ついに正式な予約がスタートした日産のフラグシップクロスオーバーEVであるアリアに関して、そのレベルの高い電気自動車としての質や、現在の最先端の技術が集約されているとともに、
やはりその値段設定が高すぎるのではないかという、一部の批判が散見される中において、
なぜ今回の日産アリアが、極めて妥当な値段設定であるのかという個人的見解を、特にその設計思想にフォーカスしながら徹底的に解説します。
いくら何でも納車時期が遅すぎた、、
まず、今回の日産アリアに関しては、すでに昨年である2020年の7月15日にワールドプレミアが開催され、その当時は、その電気自動車としての質の高さや先進性によって、非常に注目されていたのですが、
そもそも日産はこのアリアの発売時期を、今年である2021年の中頃とアナウンスし、この直近に至るまで、その具体的な追加情報をほとんど発信していませんでしたので、
その注目度に関しては、さすがに下火ともなってしまっていて、
しかもその上、そのアリアと同セグメントの競合車種が、矢継ぎ早に市場に投入されてしまっていて、
つまり、日産アリアが先陣を切っていてワールドプレミアを開催していたのにも関わらず、
その実際の予約や発売、そして納車時期に関しては、完全に競合メーカーの後塵を拝してしまっているという状況なのです。
しかもその上、今回ようやく正式な予約注文を受け付けてはいますが、その実際の発売時期に関しては、今年である2021年の10月、
その残りの多くのグレードの発売時期は、なんとさらに来年である2022年の夏以降、実際の納車時期においては、さらにそれ以降、
正式なアナウンスはないものの、おそらく2022年の秋頃になるのではないかと推測されていますので、
特に個人的に懸念している、現在第一次電気自動車対戦が勃発中であるヨーロッパ市場において、残念ながら、大幅な機会ロスとなる公算でもあるのです。
モデル3と比較してるトンチンカン、聞け
そして、そのような劣勢な状況下である今回の日産アリアは、まず我々である日本市場においては、初回限定生産グレードであるLimitedグレードを設定し、
まずそのLimitedの納車を優先させることによって、特にアリアの平均販売価格を上げながら、
そのようなアリアに対してより高い金額を払っても心待ちにしているような、ファン層の所有欲をさらに満たすような販売戦略であり、
おそらくですが、同じような初回限定生産グレードについては、ヨーロッパや北米、そして中国市場などのグローバルでも展開していくのではないかとは推測しています。
しかしながら、今回のLimitedグレードのより詳細なスペック、特にその値段設定が判明してからというもの、そのアリアLimitedの値段設定が、あまりにも高すぎるやしないかという批判が一部散見され、
特にある一部の電気自動車界隈が、この金額帯であればあの電気自動車を購入するに決まっているだろ、というような、かなり見下したような発言も散見されているのですが、
そもそも大前提として、その多くの方々が、今回の日産アリアの設計思想、そしてそのターゲット層を勘違いされている可能性が高いですので、
なぜ私が今回の日産アリアの値段設定が極めて妥当な値段設定であるのかについてを、特にアリアの設計思想という観点から説明してみたいと思います。
アリアはプレミアムセグメントに該当
まずはじめに、日産側はすでに公式に、今回のアリアをプレミアムセグメントの車種であると位置づけていますので、
そもそも論として、これまで日産が発売している電気自動車であり、現在私自身も所有している大衆車EVを目指したリーフとは、明らかに根本のターゲット層が違うということであり、
したがって、今回のアリアに関しては、何も、「やれ、電気自動車はやっぱり安くできないじゃないか」というトンチンカンな指摘には当たらず、
開発当初からプレミアムセグメントに位置付け、まさにプレミアムな値段設定に成るべくしてなっているだけでありますので、
繰り返しとなりますが、そもそもアリアの値段設定が高すぎると指摘している方は、まずこの大前提をしっかりと認識することができているのでしょうか?
