現在イギリス国内において大問題となってしまっているガソリン不足が長期化し、社会問題となっている一方で、
電気自動車を所有した場合はどのような恩恵を受けることができるのか、
さらには、災害国家である我々日本市場にとっても、このガソリン不足問題というのは対岸の火事ではないという問題について、
実際に日本で発生した災害を例にあげながら、その問題点、および電気自動車のインフラとの差を徹底的に解説します。
ガソリン枯渇で全然給油ができない?
まず、今回のイギリス市場で今何が起こってしまっているのかに関してですが、
今月である9月の後半にかけて、ガソリンスタンドにおけるガソリンやディーゼルという需要に対して、供給が全く追いついておらず、
そのガソリン車やディーゼル車が、ガソリンスタンドに長蛇の列を作って、その燃料補給の順番待ちをしている、といった状況となっているのです。
しかしながら、問題の本質というのは、石油各社自体はガソリンは不足していないと主張し、
十分な供給量があるので問題はないと主張している点であり、
それではなぜガソリンスタンドにガソリンが行き渡っていないのかというと、
なんと、その石油会社で作られたガソリンを、実際のガソリンスタンドにまで輸送する輸送トラックの運転手不足によるものであった、ということで、
つまり、ガソリンの生産は十分に追いついているものの、
その作ったガソリンを、ガソリン車オーナーの元へ届けることができていない、ということなのです。
ちなみにですが、このガソリンを輸送するドライバー不足の問題の理由というのは、
いわゆるBrexit、およびCovid-19によって、それまでイギリス国内でトラックドライバーとして働いていた運転手たちが、
母国に戻ってしまっているという背景があり、
この社会的な背景も一つの要因となって、現在政府に対して批判が高まってしまってもいる、というわけなのです。
したがって、本質的な供給不足ということではないですので、
政府や石油会社は、その需要と供給のバランスは徐々に安定していくと説明していますが、
現状までに、いったいいつ頃までに、十分な数のトラックドライバーを確保し、その需要過多という状況が改善され、
ガソリンスタンドに並ばなくて済むのかという、具体的なタイムラインは示されていない状況ともなっています。
ガソリンスタンドは最盛期の半分以下という衝撃
つまり、今回のイギリス市場だけでなく、度々発生するガソリンの需要と供給のバランスの不均衡によって、
突如とした値上げが敢行されたりという、一消費者にとっては生活に直結するガソリン代の高騰だけでなく、
それが行き過ぎてしまうと、ガソリンの供給量が大幅に低下し、そのガソリンを補給するのにも一苦労、
しかも、ガソリン自体の生成量は十分であったとしても、
今後の人口減少などによってさらに進んでいく、ガソリンを配送するドライバーの減少によっても、
ガソリンを補給するのに苦労するケースが、今後も定期的に訪れる可能性があるのです。
ここまでは、イギリス市場で現在発生してしまっているガソリン不足によるガソリンスタンドの給油待ち問題についてを解説しましたが、
ここまでの解説というのは、一般のメディアが行う当たり障りのない解説であると思いますので、
ここからは、今回のニュースを電気自動車の普及という切り口で、さらに深く考察していきたいということで、
まずどうしても指摘しなければならないことというのが、
そもそものガソリンスタンドのあり方が急速に変化していくという点であり、
当たり前のことですが、今後電気自動車が普及すればするほど、ガソリンの給油を必要としない車両が相対的に増えていく、
つまり、既存のガソリンスタンドの数もそれに合わせて減っていくことはまず間違い無いわけで、
それでは、そもそも現状のガソリンスタンドの数はどれほどであるのかを確認してみると、
その数は、2019年度において、3万台を割り込んでしまっている数に留まってしまっているのです。
しかしながら、別にそれでも十分な数は設置されているように見受けられるのですが、
それでは、この20年間というスパンにおいて、いったいガソリンスタンドの数がどれほど増減しているのかを見てみると、
一目瞭然でありますが、減少の一途をたどっているわけで、
最盛期であった1990年代中盤に記録した6万ヶ所以上というガソリンスタンドの数から、すでに半分以下にまで減ってしまっている、ということなのです。
そして、その減少し始めた時期である1990年代中盤にいったい何が起こってしまったのかというと、
実は、その1997年に日本トップの自動車メーカーであるトヨタの、
