【EV発展途上国は日本だけ?】バイデン政権が最大136万円のEV補助金を検討&テスラが爆売れ確定

First cars of the more reasonable Tesla vehicle Model 3 can be seen during the delivery on the company grounds in Fremont, US, 28 July 2017. Tesla plans on making the Model 3 also completely automotive in the course of time. Photo by: Andrej Sokolow/picture-alliance/dpa/AP Images
アメリカ

アメリカ市場における電気自動車購入の際の補助金を、現在の倍近い最大136万円に大幅増額する法案が、関連委員会を通過し、

今後この法案が正式に可決された場合、アメリカ市場における電気自動車の販売台数が今までとは別次元に突入する可能性について、徹底的に解説します。

アメリカは日本と同じ電気自動車発展途上国

まず今回のアメリカ市場に関してですが、中国市場についで世界で2番目に大きい自動車大国となっていて、

特に我々日本メーカーであるトヨタやホンダ、日産などの主要自動車メーカーは、揃ってこのアメリカ市場に、その販売台数の3割程度を依存しているという重要マーケットでもありますので、

特に注視しなければならないマーケットなのですが、

From: 東洋経済オンライン

本チャンネルにおいて最も重要な電気自動車という観点では、我々日本市場と全く同様に、電気自動車発展途上国に留まってしまっていて、

今年である2021年の初めまで大統領職に就任していたトランプ政権においては、むしろ内燃機関車に関する排ガス規制を緩和するという、世界の潮流と逆行する政策を採用し、

そのような流れもあってか、その在任中であった4年間に関しては、電気自動車がなかなか盛り上がってこなかったのですが、

新たに就任したバイデン政権に関しては、むしろ全く正反対に電気自動車を強力に推進していく立場を表明し、政権発足直後から、電気自動車用の充電器を、全米で50万基設置する計画を表明したり、

連邦政府の公用車累計で64万5000台を、今後全て電気自動車にリプレイスすると表明したりと、とにかく政府主導で電動化を強力に推進していく考えを示していました。

更に直近では、そのバイデン大統領が直々に、アメリカの自動車メーカーであるフォードに赴いて、そこで、自身が掲げている1740億ドル、日本円にして約19兆円もの電気自動車に関連する投資を表明し、

そしてその重要性を説く演説をおこなったということで、特に強調していたのが、やはり中国の台頭という点であり、

特に電気自動車という観点で言えば、まずその販売台数では、現時点においてでも、中国の3分の1程度の販売台数しか達成することができていないということ、

さらに、その電気自動車において最も重要な充電インフラの設置台数に関しても、アメリカ市場は2020年時点で10万器程度の設置台数であるのに対して、

中国市場では、なんと80万器もの電気自動車用の充電器が設置されているという、圧倒的な差となってしまっていることを取り上げていて、

バイデン大統領は、これからの自動車の未来は電気自動車であると断言しながら、この流れが後退する、つまり、ガソリン車をはじめとする内燃機関車に戻ることはない、とも明確に主張し、

したがって、今後の電気自動車の購入の際の税制優遇を始め、充電インフラへの投資、また、電気自動車生産における新たな設備投資への支援、

さらには、アメリカ国内で、電気自動車におけるコアテクであるバッテリーを生産することができるサプライチェーンの構築など、より具体的なプランを発表してもいました。

EV購入の税制優遇プラン大幅変更も示唆

そして、その演説の中において、電気自動車の購入に対する税制優遇プランについてもアナウンスし、

特に、現在すでに多くの電気自動車を販売してしまい、その優遇措置を受けることができていないテスラやGMを再度その優遇措置の対象範囲内に戻しながら、

それと同時に、高級車に対してはこの優遇措置を適用させないという、公平性を更に担保するような優遇措置に変えたり、

更に、アメリカ国内の雇用を創出するというバイデン政権の大方針を反映させるために、アメリカ国内の工場で製造された電気自動車に限定して優遇するであったりと、

その大まかな中身は報道されていたものの、具体的な内容に関してはまだ確定していないという状況に留まってはいました。

高級EVは補助対象外

そして、このような状況の中で、今回新たに明らかになってきたことというのが、その電気自動車購入の際の税制優遇措置を定めた、

「Clean Energy For America」という法案が、上院の財務委員会において採択されたということで、その具体的な中身が明らかになってきてもいて、

その重要な変更点を一挙に説明していくと、

まずは、現状ではどのような電気自動車を購入したとしても適用することができる要件を、その車両の本体価格が80000ドル

日本円に換算して、およそ873万円以上の電気自動車は、今回の電気自動車に対する税制優遇措置の対象範囲外となるという点であり、

こちらは当初から説明されていた通り、高級車価格帯の車種には適用せずに、普及価格帯の車種を優遇するという措置であり、個人的には、その税金の使い方として非常に合理的であると思いますし、

