【これぞ日本の底力!】 日本のEVスタートアップ「EVモーターズジャパン」が中国製EVを超える電気バスを発売へ
日本の電気自動車ベンチャーであるEVモーターズジャパンが29人乗りの路線電気バスを公開し、
特に、安価な中国製バッテリーを搭載し、中国の自動車メーカーが製造を請け負うというファブレス方式を採用しながら、中国製電気バスにも引けを取らない値段設定を達成してきました。
中国製商用EVが日本を侵略中
まず、今回の商用車の電動化の最新動向に関してですが、
本メディアにおいては以前も指摘している通り、現在タクシーやバス、小型配送トラックなど、様々な商用EVが日本市場に導入され、
日産リーフやテスラを筆頭とする、乗用車部門の電動化とともに、
商用EVの普及も進み始めているという、まさに日本市場にとっての朗報のように聞こえてはいました。
しかしながら、その商用EVの実態を見ていくと、
例えば配送トラックとして、物流大手のSBSグループが1万台もの1トン級配送トラックを、なんと中国で製造されたものを輸入する、であったり、
佐川急便に関しても、7200台もの小型配送トラックを、
これまた中国の自動車メーカーが実際の製造を請け負うという、
中国製の配送トラックを、日本の物流企業が次々と導入を表明しているのです。
さらに、この流れはバスやタクシーという旅客事業にも広がりを見せ、
特に中国の自動車メーカーであり、電気自動車の製造、および電気自動車のコアテクであるバッテリーの生産にもコミットしている、
BYD製の電気バスであったりタクシーを、現在日本全国の様々な事業者が導入を進めており、
したがって、確かに電気自動車発展途上国である我々日本においても、着実に商用EVが広がりを見せてはいるものの、
その実態については、ほとんどすべてが日本製ではなく、中国で生産された電気自動車であるということですので、
今後電気自動車の流れが加速した場合、
いざ日本メーカーが商用EVセグメントに参入してきたとしても、中国勢が市場を独占、
特に先行者利益として、日本勢よりも圧倒的なコストパフォーマンスを実現し、
気付いた時には時すでに遅し、中国勢にマーケットを完全に支配されてしまっていた、
なんとことが容易に想像できてしまう、ということなのです。
ただし、特に佐川急便やSBSグループが導入する配送トラックについては、
中国の自動車メーカーがその生産を請け負うものの、
設計開発という上流工程に関しては、日本の電気自動車ベンチャーが行うという、
いわゆる自社で大規模な工場を所有せずに、設計開発を手がけた商品を、他者に製造委託するという、
日本のファブレスメーカーが主導しているわけですので、
中国製EVであることには変わらないものの、日本の技術力も多分に内包されている、ということにはなります。
日本のEVスタートアップがまた一つ登場!
そして、そのような背景において今回新たに紹介していきたいのが、
その商用車セグメントの電動化に力を入れているメーカーであり、
それが、EVモーターズジャパンというスタートアップとなっていて、
こちらは、2019年に福岡県北九州市に設立された電気自動車ベンチャーであり、
トップを務める佐藤代表に関しては、もともとリチウムイオン電池の研究に携わっていたエンジニアであり、
その後自身で立ち上げた充放電装置メーカーにおいて、
リチウムイオンバッテリーだけでなく、電気自動車におけるコアテクであるモーターやインバーターの管理する制御システムを開発し、
国内の電機メーカー、そして中国のバスメーカーに対しても納入するなど、
電気自動車開発に対する知見を引っさげて、満を持して2年前に立ち上げたのが、
今回のEVモーターズジャパンという電気自動車スタートアップとなっているのです。
そして、このEVモーターズジャパンが開発を手がけているのが、商用車セグメントのバスや配送トラックとなっていて、
特にその量産が最も近く、実際に今年の7月にメディア向けに試乗会を開催してもいるのが、全長が6.99メートルの路線バスとなっています。
こちらの路線バスについては、
全長が6.99メートル、全幅が2.1メートル、そして全高が3.05メートルというサイズ感であり、
路線バスとして、座席数が13人+運転席の14席を確保、最大乗車人数も29人と、
それこそ地域のコミュニティバス的な運用としては、極めて実用的なスペックを有しているのです。
航続距離は230km、中国製格安バッテリー採用
そして、今回のEVモーターズジャパンについて特筆すべき点であるのが、
このスタートアップについても、設計開発は自社で行うものの、
実際の製造については、中国の自動車メーカーに委託するという、ファブレス方式を採用するということでありますので、
冒頭紹介している中国製配送トラックと同様に、中国製バスが導入されるということになりますので、
この点においては、またもや中国勢に先行されてしまった、ということになります。
