【EV航続距離のリアル】bZ4Xもアリアも大健闘! EV先進国ノルウェーで世界最大級のEV航続距離テストが開催

EV普及動向

ノルウェー市場で毎年開催されている電気自動車の大規模な航続距離テストが実施され、特に日産アリアやトヨタbZ4Xという日本メーカー勢のEVが健闘を見せながら、テスラや中国Xpengが最高のEV性能を見せつけてきたという、

カタログスペックだけではない、実用上の航続距離についてを紹介します。

EV超先進国で一斉航続距離テスト

まず、今回取り上げたいテスト内容は、ノルウェーの自動車連盟であるNAFが実施している大規模な電気自動車の性能テストです。ノルウェーは世界で最も電気自動車のシェア率が高い国であり、EV超先進国として知られています。2023年に入ってからは、新車販売の80%以上がバッテリーEVという驚異的なシェア率を達成しています。

一方、EVと内燃機関車とでは、航続距離や充電時間などの運用方法が大きく異なります。特に、航続距離が内燃機関車よりも劣るという点や、充電にかかる時間がEVの方が長いという点が気になる要素です。これらの点は、内燃機関車を所有している人にとってはイメージしにくく、購入時に最も気になる部分です。

しかし、自動車メーカーが発表しているカタログスペックは、一部の数値が信頼できないと指摘されています。特に航続距離や充電時間などはEVの運用上非常に重要な要素です。そのため、現実の世界での検証結果がどれほどのスペックを実現できるのかに大きな注目が集まっています。

EQS 1000kmチャレンジの様子

このような背景から、日本国内でEV性能の検証を行う本チャンネルでは、航続距離テストや充電スピードテスト、1000kmチャレンジなどを独自に実施しています。その正確性と検証の規模から見ても、日本国内では最大級の懸賞となると確信しています。実際の世界での航続距離や充電性能を明らかにするために、外的要因を含めて検証が求められている状況です。

そして、NAFの2023年夏バージョンの航続距離テストの結果が明らかになりました。このテストでは、ノルウェーの首都オスロを出発し、標高の変化が激しいルートを選択しています。標高差は航続距離に大きな影響を与えるため、実用上の厳しい条件での検証結果となっています。これはEVを検討しているユーザーにとって非常に参考になるデータである可能性があります。

テストでは高速走行だけでなく、田舎道や街中など様々なシチュエーションがミックスされています。そのため、高速走行縛りなどの条件で行われるテストよりも、電費性能において不利な条件ではありません。また、テスト時の天候は晴れで、路面状況もドライであり、ノルウェーの典型的なサマーシーズンの条件で行われました。

そして、こちらが実際の航続距離テストの結果を示したグラフですが、特筆すべきは、32台の検証台数のうち、満充電あたり500km以上走行できた電気自動車が半数近い15台であることです。

3年前の夏のテストでは、500km以上走行できたEVはわずか6台でしたから、EVの技術革新が速いペースで進んでいることが分かります。

最長航続距離を達成したのは、ズバリテスラモデルSです。2023年モデルの最新世代のパワートレインを搭載し、より優れた電費性能を持つ標準のAWDグレードであり、19インチホイールを装着しています。その結果、672kmの航続距離を実現し、2位のポールスター2の601kmを大きく上回りました。

一方、メルセデスEQSについては、直近で検証を行った結果では、620kmの航続距離となりました。これはEQSのWLTPサイクルにおける欧州WLTCモードでの航続距離を大幅に下回っており、街中の走行シチュエーションが電費に影響を与えた可能性が考えられます。

EVの航続距離は外的要因によって大きく変動するため、真剣にEVを検討している方は検証の前提条件を考慮する必要があります。日本国内の検証結果を参考にすることが良いでしょう。

このような意味で、あらゆる走行シチュエーションがミックスされた場合でも安定した電費を実現できたテスラモデルSは、今なお世界トップクラスのEVとして評価されています。

EQSはカタログスペックを大きく下回る結果に

また、日本メーカーのEVも大健闘しました。特に日産アリアのB9グレードは580.8kmの航続距離を達成し、カタログスペックの欧州WLTCモードの533kmを大幅に上回る結果となりました。夏場のリアルワールドでの電費性能が優れていることが示されています。

さらに、個人的に賞賛したい車種として挙げられるのは、トヨタbZ4Xです。以前からその電費性能は問題視されており、カタログスペックとの乖離が顕著でした。しかし、トヨタはbZ4Xの性能改善に取り組み、特に1日2回の急速充電制限の解除という点に注力しました。その結果、ソフトウェア部分の改善により、見た目の航続距離を改善することに成功しました。また、充電残量表示も改善され、バッファー部分が減少したため、実際の航続距離も延びました。今回のテストでは、最大443.5kmの航続距離を達成しました。また、FWDとAWDの両方がテストされましたが、意外なことにAWDの方がわずかに航続距離が長くなりました。その原因は不明ですが、装着されているタイヤの違いが影響している可能性があります。

一方で、今回のテストで最低の結果を記録したのは、スバルソルテラです。その航続距離は360.5kmであり、カタログスペックの416kmと比較しても大幅に落ち込んでいます。ソルテラはbZ4Xと兄弟車種であり、なぜbZ4Xよりも性能が悪いのか多くの人が疑問に感じるでしょう。装着されているタイヤが20インチであることが影響しており、航続距離が短くなるのは当然ですが、それでもカタログスペックとの乖離が問題です。また、テスト結果から推測すると、bZ4Xと比べてソルテラの消費電力量は少ないようです。ただし、トヨタとスバルによる改善が行われていない可能性もありますので、詳細な情報が明らかになるまで断定はできません。

中国製EVの実力がEV先進国でも証明され始める

最後に、個人的に大絶賛したい車種として、中国のEVスタートアップXpengのフラグシップSUVであるG9があります。G9は航続距離テストで587.8kmという最高の結果を達成しました。特に最上級グレードのAWDパフォーマンスと21インチの大型タイヤの装着が特徴です。カタログスペックが520kmであることを考えると、リアルワールドにおいても航続距離が優れていることが分かります。電費性能も優れており、177Wh/kmという数字はメルセデスEQS SUV 580 4MATICやテスラモデルX Plaidよりも優れています。バッテリー容量も93.1kWhと適切な容量です。G9は世界トップクラスの電費性能を持つEVとして評価されています。

なお、G9に関してはNAFからの詳細な公式情報はまだ公開されていませんが、充電性能テストにおいても競合を圧倒する結果を示しています。最大315kW程度の充電出力を発揮し、充電残量が40%に達しても270kWを維持し、60%でも180kWの充電が可能です。充電残量が80%に達しても150kW級の充電性能を維持します。G9は800Vシステムを採用しており、実際に中国国内では最大430kWの充電スピードを達成しています。このような充電性能はノルウェーでも十分な性能ですが、中国製EVの実力を100%引き出すことはできないという点でも驚くべきです。

G9は最大315kWを達成しながら、充電残量80%でも150kW級を維持

まとめると、今回のNAFによる電気自動車の性能テストでは、EVの性能が年々向上していることが分かります。夏場のリアルワールドにおいても航続距離500km以上の車種が増えています。特に日本メーカーのEVも良い成績を収めており、ソフトウェア周りも含めてさらなる改善が期待されます。一方で、中国勢のEVもトップクラスの性能を見せつけており、EV市場の競争はますます激化していくことでしょう。ノルウェー市場においても、どのようなEVが売れるのか注目が集まることでしょう。

From: NAF

Author: EVネイティブ