【度肝抜かれる中華EV】なぜ中国で日産アリアが全く売れないのか? 「Shenlan S7」に見る、中国製EVの信じられないコスパとは?

Changan

中国のEV専門ブランドであるShenlanが、新型電気自動車として競争が激化するミッドサイズSUVのS7を正式に発売スタートさせながら、なんとテスラモデルYよりも200万円以上安価な値段設定という、2023年におけるダークホースEVの登場によって、ますます競争が熾烈さを増すとともに、日本メーカー勢が苦境に立たされる理由についても含めて解説します。

モデルYよりも200万円以上安いShenlan S7の驚きの実力

初めに、今回取り上げるのはShenlanという自動車ブランドです。これは中国の自動車メーカーであるChanganが立ち上げた、プレミアムEV専門ブランドです。

既に2022年の中旬に、ブランド初となるEVであるミッドサイズセダンセグメントのSL03を発売しました。このSL03は、Changanの他に中国最大のバッテリーメーカーであるCATLと、巨大テック企業であるファーウェイの3社が協力して開発を手がけました。

電気自動車においては、搭載される大容量のリチウムイオンバッテリーの質がその電気自動車の質を決定づけると言っても過言ではないため、CATLと共同で開発しました。また、Changanは既存の自動車メーカーであるため、特にEVスタートアップたちが発売する競合の電気自動車のソフトウェア領域のスペックに対抗することが難しいです。それゆえ、ファーウェイを開発に巻き込むことによって、独自の車載OSまで開発してきました。

そして、このSL03は発売開始から、競争が激化している中国EV市場でスマッシュヒットを記録しました。特に、ミッドサイズセダンの市場では、これまでテスラモデル3が独走していたのですが、2022年にはこのセダンセグメントに多くの魅力的なEVが発売されました。SL03とともに、BYD Seal、NIO ET5、Neta S、そして2023年からは我らが日本のトヨタbZ3の発売スタートも記憶に新しいと思います。

セダンEVの月間販売台数の変遷を追うと、月間1万台を突破する車種も出てきています。一方で、モデル3は海外へも出荷しているため、月間販売台数の浮き沈みが激しいです。

さらに分かりやすく示すために、特に売れ筋であるモデル3、Han、Seal、そしてSL03の四半期別の販売台数の変遷を示したグラフを作りました。このグラフから明らかなのは、モデル3の販売台数がピークだった2021年前半から大きく下がっていることです。特に2022年後半以降は販売台数の落ち込みを脱出するために、モデル3は大幅値下げを始め、2023年シーズンに入った段階でさらに一段階値下げを行いました。そのおかげで、販売台数を維持できているのは、やはりテスラのブランド力が強力だからだと言えそうです。

一方で、セダン市場でモデル3よりも売れているのがBYD Hanの存在です。モデル3の販売台数が落ち始めた2021年後半以降、Hanは徐々に販売台数を引き上げ、2022年末ではセダンEVとしては圧倒的な販売台数を実現しました。さらにその上、Sealの販売台数も追加されたことにより、現在中国のセダンEV市場を支配しているのは間違いなくBYDです。

そして、その競争に割って入ったのが今回取り上げるShenlan SL03の存在です。この車はEV航続距離700kmオーバーを達成しながら、特に電力消費性能の観点では、モデル3よりも優れた性能を実現しました。内外装の質感の高さや、ファーウェイと共同開発したソフトウェアの先進性なども相まって、現時点で中国EVセダン4強の一角を構成しています。

そして、そのような背景の中で今回新たに明らかになったのが、SL03に続く2車種目のEVであるS7の正式な発売が開始され、本格生産が始まり、6月30日から中国全土で納車が始まるという迅速な動きです。

現在、多くの中国メーカーが実際の発売開始と納車開始のタイミングを短縮しています。これは、競争力の高いEVが毎日のように発表され、中国人の目移りが激しいからです。そこで、車両をあらかじめ生産しておき、実際の正式販売を開始したらすぐに納車を開始することで、目移りする前に車両を売り抜く戦略を採用しています。

例えば、日本の日産アリアを思い出してみてください。2020年7月15日に正式発表があったにもかかわらず、実際の価格設定は2021年6月に発表され、納車が始まったのは2022年3月でした。これと比較すると、Shenlanは発売から納車までのタイミングを大幅に短縮していることがわかります。

