日本の公共の充電器の管理を一手に引き受けるe-Mobility Powerのトップである、四ツ柳社長に対するインタビュー記事が報道され、
今後の電気自動車用の急速充電器設置に対するビジョンが改めて示されましたが、
そのインタビュー記事において判明した新事実について、果たしてこのe-Mobility Powerによる充電インフラ網がどれだけ実用的で有り、信用に値するのかに関する本チャンネル独自の考えを徹底的に解説します。
e-Mobility Powerの最新情報が判明!
まず、今回取り上げたいe-Mobility Powerに関してですが、
こちらは、2021年の4月から正式に発足した、日本の公共の充電器を一手に管理する日本最大の充電器管理運営企業となっていて、
元々はNCSという充電器管理運営企業が存在し、
こちらは元々2014年に、
トヨタ・日産・ホンダ・そして三菱という4つの自動車メーカーが中心となって立ち上げた充電サービス会社であったわけですが、
その後、東京電力と中部電力という電力会社が、その出資比率を大きく占める形で、その経営に参画してきた、
という流れがありました。
そして、いよいよ今年である2021年の4月からは、そのNCSという今までの充電サービス会社が終了し、
その事業を引き継ぐ形で、e-Mobility Powerという充電サービスプロバイダーが立ち上がった、という形となったわけなのです。
しかしながら、こちらは後で詳細に取り上げていきたいとは思いますが、
そのe-Mobility Powerの設立当時の出資構成というのは、
東京電力が6割、そして中部電力が4割という、
要するに、元々自動車メーカーが主体となって運営していた日本の公共の充電器管理運営企業が、
いつの間にか、電力会社がその主導権を完全に制圧してきた格好となり、
確かにその後、少し遅れて、そのトヨタ・日産・ホンダ・そして三菱という4社も追加で出資する形とはなりましたが、
その出資比率というのは、各自動車メーカーそれぞれ1.9%と、
その取締役の構成を見れば一目瞭然とはなりますが、
その全てが、東京電力と中部電力という電力会社から出向してきている人物となりますので、
はたから見てしまうと、
日本の公共の充電器の管理会社が、自動車メーカーから電力会社に完全移行した、
今後は電力会社が主導して、日本の公共の急速充電インフラを設置していこうという意志がはっきりしてきた、ということなのです。
そして、日本の電気自動車の最新動向をウォッチし続けている本メディアにおいては、
こちらのe-Mobility Powerの最新動向については、頻度高くアップデートしているわけですが、
皆さんもご存知の通り、その実際に設置していく予定である最新型の急速充電器のスペック、その設置ロケーション、
ならびに、その設置タイムラインなどについて、非常に懐疑的な立場をとり、
その総合的な設置プランについて、やや否定的な立場で論じてきた、という背景があります。
日本最大EVメディアが日本最大充電プロバイダーにインタビュー
そして、そのような背景において、今回新たに明らかになってきたことというのが、
その日本最大の充電サービスプロバイダーであるe-Mobility Powerのトップを務める四ツ柳社長に対する独占インタビューを、
これまた日本最大級の電気自動車専門メディアであるEVsmartが行ってきたということで、
こちらに関しては、基本的には私が以前に解説している内容とかなり重複するところがありますが、
そのインタビュー記事の中において、
おそらく新たに明らかになってきた、日本の公共の充電インフラに関する新事実について、
その実用性、およびそれを踏まえた上で、
果たして今後発売される日産アリアやトヨタbZ4Xなどの、日本メーカーの高性能電気自動車を、
ストレスなく運用することができるのかについて、
今後のe-Mobility Powerにどれほど期待することができるのかについての最新アップデートバージョンを、改めてまとめていきたいと思います。
まずは、今後に期待することのできそうな最新情報を取り上げていきたいと思いますが、
今後高速道路上に設置していくとアナウンスしていた、最大6ストールを併設した急速充電ステーションを、
予定通り、間も無く運用をスタートするという朗報となっていて、