リーフとは違う、新開発の「特殊な」モーター
それでは実際のアリアの設計思想の中身を見ていきたいと思いますが、まず今回日産がアリアのために新開発してきたのが、その搭載モーターであり、
実はその種類が、今までリーフで採用されていた永久磁石同期モーターとは異なっていて、
そのモーターは、Externally Excited Synchronous Motor、通称EESM、巻線界磁型同期モーターと呼ばれ、
このモーターというのは、今までリーフで採用されていた永久磁石を一切使用せず、代わりに電磁石を使用しているモーターであり、
永久磁石を使用しているモーターというのは、そのモーターを動かしていない時であっても電流を流し続けなければならないのですが、
対する今回の電磁石を使用している巻線界磁型のモーターであれば、電力を流す必要のない場合はモーターに一切電流を流す必要がなく、
特に高速道路の巡行など大きなパワーを必要としない場合でも、その電流量をより少なく抑えることができる、
つまり、その分だけ抵抗も減り、結果としてモーターから出される騒音や振動を低減することができるのです。
そして、この巻線界磁型のモーターに関しては、そのような騒音や振動を抑制することができるのと同時に、電気自動車としての質である電費性能にも大きな影響を与え、
このグラフは、明電舎という電子機器メーカーが、今回の巻線界磁型のモーターと、通常の永久磁石型のモーターとの効率性を比較しているグラフとなっていて、
ブルーになればなるほど、永久磁石同期モーターの効率性が高く、逆にグリーンやレッドに近づくにつれて、巻線界磁型同期モーターの方がより効率性が高くなるのですが、
右側である、高速領域になればなるほど、そして、トルクが小さくなればなるほど、巻線界磁型同期モーターの効率性が上がっていくことが示され、
したがって、高速低トルク領域になればなるほど、つまり、高速道路を時速100kmで巡行し続けているような走行シチュエーションの場合、
現在リーフやテスラをはじめ、多くの電気自動車で採用されている永久磁石同期モーターよりも、数倍も効率が良くなる、
言い換えれば、電費性能が高くなることが期待できるのです。
つまり、今回新開発されている巻線界磁型同期モーターを、プレミアムセグメントに該当するアリアになぜ採用したのか、
それは、まずはその電磁石の特性上、必要な時以外に必要な電流量を減らすことができ、それによる騒音や振動を抑制することで、
プレミアムセグメントの車種として求められる、一段上の静粛性を確保しようとしているということ、
また、今回のアリアにおいては、高速道路を時速100kmでクーラーをつけても達成可能であるというような、実用使いにおいて最も信用に値するEPAサイクルにおいて、
最長で483kmという、少なくとも日々の通勤や買い物、
さらには、関東圏を日帰りで往復するというようなショートトリップであれば、途中充電せずに運用することができてしまうというスペックを持っているため、
その短距離を運用する際における電費性能を多少犠牲にしたとしても、特に電気自動車においてどうしても懸念材料となってしまう、高速道路を使用した長距離走行時において、
そのようなプレミアムセグメントの車種のオーナーにストレスを与えさせないような、より電費性能が高くなるような設計を目指しているということが、
今回なぜわざわざ新たなモーターを採用したのか、そしてなぜ今回のプレミアムセグメントであるアリアに導入してきたのか、という理由であるのです。
プロパイロット2.0を採用した真の理由
また、さらに付け足すと、その長距離走行時において必ず使用するであろう高速道路を走行する際に、より快適に過ごしてもらえるように、
今回のアリアには、プロパイロット2.0という、同一車線上におけるハンズフリー走行、いわゆる手放し運転を可能としているのですが、
そもそもこのプロパイロット2.0に関しても、日産が新たに開発した自動運転支援技術を、ただ単に最新車両であるアリアに搭載しようという考えではなく、
やはりプレミアムセグメントとして、運転を必要としない状況であれば、極力オーナーがリラックスできるように、ハンズオフドライブビングを可能としているわけであり、
しかもその上、そのプロパイロット2.0を使用中である高速道路上の走行シーンにおいては、先ほどの巻線界磁型同期モーターの特性上、高速低トルク時における騒音や振動を抑制することができますので、
まさに、なぜ今回のアリアに、わざわざ最新技術であるプロパイロット2.0を搭載し、しかもわざわざ新たに新開発したモーターを搭載してきたのか、