世界で初めて量産したハイブリッド車の初代プリウスが発売されていたということで、
実際に、その初代プリウスが発売されて以降、トヨタに限らずそのほかの日本メーカー、
さらには世界の自動車メーカーにも、エコカーブームを浸透させることに成功したわけですが、
もちろん、エコであるということは、つまりそれだけ燃費性能が高くなる、
よって、同じ航続距離を走っていても使用する燃料は少なくなる、
したがって、相対的に減少していく燃料の総量にしたがって、
ガソリンスタンドも次々を姿を消していった、ということなのです。
軽自動車EVの登場=地方のガソスタへのトドメ
それでは、2021年以降、いったいこのガソリンスタンドの数はどのように推移していくのかに関してですが、
こちらは間違いなく、さらに減少の一途をたどるであろうと推測していて、
まず現在世界的な流れとして、ガソリン車の燃費規制がさらに厳しくなっていくことは既定路線でありますので、
より燃費性能を高めていかなければならない、つまり、より燃料を補給する回数が減っていく、
したがって、この20年間で続いてきたガソリンスタンドが減少してきた理由が、まだまだ続いていってしまうことになるのです。
さらに、それに付け加えて、世界では、ガソリンを一切給油する必要のない電気自動車の販売台数が急速に増えているわけであり、
つまり、ハイブリッド車のさらなる燃費性能の向上だけにとどまらず、
電気自動車の普及という二重苦が、今後のガソリンスタンドの経営に待ち受けているということになりますし、
さらにその電気自動車の中でも特に、今後数年以内で、日産と三菱を皮切りに、
ホンダ、さらにはトヨタとダイハツ、スズキも発売をアナウンスしている、
軽自動車セグメントの電気自動車が集結するという点が、
さらに、そのガソリンスタンドに追い打ちをかけるのではないかと、推測することができるのです。
というのも、一家に三台も四台も車を所有するような地方に住んでいる方にとって、軽自動車というのは日常の足であり、
よって、仮に航続距離が200kmも走れなかったとしても、セカンドカーとして必要十分なスペックを達成していることになるだけでなく、
特にセカンドカーとして、どれだけランニングコストを抑えるのかは、家計のやりくりにおいても極めて重要であり、
電気自動車であれば、そのランニングコストを、ガソリン車よりも安く済ませることもできるのです。
しかしながら、そのセカンドカーとしての電気自動車の運用における最大のメリットというのは、家で充電をすることができるという点であり、
地方に住んでいる方の多くは一軒家に住んでいるケースが大半でしょうから、自宅に充電器を設置することは容易いですし、
それであれば、帰宅後にプラグインして、翌朝の出発時には満タンで出発という運用方法となり、
特に今回指摘している、ガソリンスタンドの数が急速に減り始めている地方においては、
わざわざ家から離れたガソリンスタンドに給油しにいくなんて、無駄な時間を使わずに、
実質の充電時間がゼロの自宅充電という運用方法、しかも電気代はガソリン代よりも格安で済むという、
何れにしても、様々な面で恩恵を享受することができる、
もはやセカンドカーとしては、ガソリン車よりも利便性が高くなる、
今後のガソリンスタンドの減少とともに、その利便性の高さはさらに加速度をつけて向上していく、ということなのです。
したがって、この数年以内に日本メーカー各社から出揃う、軽自動車セグメントの電気自動車、
特に、トヨタとダイハツという軽自動車トップメーカーが軽自動車EVを発売し始めれば、
もはや経済性・利便性・そして安心感という観点で、
セカンドカーとして電気自動車を選択するというのが自然なことになっていくと予測することができ、
そうなれば、もはや地方において、現状ただでさえ経営状態が厳しく採算が合わず、
地方自治体が補助金を入れてまで運営しているガソリンスタンドというのは、
本当に消滅に向かっていくのではないか、ということですね。
ハイブリッド車の普及でガソスタの数はさらに減少へ
このように、ガソリンスタンドにおいて、我々がただでさえ高いガソリンを給油するということが今後ますます厳しくなっていく、
特にこの数年間において、最初に顕著となってくるのが、地方のガソリンスタンドであり、
その上、軽自動車EVの普及によって、地方においてはガソリンを気兼ねなく給油するという環境が失われていく、
少なくとも、そのガソリン軽自動車の利便性は極めて悪くなっていく、と推測することができるのです。
ちなみにですが、もともと取り上げていたイギリス市場のガソリンスタンドの普及状況、および電気自動車の普及状況を簡単に確認してみると、