それでは、今回の小型バスについて、特に電気自動車としての質にフォーカスして紹介していきたいと思いますが、
まずは、その搭載バッテリー容量に関してですが、114kWhということで、
乗用車と比較すると、市販車最大級のバッテリー容量となりますが、
バスという商用車セグメントとしては、非常にコンパクトに抑えられたバッテリーサイズとなります。
そして注目すべきは、その114kWhという大容量のリチウムイオンバッテリーの種類ということで、
こちらは、LFPと呼ばれるバッテリーセルの種類を採用していて、
実は私自身も所有している、テスラモデル3のエントリーグレードである、スタンダードレンジ+に採用されているバッテリーセルの種類と同じとなっているわけであり、
このLFPについては、特に耐久性や安全性に優れているということ、
そして何よりも、コバルトをはじめとするレアメタルを使用していないことによる、安定的な供給、および安価に調達することができますので、
特にテスラを筆頭に、フォルクスワーゲン、さらには日産など、
電気自動車に注力しようとしている自動車メーカーは揃って、このLFPの開発、および大量生産の方針を発表しているのです。
ただし、このLFPの弱点であるのが、現状そのLFPの主要技術力を抑えているのが中国勢であるということであり、
したがって、LFPを本格的に導入していくためには、やはり中国勢と一定のパートナーシップを締結する必要があったり、
さらには、バッテリーセルあたりのエネルギー密度が低いため、
同じようなバッテリー容量を搭載しても、電気自動車としての航続距離を確保することができないという、
電気自動車にとって致命的な弱点となってしまってもいて、
実際に、今回のEVモーターズジャパンの路線マイクロバスについては、
日本市場で一般的に採用されている日本WLTCモードという基準において、230kmという航続距離にとどまってしまっているのです。
航続距離は短めでも商用バスにおいては問題ない理由
しかしながら、その路線バスという運用方法をイメージしていただければお分かりの通り、
おそらく地域のコミュニティの循環バスとして、一周概ね10-20km程度となり、
特に冬場などで暖房をつけたとしても達成することができる見込みとして、
満充電あたり150ー160km程度と見積もったとしても、
それでも1つの車両で、一日の大半の運行距離を賄うことが可能であるのです。
さらに、今回の路線マイクロバスに関しては、
日本の公共の急速充電インフラに採用されている、チャデモ急速充電にも対応し、
120kW級の急速充電器を使用すると、5分間の充電でおよそ50km分の航続距離を回復させることができるとし、
このEVモーターズジャパン製の路線バスを導入する際は、
同時に120kW級の急速充電器の導入も推奨していたりします。
ちなみにですが、冒頭にも取り上げた、日本国内ですでに何十台ものバスを納入している、中国BYDのマイクロバスであるJ6とを、
特に電気自動車としての質にフォーカスして簡単に比較してみると、
まず搭載バッテリーについては、自社で内製しているBYD製のLFPのバッテリーセルを採用し、
その容量についても105.6kWhと、
今回のEVモーターズジャパンと同じようなバッテリーサイズとなります。
また、その満充電あたりの航続距離は最大で150km程度と、
ややEVモーターズジャパンの方が航続距離を確保することができていて、
こちらに関しては、ヨーロッパのメーカーから調達しているという、最新の軽量素材を採用していることによって、
その車両重量についても、500キロ程度の軽量化を達成し、
その軽量化の分だけ、より電費性能が向上、
つまり、同じようなバッテリー容量ながら、より長い航続距離を確保することができている、ということになるのです。
そして、その充電性能という観点についても、
BYDのJ6については、40kWという出力を発揮することができるものの、
EVモーターズジャパンの方は、最大120kW程度の出力を許容可能であり、
したがって、より早く充電を完了させることができますので、
その分より1日で運用するこのできる運行距離を伸ばすことができたり、
その多様な運用方法に、柔軟に対応することができそうです。
コスパはBYDと互角以上を達成
そして最も気になる値段設定に関してですが、
何と言っても、日本メーカー製の電気バスと比較しても、
その安さに定評のある中国BYDのJ6は、1950万円からと、
確かに通常の内燃エンジン搭載のバスよりも割高ではあるものの、
電気自動車であれば、ガソリン代が一切かからず、圧倒的に安価な電気代のみで運用することができてしまいますし、
部品点数が少なかったり、振動が少ないことによる、点検修理代というランニングコストについても、
内燃エンジン搭載バスよりも圧倒的に安上がりとなり、
