なんと来年である2022年中にも、完全な電気自動車が、日本の得意なハイブリッド車の販売台数を超えて、
電動車両のトップとして世界の電動化を牽引していくのではないかという驚きの予測が発表されてしまいました。
グローバルでは電動車の販売台数が急上昇中
まず今回の調査結果に関してですが、日本のマーケット動向を調査する会社である富士経済が、世界の電動車の現状の動向、および今後の普及予測についてを調査し、
それを2021年度版分析調査として発表してきたものなのですが、
まず、2020年度におけるハイブリッド車の販売台数は269万台と、前年比で5.9%アップと緩やかな伸びを見せたものの、
それに対してプラグインハイブリッド車が96万台を販売し、前年比で65%もアップ、
そして電気自動車についても220万台を販売し、前年比で1.3倍も販売台数が上昇しているという、
世界的に見ると、明らかにこれらの電動車、特にプラグインハイブリッド車と電気自動車の販売台数が伸びたことがお分かりになると思います。
完全な電気自動車「BEV」
そもそも論として、今回取り上げている、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、電気自動車、
そしてこれらを合わせた電動車とは一体何を指し示しているのかが、非常に曖昧となっている方もいらっしゃるかもしれませんので、
まずはこちらの定義についてを改めて確認していきたいと思いますが、
まずはじめに電気自動車についてですが、
こちらは日産リーフやHonda e、テスラをはじめとする、搭載された大容量のバッテリーに、充電して貯められた電力のみを使用して走行することができる車種となっていて、
つまり端的に言ってしまえば、ガソリンエンジンを搭載せず、ガソリンを給油する必要が全くなく、
したがって海外では、同じく走行中に二酸化炭素などの排気ガスを一切排出しない、トヨタが発売しているミライなどの水素燃料電池車とともに、
ゼロエミッションカーと呼ばれたり、
その搭載されたバッテリーのみによって駆動することから、Battery Electric Vehicle、略してBEVなどと表現されていますが、
本チャンネルにおいては、よりわかりやすさを重視するために、排気ガスを一切排出しない完全な電気自動車、完全電気自動車と表現していたりします。
プラグインハイブリッド車「PHEV」
次に、完全電気自動車と同様に、バッテリーを搭載しながら、既存のガソリンエンジンも搭載し、両方を併用して走行することができるプラグインハイブリッド車が存在し、
通勤や買い物などの、一日数十キロ程度の日常の使用用途としては、先ほどの完全電気自動車と同様に、バッテリーに充電された電力のみで運用し、
週末などの長距離ドライブなどの際は、電気ではなく、通常のガソリンエンジンを使用しながら、走行中の減速エネルギーなどを回収して、電気とも併用して走行する、
いわゆるハイブリッド車のように走行することができます。
したがって、この完全な電気自動車とプラグインハイブリッド車という2種類に関しては、
外部から搭載バッテリーに充電して、その貯められた電力を使って走行することができることから、プラグイン車とカテゴライズされることもありますが、
こちらは単純にややこしいカテゴライズの仕方ですので、本チャンネルにおいては積極的に採用してはいません。
ハイブリッド車「HEV」
そして、それとともに存在するのが、ハイブリッド車というカテゴリーとなっていて、
こちらは先ほどの完全電気自動車とプラグインハイブリッド車と比較しても、すでに我々日本市場でも一般的に普及し、
特にトヨタや日産、そしてホンダなど主要日系メーカーが得意としているパワートレインであり、
こちらは、基本的にはガソリンエンジンやディーゼルエンジンによって駆動するという、既存のガソリン車やディーゼル車と同じものの、
モーターと、ごく少量のバッテリーを搭載し、下り坂やブレーキを踏んだ際にその減速エネルギーをバッテリーに回収し、
次回の加速時に、その回収された電気で走行をアシストすることができるという、
確かに電気を使用して走行するという観点では、先ほどの完全電気自動車と変わらないのですが、
やはり最も重要なポイントというのが、外部電力を使用して充電することができないという点であるのです。
実はこの点が、現在世界がなぜ完全電気自動車へと舵を切っているのかというポイントにつながっていくのですが、
そのハイブリッド車であれば、外部電力を充電することができない、
つまり現在世界の大方針であるCO2排出量削減という観点においては、既存のガソリン車などの燃費性能をただ改善しただけなのですが、