まずガソリンスタンドの数というのは、2020年度において8380箇所存在するそうですが、
やはり日本市場と全く同様に、この20年間で、
最盛期であった13000箇所以上という数値から、大幅に減っていることが見て取れ、
確かに近年においては、その減少率は低くなっていますので、今後も同じ傾向が続くのではないかと思われた方もいるかもしれませんが、
そもそも今回のイギリス市場だけでなく、ヨーロッパ市場全体として、ハイブリッド車の販売台数はそれほど高くなく、
直近である8月度のハイブリッド車の販売割合は、たったの11.8%、
マイルドハイブリッド車を含めると、確かに30%を超えてくるくらいであり、
しかもこの数年間で、ようやくその販売割合が上がってきている状況となります。
逆に、我々日本市場はというと、ハイブリッド車の販売割合は45.7%と、イギリスの1.5倍もの比率を達成しながら、
やはりトヨタを筆頭に、日本メーカー各社が世界に先駆けてハイブリッド車を販売を早くから成功させ、
その日本国内に走っている車両全体における比率でいえば、イギリスと比較しても、おそらく倍、
もしくは倍以上のハイブリッド比率を達成しているものと考えられます。
ガソリン不足とともにEVへの注目が急増
また、その電気自動車の販売台数についても見ていくと、
直近の8月度における電気自動車の販売台数は12437台と、
確かにその販売台数は、直近の月と比較してもかなり落ち込んでしまっているように見受けられますが、
その新車販売全体に占める割合である電動化率という指標を見てみると、
なんと今年に入ってから最高の電動化率である18.3%、
つまり、イギリス市場で売られている新車全体の5台に1台近くが、すでに電気自動車となってしまっているとイメージしていただければ、
先ほどのハイブリッド車の販売シェアの増加とともに、ガソリン消費量が今後加速度的に減少していく、
要するに、我々日本市場と全く同様に、
現状微減状態で留まっているガソリンスタンドの数が、さらに加速度をつけて減少し始めるの時間の問題である、と推測することもできそうです。
このように、現在世界的に減少するガソリン消費量、そしてハイブリッド車や電気自動車のさらなる増加によって、
今後我々が気兼ねなく使えると思っていたガソリンスタンドという、燃料補給のためのインフラは減少していき、
我々ガソリン車を使用しているオーナーの利便性はさらに低下していく、
だからこそ、やはりこれまで通りガソリンを補給しなければならないハイブリッド車、それこそプラグインハイブリッド車を選択せずに、
完全な電気自動車を選択するようになる、
特に、今回のガソリンスタンドの長蛇の列という社会問題の一件以降、
電気自動車に関する検索数が、イギリス国内において、なんと衝撃の16倍にも伸びているという調査結果も明らかとなり、
実際にイギリスでは、その電動化率が急上昇している、ということなのです。
EVは災害時使い物にならない?
しかしながら、特に我々日本市場にフォーカスしてみると、そのガソリンスタンドについては、さらなる論点が存在し、
それが、特に我々日本市場においては無視することのできない、地震や台風などの災害リスクという点であり、
というのも、やはりこの点を取り上げて、我々日本市場のような災害国家においては、
停電のリスクが高いため、電気自動車を所有するのはリスクであるという主張が散見され、
確かに過去災害が発生した際は、必ずと言っていいほど、広範囲にわたって停電してしまっていますので、
確かに一見すると、その指摘は正しいかのように聞こえます。
しかしながら、ガソリン車のインフラと電気自動車のインフラが、災害によってそれぞれどのような影響を受けていたのかを、
2018年の9月6日未明の3時に発生した、北海道胆振東部地震において、それぞれ比較していきたいと思いますが、
まず、ガソリンスタンドの状況を見てみると、
経済産業省による当時の速報によれば、
9月11日の朝の時点において、北海道内にある1800ものスタンドのうち、1700のガソリンスタンドが営業を再開したということでありますので、
したがって、概ね4日程度で、9割のガソリンスタンドが営業を再開したということになります。
それでは、電気自動車を充電するための電気はどうであったのかというと、
地震発生後約50時間後で、全世帯の99%の電気が普及したということですので、
つまり、まずこの数値を見る限り、
電気自動車は災害に弱いと言われながらも、ガソリンスタンドの復旧よりも、明らかに早い段階で電気が普及している、
つまり、電気自動車のインフラの方が早く復旧していることが見て取れるのではないでしょうか?