それは、そのプレミアムセグメントの車種において、最も求められる「快適性」を追求しているから、ということなのです。
アリアの真価は「e-4ORCE」にあり
そして日産に関しては、プレミアムセグメントに求められる電気自動車としての快適性を極限にまで高めるために、さらに新たな技術を導入していて、
それが、以前にも紹介しているe-4ORCEと名付けられた、四輪電子制御技術となっていて、
日産側は、特にこの2つのモーターを独立して制御しながら、4つの車輪をそれぞれ独立してブレーキ制御することによって、
雨天時や雪上走行などにおける走行安定性を、既存の内燃機関車とは比較にならないほどに高めることができると、特に主張しているのですが、
個人的に考える、このe-4ORCEの真骨頂というのは、その乗員の姿勢変化を抑制することができるという点であり、
特に渋滞時などにおけるアクセルとブレーキの連続によって、乗員が前後に揺さぶられてしまい、したがって、その乗り心地が極めて不快に感じてしまうという経験をされた方がいらっしゃると思いますが、
実はこれは電気自動車の方が顕著となる場合があり、
というのも電気自動車というのは、アクセルのわずかな加減のみで、通常の内燃機関車レベルの加減速を行うことが可能であり、
よって、内燃機関車を運転するよりも、余計に速度の微調整に機会が増えることになり、
したがって、その加減速によって引き起こされる前後のピッチングが、電気自動車ではより不快に感じてしまうのです。
ちなみに、このことを取り上げると、必ずある一部の電気自動車界隈に、「それはお前がリーフという前輪駆動グレードの電気自動車に乗っているからだろう」という指摘をいただくのですが、
例えば私が所有している後輪駆動グレードのテスラモデル3であったり、Honda e、さらには前後に2つのモーターを搭載したAWDグレードのテスラ車に何度も乗りましたが、
やはり結論としては、別にリーフのピッチングと対して変わらないという結論であり、
このような反論をしてくる方というのは、おそらくご自身がその車種のオーナーであることが多く、
そのような運転好きの方は、基本的には助手席や後部座席に座って、実際に電気自動車のピッチングを経験されたことが少ないことによるご発言なのではないかと推測できますし、
是非とも貴殿たちの配偶者や交際相手に、貴殿の運転の乗り心地がいいかどうかを尋ねてみることをお勧めしたいと思います。
そして、今回のアリアに初採用されるe-4ORCEに関しては、このピッチングをかなり抑制してくれると説明されていて、
実際にこの開発段階であったe-4ORCEを、数々の自動車ジャーナリストが体験してもいて、
特に、自動車ジャーナリストである五味ヤスタカさんが、わかりやすくそのピッチングコントロールの動画を作成されていて、
その五味ヤスタカさんに関しては、以前前後に2つのモーターを搭載したテスラモデルSのオーナーでもありましたので、
やはりこのことからも、ただ単に前後に2つのモーターを搭載しているだけでは実現することのできない乗り心地の向上、
つまり、これまた今回のプレミアムセグメントである、アリアの設計思想である快適性をより高めることにつながっているのです。
アリアの値段設定はグローバルに見て妥当
したがって、ここまで様々な新技術を採用することが、一体今回のアリアに対し、何を意味しているのか、
それは、ただ単にアリアが新型車だからという単純な理由ではなく、まさに開発当初から日産の開発陣営が目指していた、プレミアムな日産のフラグシップモデルとして、
特にドライバーと乗員までのも含めた快適性という設計思想を体現するためであった、
故に、今回の日産アリアは、ただ単に価格の高い電気自動車ではなく、プレミアムな電気自動車として妥協なく開発されていることによって、
結果としてそれ相応の値段設定となっている、ということなのです。
そして、そもそも一点、多くの方が誤解してしまっているのが、
今回値段設定が発表されているグレードというのは、初回限定生産グレードであるLimitedグレードであり、
実際に発売されるベースグレードであるB6に関しては、政府からの補助金を含めて、概ね500万程度とアナウンスされている、
つまり、本体価格は540万円強というようなイメージとなりますので、
B6 Limitedの660万円からという値段設定の数値が、一人歩きしてしまっている印象が強いと感じているのは私だけでしょうか?