そして、今回のS7について最も重要なポイントは、なんといってもミッドサイズSUVセグメントに該当するということです。このセグメントは、現在テスラモデルYが独走状態となっています。まさにこの流れは、SL03が登場する前のモデル3の独走状態と酷似しています。よって、このS7の登場によって、モデルY一強体制であったミッドサイズ電動SUVセグメントがどのように変化していくのかに、大きな注目が集まっています。

それでは、今回のS7について、特にEV性能や標準装備内容、そしてそれを含めたコスパについてを、競合であるモデルYなどと比較しながら解説していきたいと思います。

まず初めに、そのラインナップ構成についてですが、SL03と全く同様に、バッテリーEVだけではなく、PHEVもラインナップし、さらにその上で、今後追加で水素燃料電池モデルについてもラインナップする方針を表明しました。実は、SL03については、すでに水素燃料電池モデルを発売済みで、このバッテリーEVとPHEV、そしてFCEVを全てラインナップできている車種は、現在中国でもSL03だけです。そのような意味において、真エネルギー車の全方位戦略と言えます。

一方で、そのSL03の水素燃料電池モデルについては、日本円で1400万円程度と、PHEVモデルの5倍近い値段設定となっていますので、あくまでもShenlanとしては、水素も作れるという技術力を示すためにラインナップしていると考えられます。

そして、バッテリー容量についてですが、66.8kWhと80kWh級の2種類をラインナップし、中国CLTCサイクルベースの航続距離は最大で620km、最も信用に値するEPA基準についても概算値で450km程度と、モデルYの最大497kmと比較しても同程度のスペックを実現しました。

一方で充電性能については、詳細な充電出力の数値などが公開されてはいないものの、モデルYと比較すると充電インフラという観点も含めて劣ることは間違いないと思います。これらの詳細なEVスペックについては、実際のオーナーによる検証結果を待ちたいと思います。

車両サイズについては、まさにモデルYと瓜二つといってもいいほどに非常に似通っています。また、バッテリーEVモデルのみ、ボンネット下にも収納スペースを用意し、そのサイズについても125Lと、モデルYよりも大きいレベルのフランクを搭載しました。

元々フランクが搭載されていたモデル3を所有していた際の個人的な意見としては、フランクは必要ないと思っていましたが、モデルYのフランクを使用してみると、コストコでマックスで買い物した食料品をそのままフランクに積み込むことができ、このレベルの広さであれば非常に実用的であると考え直しました。ですので、今回のS7のフランクについても、実用性は間違いないと思います。

そして、今回のS7の内外装の質感を簡単に見ていただきたいと思います。まずは、クーペタイプであることで、非常にスポーティな印象を抱かせます。電動格納式のドアハンドル、サッシュレスウィンドウなど、現在のプレミアムセグメントで非常に人気のあるデザインを採用しました。

また、インテリアについても、車両中央に15.6インチの巨大なタッチスクリーンを搭載しました。この車載インフォティンメントシステムのプロセッサーはQualcomm Snapdragon 8155で、現在多くのフラグシップモデルに採用されているチップですので、非常に滑らかな操作性に期待できます。

さらにその上、助手席側のサンバイザーに12.3インチのタッチスクリーンを組み込み、助手席に座っている人がナビゲーションを操作したり、映画を見たりすることができます。

次に、価格についてですが、これが最も重要な点だと思います。今回のS7の価格は、初期のリリースでバッテリーEVモデルが発表されました。その価格は、中国で税込み14.99万元から20.99万元で、これを日本円に換算すると、おおよそ298万円から403万円となります。それぞれのグレードと価格の詳細については後述しますが、この価格設定については、モデルYと比較してみると非常に驚きました。

なぜなら、中国でのモデルYの価格は、税込み26.39万元から36.39万元で、これを日本円に換算すると、おおよそ524万円から723万円となります。つまり、S7はモデルYよりも価格が安いのです。

アリアのコスパが悪すぎるこれだけの理由

それでは、このS7のEV性能以外の、特に内外装の装備内容について、一体標準装備内容として、どれほど充実した装備内容となっているのか、

そして、現在の中国人がどのような装備内容を求めているのかについての理解を深めるために、既存メーカーとして、同じ電動SUVセグメントながら、全く売れていない日産アリアの装備内容とを比較していきたいと思いますが、

まず初めに、今回ピックアップしているグレードについては、それぞれのエントリーグレードであり、その値段設定は、やはりS7が最も安く、アリアよりも70万ほども安価な値段設定、

