【トヨタ、EVオーナーを見捨てないで、、】トヨタの水素自動車のみの高速道路割引適用を画策か

トヨタ

トヨタが水素燃料電池車(FCEV)に関する最新の特許技術として、高速道路におけるETCゲート通過時に、特定の水素燃料電池車のみを優遇するシステムの特許を公開してきましたが、

この水素燃料電池車とともに、ゼロエミッションカー全体において有料道路の割引という施策は有効であるということについて、

ぜひともトヨタに期待したい、その特許を実現する上で改善してほしい唯一のポイントについて、その水素燃料電池車の実情にも触れながら徹底的に解説します。

世界初の量産FCEVを生産したトヨタ

まず、今回のトヨタの水素燃料電池車に対する取り組みに関してですが、

2014年に初めて水素燃料電池車であるミライを発売し、

そして、その水素燃料電池車を世界に普及させるというミッションを達成するために、

翌年である2015年には、そのトヨタが数々取得していた水素燃料電池車における重要な特許技術、

例えば、燃料電池システム制御に関する特許であったり、水素を貯蔵する高圧水素タンクに関する特許、

さらには水素ステーションに関する特許など、全部で5680件もの特許を無償で公開するなど、

ただ脱炭素社会の実現のために、未来に対する技術を開発するだけでなく、

その次世代技術をいかに世界に普及させていくために、特許を無償公開するなどの行動をとるという、

まさに日本が世界に誇る企業としての行動であると思いますし、こちらに関しては、非常に賞賛に値すると思います。

Toyota Mirai

そして、そのような背景において今回新たに明らかになってきたことというのが、

そのトヨタが、水素燃料電池車に関する興味深い新たな特許を公開してきたということで、

それが、水素燃料電池車を優遇する有料道路システムということで、

こちらのシステムについて簡単に説明すると、つまり、その有料道路を通行する車両が水素燃料電池車であるかどうかを判断した上で、

通行料金を決定することができるシステムということで、

要するに、水素燃料電池車かどうかをETCなどによって判別することで、その有料道路の料金を割安にする、ということなのです。

割引適用には空気清浄フィルターが必須

それでは、いったいどのようにシステム側が、その通行する車両を水素燃料電池車であることを見極めるのかというと、

「空気清浄効果を有するフィルタを介して、大気中の酸化剤ガスを取り込んで、発電を行う燃料電池車両である」という条件によって判別され、

その基準をクリアした車両が「空気清浄燃料電池車両」とカテゴライズされ、

その空気清浄燃料電池車両のみが、他の通行車両よりも割安な通行料金を適用することができる、という原理だそうです。

つまり、冒頭説明したような、ただ単純にゼロエミッションカーとしての水素燃料電池車すべてが、今回特許を取得したシステムによって割引の対象になるのではなく、

空気清浄効果を有するフィルタを介して発電する水素燃料電池車に限定してきている、

つまり今回の特許技術が、本当に有料道路において採用された場合はゼロエミッションカーでは足りず、

さらにその上の、いわゆるマイナスエミッションカーでなければならない、

少なくとも、今回特許を出願したトヨタはそのように考えている、ということなのです。

EV”ゼロエミッション”を超える”マイナスエミッション”とは

それでは、こちらのトヨタが提唱しているマイナスエミッションとはいったいなんなのかに関してですが、

実は昨年である2020年の12月から発売され始めた新型ミライに関しては、

新たな機能として今回の特許技術にも言及されている、空気清浄効果を有するフィルターを装着していて、

そもそもこの水素燃料電池車というのは、空気中の酸素と、水素タンクに充填されている水素とを反応させて、電気と水を生成するという原理であり、

要するに、酸素とともに空気を取り込むという動作が発生する、つまり、その原理を逆手にとって、

その空気の取り込み口に空気清浄フィルターを装着してしまうことによって、

例えばPM2.5であったりなどの大気汚染物質を吸着してしまい、

酸素を取り込んだ後に排出される空気が、取り込む前よりもクリーンとなっている、

故に、ただ単純に走行中にCO2などを排出しないゼロエミッションな車を超えて、マイナスエミッションな車を実現している、ということなのです。

From: JHFC

ただしこのように聞くと、水素燃料電池車のポテンシャルが高いように見える一方で、

そのトヨタの主張するマイナスエミッションカーという究極のエコカーの状態を達成するのには、

現状困難、個人的には実質不可能にも近いようなハードルが待ち受けているという現実も存在すると考えていて、

まず以前にも解説している通り、この水素燃料電池車というのは、

同じくゼロエミッションカーとして次世代車に分類されている電気自動車と比較しても、おおよそ2-3分の1程度のエネルギー効率しか、原理的に達成することができない

したがって、電気自動車を100km走行させる発電量で、水素燃料電池車はたったの30-40km程度しか走行させることができない、

故に、そもそも比較論として、同じく次世代車である電気自動車よりもより多量のエネルギーを使ってしまうので、

このエネルギー消費社会に待ったをかけるという世界的な流れの中において、エコカーと定義することが果たして正しいのかという問題が浮上してきてしまう、ということなのです。

