テスラがドイツベルリンで建設中である最新のギガファクトリーを一般公開し、特にそこで発表された最新型のバッテリーセルである4680セル、
および、それを搭載する新技術である車体一体型構造の、より詳細な様子も公開されましたが、
果たしてドイツ製のモデルYは一体どの程度性能がアップし、一体いつ発売されるのか、
そして、我々である日本市場においてこの最新型のモデルYを、一体いつ購入することができるのかについてを徹底的に解説します。
ギガファクトリー見学ツアー開催
まず、今回のドイツベルリンにおけるテスラが主催したイベントに関してですが、
2019年末ごろから建設をスタートしていた、ドイツベルリンに位置するテスラの車両生産工場であるギガファクトリー4の第一フェーズが、概ね完成したということで、
その完成に合わせて、地元住民であったり、テスラオーナーなどさまざまな関係者を集めて、
そのギガファクトリー4の工場見学ツアーを開催してきたのです。
そして、その工場見学ツアーにおいて、テスラ側が、そのギガファクトリー4でまず生産する予定の、
ミッドサイズSUVであるモデルYに使用される、さまざまな最新技術を展示してきたということで、
特にその中でも話題となっているのが、テスラの最新型のバッテリーセルである4680セル、
および、そのバッテリーの車両への搭載方法となっています。
というのも、今回のギガファクトリー4で生産されるモデルYに関しては、
現在同じくモデルYを生産している、アメリカのフリーモント工場や、中国上海のギガファクトリー3で生産されている車両とは、
質的に全く異なる公算であり、
それが、その搭載バッテリーの種類であったり、バッテリーの搭載方法、
さらには、最新式の塗装技術が一気に採用される予定ですので、
特にモデルYの購入検討者にとっては、一体このドイツ製のモデルYが、
それ以外の工場で生産されるモデルYと、質的にどの程度異なるのかに非常に注目しているかとも思います。
したがって今回は、工場見学ツアーで明らかとなってきた、
ドイツ製モデルYで実際に採用される最新技術の詳細な解説、
および、実際にその最新テクノロジーを、我々日本人が一体いつ享受することができるのかに関する予測についてを、
一挙にまとめていきたいと思います。
バッテリーの巨大化でエネルギー密度アップへ
まずはじめに、ドイツ製モデルYの関する極めて重要なニュースであるのが、
テスラが昨年である2020年の9月に開催したバッテリーデイにおいて発表してきた、4680セルを採用する方針であるということで、
こちらは、現在存在しているバッテリーセルの種類を大きさ別に並べたもので、
特に真ん中の1865セル、そして左側の2170セル、そして今回の4680セルという、
テスラが採用してきたバッテリーセルの大きさを比較してみると、
その長さ、および太さが次第に大きくなっているということが、お分りいただけると思います。
それでは一体、セルを大きくすることによってどのようなメリットを得られるのかというと、
それは、バッテリーの出力やエネルギー密度を高めることができるわけで、
そもそもテスラが一貫して使用し続けている、円筒型のバッテリーセルの構造というのは、
正極材や負極材、そしてセパレーターなどが丸め込まれているわけですが、
つまり単純に考えても、太さや長さを大きくするということは、
その分だけ、1つのバッテリーセルに内包することのできる正極材や負極材の大きさも大きくなる、
つまりそれだけより多くのエネルギー量を溜め込みことができますので、
別に円筒型だけではなく、基本的にバッテリーセルについては、
大きければ大きいほど、より高密度で高性能なバッテリーセルになる、ということなのです。
バッテリーの巨大化に立ちはだかる「タブ」の存在
しかしながら、バッテリーセルを大きくするためには、さまざまな課題が存在するということが重要であり、
特に、バッテリーの冷却に大きな問題を抱えることを意味し、
というのも、バッテリーセルが電子のやり取りをする場合、このタブという部分からのみ電子をやり取りすることができるわけですが、
今回の4680セルのように、より大きいバッテリーセルを採用すると、
このバッテリーセルの展開図で示された長方形の正負極材が大きくなることを意味します。
そうなると、この正負極材のあらゆる箇所に存在している電子が、タブに移動するまでの距離が伸びることになり、
よって、電子の移動距離が長くなることによって、その分移動の際に発生する熱が多くなってしまい、
サイズの小さいバッテリーセルと比較しても、
より大量に発生する熱を、うまくマネージメントする必要に迫られるのです。
さらに悪いことというのが、バッテリーセルを太くしてしまうと、
その分内部で発生する熱に対する冷却が不十分になってしまう可能性が考えられ、
よって、特に電子のやり取りが活発となる急速充電において、
その発生する熱を抑制するために、ある程度出力を絞らざるを得なくなってしまう、
つまり、急速充電の時間が、より小さいセルと比較しても大幅にかかってしまう、という問題点が存在するのです。
タブレス構造で充電性能大幅改善!