まずこちらに関しては、車好きの方の聖地として知られている、首都高速大黒パーキングエリアに、
6つもの充電ストールが設置された最新の急速充電ステーションを、
今年である2021年の秋頃にも設置するというアナウンスを、すでに発表していたわけですが、
その運用開始のタイムラインが計画と変わらないということは、
つまり遅くとも来月である11月中には、実際の運用がスタートするというタイムラインなのではないかと推測できそうですし、
さらに、充電インフラ事業に対する補助金の申請状況を確認してみると、
8月24日時点において、すでに首都高速大黒パーキングエリアに設置される充電設備への補助金交付が許可されてもいます。
したがって、こちらのe-Mobility Power初の新型急速充電ステーション設置の順調なタイムラインは賞賛に値すると思いますし、
実際に設置が完了したら、
おそらくですが、初設置ということもあり、事前に何かしらのアナウンスがあるかとも思いますので、
予定が合えば、是非ともそのオープニングを確認したいと思いますし、
もしも可能であれば、その新型急速充電ステーションの最大充電出力である90kWを許容することのできる電気自動車である、
メルセデスEQAであったり、ポルシェタイカンを使って、実証実験をしてみたいと思います。
様々なスペックを備えた充電器が登場
次に取り上げていきた新事実というのが、
その大黒パーキングエリアへの設置を皮切りとする新型急速充電ステーションの、トータルの最大充電出力をさらに引き上げ、
300kW程度にまで大幅に性能アップすることができる冗長性を兼ね備えているという点であり、
そもそも論として、この新型急速充電ステーションの原理を改めて簡単に紹介していくと、
そもそも現在日本に設置されている充電器というのは、充電器が一台の急速充電ステーションであり、
つまり、その充電スポットには、充電器が一台しか設置されていないというケースが大半であります。
ただし、最近になって設置が進められているのが、
一つの充電器に2つの充電ストールを設置することによって、
1つの充電器でありながらも、電気自動車を二台同時に充電することができるという充電器の種類であり、
特に1つの充電ステーションに一台しか充電器が設置できなかった場合、充電待ちが発生してしまうリスクが高く、
よって、充電ストールを2つ設置することによって、
その充電待ちのリスクを大幅に低減することができる、
したがって、電気自動車オーナーの充電に対する利便性が大幅に向上するのです。
それでは、今回のe-Mobility Powerの新型充電ステーションについてですが、
こちらは一台の充電器に1つのストールしか設置されていないものの、
その充電器を、なんと6基も併設することによって、
まさに日本最大級の充電ステーションということになりますので、
この数年間というタイムスパンで見ても、充電渋滞が発生するリスクは極めて抑制することができ、
まさに、この1つの充電ステーションで、同時に充電できる電気自動車の数を大幅に増やしてきたという観点においては、
極めて有用なスペックを達成してきている一方で、
問題は、その1つの充電ステーションあたりの充電出力の発揮能力が、
合計200kWという出力に制限されるという点であるのです。
30分の充電でアリアの4割も充電することができません
というのも、この6つの充電器を合計して200kWという合計出力の場合、
仮に半分の3台分の電気自動車が同時に充電をスタートした場合、
その1基あたりの充電出力は最大でも66kW程度と、
例えば、いよいよ納車が数ヶ月後に迫っている日産アリアの最大充電許容出力というのは130kWであるわけですので、
そのアリアのたったの半分程度の充電性能しか発揮することのできないスペックである、ということなのです。
ただし、この数年間という短期的なスパンで言えば、
おそらく年末年始というような超繁忙期でもない限り、三台が同時に充電する確率も低いわけですので、
うまくコストと需要のバランスを図ってきた、というようにも見えるわけですが、
それでは、アリアが一台で充電すれば、最大130kWというマックスの充電出力を許容することができるのかと言えば、
そうではないという点が極めてクリティカルな部分であるわけで、
こちらもすでに解説してはいる、極めて残念な部分ではありますが、
確かに6基合計の出力は200kWである一方で、
