの方が圧倒的に少ないバッテリー容量しか搭載していない、
つまり、電費性能という観点を比較すると、モデルYの方が一枚上手であるということもお分りいただけると思います。
また、充電性能に関してですが、
モデルYが最大で250kWという充電出力を許容することができるのに対して、
Zeekr 001が最大360kWという出力を許容できますので、この点ではZeekr 001の方に分があるを言えるものの、
電気自動車の充電性能を考えるときに、その最大充電出力以外に、さらに大きく2つのファクターが存在するということで、
まずは、その実際に充電にかかる時間という点であり、
いくら最大充電許容出力の数値が高かったとしても、
その高出力を持続することができないと、実際に充電にかかる時間はそこまで変わらないというようになってしまい、
だからこそ、よりキャッチーな数値である最大充電出力の数値だけに踊らされず、その数値がどれほど持続するのか、
そして、実際に充電にかかる時間も同時に考慮する必要があるのです。
そして、充電残量10%から80%まで充電するのに、実際にかかる時間を見てみると、
なんとその充電時間はどちらも概ね30分程度と、ほとんど変化がなく、
おそらくですが、そもそもZeekr001の方が搭載バッテリーが多いですので、
80%充電するということはそれだけより多くの充電量が必要となりますし、
さらに、Zeekr 001の最大充電許容出力である360kWという数値は、
こちらもおそらくですが、それほど長く持続せずに徐々に下落していく、
したがって、最大250kWと、充電許容出力の数値で劣るモデルYと、実際に充電にかかる時間はほぼ同じである、ということなのです。
2年後までに中国全土に2200箇所の独自充電ネットワーク構築へ
さらに、もう一点重要な、充電性能を検討する際の指標として、
その最大出力を発揮することのできる充電器が、どれほど設置されているのかという点も重要であり、
テスラに関しては、このように、中国全土に独自の高性能急速充電器であるスーパーチャージャーの設置を進めていますので、
やはり、その充電に対する利便性が極めて高い一方で、
逆に、いくら充電性能が高かったとしても、
その充電性能を発揮することができる、充電インフラが伴っていなければ、
まさにその充電性能は宝の持ち腐れなわけであり、
だからこそ、その電気自動車において、
車両の作り込みだけではなく、その高性能な電気自動車を宝の持ち腐れにしないために、
その本質を理解している自動車メーカー、
それこそ今回のテスラに限らず、中国国内で言えば、XoengやNIOといった電気自動車スタートアップ、
さらにはフォルクスワーゲンなど、自社でインフラ整備にもコミットしてきている、というわけなのです。
そして、その充電インフラに関して、Zeekr側もその整備に注力する方針を示してきているということで、
そのZeekr 001の納車がスタートする前に、
そのZeekr 001のスペックを最大限発揮することのできる、
最大360kW級の超急速充電器ステーションを、すでに3カ所も設置を完了させてきているということで、
さらに今年である2021年末までに、全部で10都市に、合計して290箇所,
その上、2023年末までには、合計して2200箇所もの、最大360kWもの急速充電ステーションを、設置する計画でもあるそうですので、
確かに、現状の急速充電インフラについてはテスラが圧倒的であることは間違いないものの、
今回のZeekrに関しても、
この質の高い電気自動車を本気で売るために、充電インフラ整備についても、しっかりとコミットしていこうとしていることが、
お分りいただけたのではないでしょうか?
Zeekr001、モデルYよりも安いってよ、、
そして最後に、Zeekr 001とモデルYの値段設定についても簡単に比較してみると、
モデルYのエントリーグレードは、日本円にしておよそ476万円からスタートということで、
なんと今回のZeekr 001の方が、より安価な値段設定を達成することができているという、
あのテスラと比較してみても、極めて価格競争力が高いということが見て取れ、
こちらに関してはやはり、ジーリーという巨大な自動車グループを横断して採用していく、
電気自動車専用プラットフォームであるSEAプラットフォームによる、コアパーツの共用化など、
スケールメリットによってのみ達成できるコスパの高さであると思います。
したがって、4月中に予約注文を取り始めたZeekr 001については、
6月15日の段階で、すでに年内分がすべて売り切れとなってしまい、
しかもその上、その予約注文の平均価格が33万5000元オーバー、
そして、最上級パフォーマンスグレードを選択しているユーザーが、全体のなんと40%以上、
さらに付け加えると、オプション設定である、ヤマハのプレミアムオーディオは全体の8割、
スマートセンサーによるドアの自動開閉機能も44%と、
現在注文しているオーナーが、やはり様々なオプションをてんこ盛りで、注文価格が非常に高額であることが見て取れる、
つまり、今回のZeekr側が狙っていた、プレミアムセグメントとしてのマーケティング戦略が的中している、
故に、Zeekr 001が今後もマーケティング戦略通り、販売台数を伸ばすことに期待することができる、ということですね。
2022年はいよいよヨーロッパへ進出開始
何れにしてもこのように、いよいよその納車がスタートする、
ジーリーグループのプレミアム電気自動車ブランドから発売されるZeekr 001というのは、
競合をも凌駕するような、極めて質の高いスペックを達成しながら、
その充電インフラ整備にもコミットしていくという、その将来性についても極めて期待することができますし、
その内外装の質感や、車両性能の生涯にわたる無線アップデート機能などの先進性も相まって、
現在Zeekrのアプリには100万人もの会員数にまで達し、
その年齢層が、18歳から39歳までがなんと92%と、
やはり若いユーザーが、今回のZeekr 001に興味を示しているという、XpengやNIOと同様の傾向が見られますので、
それらの人気爆発中である中国の電気自動車スタートアップとともに、Zeekrブランドについても、その成功を期待できますし、
その実際の販売台数、および、来年である2022年にもスタートするヨーロッパ市場への進出の最新動向についても、
同時に注目していきたいと思います。
From: Zeekr、CNEV POST(Zeekr Power)、CNEV POST(2021 Sold Out)、Auto Home(Percentage of Option)、Weibo
Author: EVネイティブ
コメント