日本市場における、最直近である5月度の電気自動車の販売台数が速報され、その販売台数が伸び悩む一方、
ついに、日本のEVの歴史上初めて、人気車種ランキングトップが交代し、中国製の電気自動車が首位となってしまったという驚愕の事実について、
なぜこの事実を、より多くの日本人が恐れなければならないのか、そして、より真剣に考える必要があるのかという理由について、徹底的に解説します。
急速に電動化シフトを進める世界
まず、今回の日本市場に関してですが、中国とアメリカ市場に続いて、世界で3番目に自動車の販売台数が多い自動車大国であり、
特にその販売を支えている自動車産業は、現在世界最強の国と言っても過言ではなく、
実際に、新型コロナウイルスによる経済へのダメージを受ける前の、2019年度における自動車メーカー別の販売台数ランクングを見てみると、
トップ20に、なんと6グループもランクインしているという、
このようにグローバルで比較してみても、その自動車大国としての圧倒的存在感を感じていただけると思いますが、
それと同時に、現在世界的な潮流である電動化の流れを受けて、その世界の自動車メーカーは相次いで電気自動車に舵を切っていて、
すでにフォルクスワーゲングループやGMという主要メーカーが、次々と完全な電気自動車を中心とするゼロエミッション車のみしか発売しないという大方針を発表していたり、
さらに直近で明らかとなっているのが、まずは、韓国のヒュンダイに関しては、欧米市場や中国市場という主要マーケットにおいて、
2040年までに完全な電気自動車を中心とするゼロエミッション車のみの発売に切り替えることを表明しながら、内燃機関車のラインナップを、50%も絞ることによって、
その分の開発費を完全な電気自動車や水素燃料電池車に回すことを表明してもいるのです。
また、9位と10位にそれぞれランクインしているFCAとPSAが合併し、現在はステランティスという自動車グループが結成されていますが、
そのステランティスに関しても、今後内燃機関車に対するさらなる投資は行わないとして、同様に電気自動車に対してリソースを集中する考えを表明しながら、
特にそのステランティスを構成する中心的な自動車メーカーである、イタリアのフィアットに関しては、
2025年から2030年までの間に、フィアットのラインナップ全てを完全な電気自動車のみにするという大方針を発表、
つまり、あと9年以内には、フィアットから発売されている全ての車種が完全な電気自動車のみになっている、ということなのです。
日本メーカービッグ3の電動化戦略には大きな隔たりが
このように、特にこの直近の1年間で、世界の電動化の流れがこれでもかというレベルで加速していますので、もはや毎月のように各社が電気自動車に舵を切ることを表明しているようなイメージなのですが、
それでは世界第3位の我々日本市場に関してはどうなのかというと、
特にトヨタと日産に関しては、長期的なビジョンにおいても、
今後も自分たちの得意であり、そして本質的には内燃機関車と変わることのないハイブリッド車を販売し続けていくと表明していますので、
その世界の流れとは相反する戦略なのですが、
その中でも日本のホンダに関しては、2040年までに発売する全ての車両を完全な電気自動車、もしくは水素燃料電池車というゼロエミッション車のみにする、
つまり、自分たちが得意なハイブリッド車を完全に捨てる決断となりますので、実は世間で考えられている、特に日本メーカービッグ3の電動化戦略には大きなギャップが存在し、
その現状一匹狼にも見えるホンダというのは、むしろグローバルで見た場合、いたってまっとうな経営戦略であるということなのです。
そしてこのような日本メーカーの電動化戦略もあってか、我々日本市場における電気自動車の販売台数は、グローバルと比較しても、ぶっちぎりで低水準となってしまっていて、
まず、今回公開された、最直近である5月度の電気自動車の販売台数に関してですが、日産リーフやテスラなどの完全な電気自動車と、
三菱アウトランダーやトヨタのRAV4 PHVなどの、ガソリンエンジンも併用して走行することができるプラグインハイブリッド車の合計を示す電気自動車の台数が、
2750台と、このグラフを見ただけでも、その販売台数が数年前から比較して横ばい、むしろ悪化している状況ともなっていますし、
また、その新車販売全体に占める電気自動車の販売割合を表す電動化率に関しても、1.7%と、
つまり、5月中に販売された新車のうち、今だに60台に1台しか電気自動車にリプレイスされていないという結果となりましたので、
やはり日本市場においては、電気自動車が全く売れていない、と結論づけることができると思います。
日本越えを虎視眈々と狙うドイツ市場
ちなみに、それは世界でも同じであり、やはり電気自動車なんか売れるわけがないだろと思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、
例えば、特に日本市場の次に大きな自動車マーケットであり、同じく強力な自動車メーカーをいくつも抱え、比較対象として最もベターであるドイツ市場を見てみると、
その最直近である5月度の電気自動車の販売台数は、なんと54008台と、日本の20倍程度もの販売台数を達成していますし、
そして、新車販売に占める電気自動車の販売割合を表す電動化率を見てみても、
23.4%と、なんとドイツ市場で販売されている新車の4台に1台が、すでに電気自動車にリプレイスされているとイメージしていただければ、
別に日本の次に大きい自動車マーケットであったとしても、現在電気自動車の販売台数が急速に伸びている、
つまり巨大な自動車マーケットでも電動化は可能である、ということがお分りいただけるのではないでしょうか?