その1基あたりの充電出力は最大で90kW、
しかもさらに駄目押しで付け加えれば、
その90kWという出力すら、充電開始15分しか発揮できず、その後は最大50kWにまで低下する、
つまり、アリアを使って、今回の新型急速充電ステーションで、
ベストコンディションで制限時間である30分間充電したとしても、35kWh程度の充電量となります。
要するに、アリアのエントリーグレードで一回30分充電したとしても、
充電残量にして、理論値で55%程度、
実際は50%程度がいいところでしょうから、
30分間充電しても、エントリーグレードでたったの50%しか回復させることができない、
ましてや、アリアのロングレンジグレードであれば、さらに少ない、
理論値でたったの40%程度、実際は30%後半程度しか回復させることができないとイメージしていただければ、
今回のe-Mobility Powerの公共の急速充電器を使用して、ストレスフリーで長距離を移動することは、
極めて厳しいと言わざるを得ない、ということなのです。
ステーションあたりの充電出力アップは比較的容易
しかしながら、今回e-Mobility Powerの四ツ柳社長が、追加でアナウンスしてきたのが、
高出力対応のEVが増えて200kWで足りなくなれば、受電設備を300kWに上げるといったことは、新規に設置することを思えば、比較的容易に実現できます
という発言内容であり、
つまり、仮に今後の利用状況がアップ、および要望が増えてくれば、
その1ステーションあたりの合計出力を最大300kWと、
現状のスペック上限である200kWの、実に1.5倍も向上させることができる、ということなのです。
したがって、先ほど例を挙げた、電気自動車が三台同時に充電を開始したとしても、
その3台とも、1基あたりの最大出力である90kWという充電出力を許容することができるわけで、
よって、この200kWという数値自体は、
日産アリアのような、今後一気に増えてくる、より高性能な電気自動車にも対応できるように、
e-Mobility Power側も冗長性を担保してきた格好となり、一定程度評価することができる一方で、
残念ながら、その1基あたりの最大出力は90kW止まりであることには変わらない、
故に、アリアを30分間充電したとしても、
日産がアナウンスしている充電性能のカタログスペックよりも、全然充電することができないということには、全く変わらない、
ということなのです。
全てに6基設置されるとは限らなかった
それでは反対に、四ツ柳社長の発言から判明した、その新型急速充電ステーションに関する追加の情報、
特に、期待を下回る残念な新事実についてですが、
設置するサービスエリアによっては、その設置台数が、最大でも4基に留まる事があるという事で、
こちらに関しては、
大型のサービスエリアについては、当然のように6基設置されるものだと思っていましたし、
それ以外の利用率の高いパーキングエリアは、
冒頭説明した、1つの充電器に2つのストールを併設した充電器を設置するとしていますので、
当初のアナウンスよりもややトーンダウンしてきた格好とはなりそうです。
そして、今回判明した新事実をもとに、
今後の日本の公共の急速充電ステーションのスタンダードとなる、
今回の新型急速充電ステーションに対する本メディア独自の評価に関してですが、
結論から申し上げれば、以前から一貫して表明している、
電気自動車を実用的に運用することのできるスペックには届いていないという考えには、全く変化がない、
ということで、
やはりアリアを例にイメージすれば極めてシンプルで、
残念ですが、いくら1ステーションあたりの最大出力を向上させたとしても、
結局一回の充電で35kWh、実用値で30kWhちょいしか充電することが変わらないのであれば、
やはり長距離の運転においては、車側の充電時間が、人間側の休憩時間を上回ってしまう、
要するに、電気自動車の充電のためだけに、一般的な運転スタイルを有する人間でも、
待機する時間が発生してしまう、ということなのです。
EV充電のために待つことを許容させる日本最大の充電サービス会社
さらに、その1基あたりの最大90kWという充電出力制限だけでなく、その充電時間についても、
日本のガラパゴス基準である一回30分という制約には、一切言及してこなかったということであり、