したがって、今回の4680セルに関しては、
ただ単純にバッテリーを大きくしただけでなく、タブレス構造と呼ばれる、
少し触れた、電子のやり取りを行うタブを撤廃してしまい、
タブという電極部分を1か所にするのではなく、バッテリーセルの端の部分を全て電極構造にしてしまう、
というアプローチを採用してきたのです。
すると、今までであれば、タブめがけて電子が移動することによって、特に移動距離が増えてしまう大きいサイズのバッテリーセルについては、
より多く発熱してしまい、その熱による安全性の問題があったものの、
この展開図で言うところの、長辺部分をすべて電極化してしまうわけで、
よって、電子の移動距離がその分短く抑えることができますので、
その分電子の移動によって発生する熱を少なく抑えることにつながり、
結果として、より高い安全性を確保することができますので、
実際問題として、その急速充電にかかる時間についても、
タブを有する既存のバッテリーセルの構造よりも、圧倒的に充電時間を短縮することができる、というわけなのです。
ちなみに、この4680セルという、より大きいサイズのバッテリーセルを採用することができたおかげで、
なんと6倍もの、より大出力を発揮することができますので、
おそらくそのパフォーマンス性能についても、
現状のバッテリーセルよりも圧倒的なパワーを手に入れることができるでしょうし、
さらに発生する熱も、タブレス構造のおかげでより低減することができますので、
まさにハイパフォーマンスカーへの使用用途にはもってこいのバッテリーセルと言えるでしょう。
タブレスの本丸はコスト低減にあり
しかしながら、今回の4680セルの導入のキモというのは、
ただそのような、今までのバッテリーよりも質が高くなるという点ではなく、
その圧倒的な量産コスト低減であるということで、
そもそも先ほど解説した、電極とつながっているタブに関しては、
非常に小さく薄い構造上、より慎重に製造を行う必要があり、
その生産ラインのスピードが遅くなってしまうという弱点があり、
そのタブの生産によって、バッテリーセル全体の生産効率が左右されてしまうという問題が存在しているのです。
したがって、タブを撤廃するというタブレス構造の採用というのは、
そのバッテリーセルの大量生産という観点でも、強力な強みとなり得るという点であり、
実際に、1つの生産ラインで生産できるバッテリーセルが、最大で20GWhと、
その生産キャパシティは、通常の7倍にまで向上するという、
何れにしても、より効率的に大量生産を目指しているテスラにとって、
この手間のかかるタブを生産する工程を削減できるという点は極めて重要なポイント、
もはや6倍もの高出力であったり、16%もの電気自動車における航続距離の改善というメリットよりも大きいと、感じてさえいるのかもしれません。
そもそもモジュールもパックもいらなくない?