ちなみに、その電気自動車の販売台数の伸び率に関してを比較しても一目瞭然ですが、ドイツ市場については、まさに美しい指数関数的なラインを描いていますので、
その電動化の流れが完全にできているということが見て取れますが、
我々日本市場に関しては、先ほども説明したように、むしろ数年前をピークにやや下降線を描いているという、美しさとは正反対とも呼べるラインとなってしまっている、
つまり、電動化の流れが全くできていないということも、お分りいただけるとは思います。
MX-30とHonda eは早くも販売台数低迷
それでは、気になる我々日本市場における電気自動車の人気車種ランキングについてを見ていきたいのですが、
まず、マツダが発売している初の電気自動車であるMX-30は、驚愕の9台と、もはやこのグラフでは水色のラインを目視することができないほどの低水準に留まってしまっていて、
流石に9台の販売台数というのは、人気があるないの問題ではなく、その生産・販売体制に明らかな欠陥を抱えているとしか思えませんので、
果たして一体、マツダ初の電気自動車に何が起こってしまっているのか、大いに疑問を感じるのは私だけでしょうか?
また、将来は電気自動車を中心とするゼロエミッション車しか販売しないというアグレッシブな電動化戦略を掲げているホンダの、
初の電気自動車であるHonda eに関しても、74台と、昨年である2020年の11月に記録した177台という数値から徐々に低下してしまってもいて、
このHonda eについては、我々日本市場だけでなくヨーロッパ市場にも同様に出荷されてはいるのですが、やはり日本市場と同様にその人気は低迷してしまっていますので、
こちらは単純にホンダが示唆しているターゲット層である、富裕層のセカンドカーという需要に残念ながら今回のHonda eがマッチしていないことが露呈しているだけかと思います。
ちなみに、テスラを除いた輸入されている電気自動車の合計台数が、およそ329台ということになりましたので、
特にポルシェのスポーツセダンであるタイカンであったり、プジョーのコンパクトカーであるe-208やe-2008などの販売台数が、
もしかしたら先ほどのHonda eよりも多いのではないかと推測することも可能です。
Porsche Taycan Peugeot e-208 & e-2008
日産リーフは10年守り続けてきた首位転落
そして、おそらく日本市場において2番目の販売台数を達成したのが、日産が2010年から発売している、世界初の本格量産電気自動車であったリーフとなっていて、
その販売台数が、221台と、特に新型コロナウイルスの流行以降その販売台数が急激に低下してしまい、
もはや緊急事態宣言中であった2020年の4月と5月中よりも、その販売台数が少ないというような、需要の落ち込みともなっているのです。
ちなみに、発売以降のリーフの国内販売台数の編成を示したグラフを見てみると、
特に4年前であり、ちょうどフルモデルチェンジを迎えた現行型のリーフが発売されてから達成した、毎月3000台を超える販売台数のピークから、
現状では15分の1程度にまで落ち込んでしまっていることも、見て取れるかとは思います。
テスラモデル3が史上初めてトップへ
そして、この直近である5月度において、電気自動車の人気車種トップに、リーフ以外で日本の歴史上初めて君臨したのが、テスラ車となっていて、
まず前提として、こちらの数値に関しては、概ねマイナス10台ほどの誤差が存在している可能性があるということ、
また、テスラの特定の車種ではなく、現在発売されているモデルS、モデルX、そしてモデル3という3車種の合計の結果であるという点は押さえておかなければならないものの、
それでも、その販売台数はおよそ501台と、リーフの倍以上の販売台数を売ったことになり、まさにこの日本の電気自動車の歴史上、初めてトップ交代、
つまり、アグレッシブな表現を用いると、日本の自動車メーカーが長く守り続けていた伝統が、ついにアメ車という黒船によって完全に破壊されたということになり、