つまり、今回の四ツ柳社長率いるe-Mobility Power側としては、
一回30分の充電、30kWhちょい程度の電力量を回復することができれば、
電気自動車をストレスなく運用することは可能であると考えている、
ということと同義であり、
故に、人間の休憩時間を上回る充電時間となってしまっても、
別に日本最大の公共の急速充電インフラ管理企業としては、問題ない、
少なくとも、そのような急速充電器を、8-10年先を見据えた先行投資的な意味合いで、設置を進めていくと考えている、ということなのです。
ちなみに余談とはなりますが、
このようなスペックである今回の新型急速充電ステーションについて、
今回のインタビュー記事を掲載しているEVsmartによれば、
現状における市販EVの大半は最大50kWでしか充電できないし、おおむね、納得できる指標だと思います。
と結論づけ、一定程度納得するという論調を取っていますが、
本メディアにおいては、全く反対の立場をとっていて、
確かに2021年現時点において、50kW以上の充電出力を許容可能な電気自動車というのは、
日産リーフe+、ポルシェタイカン、およびメルセデスEQA、
また非公式ではなりますが、本メディアにおける独自の検証結果から、プジョーe-208、e-2008、そして、DS3クロスバックE-TENSEという3車種のみであり、
確かにおっしゃる通りのように見えます。
しかしながら、来年である2022年というのは、その50kW以上の出力、特に90kWを30分間持続することのできるような、
例えば、アウディe-tron GT、Q4 e-tron、メルセデスEQS、BMW iX、i4、
日本メーカーからも日産アリア、
さらに非公式ではありながらも、おそらくですがフォルクスワーゲンID.4、韓国ヒョンデIONIQ5、
日本メーカーからも、トヨタbZ4X、スバルSolterraなど、
もちろん今後も追加でアナウンスされたり、2023年はさらに車種が増えるわけですが、
とにかく一気に車種が増えてくるわけであり、
そして最も大切なポイントであるのが、
この充電器を今年である2021年秋以降、8-10年先を見据えた先行投資的に設置を行うという価値観を有している、
という点であるのです。
要するに、日本最大の電気自動車メディアであるEVsmartも、
日本最大の公共の充電器管理運営企業であるe-Mobility Power側も、
この8-10年先の先行投資については、
まあ許容すべき範囲であると捉えている、という点であり、
残念ながら、この点については、私は全く異なる見解をとっている、
ということにはなりそうです。
日本の全自動車メーカー、聞け
このように、おそらくですが日本で最も詳しく、
日本最大の、将来の公共の急速充電インフラを管理するe-Mobility Powerの最新動向についてをウォッチしてきた本メディアではありますが、
その最新情報を持ってしても、やはり今後8-10年というロングスパンで、
その公共の急速充電器に過度な期待をすることはできない、
と結論づけることがでくそうです。
だからこそ、やはり冒頭あえて説明していた通り、
そのe-Mobility Powerの筆頭株主、そしてその取締役という上層部たちが、
一体どのようなバッググラウンドを持ち合わせているのかをしっかりと押さえた上で、
こちらも、そろそろ皆さん耳にタコができ始めている頃かとは思いますが、
やはり、電力会社などではなく、電気自動車を本気で売りたい自動車メーカーが主体となって、
充電インフラ、特に今回の高速道路上に設置する急速充電ネットワークの設置を進めていかなければ、
電気自動車ユーザーにとって、より利便性が高く、実用的な充電インフラが整うことは絶対にないという真理を、
認識しなければならないのではないでしょうか?
From: EVsmart
Author: EVネイティブ
コメント
はじめまして、EV徹底研究というブログを始めたものです。
e-Mobility Powerのインフラ整備計画の問題点
https://ev-th-research.com/problems_with_e_mobility_powers_plan/
という私の記事の中で、この記事を紹介させていただきたいのですが、よろしいでしょうか。
よろしくお願いします。
名前をtipo159に変更したいのですが、どうしたらよいでしょうか?