こちらに関しては、我々日本市場に関しては、例えばドイツ車の高級電気自動車であったり、テスラモデル3のパフォーマンスグレードなどが、全く同様に補助金を適用することができている状況というのは、

あまりにも異常であると考えていますので、是非とも日本市場においても、この高級車価格帯の電気自動車は補助金を適用できないような制度改革をしていただきたいとは感じます。

高級車にEV補助金を適用させてはダメ

EV購入補助は最大2倍近くに大幅拡大

次に、その税額控除の金額に関してですが、現状でも存在している7500ドル、日本円にしておよそ82万円が、来年度に控除としてバックされるという税額控除の金額はそのままに、

新たな制度においては、まず、その車種をアメリカ国内の工場で生産している場合は、更に2500ドル、合計して10000ドル、日本円に換算して、およそ109万円という控除額を適用させることが可能となり、

しかもその上、アメリカ国内の工場で製造されながら、しかも、全米自動車労働組合という労働組合に所属しているメーカーが製造した場合は、さらに2500ドル、合計して、12500ドル、日本円にして、なんと136万円という、

超大規模な税額控除を適用することができるということになったのです。

From: Reuters

こちらの新たな税額控除の金額に関してですが、全く同様にバイデン政権の方針がしっかりと反映されているという点が重要であり、

まずは、アメリカ国内の雇用の創出にフォーカスしているため、アメリカ国内で製造された車種に更にインセンティブを与えているという点であり、

したがって、特に現在アメリカで電気自動車を製造することができている日本メーカーの日産については、かなりの朗報となるかとは思います。

Nissan Leaf produced in Smyrna, Tennessee

また、アメリカ国内で生産されるということは安全保障上という観点でも重要であり、

例えば、現在世界的な半導体の供給不足によって、その生産体制の縮小に追い込まれてしまっている自動車産業のように、サプライチェーンを他国に依存している状況の場合、

それを人質に、国家間のパワーバランスを捻じ曲げられてしまう懸念がありますので、

やはり国内でサプライチェーンを完結することができている自動車メーカーに対して、優遇措置を手厚くするという考えは、国家安全保障上必要不可欠であるとも感じますし、

特に電気自動車におけるコアテクとなるバッテリーに関しては、現在テスラ以外は、中国などに依存してしまっている現状ですので、

今後の電気自動車時代に安全に移行していくためにも、ローカライゼーションは最重要ミッションである、ということですね。

Tesla Giga Factory Nevada

ちなみに、今回の法案には、そのような電気自動車の生産に関する最新の機材を導入したり、新たな工場を設立する際に、30%もの税額控除を、その電気自動車製造に関連するメーカーにも適用されることも含まれており、

おそらくこの優遇措置を見越して、多くのメーカーが、アメリカ国内に新たな電気自動車やバッテリーの生産工場を立ち上げる動きが出てくるとみられ、

実際に、すでに韓国のヒュンダイグループは、来年である2022年からアメリカ国内の工場において、電気自動車を生産すると表明していますので、

この優遇措置を適用してくることになるとみられます。

EV補助マックスを適用するためには特殊要件も存在

しかしながら、今回の税額控除のマックスである136万円もの控除を適用するためには、全米自動車労働組合に所属していなければならず、

例えばこの労働組合には、テスラやフォルクスワーゲンなどは参画していませんので、最大109万円という金額に止まってしまうという点がミソとなっていて、

実は今回の法案を作成した中核議員である、デビー・スタバノウという上院議員に関しては、ミシガン州から選出されていて、

From: United States Senator

そのミシガン州というのは、アメリカの既存メーカーであるGMとフォードの本拠地ともなっている、

つまり、おそらくフォードとGMなどの電気自動車を優遇するための制限であるのではないかと推測することができ、

この件を取り上げて、テスラに肩入れしている一部の電気自動車メディアや信者などが批判していますが、個人的には全く問題ないと考えていて、

そもそも労働組合を結成せずに政治力を持たなければ、自分たちの要望を通すことなどこの民主主義においては不可能であり、

確かに様々な制約が発生してしまうものの、巨大な労働組合を結成し、それを盾に、自分たちの要望を通すために政治力を行使していくというのは、むしろ真っ当な手段でもあり、

その意味において、おそらくフォードやGMなどが、その政治力を発揮してきただけで、

例えば昨今の新型コロナウイルスによる行動制限によって、日本の飲食店は厳しい経営を強いられていますが、これだって、日本の飲食産業は、まとまった組織を持たないことによって、

やはりいざとなった時に、その政治力を発揮することができていないという背景があると考えられますので、

まさに巨大な既存メーカーの力を正当に行使してきただけである、と個人的には考えています。

見返りがなきゃ動かないのが政治っす

巧みに政治力を利用するフォード

ちなみに、その政治力を行使するという意味においては、やはりフォードが最もうまくやってきているのではないかとみられ、

例えば直近で電気自動車に対する19兆円にも及ぶ投資概要をバイデン大統領が発表したのは、フォードの電気自動車生産用の工場の中でしたし、

From: Ford

しかもその訪問に際し、バイデン大統領が自ら、フォードの新型電気自動車であるF-150 Lightningの運転を行い、その存在感を全世界にアピールすることに成功し、

その翌日に、そのF-150 Lightningのワールドプレミアをドンピシャで開催し、現在とてつもない予約が入っているという状況でもありますので、

フォードとしては、正当な政治力を行使しながら、最高のパフォーマンスを得ることができたと、まさにしてやったりということにはなりそうです。

左から2番目がBiden、右端がフォードCEOのJim Farley.