これは、今後歴史を振り返った際にも、かなり重要な瞬間を目撃していることになるのではないかとは感じます。
そして、現在テスラに関しては、モデルSとモデルXの販売はほぼ中古車のみとなっていますので、実際のこの501台という数値のほぼ全てが、
ミッドサイズセダンであり、私自身も所有しているモデル3ということになるのですが、
実は現在日本市場に輸出されているモデル3に関しては、アメリカで生産されているのではなく、中国市場で製造されているという点が、非常にキャッチーな点であり、
先ほど、日本メーカーが守り続けてきた伝統がついにアメ車によって壊されたと説明しましたが、厳密に表現すると、
日本メーカーが守り続けてきたお膝元でもある日本市場のEVマーケットを、アメリカで開発され、中国で生産されている黒船によって破壊されたということになりますので、
私自身が当初より警戒していた、アメリカのテスラ、そして中国市場における電気自動車の製造能力の高さという2点を、まさにしてやられているという現状なのです。
中国×テスラという最もヤバい組み合わせ
ちなみに、このことを説明すると、別にテスラの専用工場を中国国内で建設しているだけなので、別に敢えて中国という点を強調する必要はないのではないかと思われた方もいらっしゃると思いますが、
現在の中国市場における電気自動車の能力は、もはや我々日本メーカーのそれとは次元が違い、本チャンネルをご覧いただければ一目瞭然ではありますが、
その中国国内で発売されている電気自動車の質は極めて高く、
そのような極めて競争が激しい中国市場に身を置いて、より質の高い電気自動車開発を行っているテスラは、今後さらに質を上げ、
よって、我々日本市場に輸出されてくる車種についても、さらに質が高い電気自動車となっていますので、その販売台数についても、さらに伸びることは間違い無いのです。
さらに、中国市場というのは、その電気自動車としての質を決定づけるコアテクでもあるリチウムイオンバッテリーの技術が、すでに世界最高峰にまで達していて、
実際問題として、中国のバッテリーサプライヤーでありながら、現在世界最大のバッテリーサプライヤーにものし上がったCATLに関しては、
すでにテスラをはじめ、フォルクスワーゲンやメルセデス、フォード、さらにはトヨタやホンダ、日産など、世界の自動車メーカーにバッテリーを供給している、
つまりそれだけの信頼性、そしてそのバッテリーの質の高さを、高品質であることで定評のある我々日本メーカーも採用していることによって案に示されている、ということでもあるのです。
つまり、その電気自動車においてコアテクでもあるリチウムイオンバッテリーの技術力が高いということは、それを元に、中国製の電気自動車を生産し、
まさに地理的に近い日本市場に、機を見て一気に攻め込んでくることは、何も全く不思議ではありませんので、
今回のモデル3という中国製の電気自動車が、日本市場のランキングでトップに君臨したということは、
そのような意味においても、世間で思われている以上にシリアスに捉えなければならない事実なのではないでしょうか?
そろそろ「日本すげー論」に別れを告げる時
繰り返しとはなりますが、別に立った1ヶ月だけ、アメリカで設計され中国で製造された車種に、そのマーケットのトップを譲ったとしても、
最後は日本メーカーが勝負を制すのだという、全く根拠のない、日本すげー論を振りかざしている時間的、技術的な余裕など、もはや日本メーカーには残されていませんので、
日本メーカーに関しては、早く世界で戦うことのできる質を備えた電気自動車を開発、
そして量産体制を整えるという意味において、そのコアテクであるバッテリー生産体制を構築、
さらには、電気自動車においてセットでもある充電インフラの整備を自社でも整備しながら、官民連携して、
世界基準のインフラを爆速で整備することが、日本メーカー、そして、その自動車産業が支えている日本経済全体を守る、最もましな戦略なのではないでしょうか?
From: 日本自動車販売協会連合会
Author: EVネイティブ
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