水素燃料電池車のマイナスエミッションの達成は茨の道

しかしながら、それとともに重要なポイントというのが、

この水素燃料電池車を動かすための水素を生成するのに、現状大量のCO2を発生させてしまっているという、根本的な問題が存在するということで、

現状その日本で消費される水素はオーストラリアで生成されていますが、

その水素を生成するのに化石燃料を燃やして生成している、いわゆるグレー水素となっていますので、

そもそも現時点では、水素燃料電池車がマイナスエミッションカーであることはないのです。

From: JETRO

ただし、国際エネルギー機関などの予測においては、

そのグレー水素に変わるクリーンな水素生成技術として、ブルー水素やグリーン水素なども存在し、

こちらであれば温室効果ガスであるCO2を実質排出しませんので、

この意味において、将来的、特にそのIEAの予測によれば、2050年以降という長期的視点において、

ブルー水素や再エネ由来のグリーン水素というCO2排出が実質ゼロの水素が主流となっていく予測が発表されてはいます。

ただしそれでも、そのオーストラリアで生成された水素を、実際に我々である日本市場に運ぶためにも、その船舶を動かすためにCO2を排出してしまい、

確かに長期的な視点においては、この化石燃料を燃やして動いている水素運搬船も、それこそクリーン水素を動力源とすれば、実質的にCO2を排出することはないのですが、

つまりこのように、現状中東地域に化石燃料を依存している状況と全く同様に、

わざわざ他国にエネルギーを依存し、しかも同じく、はるばる南半球からそのエネルギーを輸送し、その際に多量のエネルギーを消費してしまう、

したがって、いくらCO2排出を実質ゼロにできたからといっても、

このエネルギー消費社会そのものに待ったをかける世界的な潮流において非常に無駄が多いエネルギーである、ということは、

その脱炭素社会の実現において、いい悪いは別にして、事実ベースとして認識しておかなければならない物理法則であると思います。

From: 経済産業省

なんでフィルター搭載FCEVに限定するんすか?

何れにしても、トヨタが主張しているマイナスエミッションという概念というのは、

2050年以降というかなり長期的な視野においては、我々日本市場においても達成する可能性が残されている状況ではある一方で、

それと同時に認識しなければならない、しかしながら多くの方が忘れてしまっている本質というのは、

いかに省エネルギーな世界を目指すという視点も、現在世界で注目されているSDGsのサステナビリティの考え方と1つであって、

そもそもその視点において、次世代車として候補が上がっている水素燃料電池車と電気自動車の明らかなエネルギー効率性の差というのは、

今後も埋めることのできない物理法則であり、

やはりこの点だけをとってみても、少なくとも自動車においては、この水素燃料電池車として普及する未来は考えにくい、ということですね。

エネルギー効率性の差は圧倒的

そして、このマイナスエミッションのポテンシャルを論理的には秘めている水素燃料電池車ですが、

今回のトヨタが特許を出願していた、そのマイナスエミッションを達成するための空気清浄フィルターを装着した車両のみを判別し、

その車両のみに割引を適用するという話に戻すと、

こちらに関しては、ある一点の条件を追加するだけで、この特許をうまく併用しながら、実際に高速道路管理会社を中心として、

ETCを使った有料道路の割引を適用するという施策というのは、賛成の立場を表明することができ、

やはりゼロエミッションカーに対して有料道路の割引を適用させようと、技術を構築する姿勢というのは一定程度評価することができる一方で、

それではなぜ、空気清浄フィルターを搭載している車両だけに言及するのかが全くもって意味不明である、という点も、同時に指摘しなければならないと思います。

水素燃料電池車も電気自動車も適用可能でよくないっすか?

繰り返しとはなりますが、そもそも論として、数少ない水素燃料電池車の中でも空気清浄フィルターを装着している車両というのは、

現状トヨタの新型ミライしか存在しないということで、

仮に今回の特許技術を、本当に実用化しようとしてきた場合、

トヨタがすでに発売していた初代ミライでさえ、その割引を適用することができないことになり、

何れにしても、もはやトヨタの車両だけを実質的に優遇するという施策になってしまいますので、

このようなシステムの導入を、いったいどれほど多くの方が望んでいるのか、非常に疑問に感じるのは私だけでしょうか?