この大盤振る舞いはバイデン以後も続きそう

そして、以前の制度であれば、そのメーカーが20万台もの電気自動車を販売してしまうと、その税額控除を適用できなくなってしまうという制限があったのですが、

今回の新たな税制優遇措置に関しては、その制限が完全に撤廃されましたので、その制限対象であったテスラとGMに関しても、優遇度地の適用範囲内に戻った格好となり、

更にその新たな制限に関しては、アメリカ市場における新車販売に占める電気自動車の販売台数を表す電動化率が、50%になった段階から、3年間の優遇措置廃止移行期間を挟んだのちに終了するということですので、

つまり、電動化率50%というのは、少なくともバイデン政権の任期が終了する2029年までは流石に訪れないでしょうから、

この最大136万円という大盤振る舞いを、今後何年も適用することができるようになったということは、今後のアメリカ市場の電動化を、更に加速させる好材料になることは間違い無いと思います。

モデル3は327万円から購入可能へ

したがって、今回の新たな電気自動車購入の際の税制優遇法案によって、

例えば、テスラのエントリーモデルであるモデル3のスタンダードレンジ+であれば、現在39990ドルですので、これに10000ドルの税額控除を適用すると、なんと衝撃の3万ドル以下

つまり、日本円に換算して、327万円から購入することができてしまうということになり、

この値段設定というのは、同セグメントの競合車種であるBMWの3シリーズのエントリーグレードの41000ドルとは比較にもなりませんし、

そして、乗用車セグメントの王者でもある、トヨタのカムリーのベースモデルである25000ドルとも互角に張り合えるほどの、

とてつもないコストパフォーマンスの高さを実現することを、容易にイメージすることができますし、

もはやアメリカ市場において、このモデル3の右に出るようなコスパを達成することのできる、乗用車セグメントの電気自動車はほぼ存在しないことになりそうですので、

やはりテスラの一強時代が今後も続く公算とはなりそうです。

F-150 Lightningも記録的な販売台数となる予感

また、先ほど取り上げ、全米でそのカムリーも抑えて、全ての車両の中で最も人気の車種である、フォードのピックアップトラックであるF-150の電気自動車バージョンのF-150 Lightningに関しては、39974ドルからのスタートであり、

先ほど説明したように、フォードは全米自動車労働組合に加盟していますので、今回の新たな優遇措置におけるマックスの12500ドルを適用することができ、

したがって、その値段設定は実質、27474ドル、日本円にして衝撃のジャスト300万円となり、

つまり、フルサイズピックアップトラックの電気自動車バージョンを、なんとジャスト300万円で購入することができてしまうということになり、

内燃機関車モデルのF-150のエントリー価格よりも安いという衝撃的な値段設定も達成することになりますので、

特に工事現場などの商用車として使用することの多い、こちらのF-150、特に電気自動車バージョンであるF-150 Lightningに関しては、とてつもない人気となるのではないかと推測することができそうです。

全米ベストセラー車がEV化すると、アメリカは変わります

電気自動車先進国になるために本気の姿勢

何れにしてもこのように、今回バイデン政権側の意向を反映した、新たな電気自動車購入に対する税制優遇措置である、「Clean Energy For America」という法案が制定された場合、

現状の82万円という控除金額が、最大で136万円にも跳ね上がりますし、

したがって、モデル3であれば、300万円前半から、そしてアメリカ人が大好きなF-150の電気自動車もジャスト300万円からという、内燃機関車と完全に互角、

ランニングコストを考慮すれば、完全に上回ることになりますので、それらの電気自動車の販売台数は、今までとは違う次元で伸びていきそうですし、

逆に、まだアメリカ国内で電気自動車を生産することができていない、特に我々日本メーカー勢に関しても、今回の新立法によって、北米市場における戦略を大きく方針転換させられそうでもあり、

もちろん大前提として、今だに上下院を通過してはいないものの、その正式な立法は時間の問題でもありますので、

果たして、特に日本メーカーが、アメリカ国内において電気自動車の生産をスタートさせるアナウンスを行ってくるのか、

更に、そのコアテクともなるバッテリーの生産体制なども、アメリカ本国においてローカライゼーションしてくるのか、

今回の新立法を受けた、アメリカ市場における電気自動車戦争勃発による、競合メーカーの動向と合わせて注目していきたいと思います。

From: Reuters

Author: EVネイティブ