完全な電気自動車はというと、そもそも論として、火力発電国家である我々日本市場で製造したとしても、
日本の排出係数を当てはめると、バッテリー製造時から見たトータルのCO2排出量は、
同セグメントの車種においてハイブリッド車よりも少なくなるということは、すでに確定しています。
既に街中を走っているEVもCO2排出削減に貢献可能
しかしながらそれ以上に重要なポイントというのが、電気自動車であれば、グリッドで発電された電力を充電して走行する、
つまり、我々日本市場でもすでに策定されている、再生可能エネルギーの発電比率を高めていくというエネルギー政策によって、
今後発売される車両だけでなく、すでに発売されている電気自動車に関しても、その走行に使用する電力が再エネ由来となる、
したがって、すでに街中を走っている電気自動車であっても、今後の再エネ比率の上昇に伴って、さらにCO2排出量が削減されていく、
故に、現時点においてもCO2排出量が多く、もちろん経年劣化によって、今後燃費性能が悪化していくハイブリッド車では、
その電気自動車の持つCO2削減のポテンシャルに、どうあがいても勝ることがないのです。
そして、これらの電気自動車、プラグインハイブリッド車、そしてハイブリッド車を全て合わせて、日本メディアは電動車と表現することが多く、
この電動車と一括りにしてしまうと、日本は世界の中でもトップクラスの電動車先進諸国に該当していますが、
やはり今後の脱炭素社会において、そのポテンシャルで電気自動車に勝ることのないハイブリッド車を、なぜ世界は含めずに、電気自動車を中心とする未来を見据えているのか、
そして、そのハイブリッド車を含めない場合、やはり日本市場というのは、圧倒的な電気自動車発展途上国である、ということなのです。
2022年、ハイブリッド車が電気自動車に負ける日
ここまでは、グローバルスタンダードにおける電気自動車とハイブリッド車の本質的な違い、
そして、なぜ世界がハイブリッド車ではなく、特に完全な電気自動車に舵を切り始めているのかを理解することができたと思いますが、
この前提知識をもとに、今回の富士経済が発表してきた、現状の電動車の普及状況、および長期的な普及予測を詳しく見ていくと、
冒頭説明した通り、昨年である2020年度における電動車の普及状況は、特に完全な電気自動車、そしてプラグインハイブリッド車が急上昇しているのですが、
今回新たに明らかになってきたことというのが、
現状その販売台数で優位に立ち、日本メーカーが得意としているハイブリッド車の牙城が、間も無く崩されるのではないかという予測となっているのです。
それが、なんと来年である2022年中には、完全な電気自動車が、
現在電動車の中でリードしているハイブリッド車の販売台数を抜いて、トップに躍り出るのではないかという予測となっていて、
2020年時点においては、約50万台ほどの差がついているものの、
この2年間においてこの差が縮まり、もはや逆転してしまうという、
裏を返せば、その電動車というカテゴリーの中においても、完全な電気自動車がより急速に普及していくのではないかと予測されている、ということなのです。
2035年にはBEVはハイブリッド車の倍売れている
また、14年後である2035年までの普及予測についても言及し、ハイブリッド車がグローバルで1359万台と、現状の5倍も増えるのに対して、
完全な電気自動車については、現状の11倍である2418万台という、とてつもない販売台数を達成しながら、
したがって、2035年時点においては、完全電気自動車はハイブリッド車の2倍近く販売されるという予測ともなりますので、
来年である2022年において、ついに逆転する完全電気自動車とハイブリッド車の販売台数の差は、さらに加速度をつけて開いていくということも予測されている、
つまり、電気自動車がマジョリティになる未来が予測されている、ということですね。
ちなみにですが、今回の富士経済の電動車の普及予測に関しては毎年アップデートされているのですが、
その昨年発表された、2019年度バージョンの完全電気自動車の普及予測において、
2035年度における完全電気自動車の販売台数予測は1969万台としていたのに対して、
直近で公開してきた2020年度の予測値では2418万台と、たったの1年間で、その販売予測を大幅に上方修正してきていますので、
やはり調査会社の現状の予測値よりも、明らかに早いペースでもって完全電気自動車の普及率が増えていることも、図らずも浮き彫りとなってきているでしょうし、
調査会社の予測値は大きく信用に値せず、むしろその予測値を超えて、完全な電気自動車が普及する可能性も十分考慮に入れて、
今後の電動化戦略を立案していくべきとも考えられるのではないでしょうか?