しかしながら、このような特定のメーカーの利益につながるような施策ではなく、

より効果的に、持続可能な社会に貢献できる派生バーションをぜひ提案させていただきたいということで、

それが、現在欧米中と、世界の主要先進国が揃って提示している次世代車である、

水素燃料電池車と電気自動車に対して、有料道路の割引を適用させるという施策であるのです。

これであれば、特定のメーカーの利益になるだけではなく、すでに電気自動車や水素燃料電池車を販売している多くの自動車メーカーが、公平に恩恵を受けることができますし、

何よりも、こっちの施策の方が水素燃料電池車、ましてや空気清浄フィルターを搭載している水素燃料電池車なんて、極めて対象車種が限られることなく、

BZ4Xを皮切りとして、今後一気にその車種を拡充しようとしている電気自動車についても、その恩恵を享受することができるようになりますので、

ぜひとも世界中で強力にロビー活動を展開しているトヨタの政治力でもって、

自分たちの利益の最大化のためにも、空気清浄フィルター付きの燃料電池車なんて心の狭いことを言わずに、より持続可能な脱炭素社会に貢献することができ、

なおかつ、よりトヨタ自身も利益を最大化することができる水素燃料電池車全般と電気自動車に、

有料道路の割引を適用できるという、その優遇措置を拡大適用していただきたいと感じました。

トヨタのEV

ちなみに、この電気自動車や水素燃料電池車などのゼロエミッションカーに対して、高速道路料金を割引適用しようとする動きというのは、

実際に経済産業書の会議においても、議題に上がっているという報道すらある状況でもありますので、

何も今回トヨタが出願していた特許という動きだけではなく、実際にその実現性が高い可能性もあると思います。

ゼロエミッションを認めてくれる「寛大な心」に期待

このように、今回トヨタが出願していた、

空気清浄フィルター搭載の水素燃料電池車に対して、その有料道路の割引を適用させるというシステムという内容の特許というのは、

脱炭素化社会の実現という目標において、コンセプト自体は賛成することができるものの、

その対象車種があまりにも独善的すぎであり、とてもではないですが、それを実際に適用、

ましてや国がその料金の割引分を税金で補助するなど、一民間メーカーに対する贔屓にしか見えませんので、

その特許をベースにしたシステム導入はやめていただきたいと思いますが、

特にこのコンセプトを、すべての水素燃料電池車、および同じくゼロエミッションカーであり、

世界的には同じく次世代車のカテゴリーに該当し、なおかつエネルギー効率という観点では、水素燃料電池車の倍以上もの効率性を発揮することができる、

よりエコな電気自動車も含めるのであれば、どのメーカーにとっても公平な制度になるだけでなく、

そもそも今回のトヨタ自身にとっても、より利益を享受することにつながるのではないでしょうか?

マイナスエミッションに限定する必要はないと思います

何れにしても、トヨタのトップである豊田社長が直近の記者会見において話されていた、

カーボンニュートラルに取り組むにあたっての敵は炭素であり、決して内燃機関ではない

内燃機関をやめさせましょうということを盛んにおっしゃる方が多いが、敵は炭素である

という、非常に確信をついている、ありがたいお言葉がありましたが、

まさに今回の空気清浄フィルター付きの水素燃料電池車のみに対して、有料道路の割引を適用させることというのは、

この豊田社長が自らおっしゃっている、

敵は炭素であるのであって、同じくゼロエミッションカーである電気自動車や他社の水素燃料電池車、

さらにはトヨタがすでに発売している初代ミライすらも除外してしまっているという、ダブルスタンダードを感じざるを得ません

ぜひともこのようなありがたいお言葉を世間に発信することのできる、広い心をお持ちの豊田社長率いるトヨタにおいては、

今回公開してきた特許のような、極めてごく一部の車種、特に実質自分たちの車種にしかできないような、心の狭いシステムを導入するなんてことはせずに、

敵は炭素、脱炭素社会の実現のために、広い心を持って、

今回の有料道路料金の割引措置を、ゼロエミッションカー全体に対して適用することのできるような制度設計を国とともに目指していただきと思いますし、

広い心をお持ちのトヨタであれば、必ずや実現してくれることでしょう。

From: 特許庁, via exciteニュース

Author: EVネイティブ