次に注目すべき、ドイツ製モデルYに採用される新技術というのが、
その4680セルを搭載する、バッテリーの搭載方法となっていて、
そもそも、電気自動車におけるバッテリーの搭載方法というのは、まずは最小単位であるバッテリーセルが存在し、
そのバッテリーセルをいくつかまとめモジュールという中間単位を構成し、
そして、そのモジュールをいくつか組み合わせることによって、最終的なバッテリーパックを構成しています。
元々は、電気自動車用のバッテリーというのは極めて繊細であったわけで、仮にバッテリーセルの不良が発生してしまうと、
その1ののバッテリーセルのせいで、バッテリーパック全体を交換しなければならなくなってしまうわけですが、
それを防ぐために、中間単位であるモジュールを挟むことによって、
バッテリーパック全体を交換せずとも、モジュールだけ交換すれば済むという方法を採用し、
実際問題としてテスラに関しても、モジュールの交換作業という形で、すでに多くの修復作業の実績がありますし、
それこそ現在大問題へと発展してしまっている、アメリカ最大のGMの電気自動車であるBoltに関しても、
欠陥が見つかったバッテリーセルを交換するために、該当部分のモジュールのみを交換するという対応を取っていますので、
コストが莫大となってしまう、バッテリーパック全体の交換を防ぐことができてはいます。
しかしながら現状では、そのようなバッテリーセルの欠陥が非常に少なくなってもきましたので、
わざわざ中間単位であるモジュールを構成する必要性がなくなり、
例えば私の所有している中国製のモデル3スタンダードレンジ+に関しては、
中間単位であるモジュールを撤廃し、バッテリーセルを直接バッテリーパック内に敷き詰めるという、
いわゆるCell to Packという最新技術を採用することで、
そのモジュールがない分だけ、より多くのバッテリーセルを敷き詰めることができる、
つまり、より電気自動車における航続距離を、伸ばすことに成功するのです。
バッテリー搭載方法も業界最先端
そして、そのCell to Packからさらに一歩進めてきた最新テクノロジーというのが、
もはや最終単位であるバッテリーパックという単位すらも構成せずに、バッテリーセルを車体構造の一部として構成してしまうという、
いわゆるCell to Chassisに近しいバッテリーの搭載方法が、
いよいよドイツ製モデルYにおいても採用される予定であるということで、
先ほどのCell to Packと同様に、やはりバッテリーパックを構成しないことによって、
さらに多くのバッテリーセルを詰め込むことができますので、
その分電気自動車における航続距離を伸ばすことにつながります。
さらに、無駄な中間単位が存在しないことによって、
その分だけ重量物であるバッテリーセルを車体中心部に、より集中的に配置することができる、
つまり、重心点がさらに車体中心部に集まることを意味しますので、
とにかく車両横転のリスクなどを、極めて抑制することにつながるばかりか、
車両の旋回能力などのパフォーマンス性能もさらに向上するわけですので、
安全性と運動性能という、通常であれば両立しにくい要素を、
今回のドイツ製モデルYから採用される、車体一体型構造を採用することによって、
極めて高い次元で両立させることができる、ということなのです。
ギガキャスティングは業界の常識を一変させます
また、ドイツ製モデルYに関しては、
そのバッテリーセルを挟む、車体のボディ鋳造についても最新テクノロジーを導入し、
それがギガキャスティングと呼ばれる、車体ボディの一体成型、
つまり、フロント側のボディのパーツ、およびリア側のボディパーツを、何か溶接することなく、
たったの1つのパーツとして完成させることができるのです。
したがって、このギガキャスティングを導入することによって、
今まででは数十、もしくは数百もの細かいパーツを組み合わせて構成するために、
それに応じて必要となる、さらなる溶接部品であったり、溶接ロボット、もちろん人の手も必要になるわけで、
さらに、たくさんのパーツを組み合わせて構成しようとすれば、やはりどうしてもその品質は落ちるわけで、
特にテスラに関しては品質が高くないという弱点がありますので、
今回のような最新テクノロジーを導入するというテクノロジーによる問題解決手法を、
一貫して採用していることがお分かりいただけるのではないでしょうか?