EUは2035年以降内燃機関車全廃へ
そして、こちらの予測に関連して、世界の電動化の普及動向に関する新たなニュースとして、
ヨーロッパ市場全体が2035年までに、新車販売における内燃機関車を完全に販売禁止にするという提案をまとめてきたという、かなり衝撃的なニュースとなっていて、
そもそもヨーロッパ市場に関しては、特に先進諸国を中心に、すでに多くの国が内燃機関車の販売禁止を表明し、
しかも一部の国では、それを法制化している国も存在してはいたのですが、
例えばフランス市場に関しては、2040年までにガソリン車とディーゼル車の販売禁止を表明してはいましたが、
電動車であり、日本メーカーの得意としているハイブリッド車はその禁止対象から除外されていたりと、各国で足並みが揃っていなかったのですが、
ここにきて、ヨーロッパ諸国が参加するヨーロッパ連合において取りまとめられたのが、
まずは2030年までに、新車から排出されるCO2排出量を、今までの37.5%削減という目標数値から大幅に上方修正し、
なんと65%削減という、非常に挑戦的なCO2削減目標を掲げながら、
そして最も重要なポイントというのが、
EU域内全体で、2035年までに新車販売における内燃機関車の販売を完全禁止にするという方針も取りまとめてきている、ということなのです。
まずこちらの14年後である2035年までの内燃機関車の販売禁止についてですが、
今回取り上げられている内燃機関車については、既存のガソリン車やディーゼル車だけではなく、
日本メーカーが得意としているハイブリッド車も、その内燃機関車のカテゴリーに該当しますので、
なんと今から14年後である2035年には、人口5億人近いヨーロッパ連合全域で、ハイブリッド車の販売すらも禁止されてしまうという、
大方針が取りまとめられてしまったのです。
2030年以降、実質BEV以外を売り続けるのは厳しそう
ちなみに、その大方針の5年前である2030年までには、新車販売におけるCO2排出量を65%削減しなければならないという制限も適用される方針なのですが、
金融グループであるバークレイズによれば、その2030年において適用される65%のCO2排出量削減というのは、
電動車の1つでもあるプラグインハイブリッド車ですら達成することが厳しい公算であり、
つまり2030年以降、プラグインハイブリッド車を中心に販売していくという戦略すら、実質上通用しなくなる、
もちろんハイブリッド車なんてもってのほか、
したがって、やはり人口5億人近いEU市場においては、完全な電気自動車をその新車販売の中心戦略に据えていくしかない、ということですね。
このように、前半パートで紹介した、日本の富士経済による今後の電動車の普及動向の予測については、
やはり日本メーカーが得意としているハイブリッド車ではなく、完全な電気自動車が電動車の主流となるのではないかという予測を立てながら、
その完全な電気自動車の普及予測については、1年前と比較しても、その予測を大幅に上方修正しているということも鑑みると、
多くの調査会社の予測よりも、明らかに完全電気自動車の販売台数が増加する見込みであり、
それと同時に、現在電気自動車の販売台数が急増しているヨーロッパ諸国が結成しているEU連合に関しては、
2035年までに、ハイブリッド車を含む全ての内燃機関車の新車販売を禁止し、しかもその上、あと9年後である2030年までには、
ハイブリッド車はおろか、プラグインハイブリッド車を中心に販売したとしても、達成することができないような厳しいCO2排出規制を敷いてくる公算となりました。
今がBEVのビッグウェーブに乗れるラストチャンスです
何れにしても、人口5億人近い巨大市場であるEU市場に関しては、完全な電気自動車に舵を切ってきたことが、もはや疑いようがないほど確定的となりましたし、
先ほどの富士経済の予測値は、こちらの2035年以降のハイブリッド車の販売矜持は、そのファクターに考慮されていませんので、
おそらく先ほど紹介したハイブリッド車の販売台数予測は大幅に下方修正されなければならず、
それと同時に完全電気自動車の販売割合は、さらに上方修正される見通しでもあるかとも思います。
もちろんですが、この流れは中国市場、そして現在それらの電気自動車先進諸国に追いつくために莫大な投資を表明しているアメリカ市場も追随することも、同様に確定的ですので、
この世界的な電気自動車のビッグウェーブに乗るのか、
それともハイブリッド車をはじめとする電気自動車ガラパゴス国家として、電気自動車戦争という世界の流れから乗り遅れ、自動車大国から没落していくのか、
そろそろ完全電気自動車時代となる事実を認め、
電気自動車におけるインフラ整備を始め、その電気自動車を大量に生産するためのバッテリーの日本国内における生産体制の確保、
およびそのバッテリーを生産するためのサプライチェーンのローカライゼーションなど、
官民が協力して、世界に追随していかなければならない時期に突入しているのではないでしょうか?
From: 富士経済, via Yahoo News
Author: EVネイティブ
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