確かにアリアについては、エントリーグレードでも90kWhバッテリーを搭載していることによって、航続距離が長いものの、このアリアに関しては、すでに発売してから数ヶ月の段階で、120万円級というとんでも値下げをしている状態ですから、

それを考慮すれば、やはり今回のS7のコスパの高さが光っていると感じると思います。

そして、定期的に中国のSNSなどを覗きながら、中国ユーザーの欲している装備内容として、よく指摘されている内容として、まず注目したい点というのが、USBやワイヤレス充電における充電速度という観点、

我々日本国内にいると、そんなスマホの充電速度なんて気にしたことないぞ、と感じている方がほとんどでしょうが、現在主要な中国製EVについては、この充電出力を急速充電化している状況、

モデルYについても、USB経由では急速充電化しているものの、今回のS7については、ワイヤレス充電についても、40Wと急速充電化してしまっている状況、

意外にも高評価されている部分であり、いずれにしても、いまだにUSB Aなどを併用している日産アリアについては、このような観点だけ撮ってみても、周回遅れである、ということなのです。

また、テールゲートについても、アリアは電動ではなくコストカットが目立っているわけですが、さらに注目するべきはガラスルーフの存在、

確かにアリアについては、ガラスルーフが搭載されているものの、こちらは開閉可能なサンルーフであり、

ところが、現在中国国内で、特に人気のプレミアムEVについては、開閉することはできないものの、その分だけ非常に大型な一面のガラスルーフを採用しているというトレンドが存在、

車内の開放感という点で、やはり中国ユーザーは、より開放感を感じる、より大型のガラスルーフが求められているのではないか、

ちなみにS7については、なんと1.9平方メートルという巨大なガラスルーフを採用してきています。

また、現在中国ユーザーに人気なのが、サッシュレスウィンドウであったり格納式のドアハンドルによる、エクステリアデザインのスタイリッシュさという観点、

アリアについては、そのどちらも採用していないことによって、もしかしたら、このような点からもレガシーに感じさせてしまっている部分なのかもしれない、

また、2重ガラスについても、S7ですら、前席側には採用しているわけですから、コスパの低いアリアとしては、せめて後席側にも2重ガラスを採用して、さらなる静粛性対策を行わなければならないと思いますし、

シート関係についても、アリアはシートヒーターしか採用していないものの、S7であれば、標準でシートクーラーも搭載、

さらにその上、S7には64色ものアンビエントライトが標準装備されているものの、アリアについてはささやかなライトが一本通っているだけで、色彩も豊かではない、

また、S7に限っては、充電プラグ経由で3.3kWものV2L機能も標準搭載、中国でも流行りのキャンプに大活躍の機能、

さらに、音響システムに関しても、モデルYもS7も14ものスピーカーを標準搭載しているものの、アリアについてはたったの6つという貧相な音響システム、

このようにして、冷静に標準装備内容を比較していくと、S7のコスパの高さが際立ちながら、この中国製EVと比較して、いかにアリアの装備内容が貧相であるのかが図らずも浮き彫りとなってきてしまう

そりゃあ、120万円も値下げしたとしても閑古鳥が泣くわけです。

このように、今回正式な発売がスタートした中国ShenlanのミッドサイズSUVであるS7に関しては、テスラモデルYにも劣らないEV性能を実現しながら、内外装の質感の高さによる驚異的なコストパフォーマンスを実現してきている状況、

特にその内外装の装備内容を、我々日本メーカーが発売しながら全く売れていない日産アリアとを比較してみると、現在中国人ユーザーにとって必須の機能が全く装備されていない状況、

唯一の強みでもあったはずの販売ネットワークの強みについても、すでにShenlanについては、独自のサービスストアを中国全土に拡充している最中であり、まだ本格始動してから1年が経過していない自動車ブランドとしては、とてつもないサービス拡大のスピード、

Shenlanのストアは中国全土に拡大中

実際に、EVセダンのSL03については一定の成功を収めているわけであり、今回のS7の投入によって、この2023年シーズンについては、年間20万台という相当な販売目標すら掲げてきていますので、

果たして、このS7の登場によって、電動SUVセグメントで独創していたテスラモデルYとどこまで競り合うことができるのか、今年のEV市場はますます目が離せないでしょう。

From: Shenlan

Author: EVネイティブ

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