特に10年以上は余裕で運用され続けるというような商用車セグメントの車両としては、
イニシャルコストの高さを十分にカバーすることができるのです。
それでは、今回のEVモーターズジャパン製の電気バスの値段設定というのは、およそ2000万円からと、
なんと価格競争力が極めて高い中国BYDと比較しても、
特にその電気自動車としてのスペックを鑑みれば、非常に競争力が高いということになり、
もちろん中国製であることには変わりませんが、
日本メーカーがなるべく関係している電気自動車としては、
非常に検討に値する電気バスに仕上がっているのではないかと感じます。
商用バス導入にオススメの急速充電器とは
ちなみにですが、このEVモーターズジャパン製のEVバスにおける充電性能について、一点面白い提案をさせていただきたいということで、
先ほども説明したように、今回のEVバスとともに、
そのバスを導入する営業所には、そのEVバスの充電性能を発揮することができる、最大120kW級の急速充電器の設置も推奨しているというところで、
確かにそのようなハイスペックな急速充電器を設置することができれば、
営業所、もしくは始発地点などに急速充電器を設置しておくだけで、
もはや航続距離を全く気にせずに、切れ目なく運用することができてしまうわけですが、
問題は、その急速充電器の設置コストであり、
特に最大120kw級の急速充電器であれば、
その設置費用、および、その電気料金契約上、非常に高額なランニングコストを支払うはめにもなりますので、
個人的には、急速充電器ではなく、普通充電器の運用をお勧めしたいところではあります。
しかしながら、もし仮に、よりハードな運用を検討しているという方向けに紹介したい急速充電器というのが、
Boost Chargerという急速充電器であり、
この充電器の最大のメリットというのが、設置費用、およびランニングコストが安いという点であり、
急速充電器で必須となる高圧設備のキュービクルを設置する必要がありませんので、
その設置費用、および設置スペースについても大きく抑制することができるということ、
さらには、通常急速充電器として使用する場合、
高圧受電契約によって、充電器を運営するランニングコストがかさむものの、
今回のBoost Chargerにおいては、普通充電器の低圧受電契約を維持することができますので、
その分基本料金を大幅に低減することができるのです。
というのも、今回のBoost Chargerには、合計160kWhという大容量のリチウムイオンバッテリー、
ちなみにこの内蔵バッテリーは、アメリカのテネシー工場で生産されている、日産リーフのバッテリーと全く同じものなのですが、
この大容量バッテリーを内蔵することによって、
充電器を使用していない間に、低圧受電の最大の出力である27kWでゆっくりバッテリーの充電しておきながら、
実際の充電の際は、2台同時、最大120kWの充電出力を発揮することができるのです。
したがって、このBoost Chargerという急速充電器を導入してしまえば、
今回のEVモーターズジャパン製のバスの急速充電を、より安価に実現することができ、
より運用距離を長くするであったり、
一台で稼働することのできる時間を延長することにも役立つと考えられますので、
もし今回のEVモーターズジャパン製のEVバスの導入を真剣に検討されている方については、
このBoost Chargerという種類の急速充電器の導入も、同時に検討を進めてみることをお勧めします。
中国製から日本製に移行予定の超朗報!
このように、日本から立ち上がった電気自動車スタートアップであるEVモーターズジャパンについては、
非常に実用的でありながら、なおかつコストパフォーマンスが高い商用バスを開発してきましたので、
早くその実際の発売スタートできることに期待したいと思いますし、
実際に公道を走り始めたら、実際に乗ってみて、電気自動車バスの振動の少なさや静粛性を体感し、
中国BYDなどの競合バスなどとも乗り比べて行きたいと思います。
そして、今回のEVモーターズジャパンに関しては、
現状では中国の自動車メーカーに、実際のバスの製造を委託している状況ではありますが、
おそらく2023年ごろから、自社専用の、車両完成検査場も備えた車両生産工場の建設もスタートさせるという、
非常に野心的な計画も立てているわけでもありますので、
是非とも、真の意味での日本製商用電気自動車の導入を達成するためにも、
まずは今回発表されたようなEVバスが、好調な販売台数を達成できるように期待していきたいですし、
最終的には、EVモーターズジャパンが自社内で開発した車両を、自社内で生産まで行えるような日本メーカーに昇華出来るように、
非常に期待しながら、続報も合わせてウォッチしていきたいと思います。
From: EV Motors Japan、Bell Energy
Author: EVネイティブ