ちなみに、今回のアリアに関しては、日産の従来通りのグレード設定であるXグレードであったりGグレードというグレードは設定せずに、
基本的な、12.3インチの横長のデュアルタッチスクリーンなどはもちろんB6も標準で搭載してきますので、
今までの日産車のように、エントリーグレードは実質車として完成していないというようなイメージではないですので、
このように考えてみれば、補助金を含めて500万という金額というのは、
実用的な電気自動車としての質をはじめ、今まで説明してきた快適性なども勘案すると、実はかなり競争力のある値段設定を実現することができているのではないか、
というのが日産リーフとテスラモデル3を両方所有している、一電気自動車オーナーのポジショントークとはなります。
そして、今回の日産アリアに関しては、我々日本市場だけではなく、欧米や中国市場などグローバルに展開する車種でもあり、
例えばヨーロッパ市場に関しては、今だにその値段設定は赤穂式に明らかにはされていませんが、競合車種が日本円換算で、概ね500万円台前半というような値段設定であり、
したがって電気自動車戦争が勃発しているヨーロッパ市場においては、この500万円台というエントリー価格は、まさに真っ当な値段設定でもありますし、
さらにアメリカ市場においては、そのエントリー価格は4万ドル、日本円に換算して430万円台からのスタートを予定しているとアナウンスされ、
こちらも全く同様に、競合車種と比較しても全く遜色のない値段設定を実現することができてもいますので、
このように世界に目を向けてみると、今回のプレミアムセグメントであるアリアの値段設定というのは、まさに真っ当な価格を達成してきているということになり、
そもそもこの値段設定を高いという方は、別にそのような方々を見下しているのではなく、
このようなプレミアムセグメントの車を真剣に購入検討したことがない方が多いのではないかと感じますし、
少なくともそのような方で電気自動車の質すらも正確に判断することができないとなると、やはり今回のアリアの価値を、正確に判断することはできていないのではないでしょうか?
完成度が高いだけに、どうしても悔やまれるのが、、
ただし、ここまで日産アリアの値段設定の正当性を主に主張してきた私の立場というのは、やはり今年中の納車スタートであればまだわかるものの、
それが来年である2022年にずれ込む、ましてや2022年の秋頃になってしまうかもしれないとなると、競合車種と全く同列に比較せざるを得ず、
私個人としては、今回のアリアの値段設定では、それ以外に購入を検討している車種、
例えばフォルクスワーゲンのID.4であったり、テスラ のモデルY、そしてヒュンダイのIONIQ5と比較して、やや割高感が否めないと感じているのも、また事実ではあります。
何れにしてもこのように、今回ついに予約が正式スタートした日産のフラグシップクロスオーバーEVであるアリアというのは、
今までの日産が目指していた大衆価格帯のEVというセグメントではなく、プレミアムセグメントとして、日産を象徴するフラグシップモデルとなり、
そのプレミアムセグメントとして重要な指標である、快適性という設計思想を、電気自動車の強みを最大限生かして、徹底的に追求することができているので、
少なくともリーフなどの値段設定とは一線を画すのは当然のことであるということ、
また、実質平均所得が一貫して下がり続け、先進諸国から没落してしまっている日本だけでなく、
グローバルの先進国を見渡してみると、その値段設定は競合車種と比較しても妥当であるということから、
今回のアリアの値段設定というのは、世間で言われているほど高額な値段設定ではなく、プレミアムセグメントとして妥当な値段設定なのではないか、
少なくとも大衆に向けた電気自動車ではないが、それと同時に、より多くの金額を出したいと思わせるようなプレミアムEVに、仕上がっているのではないでしょうか?
From: Nissan
Author: EVネイティブ
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