電気自動車の真のポテンシャルを見くびるべからず
そして、ガソリンスタンドについては、さらに問題を指摘しなければならず、
そもそもガソリンスタンド自体が営業を再開したとしても、そのガソリン自体が枯渇してしまえば、結局ガソリンを給油することができず、
特に地震や台風などの災害が発生したあとというのは、交通に障害が発生している可能性も十分考えられますので、
ただ単純にガソリンスタンドが復活していても、本当にガソリンを給油することができるのかは、また別問題、
少なくとも、その給油のために長蛇の列を待たなければならないかもしれません。
ちなみに、その長蛇の列に関して付け加えれば、ガソリンスタンドに関しては、電動ポンプを使ってガソリンを組み上げていますので、
そもそも電気が普及しなければ、手動ポンプを使って組み上げるという極めて非効率な運用となる、
つまり、ガソリンを給油するためには、やはり電気の復旧はある程度必須である、ということなのです。
そしてもう一点、今度は電気自動車において付け加えるべきポイントが存在し、
それが、電気自動車の場合、自宅で充電することができるというメリットによって、
仮に自宅に太陽光パネルを設置している場合は、
家自体が倒壊しているような場合を除いて、周りと関係なく充電し続けることができますので、
やはり自宅で充電することのできるというメリットは、この災害時において真価を発揮する、ということなのです。
さらに駄目押ししてしまえば、50時間で99%回復するとは言っても、その復旧状況が示されたグラフを見てみると、
それこそ北海道地震については、地震発生24時間が経過すると、すでに50%程度の家庭で電気が復旧しているばかりか、
それ以外の台風による災害を見てみても、さらに早い停電発生24時間以内には、同じく5割程度の電力が復旧しているわけで、
つまり、仮に自分の住んでいる地域が停電状態であったとしても、
数十キロ圏内では、すでに電気が復旧していた、なんて状況も考えられますので、
したがってそれであれば、その近隣の地域に充電しに行き、
日産リーフなどの国産車では標準となっている、車から自宅へ電気を供給するというV2Home機能を使うことができれば、
停電中でありながら、今まで通り自宅で電気を使うこともできてしまいますので、
まさに、電気自動車とは、タイヤのついた蓄電池であるという、
その車を超えた使い方をできるという点で、むしろ災害時こそ、さらにポテンシャルを発揮するのではないか、ということですね。
災害国家こそ、積極的なEV導入を!
このように、現在イギリス市場で発生してしまっているガソリン供給不足問題によって、
ガソリン車を使用しているユーザーは、相当な不便を強いられているわけですが、
今後のガソリンスタンドの減少も相まって、
このような、ガソリンスタンドというインフラ面における利便性の低下は、今後さらに加速していくということ、
さらに、世間でよく言われている、電気自動車は災害時に弱いので、災害国家である日本では使い物にならないという指摘に関しても、
事実ベースで比較してみると、電気の復旧の方が、ガソリンスタンドの復旧よりも明らかに早いだけでなく、
電気自動車というのは、ただ道を走るだけでなく、
電気を貯めることができる蓄電池として、停電していない地域で充電して、その電気を自宅で使用することができるなど、
実は災害国家こそ、電気自動車を備えておくことが、より効果的な災害対策になり得るのではないでしょうか?
何れにしても、
今後もガソリン車のインフラであるガソリンスタンドというのは、加速度的に減っていくことは間違いありませんので、
今後さらに激甚化していく台風、そして地震などという災害とともに、
特にセカンドカーとして電気自動車を所有しておくというのは、
リスク管理という観点でも、非常に費用対効果の高い投資なのではないでしょうか?
From: BBC JAPAN(イギリスガソリン不足)、Response(ガソスタ復旧)、資源エネルギー庁(電気復旧)
Author: EVネイティブ
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