そして、この一体成型されたフロントとリア側のパーツ、
そして、今回新採用される4680セルという3つのパートを組み合わせるだけで、
電気自動車の基本部分であるシャシーが完成してしまうという、
想像しただけで、極めてシンプルでありながら、
電気自動車によって、今までの人間の仕事が急速になくなっていくという現実も、容易にイメージできてしまうと思います。
新色「クリムゾンレッド」登場へ
そして最後に、ドイツ製モデルYに採用される新技術として注目すべきなのが、その塗装方法となっていて、
実は今回のドイツのギガファクトリー4においては、中国やアメリカの工場とは異なる最新の塗装技術を採用し、
特に、イタリアのゲイコタイキ社という企業とタッグを組んできています。
ちなみにですが、このゲイコタイキ社というのは、日本の塗装メーカーでもある大氣社の合弁会社でもあり、
実は日本の塗装技術が採用されているということにもなるのですが、
特に注目されているのが、新たなカラーバリエーションが追加されるということで、
特に今回の工場見学ツアーの際に目撃されているのが、
ディープブルーと呼べるような、現状のメタリックブルーというカラーリングとは、
また異なる種類の青系の配色であり、
そして、個人的に気になるのが、
クリムゾンレッドと呼ばれるであろう、ワインレッド系の配色であり、
実はこのワインレッド系のカラーリングについては、
すでにイーロンマスク自身も以前から複数回にわたって、その存在を匂わせてきています。
さらに、以前スペースXの本社の取締役専用の駐車スペースに置いて、
そのクリムゾンレッドと思しきモデルSが駐車していたという目撃情報もあり、
何れにしても、ドイツ製モデルYに関しては、
ゲイコタイキ社とのタッグによって、元々の弱みであるとされていた、その塗装品質の抜本的な改善に乗り出し、
さらに、現状のカラーリングとは異なる追加のカラーリングがラインナップされる可能性が高い、ということですね。
ドイツ製モデルY2.0を日本で買えるのは、ズバリ2024年?
何れにしてもこのように、
イーロンマスク曰く、いよいよ11月中に生産をスタート、そして12月中には納車スタートを迎える、ドイツ製のモデルYの登場によって、
特にお膝元でもあるドイツを中心とするヨーロッパ市場の販売台数が跳ね上がる、
さらに、現地生産によって、その車両価格も大幅にカットしてくる可能性がありますので、
その販売台数の変遷にも期待することができそうです。
ただし、現在多くのメディアで散見されている情報で、まだ確定していない重要な事実というのが、
今回のドイツベルリンのギガファクトリー4で生産されるモデルYについては、
初めから4680セルを採用するとは発表されていないのにも関わらず、
なぜか11月から生産されるモデルYから、4680セルが採用されるという情報であり、
こちらはイーロンマスク曰く、ドイツ製については、今のところ4680セルをギガファクトリー4で生産スタートしないどころか、
アメリカ国内で試験的に生産されている4680セルを輸入して生産せずに、
中国からバッテリーを輸入するという方針を、現状では示し、
その方針が確定した場合、
ギガファクトリー4における4680セルの生産は、2022年末ごろに本格化するとも発表している、
要するに、実際にドイツ製モデルYに4680セルを搭載してくるのは、
来年の後半ごろになるのではないかと、
推測することができそうです。
したがって、イーロンマスク自身も説明していたように、
実際にその4680セルをはじめとする最新テクノロジーを、そのほかの工場にも導入するのは、
本格操業してから2-3年後というタイムスパンとなる、
つまり、我々である日本市場向けの車両が生産される中国上海のギガファクトリー3において、
4680セルなどの最新テクノロジーに、順次リプレイスされていくのは、
おそらく早くても、2024年ごろとなるのではないか、
したがって、我々日本市場で、4680セル搭載のモデルYやモデル3などが走り始めるのは、早くても2024年以降、
裏を返せば、今モデルYの購入を検討している方で、
4680セルが採用された車種まで購入を待ちたいとチキる必要は全くないということであり、
欲しいと思った時が買い時、モデルYの注文がスタートしたら、すぐにポチってしまい、
4680セルの導入が近づくまでに収入を上げて、
その4680セルをはじめとする最新テクノロジーがふんだんに盛り込まれた、
モデルY2.0の発売と同時に、新たに買い換えてしまうことを強くお勧めしたいと思います。
From: Tesla
Author: EVネイティブ
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